芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 当初は他のロボットものや特撮系などの武器も出すつもりが、なんかガンダム一色になってたので出すに出せなくなった件()
 このネタは完結後に持ち越すとしますか……。

 


消えぬ悪意

 ミステリアス・レイディ、ゴールデン・ドーン、ズゴック(in芋者)の3機の戦いは船内に収まらず、その上空へと場所を移していた。

 楯無さんに正体を明かせばすぐに2vs1へと持ち込めるのだが、スコールにバレた場合のリスクが未知数だ。ここは慎重に立ち回らねば。

 

 

「見た目の割に速すぎないかしら!?」

 

 

「釣りのつもりで仕掛けたのだけど、厄介なものまで引き寄せたようね……」

 

 

 水陸両用であるからか、ずんぐりとしたフォルムのズゴック。しかし『フォランテス』を装備することで機動力を大幅に上げているので、弾幕を避けることもできれば、隙をついてアイアンネイルによる攻撃も加えることができる。攻撃の対象は当然ゴールデン・ドーンのみだ。

 

 

「プロミネンス・コートを気にせず近づいて来られるのはアナタが初めてよ……!」

 

 

 スコールのIS『ゴールデン・ドーン』は第三世代であり、特筆すべきは熱による攻防一体の機能。熱線を束ねたプロミネンス・コートは全身を覆うバリアとなり、火の粉を球状に凝縮して放つソリッド・フレアは文字通りの高火力。水を主体とするミステリアス・レイディにとっては天敵といえるだろう。

 だが、このズゴックは違う。近接戦の要となるアイアンネイルは赤熱化が可能なため非常に高い耐熱性を持ち、プロミネンス・コートを物ともせず攻撃を続けられる。それだけでなく、『フォランテス』のウイング部に何故かあるビーム刃も動きの不規則性を生み出し、スコール相手に有利に立ち回れていた。

 一応ビーム砲が両手とフォランテスに二門ずつ搭載されているのだが、プロミネンス・コートには効きが悪いので牽制以上の使い方は期待できない。

 

 

「なら、こういうのはどうかしら!」

 

 

 スコールが腕を掲げると、その手に火の粉が集まってソリッド・フレアが形成される。流石のズゴックも直撃で耐えられるのは一発のみ。大人しく下がる。

 しかし、それは罠だった。火球に目が行った瞬間に、スコールは別方向から巨大な鉤爪を持つ尾を伸ばしていた。気づいた頃にはゴールデン・ドーンの尻尾は俺を捕えようと爪を大きく開いていた。

 

 しかし、咄嗟の防衛本能が働いたのか。俺はその尻尾についた爪を側面から蹴り上げることで防ぐことに成功した。そのままもう片方の足で尻尾を足蹴にし、その勢いを利用して一気に距離を稼ぐ。

 仕切り直しとなったので様子を伺うが、動きはない。……というか、スコールも楯無さんも俺に注目したまま動かない。楯無さんに至っては引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 

「…………なるほど、進藤飛鳥ね?確かにコンパス(・・・・)ならそのような装備を開発していてもおかしくないもの」

 

 

 バレた、しかも開発元まで。確かに他の企業がこんな見た目で無駄にハイスペックなものを作るとは思えないが、中に俺が入ってることまで気づかれたのは何故だ?コンパス所属に絞っても、他に該当するIS乗りはいるはずだが……。

 

 

「……別に誰かさんのことを言ってるわけじゃないのだけど、勝手の違う機体で普段のような動きをするのはオススメしないわよ」

 

 

 楯無さんにまで正体割れたらしい。まさか……さっきの足技が原因か?確かにズゴックの脚部であんな動きされたらビックリすると思うが……。え、こんなことでバレるの?どれだけ足技のイメージが強いんだ俺は。

 

 

「これは傑作ね。二人目の男性操縦者はアナタのことを信用していなかったと」

 

 

「……………………」

 

 

 スコールの一言に険しい目つきとなる楯無さん。理由はどうあれ、一緒に来たであろう一夏はともかく、俺は完全に無断で潜入していた。少なくとも更織家当主(・・・・・)としては、良い答えは期待できそうにないだろう。

