芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 京都編前の箸休めとして、展開のスピード早くした弊害で入れるタイミングを逃したネタをぶち込みました。三本立てです。

 


番外編:料理とEOSとマスコット

【セシリアクッキング 〜飛鳥の場合〜】

 

 

「というわけで、飛鳥さん。よろしくお願いします!」

 

 

 発端は数日前に遡る。あれはそう、IS学園の屋上で一年の専用機持ちとお昼を食べていた時。箒の手作り弁当を始めとし、一夏がそれぞれの料理の腕を賞賛したのが原因と思われる。

 そして、そんな一夏が唯一口を濁した人物こそがセシリア・オルコットなのだ。料理を芸術作品か何かと勘違いしているのか、見た目だけはいい。だが肝心の味の方は…………。

 

 

「……わかった。とりあえず中に入れよ」

 

 

 何故セシリアが俺の元へ来たのか。それはもちろん、一夏が俺のある料理を褒めちぎりやがったからである。

 最初、セシリアは一夏に弁当を用意した箒の元へ向かったらしいのだが、翌日その箒は体調を崩して休み。続いてシャルロットのところにも教えを請いに行ったらしいのだが、そのシャルロットも次の日には休み、同室だったラウラも同様だ。

 ……状況からみても、セシリアが原因なのは間違いないだろう。とりあえず、レシピ通りに作らせれば事故は起こらないと信じよう。つきっきりで見てやらねば。俺の健康のためにも。

 

 

「材料と手間考えたら、やっぱオムレツになるか」

 

 

「オムレット!一夏さんもお褒めになるほどの!是非お願いしますわ!」

 

 

 卵とバターと……ソースは出来に合わせて調合するとしよう。部屋に備え付けてある調理台に材料とボウルを乗せていく。

 このオムレツは料理歴が浅い頃からずっと作っているもので、今となっては得意料理の一つだ。これ一つできればオムライスやスクランブルエッグなどにも派生できるので、我ながら良いチョイスだと思う。

 上手く仕上げるには多少慣れが必要だが、材料も少ないしセシリア一人でも……。

 

 

「まずは、油ならしからだな」

 

 

「はい!ならし、ですわね……!」

 

 

「すいませんセシリアさん、楽器のように鳴らすって意味じゃないんでその持ち方やめてくれます?」

 

 

 ……やっぱり一緒にやった方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

「まぁ、綺麗に纏まりましたわね」

 

 

「まぁ初めてだし、このレベル目指せとは言わないさ。ある程度は誤魔化せるから、多少崩れても問題はない」

 

 

 先にお手本を見せておく。ここら辺の工程はスピードが重要なので、作る人の腕に依存する。出来を良くするには、セシリア自身が練度を高める必要があるのだ。

 

 

「じゃあ、やってみて。隣でソース作ってるからさ」

 

 

「はい!えっと、こう……でしたわね」

 

 

 覚束ない手つきだが、最初はそんなものだろう。流石に俺並みの出来ではなかったが、初心者にしてはかなり形のよいオムレツが作られた。

 

 

「やるなぁ、セシリア。これなら一夏に出しても恥ずかしくないんじゃないか?」

 

 

「そそ、そうですの!?飛鳥さんのお墨付きならば、間違いないですわね!」

 

 

「あとは、ソースがまだだけど(・・・・・・・・・)……ん?電話か。悪い、ちょっと待っててくれ」

 

 

 着信音がなったため、調理場から離れる。奥の方にある充電コードに繋いでいたため、一旦取り外して電話に出る。

 

 

「もしもし、飛鳥です。あ、吉良さん。今度会えないか、ですって?そうですね、外出できるのは……」

 

 

「…………彩りが足りませんわね」

 

 

 

 

 

「悪い待たせた……って、もうソースかけたのか?」

 

 

「はい、あとはソースだけと仰っていましたので!」

 

 

「マジか、まだ完成してなかったんだけど……なんか美味そうに見えるな?」

 

 

 ソース作りは途中だったのだが、オムレツにかけられたソレは輝いて見えた。別にあの段階でも味はしっかりしてるのだが……。

 

 

