芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
まぁ、この辺りの話ゲームにもなってるので、いつか番外編書けたらなと思っております。
「これは……どういう状況だ?」
「飛鳥!お前も戻っていたのか」
負傷した楯無さんを無事に医療室まで連れて行ったあと、一夏の後を追ってIS学園の地下、そのとある一室に向かった。
だが、いざ着いてみるとそこには箒や簪など、一年の専用機持ちが勢揃い。肝心の一夏は、何やら装置に寝かされており、眠ったままのようだ。
「一夏が電脳ダイブしたまま、目を覚まさなくて。でも、その原因がわからない」
簪が簡潔に説明してくれた。簪以外の専用機持ち五人がワールドパージ(?)とかのせいで電脳世界に閉じ込められ、一夏が介入することで問題の解決に至った。だが、それとは関係なしに一夏の意識が戻らなくなってしまっているのが現状らしい。
「なら俺が電脳ダイブすれば……って言っても、俺も同じ状態になる可能性があるか。なにか対処法は……」
「
『はぁっ!?』
その一声に全員が驚きの声を挙げる。それに対し、この発言をした当人……ラウラは堂々とした態度を崩さなかった。
「き、キスってアンタ!何考えてんのよぅ!?」
「知らないのか?眠れる嫁を覚ますのはキスだ」
と、自身が務める部隊の副官から先程聞いたらしい。その副官クビにした方がいいんじゃないか……?
呆れていても仕方がないと、他の方法を模索しようとする。が、そこで乙女の恋心が暴走してしまったようだ。
「お待ちになって!試さずに否定するのは如何なものでしょう!」
「お、オホン。まぁ、なんだ。人工呼吸的なものだろう」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!それなら僕も!」
この状況を利用して既成事実作ろうとする姿に俺は頭を抱える。罪な野郎だと思いながら再度一夏の方を見ると、なんとキスを試みている輩が約一名。
「何をしている!」
「抜け駆けは許さんぞ!」
箒とラウラが、口が触れ合うギリギリで簪を取り押さえることに成功する。内気だなんだと言っておきながら、たまに大胆になるよな。
「いえ、私は決してそのようなつもりではなく、あくまで状況を鑑みて、なにやら膠着状態が長くなりそうなため、一つの打開案として、やや強硬な姿勢を取ってみては(割愛)」
拘束からスルッと抜け出した簪は、理論武装しながら百面相を披露していた。なんかもう収拾つかなくなってきたな。帰っていいか?
「あ"ー!長いッ!!長い上に理屈っぽい!セシリアの縦ロール並みにグルグルしてるんじゃないわよ!」
「そうですわ……って、鈴さん今なんと?」
ストッパーは俺だけだと思っていたが、鈴が思ったより冷静だったようだ。地味にセシリアディスったせいで睨まれてるけど。
「だ、だって!……だって、私だけワールドパージかかってないわけで、本当は私も鈴みたいに」
「わ、わぁぁぁぁッ!?」
「あっ、おい!?」
簪が何かを口走ろうとしたのを止めようとしたのか、鈴は赤面しながら飛び蹴りを放った。流石に見過ごせないので割って入りはしたが、防御までは間に合わなかった。
鈴の脚が、俺の頭部に直撃する。
「グホォッ!?」
「お前たち!何を騒いで」
蹴られた直後、何か聞こえた気がしたが、それを意識する間も無く俺は
「お前らなぁ……!今一夏がどういう状況かわかっ、て…………なんでみんなして青ざめてるんだ?」
蹴りをお見舞いしてくれた鈴だけでなく、他のヤツらも産まれたての小鹿のように震えていた。確かに怒ってはいるが、そこまで威圧感を出しているつもりはないのだが……。
そんなに怖い印象あるのかとショックを受ける。が、どうやらその威圧感は俺の真後ろの人物からだったようでその心配はなかった。代わりに、別の心配をしなければならなくなったが。
「他に言い残すことは……あるか?」
俺が鈴に蹴り飛ばされたのと同時にドアが開いたようで、おれはその先にいた人物……織斑千冬にぶつかってしまったようだ。柔らかい感触を幾度も感じたのだが、それは千冬さんの豊満な胸に俺が顔から勢いよく突っ込んだのと、体制を立て直そうとした際にガッツリ手を当てた時のものだったようだ。
千冬さんが今どんな顔をしているのか。それがわかるのは怯えに怯えまくっている専用機持ち六名のみ。振り向く勇気なんてあるわけがなかった。
「…………思ったより、柔らかいものなんですn」
次に目覚めた時、俺の記憶は一部欠落していた。
とある地下レストラン。人払いでもされているのか、あまりにも静かなその店内では、機械仕掛けのウサミミを付けた女性が運ばれてきた料理をガツガツと堪能していた。
それを提供した人物、亡国企業のスコールが目の前にいるにも関わらず、遠慮や緊張といった様子は微塵もなかった。
「お気に召しまして?束博士」
「うーん、そうだねー。そこの睡眠薬入りスープ以外はねー」
