芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ありがたいことに総合評価が1000を超えました!本当に趣味だけで書き進めていたので、ここまで伸びるとは想像もしなかったです。……記念にしてはアレですが、本編終わったらこの作品の衝撃的な事実でも暴露するとしますか。

 


コスモス・ブレイカー

「飛鳥は……出撃させない(・・・・・・)!?」

 

 

 時は遡り、旅館の大部屋でのこと。飛鳥がフェイス社からフェムテク装甲についての情報を貰っている間に、作戦の変更が行われていた。

 

 

「えぇ、敵の狙いが飛鳥くんである以上、彼を前線に出すことはできないわ」

 

 

「し、しかし、それが敵の狙いだとしたら……!」

 

 

 先程オータムが口を滑らせたデュランダルの動向。ISの強奪を目論むモノクローム・アバターの影に隠れ、飛鳥を狙っていたという事実。

 ラウラの言う通り、敵の情報を鵜呑みにするなどもってのほかだが……。

 

 

「捕らえる機会は他にもあったはずだ。だが、そうはしなかった。デュランダルとやらはより確実な方法で実行に移すつもりなのだろう。……誰も救援に向かえない状況を作るなどしてな」

 

 

 スパイがいたとはいえ、アリーシャといった協力者の存在など亡国機業は掴めていなかっただろう。だからこそ、レインの離反と同時にフェムテク機の存在を露見させることで危機感を煽り、IS学園側の手札を全て引き出させるよう仕向けるのが真の狙いだと織斑千冬は考えた。

 だが、飛鳥とてただISを動かせるだけの人間ではない。捕縛するとなれば、そのための戦力を温存しなければ話にならない。

 

 

「飛鳥がいるかいないかで、敵の出方は変わる……ある意味、今回の作戦では切札的な存在(ジョーカー)になる」

 

 

「そうだね。亡国機業側の勢力は二つあるみたいだけど、仲良しってわけじゃないみたいだし」

 

 

 簪とシャルロットの推理も、オータムの漏らした情報が前提のものだ。しかし、モノクローム・アバターとデュランダルの協力関係にヒビが入っているとなれば、やけに口が軽かったのも判断材料の一つと考えることができる。

 そんな関係にあるものが、お互いが危機に陥った時に本気で助け合うとは思えない。撤退を手伝うのが精々だろう。

 

 

「よし!そうと決まれば、飛鳥にも早速……」

 

 

「待て、進藤には伝えるな」

 

 

「なっ!?なんでですか織斑先生!」

 

 

 作戦の方針が決まって意気込む一夏だったが、千冬からの意外な一言にそれを咎められてしまう。

 

 

「……ヤツは自身が戦いに出ること(・・・・・・・・・・)に執着している節がある。作戦通りには行動するだろうが、状況が悪くなれば独断で動きかねない。それに……っ!」

 

 

 唐突に話を切り上げたかと思うと、千冬は部屋の扉を一瞥した。

 

 

「どうやら、向こうの話は終わったようだな。……負担をかけるようだが、作戦は先程伝えた通りの内容で遂行する。いいな?」

 

 

『……はい!』

 

 

 今回の作戦はあくまで亡国機業の掃討。今はそれに集中するべきだとわかってはいるものの、飛鳥の不参加に各々思うところはあるのだろう。

 当の本人はそんなことを知る由もなく、この大部屋に再び戻ってきた。

 

 

「すいません、戻りました。早速ですが、あの無人機の……特に装甲についてわかったことが—」

 

 

 

 

 

「ここに亡国機業の手がかりがあるのか……」

 

 

 箒たちがホテル上空で戦いを繰り広げている頃、一夏ら潜入部隊は亡国機業が利用していると思われる空港倉庫へ到着していた。

 

 

「昼の戦闘で、こっちの動きはバレてる」

 

 

「急ぐしかないね……!」

 

 

 レインの裏切りによって、様々な情報が敵に流れた。そうなると、もはや一刻の猶予もない。そんな焦りがある中、違和感を感じた者がいた。

 

 

「待て!おかしい……なぜこうも静かなのだ?」

 

 

 日が落ちているとはいえ、空港の倉庫で人気がないのは奇妙だった。荷を見張るための警備員の一人でもいればそう感じることはなかったのだろう。

 それにいち早く気づいたラウラがISを起動する。その数瞬後に、一筋の光が一夏へと迫っていた。

 

