芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 Gジェネエターナルにライフリの参戦が確定しましたね。いやー、めでたいめでたい。
 で、芋者は?

 


たとえ残酷な結末でも

「へー、思ったよりしっかりしてるんだな竹刀って。これ振ってると剣の腕が磨けるのも頷ける」

 

 

「だろ?お前も一応剣使うし、やってみたらどうだ?」

 

 

 秘匿艦の一件からそう日が経たない頃、俺は運動会で優勝を掻っ攫ったことにより一夏と同室になっていた。シャルル(シャルロット)の時とは違い、初めての同性ルームメイトということで一夏は喜んで受け入れていた。

 俺も最初の内は特に不満はなかったのだが、今となっては以前まで使っていた部屋が恋しい。なんせ、この部屋ヒロインズが押しかけてくるのでトラブルが絶えないのだ。俺が同居人になってからもいくつのドアが犠牲になったことか。

 

 

「遠慮しとく。今のスタイルと型のととのった剣術とじゃ相性悪そうだしな」

 

 

「そうかぁ?飛鳥なら上手くやれると思うんだけどな。急に蹴り出さないか不安ではあるけど」

 

 

「お前らの俺の足癖に対する信頼はなんなんだよ?」

 

 

「ISであんな蹴りするヤツをお前以外に知らない」

 

 

 クソッ、反論できねぇ……!確かにカルキトラを使う上で蹴り方には人一倍拘っているが、それが恐らくは初見の相手(スコール)にまで見破られるほどクセがあるのか?

 どっちにしろ、俺=蹴り技というイメージはもう崩しようがないのだろう。

 

 

「……専用機がコイツ(芋者)じゃなかったらな」

 

 

「その愚痴も久々だな。二学期に入ってからは一度も聞いてないぞ」

 

 

 知っての通り、芋者と白式の相性は最悪に近い。一学期の頃は武装そのままに何度も挑んでは負け、その度に転生特典が芋者であったことへの不満を口にしていた。

 それが抑えられていたのは、やはり新しく武装を追加してきていることが要因だろう。現時点で対零落白夜への一つの結論となる武装構成も頭にはある。

 もっとも、シルエット含めて未だに正式採用する武装は決まってないのだが。夏休み中にいくつか決めると言っていた頃が懐かしい。

 

 

「使い手にしかわからない悩みってものがあるんだよ。自分には無い、なんて言わせないぞ?」

 

 

「いや、燃費悪いのは勘弁してほしいと思ってるけどさ。それでも、俺の憧れた力でもあるんだ。絶対に使いこなしてみせる」

 

 

「…………憧れ、ねぇ」

 

 

 そのフレーズには考えさせられるものがあった。一夏のそれは姉である織斑千冬に対してのもの。唯一の家族にして世界最強のIS操縦者と同じ単一仕様を持った機体に乗れるなど、嬉しくないわけがない。もし他にISが用意されたとしても、一夏は間違いなく白式を取るだろう。

 対して俺の専用機である芋者は、別に望んだ力ではない。だが、ISに乗れるという一点では原作主人公やそのヒロイン達と関われるのはそれだけでも十分だとは思う。

 

 しかし時折思う。俺にもしこの転生特典がなかったら?いや、そもそもISなんてものがなかったら(・・・・・・・・・・・・・・・・)、俺は今頃家族と平穏な毎日を過ごせていたのではないだろうか。両親がいなくなったのがISのせいだと知ってからは、余計にその考えが浮かぶようになった。

 

 

「な、なんだよ。確かにちょっとカッコつけたなとは思うけど……」

 

 

「いや、俺も同じ立場だったらなんて言ってただろうな、と」

 

 

 確かに芋者は俺が心から欲しがった機体ではない。だが、これがデスティニーやその他チート機体だったとして、俺はその力を快く受け入れられていたのかと言われれば、多分違う。いくら憧れた力でも、失ったものばかりはどうにもならない。むしろ憧れが強い分、その力の虚しさに俺はより苦しんだのではないだろうか。

 

 

「……あー、ダメだ。想像できない。そもそも俺に姉なんていないからな」

 

 

「なんだよそれ。でも立場が逆ってことは、飛鳥が白式乗って、俺がジャスティス使うってことになるのか?…………なんか、お前の方が零落白夜使いこなしそうでイヤだな」

 

 

「冗談よせ、いくら一撃必殺でも剣一本だけとか。だったらまだジャスティスの方がマシだわ」

 

 

「贅沢なヤツだな……。まぁ、俺も雪羅の他に何か武器欲しいとは思ってるけど」

 

