芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ビームとレーザーは別物と言われることがあるのですが、ちょっとややこしいのでフェムテク装甲のビーム射撃無効はレーザーも対象としたいと思います。……実際どうなんでしょうね?

 


交錯する思惑

「それじゃ、飛鳥くんも戻ってきたことだし、作戦を伝えるわ」

 

 

 俺が部屋に再入室して間も無く、楯無さんからこれからの動きが伝えられる。亡国機業の潜伏先は、ホテルと倉庫の二つ。

 このうちエージェントが宿泊していると思われるホテル側には、イタリア代表であるアリーシャ・ジョセスターフを始め、箒、鈴、セシリアの四名による強襲部隊が編成された。対して、倉庫側は潜入という形で隠密行動を実行するようだ。メンバーは一夏、シャルロット、ラウラ、簪。各専用機の特性を把握して前衛後衛をバランス良く配置したのだろう。

 ……しかし、妙なことが一つだけあった。

 

 

「楯無さん、俺はどうすれば?呼ばれてなかった気がするんですけど」

 

 

 今の内容を言葉の通り受け取るなら、俺は強襲にも潜入にも参加しないことになる。俺の聞き漏らしか、あるいは楯無さんの言い忘れかと勘繰ったが、この状況に限ってそんなことはないだろう。

 

 

「飛鳥くんは私たちと本部で待機。敵の行動に合わせて対応してもらうわ」

 

 

「……わかり、ました」

 

 

 確かに、敵の戦力は未知数と言っていい。その最も足る要因があの無人機だ。もし片方に戦力が集中されていればの話だが、その時はアーリィさんが分身できるとしても、人数不利になる可能性はゼロではない。

 楯無さんの説明に渋々納得していると、千冬さんからも補足が入る。

 

 

「先程の戦闘で、お前は長距離射撃の手段(セイバーシルエット)を失っている。敵は『フェムテク機』だけではないぞ」

 

 

「……フリーダムですか」

 

 

 『フェムテク機』というのは、俺宛てにフェイス社から通達されたフェムテク装甲についてのデータを共有した際に名付けられたもの。姿形こそは俺の知ってるルドラだが、現段階では機体の正式な名称も不明なので仮でこうなった。

 この世界でのフェムテク装甲はフェイス社で極秘裏に開発中の新世代装甲だったらしく、それを知る人間はほんの一握り。そして、そのデータが抜き取られた形跡がレバード社長によって今日発見されたらしい。同日、俺が亡国機業への掃討作戦に参加することもあり、万が一を考えて機密でありながらも情報共有に踏み切ったのだとか。

 その連絡役を務めた社員は、普段はオドオドしてたり大袈裟なリアクションを取ったりと中々に愉快な人なのだが、緊急事態の最中で伝えるべきことを簡潔にまとめられる辺り優秀さが伺える。

 

 さて、そんなルドラに対抗するなら、俺の場合は近接戦が解となる。いくらビーム無効とはいえ、サーベル状に形成されたものを弾くことはできない。

 だが、ビーム射撃が無効化されてしまうのは、何もこちら側に限った話ではない(・・・・・・・・・・・・・)。もし俺がルドラと戦っているところにビームが飛んできたならば?

 直撃コースなら俺は回避行動を取らざるを得ないが、ルドラにそんな必要はない。アムフォルタスの一撃でも無傷だということは、あのライジング・フリーダムがどれだけビーム射撃を行っても、ルドラの行動に支障はきたさないのだ。

 ならば、ルドラとライジング・フリーダム。その両方が出揃ったタイミングで俺が参戦した方が戦況は動かしやすい。

 

 ……とはいえ、相手がルドラ(・・・)となると嫌な感覚は拭えない。様々な要因があったとはいえ、俺の専用機の元となった機体(芋者)が敗北を喫した相手はまさにその…………。

 

 

「飛鳥、まだ何か気になるのか?」

 

 

「…………いや、別に」

 

 

「ならもっとドーンと構えててくれよ。お前が後ろにいるなら、それだけで心強い」

 

 

 自分で思っているより難しい顔をしていたのか、一夏は考え込んでいた俺を気遣ってくれたようだ。

 

 

「そうだな。でも、お前らに何かあったら文字通り飛んでいくからな。下手打つなよ?」

 

 

「ふん、誰に物を言っている」

 

 

「そういう飛鳥さんこそ、足手纏いにはならないよう気をつけてくださいね?」

 

 

「フリーダムに因縁あるのはアンタだけじゃないのよ!」

 

 

「僕たちにだってプライドはあるからね」

 

 

「別にお前が合流する前に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 

「ラウラ、それフラグだから」

 

 

 俺の軽口にそれ相応の返事を返す専用機持ち。確かにルドラやフリーダムを始め、亡国機業側には強力なISが揃っている。だが、こちらも学生とはいえ代表候補生の集まりだ。それに代表クラス二人ともなれば、何か大きな事態が起こっても対処はできるだろう。

 

 