「……まぁ、とりあえず食べてみるか」

 

 

「えぇ、どうぞ」

 

 

 いつもとは違うソースのかかったオムレツ。パッと見は問題ないようなので、俺はなんの疑いもなく口に運んだ。

 俺が気をつけていたのは、オムレツ本体がちゃんとできているかどうか。肝心のソースは俺一人でやるつもりだったので、そちらには注意が向いてなかったのだろう。

 セシリアがそのソースに手を加えてしまっていたとわかった時には、すでにソースはオムレツごと俺の喉を通ってしまっていた。

 

 

「飛鳥まで休み!?何かの流行り病じゃないだろうな……?」

 

 

「いえ、昨晩はそのような様子では……どちらにせよ、お大事にしてほしいですわね」

 

 

 それからしばらくの間、俺はソースをかけないままオムレツを食べるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【候補その……いや論外】

 

 

「う、お、おぉ、りゃあ……ッ!」

 

 

「むっ!?やるな、飛鳥……!ヤンキーニンジャは伊達じゃないか!」

 

 

「B級映画でも聞かねぇよそんなトンチキ単語……!」

 

 

 ゴーレムⅢの襲撃により、専用機が深刻なダメージを受けたとして突如行われた特別授業。EOS(イオス)と呼ばれるパワードスーツを使った模擬戦が今まさに行われている。

 EOSとは、言ってしまえばISの劣化版。総重量はISの方が上だが、PICと呼ばれる反重力システムやパワーアシストなどといった機能はEOSにはないため、人一人の力のみで鉄塊を動かさなければならない。しかもバッテリーが持つのも十数分が限界と使い勝手が悪く、災害時や平和維持活動ぐらいにしか運用されていない。

 常であればISを自分の身体の一部のように扱える代表候補生といえどEOSの性能の低さには苦戦しており、唯一まともに動かせていたのは軍で似たような経験をしたらしいラウラのみ。

 

 さて、そんなラウラが模擬戦で無双するのは当然ではあるのだが、最後に残った一人は想定以上の粘りを披露していた。

 

 

「アイツ、なんであんなに動けてるんだよ……?」

 

 

「ラウラとはまた違う動きというか……力任せ、ではないか?」

 

 

「……納得はいきませんが、否定しきれませんわね」

 

 

「うん、まぁ、飛鳥だし……」

 

 

「そのうち蹴り技でも披露しそうね」

 

 

 ラウラが技術で動かしているなら、俺は純粋なパワーを持ってEOSを無理矢理動かしていた。無論、ラウラと俺では体力の消費の差はかなり多く、俺は血管浮き出しながら必死に対応していた。

 

 

「ハァッ!」

 

 

「ぐっ!……ぬぅおらぁッ!」

 

 

「なにっ!?」

 

 

 その重量故に攻撃しようにも受けようにもリスクの高いEOSだが、どのような形であれそのデメリットをカバーしているからこそ俺とラウラの戦いは続いている。ペイント弾を直撃させることが勝利条件ではあるのだが、お互い雑に撃っても防がれるのは明白なのでこうして格闘戦で隙を作るしかない。

 機動力の差でラウラは先手を取りやすい。一方、攻撃されてもその衝撃に無理矢理抗い、その後先を狩ろうと後手で立ち回るのが俺の戦法になりつつある。間一髪で逃げられ続けているが、向こうも大きく動いている以上体力は削られている。

 

 

「はぁ、はぁっ、流石の、格闘能力だな……」

 

 

「そりゃ、どうも……ぜぇー、ふー」

 

 

 互角の勝負、双方の額には汗が滴っている。これ以上の長期戦はできない。そう判断して、次の一手で勝負に出た。

 

 

「行くぞ、飛鳥!」

 

 

「来や、がれ……ッ!」

 

 

 疲れを感じさせないスムーズな足運びでこちらに向かってくるラウラ。こちらも重い腕を上げて、迎撃の構えを取る。

 足を上げることはできない、が。接地した状態ならば脚部による攻撃も可能。それはラウラが他のヤツらに足払いを仕掛けたことで証明済み。であるのならば……!

