芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 一話にまとめようとしたら8000文字超えたので分けました。

 


『力』だけでは届かぬもの(前編)

「……ッ!やられるかぁッ!!」

 

 

 地面を除く全方位から迫るビームに対し、まずは鍔迫り合いから抜け出そうと後方に下がる。シヴァもヒートソード『ディス・パテール』を前に突き出しながら追ってくるが、左腕に残っていたグレイプニールをワイヤーを伸ばした状態で投げることで行動の阻害に成功。

 そして問題のビームだが、まずはデモリッションナイフとバスタードチョッパーを宙に展開し、即座に蹴り飛ばす。多少のビーム耐性はあるため、この弾幕の中でも二秒ぐらいはビームを遮断してくれるだろう。

 その二つの武装によって生まれたルートを全速力でスラスターを噴かし、一気に離脱する。もちろん離脱中にビームが何本も直撃しかけたが、シールドブーメランの防御が間に合わないものはビームブーメランやカルキトラによる切り払いで相殺しながら切り抜けることに成功した。

 

 ……離脱直前でウイングの一つが焼き切られたため、無傷とはいかなかったが。

 

 

「ハァッ、ハァッ……六体がかりか。流石に、キツいな……」

 

 

 芋者と同等以上のスペックを持つ機体が六機。その内一機はドラグーンによる広範囲制圧が可能であり、残りの五機はその制圧射撃を機にすることなくこちらに容赦なく攻撃を加えてくる。

 ……それと、先程シヴァの攻撃を受けて確信したことがある。どういうわけか、この無人機は俺の動きを模倣しているようだ。どうりでやりづらいわけだ。最初に戦った時はそんな素振りがなかったことを見ると、相手にとってもここが勝負どころなのだろう。

 つまり、相手はもう俺を捕えるだけの手札を出し切ったとみていいだろう。これを切り抜けることができたなら、俺の……IS学園の勝利だ。

 

 

「……やってやるよ。今まで鍛えてきたのは、こんな状況になっても勝つためだ!」

 

 

 これまで芋者の強化案として採用していた追加武装を使い切り、残るはあと一つ。……アロンダイトでもあればまだ楽だったのだろうが、あいにくフェイス社からのレンタル期間はとっくに終了している。

 しかし、その最後の一つこそが今回の切札(・・・・・・・・・・・・・・・)。相手にルドラがいるとわかった時点で温存していたのだが、そのカードを切る時が来たようだ。

 

 

「こい!イージスッ!!」

 

 

 背部のファトゥム零式が剥がされ、予め待機させていたイージスシルエットが装着され、四つのクローアームからビームサーベルが展開される。普通にやりあっても速度に差がなければ数の差で追い詰められる。長距離のビーム射撃など論外。であるならば、近接に特化したこのシルエットで手数の差を埋めるに限る。

 手始めに……スーパードラグーンから放たれたビームをクローアームのみで全て打ち払った。

 

 

「!?」

 

 

「お前のとは違って、俺のドラグーンはシステム補助付きだ。後出しでも対応できる。……あの複雑な動きをパターン化させていたのは、驚きだけどな」

 

 

 イージスシルエットのドラグーンはマルチロックオンシステムを用いることでやっと使い物になるほど操作性に難があった。では、その倍の数もあるスーパードラグーンをどうやって操作していたのか?

 ヒントとなったのは、ドラグーンで攻撃したあとの動き。フリーダム自身の動きが鈍ることはなかったのだが、注目すべきはドラグーンそのもの。弾を撃ち終えたあとにドラグーン数基が同じ方向へと動いているのがわかった。

 恐らくはドラグーン一つ一つではなく3〜4組ほどのグループでまとめて動かしていたのだ。その考えに思い至った根拠はそれだけではなく、最初に俺に奇襲を仕掛けた時以外は、フリーダムの周囲には常にドラグーンが浮いていた。あまりバラけさせると制御ができないからだろう。

 

 つまり、あのスーパードラグーンの弱点は八つもあるのにそれらを別々に動かせないこと。もし単独で動かせたとしても、グループで動かせるだけの数……三基が限界だろう。

 ドラグーンの強みである全方位攻撃と圧倒的火力のどちらかしかできないのなら、いくらでもやりようはある。

 

 

「問題は、コイツらだな……ッ!」

 

 

 シヴァの猛攻、その縫い目を合わせるように四機のルドラが連携を取ってくる。クローアームをビームの対処だけに使っては到底間に合わない。近接攻撃を対処しつつ、一箇所に留まるわけにもいかないので、スラスターのみに頼らず地面を蹴ることで方向転換。機動力に乏しいイージスシルエットの短所を少しでも補っているのだが、この戦い方では上空にいるフリーダムに対して何もできない。

 

 優先して倒すべきは、そのフリーダムまでの道を阻む計五体のブラックナイトスコードからだ。

 

 

「ぐぅっ、うおらぁぁぁッ!!」

 

 

 右肩の装甲がルドラの剣に抉られる。シールドエネルギーも少なくない量が持っていかれたが、そこまで近づいたのであればこちらの間合いにも入っている。すかさず繰り出したカルキトラによる斬撃が、ルドラの片足を見事に切断した。

 そして、その蹴りの軌跡をなぞるように、ルドラの後方から詰め寄ったシヴァの脚部ビームソードが、俺の脚を裏から切り裂いた。

 

 

「そ、そんな!?カルキトラが……!!」

 

 