 誤解を解こうにも、その前にスコールから唐突に語られた事実に意識を割くことになってしまう。

 

 

「それもそうよね。彼にとって、

ISは家族の命を奪った仇だもの(・・・・・・・・・・・・・・)。信用どころか、怨みを抱かれていてもおかしくないものねぇ?」

 

 

「おい」

 

 

 俺の第一声は酷く冷え切ったものだった。

 

 

「……俺の両親は確かに事故死だった。でも、ISでなんてこと、一度も……!」

 

 

「あら、心当たりがないとは言わせないわよ。当時の情報統制、その後の境遇。そして今、その不祥事の生き証人とも言えるアナタは様々な方面から命を狙われている。どうかしら?辻褄は合うと思うのだけれど」

 

 

 ……両親の亡くなった事故の裏に何があったのか。気にならないわけがなかった。だけど、その考えに至ったところで、いくら声を上げてもどうにもならないことも察してしまった。

 6年前、事故が起きた当時は、ISの開発が進んで軌道に乗り始めた頃。その矢先に起きた死亡者十数名のトラブルなんて、不都合この上ない。だから実の息子だった俺にも真実が伏せられ、ISは何事もなく今日まで発展してこれたのかもしれない。

 その俺が二人目の男性操縦者として世間に知れ渡ったのだ。当時の事故の真相を知るものからすれば気が気じゃなかったのだろう。口封じのためなら手段は選ばない。イージスシルエットに人知れず取り付けられた自爆装置など、その一例に過ぎない。

 

 

「…………飛鳥くん」

 

 

「アンタは……当然知ってたよな。生徒会長(・・・・)

 

 

「っ…………」

 

 

 一般人だった俺よりも、裏の世界に精通していた楯無さんがその事実を知らない訳がない。一学期中、生徒会長権限で俺と同室になったのだって監視役としての側面もあったのだろう。

 顔を逸らす楯無さんに、俺は更に詰め寄る。

 

 

「いや、言いにくいことかも知れませんけど、そういうの早く教えてくださいって。おかげであんなゾンビ女にカミングアウトされちゃいましたよ。どうしてくれるんです?」

 

 

「えっ」

 

 

「ぞ、ゾンビ……?あ、アナタ、今の話を聞いてどうとも思わないのかしら?」

 

 

 突然雰囲気の変わった俺に困惑する楯無さんとスコール。スコールをゾンビ呼ばわりしたのはすでに死亡していると聞いたからなのだが、煽りにしてはパンチが弱かったようだ。

 

 

「確かにビックリしたさ。全部IS絡みだった(・・・・・・・・)なんてな。……でも、怨んだところで何かが戻ってくるわけでもないだろ。そんなの虚しいだけだ」

 

 

 何もかも失ったあの時の絶望は、今でも俺の心の片隅にある。怒りも悲しみも、忘れることなんてできない。

 

 

「だから全部背負ってく。得るものなんか無くても、何かを守れるなら俺が戦う意味はある」

 

 

 曖昧だが、確固とした決意。きっとISというものがこの世に存在する限り、俺に安息が訪れることはないのだろう。それでも、今は前に進みたい。まだ胸に残っている、願望にも近い微かな希望を信じて。

 

 

「……驚いたわね。一度は全て失った者が、虚勢と痩せ我慢だけでここまで耐えられるなんて」

 

 

「悪運は強いみたいでな。人には恵まれたんだよ!」

 

 

「ふぅ、心配して損したじゃない。やっぱり飛鳥くんはブレないわね」

 

 

「褒め言葉として受け取っておきますよ」

 

 

 ズゴックとミステリアス・レイディが並び立つ。爪と槍の切先が向く先にはゴールデン・ドーン。

 ようやく2vs1……となるはずだったが、ここに来てようやく援軍が到着したようだ。

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

「簪ちゃん!?どうして……!」

 

 

 参戦してきたのは打鉄弐式、その操縦者である更織簪だ。話を聞いてしまった俺をこの場に送り込んだ張本人でもあり、俺の出撃前に宣言した通り、

切り札(・・・)を携えてやってきたようだ。

 