 

 

「フッ!」

 

 

「ぐぁっ!?い、EOSを纏ってその速度とは……!」

 

 

 間合いギリギリで潜り込むように上半身を下げる……と、見せかけて、本命は軽く腰を落とした状態での小足蹴り。格ゲーでよく見る弱キック、といえばわかりやすいだろうか。

 普段蹴りを主軸に戦うことから、EOSによって制限された動きでもなんとか繰り出すことができた。実際ラウラも警戒はしていたのだが、想定よりも速く飛んできたため対応が遅れ、脚部に当たってしまったことで体制を崩した。

 その隙を逃さず、俺は勝利条件であるペイント弾の直撃を狙うべく、サブマシンガンを構える。放たれた弾丸は見事に直撃した。

 

 

「……まさか、食らう前提で動いていたとは」

 

 

「お前が先程からやっていた戦術を真似ただけだ。紙一重だったがな……」

 

 

 ペイントによって汚れたのは、俺の方だった。確かにペイント弾を確実に当てるには、格闘戦によって体制を崩してからが確実だが、そこから銃を構えるにはワンテンポ遅れる。ラウラは突撃こそ行ったが、攻撃が目的ではなく、敢えて俺に行動させる(・・・・・・・・・・)ことで射撃に移る瞬間を狙って、ダメージ覚悟でサブマシンガンを直接当てにいったのだ。

 攻撃に移行する時、勝利を確信した時に生じる油断が、勝負を分けた。

 

 

「流石だな、ボーディッヒ。そして……進藤、お前は力技に頼るな。少しは適応する努力をしろ」

 

 

「はい……今後はもっと筋トレに励みます」

 

 

「方向性を変えろと言っている!!」

 

 

 疲れ切った身体に出席簿はキツかったです。話は変わるが、EOSの稼働記録はIS委員会にも共有されることになっており、そこで飛鳥の記録を見たものはあまりにも強引な動きに揃って頭を抱えたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【フェイス社公認マスコットキャラクター】

 

 

「飛鳥くん、バイトに興味はあるかね?」

 

 

 キィノ・レバードからの突然の連絡。普通に生活する分にはお金に困ってないのだが、アロンダイトを借りた件もある。二つ返事で了承して、俺はフェイス社を訪れた。

 

 

「今日は説明だけ、と聞いてますけど、一体何をしろと?」

 

 

「……最初は我が社の装備テストも考えていたのだが、それでは面白くないだろう、とウチのスポンサーが口出ししてね。そこで用意されたのが……」

 

 

 キィノ・レバードがシートを外すと、そこにはなんとデスティニー……のSDバージョンのようなきぐるみが用意されていた。

 

 

「…………え、なんですコレ?」

 

 

「我が社のマスコットキャラ『デスティニーくん』だ。まずは社内のみで広め、従業員達に癒やしを供給する……らしい」

 

 

 社長なのに説明から困惑が隠しきれてない。誰が発案したかは知らないが、こんなトンチキめいた案件を押し付けられるとは。意外と苦労人なのかもしれない。

 

 

「つまり君にやってもらいたいのは、エントランスでこのきぐるみを着けて社員との交流を行うことで、マスコットとしての有用性を確かめることだ。……私が言うのもなんだが、ムリに受ける必要はないぞ?」

 

 

「社長がそれ言っちゃいますか……まぁ、やりますけど」

 

 

 レバード社長から本気か?という目で見られる。ぶっちゃけ装備テストの方がIS方面で有用なデータが得られるとは思うのだが、IS学園に通う以上こういうバイトを行う機会は滅多にないだろう。知見を増やす、という意味でも、俺はこの仕事を引き受けることにした。

 

 

 

 

 

「なんだ、今日は騒がしいな?」

 

 

 コンパスから訪れた明日葉が目にしたのは、エントランスの一箇所に集まる社員の群れ。目を凝らすと、どうやら着ぐるみのようなものが中心にあるようで……。

 

 

「それにしても、なんだこのデザイン?新しいISのモデルデータとか?」

 

 

「いやいや、そんなわけないだろ。俺ら何も聞いてないし」

 

 

「まぁ、間違いなく機密データの一つだろうからな。こんなところで見せびらかすわけない。……となると、本当になんなんだ?」

 