 

「一夏ッ!……ぐっ!」

 

 

「ラウラッ!?簪、シャル、俺たちもISを」

 

 

 ISを展開するぞ。その台詞を言い切る前に、目の前の倉庫が吹き飛ぶ。かろうじてISの展開が間に合ったため大事には至らなかったが、その後にこちらへ向かってくる敵一人に対応するだけの余力はない。

 

 

「サイレント・ゼフィルス……!」

 

 

「邪魔だ!」

 

 

 サイレント・ゼフィルスを纏うマドカは、ロングライフルの銃身についた刃でシャルロットと簪を切り払い、瞬時加速を使用することで一夏との距離を一気に詰め、勢いを乗せたタックルで弾き飛ばす。

 

 

「うあ……ッ!」

 

 

「私の狙いは貴様だ、織斑一夏!!」

 

 

「この……!」

 

 

 姿勢を立て直した一夏は、マドカに合わさる形で瞬時加速を行いつつ、剣戟を繰り広げる。

 

 

「ふん、進藤飛鳥はいないのか。この場にいれば、ついでに相手してやったものを」

 

 

「ッ!お前ら、やっぱり飛鳥を狙って……!!」

 

 

「……あぁ、そういえばヤツらが欲しがっていたな。フ、フフフ」

 

 

「何がおかしい!」

 

 

 鍔迫り合いに持ち込んだことで、お互いの顔が見える距離まで近づく。バイザーを付けているためマドカの表情はあまり見えないが、その口元が三日月のように歪んでいたのを一夏の目は捉えていた。

 

 

「私の望みとは関係ないが、そうだな……捕える際に何かの手違いで死んでしまったのなら、ヤツらはどんな顔をするか」

 

 

「ッ!させるかよ……お前にも、デュランダルとかいうのにも、飛鳥は渡さねぇ!!」

 

 

「無駄だ、貴様に私は止められん!……私の新しい力を見せてやる!」

 

 

「!?こ、これは……!」

 

 

 マドカの言葉に合わせて、サイレント・ゼフィルスが変化を見せる。その変化の正体を、一夏は知っている。かつて臨海学校で戦った銀の福音が、自身の専用機である白式が起こした現象。

 『二次移行(セカンドシフト)』、ただでさえ手に負えないマドカとサイレント・ゼフィルスは、更なる進化を遂げてしまったのだ。

 

 

「フハハハハ!力が溢れる!これが私のための力か!!」

 

 

 装甲は禍々しいものとなり、ビットは巨大化して槍の様に、ロングライフルは大型のバスターソードへと変貌した。

 高揚する気分を抑えることはできず、マドカは高笑いを上げる。

 

 

「名乗りを上げさせてもらおう。織斑マドカと『黒騎士』の初陣は、貴様の死で飾らせていただく!!」

 

 

 歓喜と殺意の入り混じった宣言の後、サイレント・ゼフィルス改め『黒騎士』は、試し斬りと言わんばかりに一夏へと再度襲いかかる。

 

 

 

 

 

「くっ、一夏ッ!」

 

 

「まずいね、早く助けに行かないと……!」

 

 

 マドカの奇襲で少なくないダメージを受けたラウラ、シャルロット、簪の三人は、一夏の援護に向かおうとしていた。しかし、それができていれば、サイレント・ゼフィルスが黒騎士となる前に合流できていた。

 マドカの他にも、敵はもう一人存在していた。

 

 

「ふっふっふっ、せっかくの『黒騎士』お披露目なんだから、邪魔はさせないよ♪」

 

 

 この場には合わぬ陽気な声。それが響いた直後に、専用機持ち三人は地面に這いつくばってしまう。

 

 

「な、なにぃッ……!」

 

 

「う、うごけ、ない……」

 

 

「これ……重力!?」

 

 

 ISの力を持ってしても、抗えぬほどの束縛。目の前に躍り出た人物の持つステッキ一つであっさりと無力化されてしまっている。

 それもそのはず、今ラウラ達の目の前にいるのは……。

 

 

「やっほー!みんなのアイドル、束さんだよ〜♪どうかな?束さんの最新作、『玉座の謁見(キングス・フィールド)』は?」

 