 シヴァによって切り裂かれた脚部装甲は人体でいう踵のみが残され、切断された部位はスパークを発しながら地面に転がった。

 ……切り離された部位には、カルキトラのビーム刃を形作るのに必要な機関が搭載されている。それを失ったということは、機動力の低下だけでなく、火力の大幅な減少に繋がる。この局面において最悪の痛手を負ったというわけだ。

 今まで信頼を置いてきた武装ということもあって、初めて破壊されたというのは大きいショックだ。だが、そんなことで落ち込んでいる場合ではない。

 

 

「ふっ、ぐっ!?マズイ、追いつかない……!」

 

 

 激しさを増す弾幕と斬撃の嵐は、ただシールドエネルギーを削るに留まらず、イモータル・ジャスティスの武装を次々に破壊していった。

 

 カルキトラの次に餌食になったのはイージスによるアンロックユニットのスラスター、シヴァのロック・シールド『スヴァローグ』から放たれたワイヤーアンカーによって破壊される。

 急な推進力の低下を補おうとビームブーメランを投げたが、軌道があまくルドラに真っ二つに両断される。

 その隙に逃げようとするも、今度はスーパードラグーンのビーム射撃。近接能力の低下をクローアームで補っていた隙を突かれ、左脚と右側のアンロックユニットのスラスターを潰された。生け捕り狙いなのは確かなようで、確実に攻撃と移動の手段が奪われていく。

 

 そして、動きの鈍った俺を正面に捉えて、シヴァの胸部装甲が二つに開かれた。

 

 

「う、うおぉぉぁぁぁッ!!?」

 

 

 シヴァの胸から無数の針が射出される。いくら物理に強いVPS装甲といえど、この速度・物量で押し寄せてこられてはひとたまりもない。

 回避は間に合わず、シールドを構えて必死に防御に回るが、庇いきれない部分はある。右手のビームブーメランが弾かれ、左脚上部のカルキトラ発生機関と額に装着していたバイザーに見事に直撃し、針が撃ち終わる頃にはシールドブーメランはバラバラに崩壊してしまった。

 

 だが、防ぎ切ったところでもはやまともな防御や回避はできない。それどころか、残る武装はビームライフルとクローアームのみ。ビームライフルが通用しないことを考えれば、実質一つだけとなった。

 ダメ押しのつもりか、フリーダムがフルバーストの構えを取る。砲身に光が収束していく。

 

 その刹那に、スーパードラグーンに向かって四つのレーザーが迫り来る。

 

 

「ッ……!」

 

 

 咄嗟にドラグーンを操作し、レーザーを回避させるが、そのレーザーもドラグーンに着弾する直前で曲がったのだ。軌道を変えたことでドラグーンの回避先に合わせる……というのは流石に不確定要素がある。ここで狙われたのはただ一点、フリーダム本体だ。

 

 

「くっ!?」

 

 

「手数では及びませんが、こちらはBT兵器。射撃技術はこちらに一日の長がありましてよ!」

 

 

 セシリアの狙撃によって、フリーダムは腰のレールガンと腕部のビームシールド発生装置、二つずつ備えられたそれを一挙に失う結果となった。

 そして、セシリアを追い越すように箒と鈴もフリーダムへと距離を縮めていく。緑と橙のルドラを追ってきた三人が、この危機的状況に間に合ったのだ。

 

 

「これ以上はやらせん!」

 

 

「アタシたちの友達に手を出したこと、後悔させてやるわ!」

 

 

 二人がかりによる攻撃に、フリーダムは光の翼とスーパードラグーンで応戦し始める。一時的にフリーダムからの弾幕から解放された飛鳥だが、形勢はまだ変わっていない。

 メインスラスターすら失い、スピードを失った飛鳥は格好の的。緑のルドラが剣を携え、飛鳥との距離を縮める。

 

 

「させません!」

 

 

 セシリアが遠方からミサイルビットを放つ。フェムテク機にレーザーが通用しないのであれば、このビットこそがセシリアの持つ有効打。撃破まではいかずとも大きなダメージは見込めるため、少なくとも回避をさせて飛鳥への攻撃を中断させることはできるだろう。

 もっとも、そのミサイルビットを青と紫のルドラがビームで撃墜しなければという前提であったが。

 

 

「そ、そんな!飛鳥さん……!!きゃあッ!?」

 

 

 苦し紛れにスターライトmkⅢによる狙い撃ちを試みるが、その直後にスーパードラグーンに砲身を焼き切られてしまう。箒と鈴からの挟撃を交わしながら行われたその芸当は、先程のフレキシブルへの意趣返しだろうか。

 

 そんな上空でのやりとりを他所に、すでに緑のルドラは射程圏内へと潜り込み、飛鳥を捉えていた赤いモノアイが一際強く輝いて……。

 

 

「武器がなんだこの野郎」

 

 

 ルドラの顔面は、貫手の形を取ったマニュピレーターに潰された。振り上げられた剣は、力なく地面へと突き刺さり、飛鳥が手を引くと同時にその機械仕掛けの身体も土に塗れた。

 

 

「俺は、元々ッ!徒手空拳(ステゴロ)だッ!!」

 

 

 追い詰められてなお闘志を滾らせる飛鳥。決着の時は近い。




 Q.全身凶器みたいなヤツから武器取り上げたら?
 A.素手が弱いとは言っていない。

 中学時代の飛鳥がケンカしまくってた経験がこんなところで活きるとは思わなんだ。基本的に飛鳥が武器全てを無くすことはないので、ISに乗ってからは初めて行う戦い方となります。

 いよいよブラックナイトスコードとの決着。映画では無惨にも真っ二つにされた機体に、飛鳥と芋者はどのような結末を迎えるのか。
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