芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
「ドウドウ〜、何してるの〜?」
「……いや、ちょっと考え事してただけだよ。そういうのほほんさんは、何か用?」
教室内の自分の席で一人考え事をしていると、クラスメイトの布仏本音が宥めてくるような渾名で呼んできた。この渾名は進藤飛鳥の"藤"の部分を繋げたものらしい。人に渾名を付けた経験があるわけではないのだが、のほほんさんの感性は少し変わっているのではないだろうか。悪い気はしてないからドウドウのままでも構わないのだが。
ちなみに、のほほんさんというのは一夏がお返しにと付けた渾名であり、俺もそれに便乗して呼ばせてもらっている。
「用はないよ〜、ただ珍しいな〜って」
「そうそう、飛鳥くん授業終わったらすぐにどっか行くのに」
「それが今日は上の空、何かあったと気にならない方がムリな話よ!」
のほほんさんに続いて、
だが、今日は少し悩んでいた事もあって、考えをまとめるために教室に長く滞在していたというわけだ。
「……あ、そうか。のほほんさんに聞けばいいのか」
「え〜?どうしたの〜」
「いや、今言うのはちょっと……後で頼む」
……何の気兼ねもなく誰かに話せるのであれば、俺がわざわざ楯無さんに頼んだ意味はない。
「えー、本音だけずるーい。……まさか、飛鳥くんとそういう関係に?」
「えっ、いつの間に!?」
「いや違うからな?のほほんさんに用があるのは……俺の専用機のことなんだ。この間壊した装備の修繕が終わったから、その調整を頼みたくてな」
もちろん、のほほんさんに用があるのは楯無さんについてなのだが、壊した装備が修繕されたというのもまた事実。証拠として画像も見せたので、周りはそう思ってくれたようだ。
「……あれ?それって、前に先輩たちと模擬戦した時の?」
「あぁ、アレは良い経験になったけど、武器壊したのだけは苦い思い出だな……」
苦笑いしながら当時を振り返る。先輩たちとの模擬戦、というのは一学期の頃の出来事。ここまで話題になってるのは、それが1vs4の形式であったから。もちろん先輩たちは量産機だが、それでも数と実力の差を覆して俺が勝利したのは衝撃的だったのだろう。新聞部もその結果を大々的に宣伝し、俺の実力がIS学園に知れ渡ったのだ。
……
もちろんこの先輩たちだけでなく、他にも俺を良く思わない者はいた。生徒に限らず、教師の中にも。一夏には千冬さんというこれ以上ない後ろ盾があるが、ほぼ天涯孤独とも言える状況の俺にそんなものはない。
ただ大きな行動に移ったのはその先輩たちが最初で最後だった。アリーナの中で会った時は友好的だったので俺も快く対応していたのだが、途中から胡散臭く感じた。なので武器を使わせてほしいと言われた時は、
そうして手に持てる武装全てを差し出したとわかった瞬間に、模擬戦は始まった。ただの対複数ではなく、俺の武装がほとんど奪われた状態で。
「……やっぱり、アンタら最初からこうするつもりだったんだな」
急に振り上げられた武器を躱し、距離を取った。先程までの穏和な雰囲気はどこにもなかった。
「はぁ?気づいてて武器を渡したの?舐められたものね」
「言っとくけど、逃げようたってそうはいかないわよ。このアリーナのバリア、何故かは知らないけどもうロックされてるのよね」
「でも安心ね、訓練はちゃんとできるから。第三世代ISの武器、さぞ強力でしょう?」
「せいぜい頑張ってよね。ターゲットとして、さ?」
四人の笑い声が響く。しかし、バリア越しでは外に声が届くことは滅多にない。一応アリーナの席に見物客はいるのだが、これを異常事態と把握している者は多くないだろう。
しかし、せっかくの新武装まで渡したのはもったいなかった。最初の試したかったんだけどな、ガンダムデスサイズが持ってるのに良く似たあのビームサイス。
「……やっぱ返してくれません?その鎌だけで良いので」
「バ〜カ、返すわけねぇだろ!お前は大人しく、私らのサンドバッグに」
(…………今だな)
ビームサイスを構えながら、こちらへ突撃してくる先輩の内の一人。その突撃の隙を狙い、俺は芋者のスラスターにエネルギーを溜め込んで、スペックの限界を超えた加速を行った。『
とんでもないスピードで壁に叩きつけられたが、まだシールドエネルギーは残っているため動けはするだろう。ビームサイスは衝撃で完全に壊れてしまったようだが。
「…………は?」
「すいません先輩。俺、確かに毎日サンドバッグ並みにやられてた時期あるんですけど、その時は相手が相手だったんで加減なんてしてられなかったんですよね」
「まぁ、先輩方にその必要はなさそうなので、今度はちゃーんと加減しますよ。巻き添えで武器壊れるのめんどくさいんで」
「ふ…………ふざけんじゃねぇぇぇッ!!」
そこからはカルキトラ一本で四人を相手に翻弄し続けた。確かに向こう側によこしたビームブーメラン、ビームライフル、シールドブーメランはどれも高火力なのだが、使い慣れてない武器で攻めてこられても対処には苦労しなかった。
というか、量産機の打鉄やラファール・リヴァイヴでは第三世代機の中でも高出力を誇る芋者にパワーもスピードも敵わない。しかし、お遊びに興じるほど俺も酔狂じゃない。武器をさっさと取り返したあとは、量産IS四機にビームブーメランとカルキトラによる踊るような連撃を行い、シールドエネルギーを数秒の内にまとめて削り取った。
とまぁ、思い出せる限りではこうだったと思う。この件を気に全体的に嫌がらせが減ったのだが、大体はこの件をマイルドに包んで拡散した黛先輩や恐らく裏で何かしたであろう楯無さんのおかげなのだろう。
それと、仕掛けてきたヤツらを先輩呼びで統一してたのは、シンプルに名前が思い出せなかったからだ。女性権利団体が関与しているという情報は覚えているのだが、思った以上に印象に残らなかったようだ。退学や休学したという話は聞いてないから、まだ学園には通っているのだろうか。
「お〜い、一夏〜。首刈らせて〜」
「物騒ッ!!よりによって鎌なんて握りやがって!シャレになってねぇぞ!!」
そんなわけで今日帰ってきたばかりのビームサイスを手に、今日も今日とて零落白夜対策をするのであった。
なお、本日は運悪く秒で撃退された。四肢に掠っただけでもエネルギー全損しかねないの頭おかしいよ。
ビームサイスまともに使った戦闘書くと今後再登場した時にどう使わせようか迷ったので描写はほぼカットしました。すまないデスサイズファン。
この話は『某所某日の整備室』で簪が聞いた噂が伏線になっていました。ISの存在でより極端な女尊男卑を掲げるようになった女性権利団体から被害に遭っていた飛鳥くん。ただISによる模擬戦で真正面から打ち負かしたことや楯無さんが色々牽制したことで迂闊に手を出せなくなったため、下手な動きができず今まで露骨な妨害がなかったというわけです。
あと以前からも描写はありましたが、飛鳥くんは平気で嘘をつきます。これが余計な心配をかけたくないからなのか、心を閉ざしているからなのかはご想像にお任せします。