芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
「うわぁぁぁ!?落ちる!死ぬゥゥゥゥゥッ!!?」
一夏が吊るされている風船を、6人の専用機持ちが容赦なく割り続ける。なぜこの珍妙な光景が繰り広げられているのか。
事の発端は楯無さんの一言。織斑一夏の所属を賭け、代表候補生をリーダーとして運動会をするといったものだった。なんなら同室の権利も握られている。相変わらず人権なんてあったものではない。
さて、その最終種目としてバルーンファイトというものが行われているのだが、ネ○リーグ並みに大量の風船が一夏に括り付けられ、それを割り切って落下する一夏をキャッチし、無事に地上に運ぶといったもの。
その妨害役として、俺が抜擢されたわけなのだが、流石にブーメラン×3やビームライフルだけで専用IS六機の相手は厳しかった。
「おっと、風船無くなったか。悪いな一夏」
「い、いや、一応守ったくれたのは助かっ」
なんやかんやあってシャルロットに担がれたままこちらに応答する一夏。しかし、謝ったのは別に守りきれなかったからではない。
ビームブーメランを腰部アーマーにマウントし、シールドブーメランを量子化させて拡張領域へと収納する。それと入れ替わるように、俺の両手には形状の異なる二本の大型実体剣が握られた。
「こっからは落としに行くから、覚悟しとけ」
「シャルロット!逃げて、早く!!アイツやべぇって!!」
「ちょっと飛鳥!?いくらなんでもその武器は殺意高すぎないかなぁ!?」
デモリッションナイフとバスタードチョッパー。改修されたガンダム・アスタロトの振るっていた質量の塊が一夏を抱えたシャルロットへと迫り来る。
一応大振りに振ってるのは俺なりの手加減だが、その分当たればタダじゃすまない。主に抱えられてる側の一夏が。白式を展開しようにも、楯無さんに事前にロックされてるので逃げも守りもできないのだ。
「残念ながら手は抜けない。それが俺の焼肉……じゃなかった、お前らに対する敬意ってもんだ!」
「おい焼肉って言ったよな?敬意より優先された欲望がダダ漏れだったよな!?」
うるせー、あの楯無さんが奢る焼肉だぞ。絶対良いところじゃん。何がなんでも仕事をこなさなければ。涎が垂れそうなのを抑えながら、俺はデモリッションナイフとバスタードチョッパーを振り回す。
最初に一夏を抱えたのはシャルロットだったが、俺やその他の専用機持ちの妨害が苛烈なため、セシリアや簪、鈴にラウラへと一夏は次々に回されていた。
そして、現在は箒の手に一夏が抱えられている。
「流石は第四世代、追いつくのも一苦労だな」
「回り込んでおいてよく言う……!通してもらうぞ!」
箒は刀を振り上げ、こちらに斬りかかってくるがバスタードチョッパーで難なく受け止める。一夏を抱えている以上、もう片方の武装は使えない。その隙をついてデモリッションナイフを振るうが、箒は驚くべき技を見せた。
「なるほど、その手があったか!」
「ふん、脚部ブレードはもうお前だけの専売特許ではないぞ!!」
展開装甲によって紅椿のつま先からビームソードが生成され、俺のデモリッションナイフを受け止めたのだ。確かに箒との模擬戦でカルキトラは手数を稼ぐためにこれでもか使用していたのだが、そんな芸当ができるようになっていたとは。
しかし、脚部搭載の刃物の扱いにはこちらに一日の長がある。刀と鍔迫り合いをしていたバスタードチョッパーを脚部のビームソードを挟み込むように捕らえ、そのまま引っ張ってやる。ナノラミネートほどではないが、このデモリッションナイフとバスタードチョッパーのビーム耐性はかなりのもので、途中で切断されることはなかった。
「なっ!?」
「難しいよな、
脚部と一体化している刃物。確かに強力だ。だが、その形状によっては取り扱いに注意が必要だ。武装越しに引っ張られて、体制を崩すなんてこともあり得なくはない。俺もカルキトラ展開してたら、楯無さんのランスに引っ掛けられたことあるからな……。
こうして突然足を引かれた箒は力が緩んだのか、抱えていた一夏を落としてしまう。
「しまった!?一夏ッ!」
「あっ、やべ」
「うおぉぉぉぉぉ何度目だぁぁぁぁぁ!?」
箒の脚部ブレードを使ったことで思考が完全に戦闘よりになってた。一夏の確保にすぐに行けなかった。地面からはあと10mといったところ。妨害に徹するとはいったが、流石に人命救助が第一だ。
「一夏、コイツに掴まれ!!」
「お、おう!」
急遽取り出したシールドブーメランを猛スピードで飛ばす。芋者の腕部に接続して運用できるシールドブーメランだが、取手がないわけではない。
一夏は見事に空中でシールドブーメランを掴み、そのまま無事に着地することとなった。
「危ないところだったな、怪我はないか?」
「あぁ、大丈夫……ってなるかぁ!!よくも追い立ててくれたなこの野郎……!」
胸ぐらを捕まれガクガクと揺らされる。いや悪かったって、今度焼肉連れてくから。楯無さんの奢りで。
ちなみに一夏を無事に地上に着かせたとかで、この種目の勝者は何故か俺になった。しかも今までの競技がお遊びだと言わんばかりの配点だったため、優勝も掻っ攫ってしまったのでヒロインズからはすっごい睨まれた。
……ひとまず、俺と一夏が初めて同室になったことは確かだと言っておこう。
アーキタイプ・ブレイカー編とか原作時空に迷い込むみたいな話を書きたい気持ちが強くなってきましたが、そこら辺は本編完結させてから着手しようと思っております。むしろしっかり書き切るための良い指標になるのかもしれない。
運動会編はサラッと流しましたが、その次のエピソードで重要な展開あるので、そこで数話分使う予定です。