「さて、意見もまとまったことだし……作戦開始!」

 

 

 楯無さんの号令で、専用機持ちは動き出す。俺も行動に……というか、待機勢なのでこの場からは動いていないのだが、とにかくISはいつでも起動できるようにしておく。

 こうして、ホテルへの強襲と倉庫への潜入が二つの部隊によって遂行されることとなった。

 

 ……俺にたった一つの疑念が残されたまま。

 

 

 

 

 

「へぇ〜、ISの武器取り扱ってる会社だけあって、良い物揃えてきてるじゃねぇか」

 

 

「ど、どれも最新型の武器ッスよコレ……!こんなのもらっちゃっていいんスか?」

 

 

「遠慮することねぇだろ今更。持ってけ持ってけ」

 

 

 市内のとある高級ホテル。そのVIPフロアにはレインとフォルテ、そしてスコールの3名の姿があり、そこには一足早く空港の倉庫から運び出された武装が並んでいた。

 

 

武装の横流し(・・・・・・)って、進藤飛鳥は知ってるんスかね?」

 

 

「勘付かれるようなヘマはしてねぇだろうよ。逆にそうじゃなかったら、叔母さんのストレスもここまで溜まってなかったかもな」

 

 

 レインの視線の先には、仕草からして苛立ちを隠しきれてないスコールがいた。しかし、今一番怒りを感じているのは、オータムが……自分の恋人が捕虜にされているということにだ。

 最初にそれを聞かされた時は、リーダーという立場でありながら敵の数を考慮せず救出に行こうとするほどには血が昇っていた。裏切ったばかりの二人が止めに入る程には。

 強引な手段を取るならば、自身の命令を聞く(らしい)無人機を投入しても良いのだが、スコールはそれらを提供した『デュランダル』を信用していない。性能だけなら最上級の駒だが、この状況では悩みの種にもなる。それがより一層スコールの神経を逆撫でしているのだ。

 

 

「うっし、拡張領域には収まったみてぇだな。じゃ、さっそく」

 

 

 突如として、レインの持つ武器に備えられたビーム射撃が、スコールの立つガラス張りの床目掛けて乱射された。

 もちろんISの武装でそんなことをすれば、いかに強度のあるガラス床でも砕けてしまい、スコールはこのホテルの高層から落ちるだろう。もちろんISがあれば落下の心配はないが、そもそも攻撃する必要があったのかとフォルテは驚愕の表情を見せていた。

 しかし、レインは二重スパイというわけではない。その銃撃は意味のあるものだった。

 

 

「よく気づいたのサ。しかし、私の目当てはスコールなのサ!!」

 

 

「ふ、ならこの試作パッケージの具合を確かめさせてもらおうかしら」

 

 

 余裕の態度で、スコールはゴールデン・ドーンを展開。その外見はいつもとは違い、二つの巨大なリングがバリアのようにスコールを守っていた。

 試作パッケージ『レッド・バーン』。見た目からして防御兵装のように思えるが、超高温のレーザーを放つこともできる。リングからの放射のため、スコールの全体をリングが覆っているのであれば、その射程も全方位。一度の攻撃で、ホテルのVIPフロアはまるごと焼き払われた。

 

 

「反撃にしては豪華なのサね」

 

 

「当然よ、オータムを迎えに行くのだから」

 

 

「そう上手くは行かないのサ!」

 

 

 燃えるVIPフロアから飛び去るスコールとアリーシャ。一方のレインとフォルテもホテルの外へと飛び出しており、その先では紅椿、甲龍、ブルー・ティアーズの3機が待ち構えていた。

 

 

「ッ……フォルテ・サファイア、何故裏切った!」

 

 

 箒がフォルテに問う。ダリル・ケイシーは元々亡国機業の人間だった。それはいい。だが、フォルテ・サファイアまで裏切る理由までは知らなかったのだ。

 

 

「それがわからないようじゃ、ウチらには勝てないッスよ」

 

 

 箒に冷たく言い放つフォルテ。その発言には強い意志が感じ取れた。……となれば、もう手加減する必要はないだろう。

 

 

「だったら、アンタたちまとめてぶっ倒すだけよ!!」

 

 

 鈴のISの第三世代武装『龍砲』から見えない衝撃による遠距離攻撃が連射される。だが、これに当たってくれるほど相手も素人ではない。それは鈴も承知の上だ。

 だからこそ、その回避先をセシリアが狩るのだ。ビットを含めた5つのレーザー狙撃は、並大抵のISなら完全に防ぎ切ることは難しい。

 

 もっとも、鈴が衝撃砲を使用した段階で二機の黒い影が襲いかかったことで、そのプランが実行されることはなかったのだが。

 

 

「きゃああ!!」

 

 

「鈴さん!……来ましたわね、フェムテク機!」

 

 

 鈴に奇襲をしかけたISは、飛鳥が見せた映像の中の無人機と姿が一致していた。緑と橙を識別色としているルドラ、その二体が再び現れたのだ。

 しかし、映像で確認した時とは違う点が一つだけあった。

 