 

 ISの開発者にして、その頭脳と技術力を持って世界を手玉に取る天災。ラウラやシャルロットにとっては臨海学校以来の人物、篠ノ之束がそこにいた。

 

 

「それじゃあついでに、ISコアをいただいちゃうよ♪」

 

 

 元は自分が開発した物とはいえ、国家単位で保有されているISコアを奪取することに、篠ノ之束は抵抗感を全く覚えない。

 彼女にとって価値のあるものは、自分に親しい人物の中でもさらに一握り。それ以外の人物が迷惑を被ることになろうと、彼女は一切気にしないのだろう。

 

 もっとも近くにいたラウラに目掛けて、篠ノ之束の魔の手が迫る。しかし、その手が咄嗟に引かれたことでラウラのISは奪われることはなく、篠ノ之束の手には刃物による切り傷が刻まれていた。

 

 

「やぁっと来たね、ちーちゃん!」

 

 

 闇夜を駆ける世界最強(初代ブリュンヒルデ)。その手に握られている日本刀は、様々な技術が注ぎ込まれた至高の一振りだ。

 束とラウラの間に入り込んだ千冬は、刀の切先を束へと向ける。

 

 

「教え子がやられるのを見過ごすわけにはいかないのでな。……それに、お前には聞きたいことがある!」

 

 

 紙一重で避けては、攻撃を仕掛ける。確実で隙のない攻防、それを生身とは思えぬほどのスピードで行うのだから、二人がいかに規格外であるかがありありと感じ取れる。

 

 

「あの無人機、やはり貴様が糸を引いていたか!」

 

 

「やだなぁ、ちーちゃん。あんなのが束さんの趣味だと思ってる?ISコアぐらいだよー、手伝ったのは」

 

 

 千冬の振るう刀を、束は杖で受け止め、火花が散る。どのような素材でできているのか、何度ぶつかっても折れる様子はない。

 一見互角ではあるが、千冬の後ろには自身の生徒がいる。それを守りながら戦っているのだ。微々たるものだが、押されているのは確実だった。

 

 

「やーめたっ♪」

 

 

 何を思ったか、束はステッキを放り出す。それを見た千冬も攻撃を止める。あの篠ノ之束が相手といえど、武器のない相手に攻撃することは良しとしなかったのだろう。

 

 

「せっかくお膳立て(・・・・)もされてるのに、こんな舞台じゃもったいないよ。私とちーちゃんの対決に全然相応しくない」

 

 

「……どういう意味だ」

 

 

 自分との決着に時と場所を選んだまでは理解できた。だが、あの篠ノ之束が他者からのお膳立てを受けるというのは信じ難い。

 

 

「ぶっちゃけ束さん的にはそこまで期待してないんだけど、面白いことにはなると思うよ?ちーちゃんが教え子(・・・)を見捨てるとも思わないし」

 

 

「何?……まさか!」

 

 

「じゃあね、ちーちゃん!次会う時には万全にしておいてよね!」

 

 

 束が指を弾くと、爆発が起こると共にその姿が消えていた。さながらマジシャンのようだ。逃すまいと追おうとした千冬だが、すぐさま振り返ってラウラ達へと駆け寄る。

 

 

「お前たち、無事か?」

 

 

「は、はい!申し訳ありません、教官の手を煩わせるとは……」

 

 

「教官ではない。それより、進藤だ!目撃はしたか?」

 

 

「えっ?み、見てませんけど……飛鳥に何かあったんですか!?」

 

 

 なぜ旅館にいるはずの織斑千冬がこんなところまで来ているのか。自分達を助けに来たといえばそれはさぞヒロイックな展開だが、飛鳥の名前が出たことで余談を許さぬ状況となったのを理解してしまった。

 

 

 

 

 

「進藤飛鳥は……待機命令を無視した。全てを知った上でな」




 今回飛鳥くんほとんど出てないから、後半の内容ほぼ原作と同じになってしまった……。ちなみに現時点で束さんが飛鳥くんをどう思っているかですが、基本的にはその他大勢と同じでほぼ興味ナシです。IS動かせる理由は知ってるぐらいで。

 次回は飛鳥くんが千冬さんを振り切って出撃した経緯や、その後の戦闘まで描写していきます。
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