芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ズゴックとキャバリアー買えませんでした……。一方、芋者は5個ぐらい積まれてました。

 


ERROR CASE

「またここか……」

 

 

 気がつくと、目の前には名も無き墓石が一つ。いつか夢で見た光景が、そっくりそのまま再現されていた。相変わらず墓の方向には見覚えのある景色が余すことなく広がり、後方には暗黒空間。

 俺は墓の前に座り込み、その表面にそっと触れた。

 

 

「……この墓は、そういうことだったんだろうな」

 

 

 心の奥底では気づいていた。けど、その現実を受け入れられず、ずっと名前が入っていなかった。この墓は誰の為の物だったのか。今ならハッキリとわかる。

 

 

「真由……俺、自分で思ってるより最低な人間なんだろうな。お前のこと、知ろうともしないで、見殺しにして……最低の兄ちゃんだ」

 

 

 墓石は何も答えない。そもそも死人に口はない。返ってこないとわかっていながらも喋りかけるのは自責の念か、それとも自己満足のためか。

 

 

「だから、もう見てみぬフリはしない。お前の分まで生きて、たくさんの人、助けられるようになるから。もしあの世で待ってるなら、文句はその時聞かせてくれ。どんな恨み言でも、ちゃんと聞くから……」

 

 

 立ち上がり、歩を進める。今度の行き先は何も見えない道ではなく、墓を超えた先にある懐かしい景色。俺の思い出から構成されたであろう街並みへ。

 

 その次の瞬間、首根っこを掴まれ、ものすごい力で引っ張られる。あまりの勢いに尻餅をついてしまい、何事かと顔を上げると、そこにはデジャブを感じる平手打ちが。

 

 

 

 

 

「ッ!?……なんで、逆の道でもダメなんだよ」

 

 

 目が覚めると同時に、ビンタされたであろう箇所を咄嗟に抑える。今度はどこも怪我してないため痛みが伴うことはなかったが、ショックを受けたことは確かだ。

 しかし、下手人がいるとわかった以上、また一瞬だったとはいえその人物を認識することはできた。やはり髪色から服まで赤が目立つ女性だった。表情は少ししか伺えなかったが、怒りや悲しみの混じった複雑な顔をしていた。

 ……アイツは、俺のなんなのだろうか。過去の記憶を遡ろうと、赤い髪を持った知り合いは五反田兄妹しか心当たりがない。そんな疑問を抱えたまま、俺は着替えていつものように教室へと向かった。

 

 

 

 

 

「う、ぐあぁぁぁッ!!?」

 

 

 とてつもないスピードで飛ばされ、壁に激突する一夏。もちろん、それを行ったのはこの俺、進藤飛鳥とイモータル・ジャスティス。また模擬戦か、と飽きられると思うが、いつもとは違うところが一つある。

 

 今回、俺は本気(・・)で勝ちを狙っている。

 

 

「今ので70%前後は削れたか?これならフル稼働しても持ちそうだな」

 

 

「はぁ、はぁっ……今までで、一番キツいぞ。なんて手数だよ……!」

 

 

 今回のイモータル・ジャスティスは、とんでもない武装構成となっている。

 イージスシルエット×シュピーゲルブレード×デモリッションナイフ&バスタードチョッパー。この四つを主軸とした超近接戦闘、カルキトラ含め合計10本の刃の前では、いくら一夏といえど手も足も出ず、一方的にダメージを食らう始末。

 少々やりすぎではないか?いや、ここまでやっても油断はできない。なんせ、向こうは一撃当てれば勝ちの零落白夜。いくら手数で勝ろうと、何かの拍子でそれら全てが躱されてしまえば、それで一貫の終わり。零落白夜を相手に勝つということは、無傷の完全勝利(・・・・)を目指すと同義なのだ。

 

 

「……すごい、組み込んだばかりなのに、もう使いこなしてる」

 

 

「例のマルチロックオンシステムか。クローアームの動きが良くなっていると思えば、そういうカラクリか……!」

 

 

「それもあるけど、武装の扱いも適切だよ。間合いも隙も完全に把握してるから攻撃が全然途切れてない」

 

 

「攻撃は最大の防御、ってことね。アイツらしいというか、なんというか」

 

 

「しかし、機体の汎用性を欠いてまで一夏さんを倒そうとするなんて……」

 

 