 

「こ、コイツら、動きが違う(・・・・・)……!?」

 

 

 鈴とてただ奇襲に気づかなかったわけではない。距離もあったため高速で向かってくる機影は捉えられたし、衝撃砲の一発も直前でそちら側に飛ばした。

 だが、ルドラはそれを回避したのだ。飛鳥と戦った時のようなパワーとスピード任せの機械染みた動きではなく、まるで人が乗っているかのように流線的な動きで。

 

 

「オレら二人でも十分なんだが、使えるもんは使っとかねぇとな?」

 

 

「気は引けるッスが、このまま押していくッスよ!」

 

 

 乱入したルドラに翻弄される二人に、レインとフォルテは先程調達したばかりの武器で攻撃を仕掛ける。

 レインが手にしているのは、刀と銃が一体となっている『ソードピストル』。火力こそは抑えられているものの、近〜中距離に対応した手数の多さは目を見張るものがある。

 一方でフォルテが使うのは、変形機構によって大剣とガトリングの二つを扱える『タクティカルアームズⅡ』。フォルテの小柄な体型には見合わないが、それがより武装の凶悪さを引き立てていた。

 

 

「想定は、していましたが……!」

 

 

「攻勢が激しすぎるッ!紅椿でも振り切れないとは……!」

 

 

「あぁもう!コイツら、全然反撃させてくれないじゃない!!」

 

 

 レインとフォルテの放つ実弾、ビーム、炎、氷による弾幕の中、猛スピードで剣を振るうルドラ。箒たちも負けじと返り討ちを狙うが、弾幕とルドラの速度の前では……いや、それ以上に間合いが把握されている。攻撃が届かない、あるいは余裕を持って防がれてしまう。

 ……にも関わらず、箒たちへの対応を主軸に対応しているためか。レインやフォルテの攻撃には何度も当たっているようだ。致命的なダメージではないとはいえ、その行動に強い違和感を感じるのは必然といえた。

 

 

「被弾をものともせず攻撃をするとは、なんと強引な……っ!」

 

 

「ホントにコイツら無人機!?人乗ってるんじゃないでしょうね!!」

 

 

「……いえ、違います!この動きは、まさか……!」

 

 

 今回のセシリアは後方からのサポートが役目であり、前衛で戦う二人の動きは常に把握していた。もちろん、その二人に攻撃を仕掛ける敵の姿も離れているからこそしっかりと見えている。セシリア自身が狙われ、接近された際の動きもその目に焼き付いた。

 違和感が一つの結論へと繋がろうとしていたのはそうした立場だったからこそ。ルドラと何度も斬り合っている箒と鈴も感覚で感じ取っているのだろう。無人機らしからぬ機動性、こちらの攻撃が難なく捌かれる間合いの取り方。そして、フレンドリーファイアとはいえダメージを気にせずこちらに接近してくる姿は、イヤでもある男(・・・)を連想してしまう。

 

 

「ようやく固まったなぁ?」

 

 

「油断大敵ッスよ!」

 

 

『!?』

 

 

 ルドラに追い詰められ、一箇所に集まってしまった箒たちの頭上には、フォルテのコールド・ブラッドによって巨大な氷塊が生み出され、重力に従って落ちてきていた。

 

 

「鈴、セシリア!すまんっ!!」

 

 

「ッ!?ちょっと、箒!?」

 

 

「な、何を……!」

 

 

 氷塊を前にした箒は、咄嗟の判断で鈴とセシリアを突き飛ばす。自分は避けきれないと判断して、その氷塊に刀二本をぶつける。しかし、そんな巨大な物体を切り裂くことなぞできず、勢いも殺せぬまま箒は氷塊と共に落ちて行く。

 

 

「ぐぬぬぬ、ぬッ………あぁ!!」

 

 

『箒(さん)!!」

 

 

「余所見してんじゃねえよッ!」

 

 

 箒に意識が向いた隙をレインは見逃さず、犬の頭を模した両肩のユニットで火球を生成し、それらはセシリアと鈴へと発射された。

 レインの火球は命中し、セシリアと鈴の悲鳴が掻き消されるほどの爆発音を起こす。しかし、咄嗟に攻撃を合わせたことで自機へのダメージを抑えられたのか、甲龍とブルー・ティアーズはまだ動いていた。

 

 

「しぶてぇな。だがいつまで持つか、一年小娘共!」

 

 

 レインとフォルテ、そしてルドラによる猛攻はまだ終わらない。




 レインとフォルテが使ったソードピストルとタクティカルアームズⅡですが、当初はレインがタクティカルアームズⅡ、フォルテがソードピストル使う予定でした。ただカラーリング合わないなと思っていたら、どちらの武器もちょうど黒と青だったので変更に踏み切りました。

 あとルドラが誰の動きを模倣しているかはまだ明言しませんが、中々気づかれなかったのはルドラの主武装が普段は使わない対艦刀であることと、蹴り技が一度も行われていないからです。
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