 

 エントランスで活動を始めたデスティニーくんは、癒やしではなく疑問の種を振り撒く形で社員の注目を集めていた。明日葉も人混みを掻き分けて一目見ようとすると、デスティニーくんと目が会った。

 

 

「こ、これは……!?れ、レバード社長は何を考えて……」

 

 

「(あ、明日葉さん!ちょっ、ちょっと着いてきてください……!)」

 

 

「えっ、ま、まさかお前……?」

 

 

 小声で喋ったかと思えば、エントランスを抜け出すデスティニーくん。その後をできるだけ目立たぬよう追ってきた明日葉。他に人がいないこを確認してデスティニーくんが頭を外すと、中から飛鳥の顔が見える。

 

 

「その、何やってるんだ?」

 

 

「バイトです。癒やし目的のマスコット宣伝のはずが、ただの考察大会になっちゃってましたけどね」

 

 

「…………まぁ、デスティニーは一般にはあまり知られていないからな」

 

 

 第一世代、それも表舞台での露出がほとんどないデスティニーの知名度はほぼ皆無であり、マスコットとして広めるには若干ムリがあったようだ。まぁ、元となるデザインの格好良さやデフォルメによる可愛さは伝わらなかったわけではないようだが。

 

 

「そうか、ならある程度の知名度(・・・・・・・・)があれば良いんだな?」

 

 

「まぁ、その方が親しみやすいとは思いますけど……今になってデスティニー公表しても注目集まりますかね?」

 

 

「難しいだろうな。ところで飛鳥、お前イモータル・ジャスティスを略すとしたら、なんて言う?」

 

 

「え?……芋者ですけど、それが何か?」

 

 

「…………まぁ、妥当なラインか。それじゃ、お互い業務頑張ろうな」

 

 

「あ、はい……なんだったんだ?」

 

 

 そうしてバイトを終えてから数日が経った頃だった。朝、IS学園の教室は少々騒がしくなっていた。

 

 

「おはよう。どうしたんだ?鈴や簪まで集まって」

 

 

「お、飛鳥じゃないか!これ見てみろよ!」

 

 

「はぁ、一体なんなん…………ん?えっ?」

 

 

 一夏の手に握られていたのは、イモータル・ジャスティス……のSDバージョンのキーホルダー。いやマジでなにそれ?何も聞かされてないんだけど。

 

 

「いや、戸高さんが、試作品だけどいるかい?って聞いてきたからさ。せっかくだし貰ったんだよ。なんかマスコットキャラになるらしいぜ。この……イモジャくん、だったか?」

 

 

「どうしよう、過去最高にこの専用機(イモータル・ジャスティス)から降りたくなってきた」

 

 

 これ絶対明日葉さんの発案だろ。俺の芋者呼びとマスコットキャラの両方の件把握してるのその人しかいないし。抗議しようにも、イモータル・ジャスティスは俺だけのものではない。開発した以上、どう扱うかはコンパス側に権利があるのだ。

 しかも何故かウケが良かったらしく、イモジャくんは見事に一つのマスコットキャラとして確立してしまったとか。

 

 

 

 

 

『うーむ、行けると思ったのだがね。デスティニーくん』

 

 

「そもそも、何故マスコットキャラなど……」

 

 

明確なシンボル(・・・・・・・)というものは、それだけ人の記憶に残りやすい。その臨床的実験という側面もあるのだよ』

 

 

「……それ以外の理由は?」

 

 

『あの洗練されたデザインを埋もれさせるのはもったいないとは思わないかい?』

 

 

「なるほど、見せびらかしたかったと」

 

 

 その日の夜、キィノ・レバードは人生で初めてヤケ酒をした。




 前回の話が嘘のようなギャグ回ラッシュ。まぁ、今書かないと完結後に持ち越すしかなかったのでね……。
 EOSの重さは力技でどうこうできるのか問題はまぁ、ギャグ補正やご都合主義ということで。

 次回から本編再開します。京都編、実は個人的に好きな話でもあります。アニメでは少し抑えられたのが惜しいと思うぐらいには。
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