姦計を見破られてもスコールは一切動揺していなかった。もしこのような小細工が通用するのであれば、穏やかな笑みを浮かべたままのこの女、篠ノ之束はとっくに世界各国からの追手に捕まっているだろう。
「それで、我々亡国企業にISを提供する話。考えて頂けたでしょうか?」
「あっはは、イヤだよめんどくさいじゃん」
「そうですか。では、こんなのはどうでしょう?」
「ッ……束様、申し訳ありません……」
スコールが合図すると、彼女の部下であるオータムが、銀髪の少女を連れ出す。少女は両目を閉じているが、自らにナイフが突きつけられ、人質となっていることは理解していた。
少女の名は、クロエ・クロニクル。血の繋がりこそないものの、あの篠ノ之束が娘と呼び、寵愛を受ける存在。人質としては十分に機能し、一歩間違えれば篠ノ之束は彼女に手を出したもの全てを文字通り消しにかかるだろう。
『すまないが、それは見過ごせないな』
「ッ!?この声は……!」
この場にはいないはずの男性の声が響く。それと同時に、人質を取っているオータムに向けて、ビームサーベルが突きつけられた。
「なっ!?てめぇ、『デュランダル』のッ!どういうつもりだ!?」
『申し訳ない、束博士。出過ぎた真似とは思うが、ここを見過ごせば我々の関係にも亀裂が入ると判断したものでね』
「そういうのいいから、早くくーちゃん放してよ」
流石に身内を人質に取られたのは篠ノ之束であっても怒りを覚えるらしい。普段よりドスの効いた声で、姿無き男に命令する。
オータムは渋々クロエを解放した。それを確認して、ビームサーベルを突きつけていたライジング・フリーダムも矛を収めた。
「……なるほど、すでに手を組んでいたとは。上層部はこの事をご存知で?ミスター・デュランダル」
『もちろん、と言いたいところだが、少々婉曲的な報告をしたことは認めよう。彼女と交渉するには、それほどのリスクが必要だと判断したものでね。君もそれは理解しているだろう?ミス・スコール』
デュランダル、と呼ばれた男は淡々と答える。スコールからしてみれば溜まったものではないだろう。料理への薬物投与や人質という強引な手を使ってでも、かの天災の恩恵を受けようとした。それが形式上のみでも協力関係に当たる相手に先を越されていたのだ。
もし協力関係を築いていたことを秘匿していなければ、このような手段を取らずに済んだものを。激しい苛立ちを覚えたスコールだったが、冷静になって抑え込んだ。
『とはいえ、騙した形になったのは謝罪しよう。代わりと言ってはなんだが……そこにいるのだろう?入ってきたまえ』
「…………チッ」
ここで暴れても意味はないと判断したのか、姿を現す織斑マドカ。有事の際に備えてISも展開していたのだが、すでに待機状態へと移行されており、素顔までもが晒されていた。
それを見た篠ノ之束は、先程のような笑みを貼り付けながらマドカへと近づいていった。
「君、名前は?ふふ、当てて見せよっか?織斑……マドカ、かな?」
「なっ…‥」
自らの名を当てられた事に驚いたのか、目を見開くマドカ。一方で篠ノ之束は正解したことに喜んだ様子を見せる。このレストランに訪れてから一番楽しい状況になったのだろう。
「ねぇ、あなたの専用機なら作ってもいいよ?だからさー、私のところにおいでよー。ねぇねぇ、この子貰っていいよねー?」
「そ、それは困りますが……」
「え〜、ケチだなー……ま、いっか!」
本心はどうあれ、マドカの勧誘をあっさり諦める。その後、マドカの専用機をどのようにするか質問攻めをしていたが、スコールやオータム含め束の調子には全くついていけなかった。
『話はまとまったようだね。では、我々は引き上げるとしよう』
「……その前に、一つ良いかしら?」
帰還の準備をするフリーダムを引き止めながら、未だに姿を見せないデュランダルにスコールは話しかけた。
「今回の束博士との一件、貴方は何を得たのかしら?」
この場で束に手を貸したデュランダルだが、肝心の見返りがこの場では明らかにされていない。少しでも探りを入れようとしただけの質問であったが、デュランダルはそれに気前の良い答えを提供した。
『ゴーレムⅢまでの無人ISの開発ノウハウ、そしてその専用のISコアだ。動きの核となる稼働データも既に入手の目処があるのでね。完成すれば、今後の作戦における君達の負担も減るだろう。期待して待ちたまえ』
話は終わりだと言わんばかりに、フリーダムはレストランを抜け出し、MA形態となって夜空へ飛び去った。
そして、それとはまた別の場所。無人ISと思われる機体がすでに製造を開始していた。パーツからして、その合計数は5機。
この無人機が、後に世界を揺るがす事件の引き金となった。
ちょっと原作やアニメのセリフ多くなったけど、その分この先の展開への布石にリソース割かせていただきました。
最終章では今までの伏線回収をする場面がかなり出てくるので、多少後書きが長くなっても過去話との関連を解説させていただければと思ってます。