「飛鳥にとって、一夏はそれだけの相手だということだ。一夏の太刀筋は悪くはない。……だが、飛鳥はその上を行っている」

 

 

 アリーナに集まっていた専用機持ちは、手に汗握りながら男性操縦者同士の模擬戦を見に来ている。どちらの表情にも笑みはない。ただひたすらに相手を倒すという真剣な眼差しのみが互いに向けられていた。

 

 

「ほえー、相も変わらずよくやるッスねぇ」

 

 

「元気があっていいじゃねぇか。京都行った時はアイツ一人に任せようぜ」

 

 

 中にはマイペースを崩さぬ者もいる。フォルテもダリルも、飛鳥とは一戦交えたことがあるからか、この模擬戦には興味があるようだ。

 

 

「…………」

 

 

「珍しく浮かない顔だな、更織」

 

 

「……織斑先生」

 

 

 さらに離れたところでは、更織楯無と織斑千冬が飛鳥たちを見下ろしていた。

 

 

「まだまだ甘いところはあるが、アイツらは確実に成長している。私たちの想像以上にな」

 

 

「それは、そうですけど……」

 

 

「……言いたいことはわかる。だが、心に負った傷とどう向き合うかは当人次第だ。この戦いも、一つの区切りのつもりなのだろう」

 

 

 千冬の推測は概ね合っている。IS学園の行事の一つには、京都への修学旅行といった普通の学校でも行うようなものもある。その前準備として、専用機持ち達が総出で下見に行くことになった。

 ちょっとした小旅行にはなるが、それには真の目的がある。亡国企業、その拠点の一つに強襲を仕掛け、制圧する。今まで襲撃を受けるがままだったが、今度はこちらから打って出ることになったのだ。それ相応の戦力も投入されることになっているが、当然向こうもやられるだけではないだろう。まだ見ぬ伏兵がいる可能性だってゼロではないのだ。

 

 だからこそ、その作戦の前に行えるであろう最後の模擬戦は、飛鳥も持てる全てを持って一夏に挑んでいる。どこまで通用するのか、限界はどこにあるのか。その答えを見つけ出すために。

 一夏もそれに呼応するように、今まで以上に緊張感を持って飛鳥と対峙している。互いが互いを格上だと認めている奇妙な関係だからこそ、二人の負けん気に火がついた。

 

 

「ハアァァァッ!!」

 

 

「来るかっ!ドラグーン!!」

 

 

 ジャスティスの背部、イージスシルエットから四つのクローアームが同時射出され、その一つ一つが自我を持っているかのように複雑な軌道で一夏を襲う。

 今のイージスシルエットには更織簪の手によりマルチロックオンシステムが組み込まれており、目標となる着弾地点を入力さえすれば、あとは命令一つで飛ばせるようになった。完全マニュアル操作の大部分がオートマチックとなるならば、動かしやすさは段違いとなるだろう。

 その簡易さによって攻撃スピードにも補正の乗った四つの爪を、一夏は避ける、切り払うなどでなんとか対応する。そして次の一手、飛鳥は手に持つ二振りの実体剣で、ドラグーンを切り抜けたばかりの一夏に襲いかかる。

 しかし、それは先程すでに見た攻撃方法。ドラグーンを防ぐのは容易ではないため隙自体は生じているが、剣による防御が間に合わないわけじゃない。防御ができるのならば、カウンターを仕掛けることだってできる。雪羅の備わった左手が開いては閉じている。

 

 対して、目の前の男(進藤飛鳥)は慢心など一切していない。確かに攻撃の方法は先程と同じだ。だが、武器の扱い一つで求められる対応は大幅に変わる。

 

 

(!?アイツ、もう一つの剣はどこに(・・・・・・・・・・)……!)

