芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ブラックナイトスコードの中ならシヴァが一番好みだったりする。デザインが癖に刺さりまくった。

 


破滅へのカウントダウン

「ハッ、コイツが叔母さんの言ってたヤツか。良い趣味してるぜ」

 

 

「見るからに強そうッスね……。いいんスか?助けに行かなくて」

 

 

 イージスによってアーリィの分身攻撃を防ぎながら、レインとフォルテは二機の黒いIS……ルドラを見て感嘆の声を上げる。しかし、アリーシャは攻撃をイージスへと集中させ、飛鳥の方へ行く素振りは一切見せなかった。

 

 

「アイツにまだ死相は見えてないのサ。放っておいてもなんとかなるサ」

 

 

 

 

 

「このぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 右手にビームブーメラン、左手にシュピーゲルブレードを展開し、2体のルドラによる重斬刀……ビーム刃と実体剣が一体となった簡易版アロンダイトのような武器による攻撃を防いでいた。

 何度目かになる斬撃の応酬で、わかったことは二つ。一つは今の武装で向こうの火力を上回る武器がないということ。ビームブーメランはかろうじて受け止められるまではあるのだが、シュピーゲルブレードは右腕のものがすでに折れて、残った左腕の刃も今にも折れそうだ。

 もう一つは、人型なのにどこか無機質な動き。もっと言えば、柔軟性がない。動きにブレがないほど正確で、淡々と攻撃を仕掛ける様は人が入ってるとは思えない。

 

 つまりルドラの正体は、超高性能の無人ISだ。

 

 

(単純なスペックは芋者以上。こんなヤツが2体も……いや、まだいるに決まってる)

 

 

 スパイまで送り込んでいた亡国機業が、簡単に手の内を明かすとは思えない。ルドラのような無人ISはまだ複数体控えていると考えいいだろう。

 再び2体のルドラが近接戦を仕掛けてくる。

 

 

「状況は不利……でも動きはわかる!」

 

 

 複数機からの攻撃は、訓練や模擬戦で受け慣れてる。今は防戦に集中するべきだ。緑のルドラが振り上げた剣を、ビームブーメランで受ける。拮抗はしているが、橙のルドラが別方向から向かってくる。

 橙のルドラの剣がこちらに振り払われるが、その攻撃は受け止められた。緑のルドラが持つ剣によって。

 拮抗状態を手っ取り早く崩すには、もう一つの要素……この場合は別の武器をぶつけることが解決法となる。ビームブーメランで受け止めた重斬刀を、カルキトラによる蹴りで側面から弾いてやることで橙のルドラの攻撃を妨害してやったのだ。

 

 

「これ、でも、くらえッ!!」

 

 

 カルキトラを振った足が地面に着地すると同時に、その勢いを利用して跳ねる。そのまま背部スラスターでブーストをかけ、ドロップキックでルドラ2体をまとめて蹴り飛ばした。

 

 

「……フーッ」

 

 

 息を細く吐いて、新たに取り出したビームサイスの刃を後方に構える。それと同時に背部のスラスターにエネルギーを溜め、瞬時加速の準備を整える。イージスシルエットほどの爆発力はないが、それでも普段よりは速度が出せる。少なくとも、ルドラが体勢を立て直す前に接近することはできる。

 

 だがそれも、何の妨害も無ければの話だったが。後方から何かが砕ける音が聞こえた。

 

 

「うっ!?や、やられたか……!」

 

 

「おや?当たったのかイ」

 

 

「ハッ、最後の最後でラッキーパンチか」

 

 

「当て逃げ失礼ッスよ。元・後輩」

 

 

 分身によるテンペスタ×3の猛攻を防いでいたレインとフォルテだが、ジリ貧になると判断して炎を内側に閉じ込めた氷の防壁『凍てつく炎(アイス・イン・ファイア)』を形成。アリーシャにとって、その防御を突破することはわけなかった。だが、その防壁の真価は破壊された時にあった。

 その防壁は氷が衝撃のほとんどを吸収し、砕けることで内部の炎が溢れ出すというリアクティブ・アーマーの役割を果たしていたのだ。凄まじい勢いで燃え散る炎とそれに押し出された氷の破片は、アリーシャだけでなく俺にも流れ弾として牙を剥いた。

