芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
「ヒ・マ・だ〜……」
ゴーレムⅢ戦での怪我が完治……とまでは行ってないが、動けるようにはなったので楯無さんより先に俺は保健室とサヨナラした。
早速ISの訓練でもと思ったのだが、その前に千冬さんに捕まってしまい。
「今日は休め。いいな?」
と言われてしまった。逆らうと後が怖いので、俺は自室に戻ってベッド上を転がっていた。
自室で過ごそうにも、持ち込んでいる本と映像作品は読み切った。トレーニング用品もあるにはあるが、やったところで時間は潰せないだろう。
予定のない休日をどう過ごすか思案していると、ドアからノック音が聞こえた。
「おーい、飛鳥。いるかー?」
「一夏か、今出る。……ん?シャルロットもいたのか」
「うん、おはよう飛鳥。一夏から元気になったって聞いたから、様子を見にきたんだ」
俺の部屋に来たのは一夏とシャルロットの二人。とりあえず話すなら中の方がいいだろうと、部屋に招き入れる。
「そういえば、飛鳥の部屋って初めて見るね」
「まぁ、このメンバーで集まってた時は、一夏もシャルロットも同じ部屋だったし、俺が足運んだ方が早かったからな。
「あ、あはは……」
苦笑いをこぼすシャルロット。フランス代表候補生である彼女だが、IS学園に転入してきた時は男装をしていたのだ。名前までそれらしくシャルルと名乗っていた。
当然一悶着あったのだが、今こうして学園生活を送れているので俺は気にしてない。
「うわ、また増えてるな。あれ?この『ラプラスの箱』っていうの、本にもなってたのか」
「むしろ小説の方が原作だぞ?気になるなら貸してやるよ」
「いいのか?映画の時も良かったし、楽しみだな!」
「へぇ、飛鳥の趣味ってなんか意外だね。もっとISとか武術とかに没頭してるんじゃないかと思ってたよ」
「そりゃ俺だって人並みの息抜きはするさ。戦闘マシーンじゃないんだから」
むしろ読書や映画鑑賞の方が物心ついた時からの趣味だ。とはいっても、先日一夏にプレゼントした映像作品や今話題に出た小説といい、どことなくガンダムを彷彿とさせるものばかりだが。
特に『ラプラスの箱』は俺が一夏と初めて一緒に見た映画でもある。気に入ったようなので中学三年の頃に誕生日祝いで渡したのだが、なにかシンパシーでも感じたのだろうか。
「でもお前、今日もISの訓練行くつもりだったらしいじゃないか。楯無さんから聞いたぞ?」
「…………」
ぐぅの音も出ずに目を逸らした。
「ということで、コレ持ってきました」
「そ、それはっ!インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ!インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイじゃないか!?」
説明しよう。インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ。通称IS/VSとは、大会で使われた実際の機体データを元に再現し、自在に動かせることができる対戦ゲームである。もちろん近年出てきたばかりの第三世代ISなどのデータはないが、それでも中学時代に唯一ゲーム機とソフトのある五反田家に入り浸ってやってた思い入れのあるゲームだ。
「俺一人ならともかく、飛鳥もいるなら買っても良いかなと思ってな。久しぶりにやろうぜ」
「よーし、三本先取な?負けたら飲み物奢りで」
モニターをセッティングし、ゲームを起動させてISの選択画面まで進む。
「あっ、ちゃんとラファールいるんだ」
「そうだぞ。興味あるならあとで変わろうか?」
画面に映ったラファール・リヴァイヴにシャルロットが反応する。ある意味切っても切れない関係にある機体とも言えるからな。専用機といい実家の会社といい。
しかし量産モデルでカスタムⅡとあるんだし、いっそブレードアンテナでも付けて全身赤く塗れば何かの化学反応で強くなったりしないか?今なら部屋の棚に押し込んである変なマスクも貸すぞ。
さて、IS/VSの話に戻るが、すでに対戦は始まっている。一夏が動かしているのは打鉄。ある程度のスピードと高耐久はしっかり再現されており、初心者でも動かしやすい。裏を返せば、その分読み合いや小手先の技術にリソースを割きやすく、シンプルながら奥が深い機体なのだ。