 

 

 防御体制に入るべく、飛鳥の動きを捉えようとした一夏の目に最初に入ったのは、空となっていた飛鳥の左手。そして、飛鳥の姿勢は大きくのけ反っており、右手とそこに握られている武器は隠されている。

 攻撃の来る方向は構えでわかった。だが武器がわからない以上、間合いも手数も威力も未知数。逃げることはできない。そもそも、それができたら今こうして身を固めようとはしていない。

 

 ……とは言ったものの、結果として一夏の予想は当たっていた(・・・・・・)。飛鳥はドラグーンを対処された時点で、デモリッションナイフとバスタードチョッパーによる追撃を決めていたのだ。一夏が何かしらの対抗策を捻り出してくると考えた上で。攻撃方法は片手による武器の振り下ろし。先程も言ったが、デモリッションナイフとバスタードチョッパーによる同時攻撃だ。

 そう、この二本の実体剣には合体機構があり、組み合わされば当然長さも重さも増える。一夏にとって想定外の一撃が、白式を空中から地上へと叩き落とした。

 

 

「がはっ……!?」

 

 

「まだまだぁッ!!」

 

 

 二つの武器を統合させたことで空いた手には、新しくビームブーメランが握られ、飛鳥は地上に降下しながらそれを一夏目掛けて投げつける。

 当然、一夏は防御、あるいは回避を試みるが、その攻撃の違和感に引っかかり、そのどちらも行えなかった。ビームブーメランは、一夏の頭一つ分上を通った。当てることが目的ではなかったのである。頭上を通ったのは、そちらに逃げても当たるように。逆に言えば、そちらの方向に逃がさないため(・・・・・・・・・・・・・・)。一夏を再び空中に飛ばさぬよう仕掛けられた罠だった。

 

 

「一手、遅れたなッ!」

 

 

 当然、その間にも飛鳥は動いていた。スラスターを全力で噴かしてさらに攻撃を仕掛ける。今度の攻撃は…………『カルキトラ』だ。

 

 

(そう来るなら……!)

 

 

 一夏は一瞬の内に精神を落ち着かせ、脱力する。実体剣ばかりで攻撃してきた相手が、ビーム兵装による攻撃を仕掛けてきたのだ。そこに零落白夜を合わせれば、それで勝負が決まる。

 しかし、あの飛鳥がそんな迂闊な真似をするだろうか?きっと裏がある。そう見通して、一夏は篠ノ之流古武術裏奥義の一つ『零拍子』を行うことにした。相手が攻撃するよりも早く、自分が攻撃を振るう。先手を取ることに特化させ、飛鳥が何か仕掛ける前に決着をつけるのが最善と判断した。

 飛鳥が蹴りの姿勢に入る。それと同時に、一夏は手に持つ雪片弐型を一瞬の内に振り抜いた。

 

 その一閃は……届いていなかった。

 

 

「な、なんでッ!?……ワイヤー(・・・・)?まさか……!」

 

 

 一夏の渾身の一振りは空振りに終わった。そして、飛鳥の蹴りもしっかりと放たれ、一夏を捉えることはなかった。それもそのはず、飛鳥の体は背中から伸びる2本のワイヤーによって、地面に突き刺されていたクローアームの方向へと引っ張られていたからだ。

 飛鳥の蹴りは、一夏の攻撃を誘うためのフェイントだった。一夏の直感は正しかった。だが、その直感が故に見抜き切れなかった。飛鳥の蹴りは、紛れもなく本気の攻撃だった。それを感じ取れてしまったために、大きな隙を曝け出すことに繋がってしまったのだ。

 

 飛鳥の身体は引っ張られている。それと同時に、アンロックユニットのスラスターはエネルギーを溜め込んでいた。イージスシルエットのスラスターは、通常時の芋者やセイバーの物より大きく、その分出力も大きい。よって、そこから放たれる瞬時加速はとてつもないスピードを生み出すことができるのだ。

 一夏が攻撃を外した。その一瞬の隙に、左手に新しく握られた2本目のビームブーメランが一夏の身体に突き刺さる。

 

 

「うおぉぉぁぁぁッ!!」

 

 

 破壊力でいえば、右手に持つ大型実体剣の方が上だ。だが、その重量とリーチでは、加速を行った際の姿勢やタイミング、速度の関係でまともに振るうことできない。だからこそ、リーチは劣るが火力は十分なビームブーメランを選択した。

 

 だから、この結果は必然。ただただ噛み合わせが悪かった。

 

 

「うぅっ……くッ!!」

 

 

「ッ!?まっ、まだ、か……!!」

 

 

 一夏が意地を見せた。瞬時加速とビームブーメランにより攻撃の衝撃があるにも関わらず、左腕の雪羅クローモードに切り替え、こちらに構えたのだ。残り少ないシールドエネルギーをさらに削る行為。だが、その前に当たりさえすれば…………俺の負けだ。