 

 確かに俺のISが芋者であることは今更変えようがない。しかし、憧れがないわけではなかった。俺の知る限り、あのシン・アスカが、初めてキラ・ヤマトと肩を並べて戦うことができた機体。その出演作品の後半では真の愛機が大暴れもしたが、やはり新旧主人公が連携して戦う姿も俺には印象に残った。

 しかし、それだけではない。俺がここまで強くなろうとする理由はまだ存在する。その一つは……。

 

 

「…………なぁ、一夏。俺たちが初めて会った時のこと覚えてるか?初対面でケンカだぞ?」

 

 

「急に思い出話かよ……。でも最初は俺、何も出来ずに負けたよな。そこから何度も挑んでようやく相打ちだ」

 

 

「相打ちなわけあるか。あの時最後に立ってたのはお前だよ」

 

 

「いや、アレは弾や鈴が肩を貸してくれたからであって、俺は別に……」

 

 

俺には誰もいなかった(・・・・・・・・・・)。その差だよ」

 

 

 一夏と最後にケンカをしたあの日、互いの攻撃に倒れ、どちらも続きができるような状態じゃなかった。だが、そんな一夏の周りには心配するヤツが駆け寄って、俺には誰も手を差し伸べなかった。

 

 ……ただ一人(・・・・)を除いて。

 

 

「……なぁ、一夏。もしもの話だ。もし俺が敵に回ったとして、お前は俺を倒せるか(・・・・・・・・・)?」

 

 

「…………なにバカなこと聞いてんだよ。そんなことあるわけ」

 

 

「答えろ」

 

 

 一夏の瞳をまっすぐ見つめる。この先、ないとは言えない可能性の話。俺が一夏と再び死力を尽くして戦った果てで、こいつは何を選択するのか。それが知りたい。

 

 

「……俺と戦うほどの状況ってことは、お前にも事情があるんだろ。でも、それでも俺は勝ちに行くぞ。俺にも譲れないものはある」

 

 

「…………そうか」

 

 

「で、勝ったあとはお前を連れて皆のところへ戻る!それで解決だろ?」

 

 

「…………お前に聞いた俺がバカだったよ」

 

 

 人が真剣に悩んでるっていうのに、能天気な答え返しやがって。…………だから勝ちたいと思ったんだ。このどこまでも前向きな野郎に。

 

 

「それに、今のところ模擬戦じゃ俺の方が勝率上だしな?」

 

 

「オイ言いやがったな?今度という今度は絶対負かす。さっきの発言が黒歴史になるぐらい叩きのめしてやるからな」

 

 

「上等だ!いつでも受けて立つぜ」

 

 

 まぁ、これで悩みの種は消えたな。……ようやくだ。あとは、受け入れるだけだ。どんな残酷な真実でも。

 

 

 

 

 

「む、織斑か」

 

 

「あれ、千冬ねイダァッ!?お、織斑先生、どうしてここに……?」

 

 

 飛鳥が用事があるといって部屋を出たあと、どこかで時間を潰そうと出かけた時のこと。休日ということもあって人気のない図書室にいた意外な人物に驚き、咄嗟の姉呼びで出席簿の一撃を貰う。それだけ一夏にとって、千冬が本を読むといった行為は新鮮だったのだろう。

 

 

「私とて本は読む。剣を握るだけでは教師にはなれんよ」

 

 

「それもそうか……って、その本、飛鳥も持ってたヤツ?」

 

 

 千冬の手に握られていた『E.L.S.MAN(エルスマン)』というSFジャンルの本に目が行く。今まで一緒に暮らしてきた姉に、そのような趣味があったとは。

 

 

「……以前、進藤にいくつか薦められたのでな。内容は知ってるか?」

 

 

「えっと、確か宇宙から金属生命体(?)がやってきて、地球の人と衝突するけど最後には分かり合えた、って話だったような……あと主人公がその金属生命体と一体化するとか」

 

 

「概ねそうだな。こういった創作物には非現実的な要素が多い」

 

 

 それはそうだろう。特にSFなんかその筆頭だ。しかし、流石は姉か。そう言いたげな一夏にこのような補足をした。

 

 

「私が言っているのは、得体の知れない相手に歩み寄り、理解しようとする精神性の話だ。もし現実で人類が同じ局面に立たされても、取る行動は排除の一択だ。……何かを守るためであれば、それも間違いとは言えないがな」

 

 

「……そうかもしれないけど、戦わなくて済むならそれが一番だろ?相手に必ずしも悪気があるわけじゃない。話し合って解決するならそれに越したことはないと思う」

 