 咄嗟に回避行動を行ったが、ワンテンポ遅れた。ビームサイスの先端部は炎によって焼き切れ、背部のスラスターには氷の破片が突き刺さった。特にスラスターには瞬時加速のためにエネルギーが集中していたので、俺は咄嗟にセイバーシルエットを完全にパージ、スラスターの爆発から逃れた。しかし爆風まで回避することは難しく、軽く飛ばされてしまった。

 

 レインとフォルテはこの隙に逃げおおせてしまったようで、残る標的は宙に飛ばされた二機のルドラのみ。

 

 

「コイツしかねぇか……!」

 

 

 爆風でよろめいた体勢のまま、ビームブーメランを投擲する。決定打にはなりえないが、せっかく作り出したチャンスだ。少しでもダメージを稼がねば。

 しかし、その意気も虚しく、ビームブーメランが敵を捉えることはなかった。攻撃が弾かれたとか、飛鳥の狙いが悪かったとかいう問題ではない。ビームブーメランは確かにルドラへ真っ直ぐ向かっていき、命中すると同時にルドラの身体は煙のように消えてしまったのだ。

 

 

「クソッ、アイツも分身(・・)かよ……!!」

 

 

 レインとフォルテが離脱時に行った行動。そちらに気を取られた一瞬の内に、ルドラは分身と入れ替わり、この領域から抜け出したのだろう。

 ……情報アドバンテージとしては最高のものだろうが、それ以上に失ったものは多い。亡国機業との戦いはまだ始まったばかりだというのに。

 

 

 

 

 

「いや、話には聞いてたけど、マジで捕まったのかよ……」

 

 

「あァ!?ジロジロ見てんじゃねぇぞガキが!」

 

 

 拠点として宿泊予定の旅館、その大部屋にIS学園側のメンバーが集められたが、そこには亡国機業側の人間も一人……アラクネの操縦者であるオータムの姿があったのだ。

 実は俺とアーリィさんがレインの元へ向かったあと、オータムは生身で一夏に襲撃をかけたのだとか。だが、運の悪いことに専用機持ちの面々が即座に駆けつけたことで、ISを展開しないまま一夏を追い詰めにかかったオータムはなすすべなく捕縛されたのだとか。……アーリィさんを追う前に連絡入れておいたのが功を喫したか。

 

 

「それで、進藤。お前が接敵した無人機とやらだが」

 

 

「先程提出した映像の通りです。基本スペックが高い上に、ビーム射撃を無効化する装甲。そして分身による撹乱が特徴と思われます」

 

 

 アーリィさんと専用機持ち達が交流を深めている間に、ルドラについて俺が得た情報をすり合わせる。

 

 

「……また厄介なものを。お前はコイツらをどう見る?」

 

 

「憶測ですが、あと2〜3体は存在すると思ってます。それと武装が近接よりなことから零落白夜への対策も……」

 

 

「そういう意味ではない。剣を交えた時の感触、直感で何を感じた」

 

 

「……なるほど、そういうことですか」

 

 

 千冬さんが聞きたかったのは、情報を元にした推測ではなく、その無人機がどう動いたのか(・・・・・・・)。恐らくはそこから亡国機業の狙いを辿るつもりか。

 

 

「……ライフルの類いは確認できましたが、近接戦に拘ってましたね。思ったより手応えがなかったというか、まだ本領を見せていない気がします。パワーとスピードはあっても動きにはついてこれましたし」

 

 

 無人機と言えば、専用機タッグマッチの時のゴーレムⅢが記憶に新しい。あちらも人型に近い姿はしていたものの無人機と一目でわかる造形だった。その上、別個体のゴーレムⅢのパーツを結合させ、人間離れした猛攻を可能としていた。

 だが、ルドラにはそのどちらも当てはまらない。あまりにも人型としての姿を保っていため、有人機と言われれば納得するほどのデザイン。人型のままであるからか、動きも人間ができる範疇までしか見られなかった。これまで目にしてきた無人機であることのメリットが何も見当たらないのだ。

 

 そこまでしてルドラを無人機として作る必要があったのだろうか?