対して、俺が選んだ機体だが。
「この、ちょこまか逃げやがって……!」
「しょうがないじゃん、そういう機体なんだし。あっ、そこ回避通るよ」
「今の抜けれるのか!?クソ、なんでこいつメイルシュトロームだけ異様に上手いんだよ……!?」
イギリス製IS『メイルシュトローム』。セシリアの専用機『ブルー・ティアーズ』と同じく遠距離戦を主体としたIS。対戦ゲームにおいて飛び道具が使えるというのはかなりのアドバンテージなのだが、実はこのゲームの中では
まず飛び道具が使えるという点で、速度が少し調整されている。普通に逃げてたら打鉄にも簡単に追いつかれる。さらにメイン武器として狙撃銃が搭載されているのだが、弾の判定が小さくて当たりにくく、攻撃の前隙・後隙ともに長く、ダメージもそんな高くない。過去に全員でメイルシュトローム使って戦ったことあったが、泥試合過ぎて目も当てられなかった。
そんな対戦ゲームあるあるの弱キャラポジションがコイツなのだが、なぜか俺が操作すると強い。いや、逆に打鉄やラファールはおろか、最強扱いされているテンペスタですら使えないだけなのだが。
「よし、俺の勝ち。じゃあサイダーよろしく」
「わかったよ……。あ、シャルロットも何か飲むか?」
「いいの?じゃあ、お願いしようかな」
一夏が財布を片手に部屋を出る。部屋にいるのは俺とシャルロットの二人だけとなったのだが……そういえばシャルロットと二人になる機会ってあまりなかったな。
「それにしても、ビックリしちゃったよ。ゲームだと飛鳥すっごい逃げ回るもん」
「いや、実はIS動かしたての頃もこんな感じで動いてたぞ?でもその時に教官だった人がその、
「……あぁ、そっか。それは、なんていうか……」
ゲームのようにビームライフル撃っては逃げ、逃げてはビームライフルを撃つ。だが、そんな戦法は全く通用せず、即座に追いついかれては斬撃と罵声の嵐が浴びせられる。そんなのを繰り返されてたら、イヤでも近接主体になるわ。
「ま、初心に帰れた気がしてよかったよ。たまにはゲームも悪くないな」
「……僕も、ちょっとやってみようかな?」
「お、じゃあ俺も機体変えてやってみるか」
俺もシャルロットも選んだのはラファール。ただのヘタクソと初心者の試合になったが、操作を理解してからはシャルロットの動きがめちゃくちゃ良くなり、後半は一方的にやられた。
こうして一戦終えたタイミングで、一夏が戻ってきたようだ。……また誰か連れてきてないか?
「あ、おかえり一夏!……と、簪?」
「……どうも」
一夏曰く、飲み物買いに行った時に鉢合わせたらしい。その時ゲームの話になって、気になったので一緒に着いてきたという流れだ。
ちなみにシャルロットと簪はすでに知り合い……というか、タッグマッチの一件で他の専用機持ち四人と一緒に一夏との関係を問い詰めてたらしい。簪視点の圧がヤバそう。
「へぇ、簪もIS/VSやったことあるんだな」
「ネット対戦ぐらいなら、齧ってたから」
「えっ、これネット対戦あったのか?初めて知ったな……」
ひとまず交代して、一夏と簪がコントローラーを握る。一夏の言った通り、このゲームのネット対戦は少し手間がかかるため、普通にやる分には触らない。ランダムマッチングがなく、わざわざ部屋を立ててパスワードを打たなければならないといったシステムは多くのプレイヤーからも不評だったとか。
……ならば、
「なん、だと……?」
「完全勝利、ぶい」
小さくピースサインを掲げる簪。画面に表示されている二つのHPバーは、それぞれ全損と無傷を表していた。
簪が使ったのはテンペスタだが、俺たちが使ってた時とは比べものにならないほどヤバかった。あんなコンボ知らねぇよ……。
「飛鳥、仇を取ってくれ……!」
「いやムリだろ。俺の使うIS忘れたのか?」
もちろんやるにはやった。一夏の様に瞬殺はされず、初見殺しも通りはしたが、結局一度近づかれたら終わりだったので普通に負けた。
これ、リアルで零落白夜捌くよりクソゲーでは?
IS関連のゲーム、ギャルゲー仕様もいいけど純粋なバトル系もっと欲しかったな……。
途中で出てきた『ラプラスの箱』については、ここまで見てる人なら何をモチーフにしたかわかるんじゃないかと思ってます(cvネタ)
追伸:挿入箇所ミスって変な場所に時系列の合ってない日常回が入ってしまった……!(修正済み)