 

「もう守られるだけじゃない。私だって戦えるから!だから受け取って、お姉ちゃんの装備!」

 

 

 簪の手によって、ミステリアス・レイディに変化が起こる。専用パッケージ『麗しきクリースナヤ』、その赤き翼が背面に接続され、纏う水の色も青から赤へと変色した。ただ色が変わったわけではない。これは、ミステリアス・レイディが超高出力モードへと切り替わったことを表すものでもあった。

 そして、この状態となったミステリアス・レイディには、単一仕様の行使が可能となっていた。

 

 

「……どんな手を使おうと、私の守りは崩せないわ。心情一つで形成が変わるほど、世の中甘くないのよ」

 

 

「どうかしら?食らいなさい、『セックヴァベック』!!」

 

 

「……な、なに!?動きが……空間が(・・・)沈む(・・)!?」

 

 

 変化はゆっくりと訪れた。アラート音も鳴らず、ただ何かに飲み込まれる感覚。スコールの動きを制限しているのは、空間そのもの(・・・・・・)。指定された範囲がその結界の中にいる全ての対象の行動を完全に抑えつける沈む床を作り出す。拘束力だけなら、ラウラの持つシュバルツェア・レーゲンに搭載されたAICを凌駕するだろう。

 

 さらにこの単一仕様と並行して、楯無はミストルテインの槍のチャージを終えていた。まさに回避不能の一撃必殺。だが、それは思いもよらぬ方法で不発することとなった。

 

 

「なっ、アイツ……自分に攻撃を!?」

 

 

 身体の自由が効かない中、必死に作り出した火球。その着弾地点はミストルテインの槍を手に突撃する楯無さんではなく、スコール自身であった。

 あまりの威力に吹っ飛んだスコールだが、これによって楯無さんの単一仕様の範囲から抜け出すことに成功した。しかし、流石に無傷とはいかなかったようで、左腕が千切れており、その断面からは機械が露出していた。

 

 

「やっぱり、文字通りカラクリがあったってこと……!」

 

 

「あ、アレは!?」

 

 

サイボーグ(機械義肢)……!?」

 

 

 死亡者リストの謎が解けた。すでに死んでると言われた人間が生きていたのも、死亡時の年齢よりも外見が若く見えたのも、身体の一部を機械に置き換えていたからか。しかし、ISの存在しない時期からそのような技術があったとは、驚きだ。

 

 

「これ以上は不利ね。また会いましょう?生徒会長さん」

 

 

「ッ……!」

 

 

「簪!」

 

 

「わかってる!」

 

 

 楯無さん目掛けて、スコールは大量の火球を放つ。俺と簪はその進行ルートに割り込み、まずはズゴックとフォランテスに搭載されたビームとミサイルを撃ち込むことで火球群の数を減らし、取りこぼしはシールド特化のパッケージである『不動岩山(ふどうがんざん)』を搭載した打鉄弐式によって全て防がれた。肝心のスコールは火球の対処に追われている間に姿を眩ませたようだ。

 

 

「逃げられたか……楯無さん。俺、先に別ルートで帰還します。外装(ズゴック)付けたままは色々マズイんで……」

 

 

「いいわよ、今回の件は大目に見てあげる。……ありがとう、飛鳥くん」

 

 

 楯無さんと簪とはここで別れて、ズゴックを纏ったまま海中へと潜航する。海岸近くに移動されていたコンパス製の水中コンテナにズゴックの装備一式を収納し、俺は何事もなく地上へ帰還した。

 

 ちなみに芋者の反応が途絶えたことでIS委員会からの追求を受けたコンパスは、不具合の一点張りでやり過ごしたとか。




 『不穏な影』より、飛鳥の両親の死については謎が隠されていたのですが、それについて戸高さんが話そうとしたところトラブルによって流れてしまいました。代わりにスコールさんがバラしたわけですが、思ったより精神ダメージが入らなかったようで。なんでだろなぁ……。

 飛鳥のメンタル事情については、また次の話で少し掴めるかと思います。
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