 

 

「おい!このオータム様をいい加減解放しやがグエッ!?」

 

 

 横槍を入れてきたオータムの腹部に、千冬さんの容赦ない蹴りが突き刺さる。先程もうるさいとラウラに蹴りを入れられたばかりだというのに……。

 

 

「さて、戦力差は想定以上に動いたな。捕虜やアーリィがいるとはいえ、向こうの頭数は差し引きしても最低3つ増えている。だが無人機を投入したということは、それだけ敵も必死になっているということだ」

 

 

 ISの数だけでいえば、無人機含めて五分五分といった状況。だが、今回の第一目標は亡国機業の拠点制圧。向こうが防衛に回るのであれば、こちらは臨機応変な対応がしやすくなる。

 

 

「というわけで、今度はこちらから手を打ちましょう」

 

 

 千冬さんに変わって楯無さんが場を取り仕切り、専用機持ち全員のISに情報を送る。

 

 

「敵の潜伏先は二つに絞られたわ。一つは市内のホテル。もう一つは空港の倉庫よ。……一般客として堂々と利用してるとは思わなかったけどね」

 

 

 ホテルの側には構成員。空港の倉庫に物資と分けられているとのこと。恐らくだが、倉庫側でルドラのような無人機の搬入も行われたのだろう。

 

 

「ヘッ、こんなのに気づかないとは、飛んだマヌケ揃いだな!」

 

 

「進藤」

 

 

「……アイアイサー」

 

 

 千冬さんの目配せで、俺はオータムの前まで移動する。その次の瞬間には風切り音と打撃音。俺の右足はオータムの身体に見事に命中していた。

 

 

「ご、ぶっ……ガッ、ア"ッ……!!」

 

 

 当たりどころが悪かったのか、オータムは床に倒れてのたうち回る。その一部始終を見ていた専用機持ち達はドン引きした。最近益々キレが増している俺の蹴りを無抵抗で貰うことになるとは、敵ながら憐れむ。……うるさかったのは事実なので手加減は一切しなかったが。

 

 

「ふぅ……ん?すいません、織斑先生。緊急の連絡です。フェイス社から」

 

「わかった、外せ」

 

 

 ISからコール音が鳴る。緊急用の回線からとなると、守秘義務のある内容の可能性がある。千冬さんの許可を得て、部屋から退室する。

 

 そして、飛鳥の蹴りを受けたオータムは流石というべきかすでに言葉を発せる程度には回復しており、飛鳥の出て行った扉を睨みながら悪態をついた。

 

 

「ったく、なんでデュランダルのヤツらはあんなの欲しがってるんだか……!」

 

 

「……なんだと?」

 

 

 三度の蹴りを入れてなお口を閉じないオータム。しかしその一言は、再び構えられた千冬とラウラの脚を止めるには十分だった。

 いや、二人だけではない。その発言はこの場にいる者の意識を釘付けにさせた。

 

 

「おいキサマ、デュランダルとはなんだ?なぜ飛鳥が狙われる!」

 

 

「ケッ、知るか!あのフリーダムのガキといい、こっちも散々振り回されてんだ!向こうから協力すると言いながら……!」

 

 

 モノクローム・アバターとは別の勢力が存在する。それについては、フリーダムの謎の行動のこともあって以前から懸念されていた。

 しかし、その狙いがモノクローム・アバターと同じIS狙いではなく、進藤飛鳥という一個人に焦点を当てていたというのは見逃せない事実だった。

 

 

「……織斑先生」

 

 

「わかっている。だが虚偽にせよ真実にせよ、こちらに不都合が過ぎる」

 

 

 狙われているとなれば、飛鳥をわざわざ前線に出す理由はない。たったそれだけで敵の目論見は一つ潰えるのだから。

 しかし、現在のIS学園側の戦力の中では、アリーシャ、楯無といった国家代表に次に頼りになるのは飛鳥なのだ。継戦能力と火力の高さを併せ持つ高性能機に、遠近両方の戦闘を高い水準で行える操縦の腕。