 圧倒的に有利だった。そのはずなのに、最後の最後。たった一手の逆転で俺の積み上げたものは水の泡となる。

 迫り来る零落白夜の爪。俺はどうすることもできずに、ただただ目を見開いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見開いて……その一瞬の動きを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に捉えることができていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 静寂。それが今のアリーナの状況を表すに十分な一言だった。一年の専用機持ちを始め、軽い気持ちで見ていたイージスの二人も、彼らにISの指導を行った千冬と楯無も。

 そして、地面に仰向けで倒れている一夏(・・・・・・・・・・・・・・)とその光景を特等席でみている俺も、皆等しく言葉を失っていた。

 

 雪羅がイモータル・ジャスティスの装甲に当たるその刹那、ドラグーンの二つが最速・最短距離で飛ばされ、一夏の左腕を弾いた。それとほぼ同時に俺はビームブーメランを振り抜き、右足のカルキトラを一夏の胴に蹴り放った。

 その一撃を最後に、一夏の……白式のシールドエネルギーはゼロになった。

 

 そう、勝ったのだ(・・・・・)。零落白夜を使われた試合では全て負けていたのに。イモータル・ジャスティスは、俺は初めて勝ち星を挙げた。

 

 

「…………」

 

 

 沈黙が破られぬまま、一夏に背を向けて、アリーナを去った。

 ……納得が行かなかった。アレは負け試合だった。たった一手の食い違いによって生まれたどうしようもない隙。一夏は見事にそれを突いたのだ。

 あの一瞬でドラグーンの操作が間に合った?ありえない。いくらマルチロックオンシステムがあるからといって、あそこまでの動きはできない。そもそも思考が追いついてない。

 

 あの一瞬、世界がひどくゆっくりに感じなければの話だったが。

 

 極限状態や死を間近に感じた時、世界がスローモーションになる現象がある。ただ物事がそう見えるだけの現象の中で、俺は動いたのだ(・・・・・)。あの負けが確定した状況で、どうすれば打開できるのか。何を使えば勝てるのか。それら全てを頭の中で入力し終えたあと、すぐに時間の流れが戻り、一秒も経たずに試合が終わった。

 俺の持てる全てを出し切って負けたなら仕方がない。それは俺の力が及ばなかっただけのこと。だからこそ、あの得体の知れぬ現象(・・・・・・・・・・)で勝ってしまった事実が受け入れられなかった。

 

 嵐の前の静けさとも言うべきか。静まり返ったアリーナの様は、これから先の戦いにおける不穏さを表していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『調子はどうかね?』

 

 

「…………問題ない」

 

 

 ISのプライベートチャンネルから聞こえる声に返答する少女。その声色には、どこか緊張が混ざっているようで。

 

 

『不安かね?やれるだけのことはしたつもりだが……』

 

 

「……充分すぎて裏があると思うくらいには、ね」

 

 

 モノクローム・アバターに頼らない、完全にこちら側の手駒である無人IS。さらに自身の専用機に追加された新たな武装(・・・・・)。そして、こちらのテリトリーに誘い出すための情報を流すなど、数々の裏工作が行われていた。

 

 

『見返りを求めていない、とは言わんよ。だが、君たちのためを思って動いたのもまた本心だ』

 

 

「……そういうことにしておく」

 

 

 なにはともあれ、布石は整った。あとはその時を迎えるだけだ。

 

 

「そのためにも、まずやるべきは……」

 

 

 通信が切れて、少女の視線は窓の向こうへと切り替わる。その瞳には、日本らしい古めかしさを残した都市の姿が映った。

 IS学園が総力を上げて掃討を行うように、亡国企業も迎え撃つ手筈が整っていた。それぞれの思惑が入り乱れる中、少女の狙いはただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イモータル・ジャスティスの、完全破壊」




 隠者弐式よろしく剣10本同時展開(内、実体刃8本)とかいう零落白夜ガンメタ装備。イージスシルエットがワイヤー付きにしたおかげで変態挙動もできるので、戦闘シーンのネタが尽きなくて助かります(作者の都合)。

 いつかの後書きでも言及しましたが、武装を盛りに盛ったなら、それはもはや芋者では無いと思ってます。だからこそ今回飛鳥くんには勝ってもらう必要がありました。普段とは違う、ということを表現させるにはそれが一番かと。
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