 

 千冬の意見が間違っているとは言わない。現に、一度飛鳥を助けたフリーダムに剣を向けた。何かを守るということは、何かを傷つけることだということを一夏は理解している。

 その上で、一夏は反論をした。もし戦うだけで相手のことを何も知ろうとしなかったのであれば、今自分の周りにいる人はもっと少なかったはずだ。その数だけ面倒ごとが増えようと、一夏はそのどれもに手を伸ばすだろう。

 

 

「そうか…………そういえば一夏、飛鳥と同室で過ごしているようだが」

 

 

「あぁ、うまくやれてるよ。やっぱり男同士だと、気にすること少なくて助かる」

 

 

 名前呼びに切り替えたということは、教師としてではなく一人の姉として気掛かりなのだろうか。

 

 

「あ、でも、なんかアイツらしくない弱音を聞いたりはしたぞ。千冬姉は、何か知らないか?」

 

 

 

「……………………」

 

 

「千冬姉?」

 

 

 沈黙。頼れるはずの姉が口を開かない。それではまるで、本当に飛鳥に何か良からぬことがあるようではないか。一夏の不安げな声を耳にし、千冬はようやく言葉を紡いだ。

 

 

「一夏。いざとなった時、お前は飛鳥を倒せるか?」

 

 

「……飛鳥にも同じこと聞かれたぞ」

 

 

「ほう?どう答えた」

 

 

「敵になるなら倒す。そのあとは、飛鳥を連れて皆のところへ戻る」

 

 

 その真っ直ぐな決意は一夏の目にも表れていた。誰も見捨てはしない、何があっても守るという精神に揺らぎはない。

 だが、次の問いに一夏は答えを出せなかった。

 

 

「なら、世界全てを敵に回すことはできるか(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 

「……え?」

 

 

「文字通り各国全てだ。もちろん、代表クラスのIS操縦者も駆り出されるだろう」

 

 

「ま、待てよ千冬姉、世界だなんて……飛鳥とは、関係ないだろ……?なんで、そんな……」

 

 

「それこそ、この本のように突拍子もない話だな。しかし、その可能性がないとは言い切れん。飛鳥が世界の敵となる未来は。……一夏、アイツにはその選択をするだけの動機(・・)があることを覚えておけ」

 

 

「……なんなんだよ、それ」

 

 

 ただ冷酷に告げられたその言葉を前に、一夏は声を震わせながら問いかける。姉の言ったことはただの憶測に過ぎない。しかし、悪い冗談を好むような人物でないことも確かだ。どんな形であれ、飛鳥がそのような理不尽に巻き込まれるという事実に、一夏は怒りと疑問を抱いていた。

 

 この時、一夏は初めて知った。飛鳥の奥底にあった闇を、その根源が『何』によって形作られたものなのかを。

 

 

「アイツの家族は、ISとそれを支持する世界に奪われた」

 

 

 

 

 

「あら、飛鳥くん。生徒会室に来るなんて珍しいじゃない?生徒会に入りたいのなら、特別に枠を空けてあげても」

 

 

「前振りはいいです。俺がわざわざ来たってことは、どういう要件かわかっているでしょうに」

 

 

 人を揶揄うような笑顔から、一瞬で真顔に切り替わる楯無さん。普段はおちゃらけてるが、人が真剣な時はそれに応えるだけの誠実さはある。

 

 

「……一応、聞いておくわね。後悔はしない?」

 

 

「…………大丈夫です。聞かせてください、楯無さん」

 

 

 そのことについて考えない日はなかった。でも、自分ではどうすることもできないからと、ずっと目を逸らしてた。

 だからこそ、今は知らなければならない。そうしないと、文字通り顔向けできないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の……行方不明になってる妹について。なにかわかりましたか?」




 今回は回収しなきゃいけない要素ありすぎてマジで難産でした。具体的には
・恐らく最後となるであろう日常回
・飛鳥の心理描写(一部)
・千冬から一夏への警告
・行方不明となっている妹への言及etc
 ……特に千冬さんと一夏の描写はもっと早くやるつもりが、こんなギリギリのタイミングになってしまった。
 行方不明の妹については、『いつか向き合うために』の回で飛鳥が楯無さんに頼んだ依頼がその捜索でした。その結果については次回をお楽しみに。

 最後に千冬さんが読んでいた本は00ネタなのですが、実はSEED系の小ネタにもなっております。千冬さんのcvって、ミリアリアと同じなんですよね。
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