 それに、この場で確認したように敵の数はこちらに並ぶほどに増えている。飛鳥一人を欠くだけでも対応は難しくなるだろう。加えて、報告のあった無人機にはビーム射撃が効いていない。近接戦が回答となるならば、そちらの対応も飛鳥がいればどうにかなるのかもしれない。

 

 ……このように飛鳥を出撃させない理由(・・・・・・・・・・・)はどこにもない。この時点で、すでに亡国機業に嵌められていたのだ。

 

 

「更織姉、作戦についてだが」

 

 

 織斑千冬の決断は早かった。飛鳥が戻ってくる頃には、亡国機業への対応はまとまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェーズ1は無事完了、と」

 

 

 先程行われたIS学園と亡国機業との市街戦。その影響で人気のなくなった京都の街で、一人呟く少女。

 

 

アレ(・・)を持ち出すのも時間の問題。そのためのフェムテク装甲なんだから」

 

 

 ビーム射撃を無力化させるフェムテク装甲。それを持つルドラには効かないとはいえ、ビーム射撃を主体とするセイバーシルエットは失われ、他にも武装がいくつか破壊されている。初動としては上々だ。

 そして、そのフェムテク装甲についてのデータもIS学園側に伝えるよう手筈が整えられている。

 

 じわじわと、確実に、進藤飛鳥を追い詰めるための一手が打たれ続けている。

 

 

「……ブラックナイトスコード各機にアクセス。例のデータを元に行動パターンの変化と予測を実行。優先破壊対象の設定も再調整を行う」

 

 

 自身のIS……ライジング・フリーダムを介して、無人機のプログラムを書き換える。大まかな指揮権はスコール・ミューゼルに譲渡されているが、こうして少女が裏で操れることは知らされていない。とはいえ、向こうもそれは承知の上で運用しているのだろうが。

 

 

「あとは……私次第、か」

 

 

 翼を模したアクセサリーがついたバンド、それが巻かれた二の腕に手を添える。そのアクセサリー付きのバンドこそが、ライジング・フリーダムの待機形態である。

 人前では冷徹な態度を崩さなかった少女が、どこか弱々しい仕草を見せる。彼女にとって、今回の作戦はそれほどまでに重要なものなのだ。

 

 

「……絶対にやり遂げる。これ以上、何も奪わせてたまるもんか」

 

 

 不安気な様子はほんの一瞬のもので、その瞳には決意が漲る。彼女の胸中は、ISへの根強い怨嗟で埋め尽くされていた。

 

 決戦の幕開けは、そう遠くなかった。




 千冬さんの蹴りと飛鳥くんの蹴り。どちらが強いかと聞かれても回答しづらいと考えた結果、飛鳥くんにクリティカル判定出させることで茶を濁すことにしました。

 さて、ここからは長文になってしまうのですが、『飛鳥の勝率が悪い』『一夏を持ち上げすぎ』といった旨のご指摘をいただきました。ですが、申し訳ありません。現段階では完全な回答をお出しすることはできません。

 この件について言えることは二つあります。一つは飛鳥と一夏の対比関係。様々な面で二人の相違点を描いているつもりなのですが、その中で飛鳥が一夏に勝てない最大の理由が存在します。それが解消されないまま勝ち星がついたからこその『ERROR CASE』というわけです。
 もう一つは、この作品は『芋者が奮闘するお話』だということ。もし飛鳥が一夏やヒロインズにポンポン勝ててしまうような描写が多ければ、それもタイトル詐欺になってしまいます。
 ただ勝つことが全てではなく、力を得て必死に足掻いた先に何が待つのか。これ以上は本当にネタバレになるので、引き続き本編を楽しんでもらえれば、としか言えません。

 しかし、主人公の負け描写が多いのは読み手にとってつまらない、といった意見はごもっとも。だからというわけではありませんが、実は近いうちに……というか京都編で、飛鳥にはある相手を圧倒してもらう展開があり、そのための伏線もすでに仕込んでおります。それもかなり前から。



 追伸:最後の最後で間違った言葉の使い方していたので差し替えさせていただきました。ご報告ありがとうございます。
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