芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 篠ノ之束が開発したISが、白騎士事件によって世界に知れ渡って十年。京都では、IS学園、モノクローム・アバター、デュランダルの3つの勢力が入り乱れ、混沌を極めていた!!(某ライダーのナレーション風)

 ……これをやるタイミング、もうちょい早い方がよかった気がする。

 


その手を掴むために

「ここが爆発のあった場所か……?あ、アレは!?」

 

 

 空に煙が舞い残り、地面が黒く焦げていた。黒騎士と戦っている最中に目撃した爆発はまさにここで起こったのだろう。高度を下げていくと、視界に何か破片のようなものが映った。

 着地次第、一夏はその破片の元へと行き、それを拾い上げた。

 

 

「黒……いや、焦げてそう見えるだけで赤い……ま、まさか…………まさか!?」

 

 

 一夏が拾い上げたそれはたった一欠片でしかない。ISに手に収まるか収まらないかぐらいの大きさの残骸が、ここにはいくつも転がっていた。

 残骸に共通しているのは、爆発によって焦げて黒く染まっていること。焦げていない部分は、全て灰色で構成されているということ。見る人によってはただの金属片だが、一夏はその破片があるISのものであると断定した。

 

 

「こ、こんな、ISがこんなになるまで、アイツは…………!」

 

 

 残骸の正体は、イモータル・ジャスティスだったもの。イヤというほど見てきた赤ではなく、灰色の破片が転がっているのは、電力が通っていないから。VPSという特殊な装甲故の現象だ。

 原型を留めず破壊されたIS、そして……この場に影も形もないその操縦者。

 嫌な予想が一夏の頭に浮かぶが、首を懸命に振ってその考えを隅に追いやる。

 

 

「いや、アイツは、アイツは生きてる!俺が諦めるわけには……ッ!?ビーム攻撃!?上か!」

 

 

 飛鳥は死んでいない。そう信じて再度捜索を開始しようとした一夏であったが、その出鼻を挫くように空からビームが落ちてきた。

 ビームが放たれた場所へ目を向ける。両手、腰、翼が壊れて、バイザーを失ったことで素顔すら丸見え。だとしても、その機体がライジング・フリーダムであることは、一目瞭然だった。

 

 

「フリーダム……お前が、お前がやったのかぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 怒りのままフリーダムへと直行する一夏。対するフリーダムはビームライフルを収納し、ビームサーベルとシールドを構えた。零落白夜を持つ白式相手に、白兵戦を挑むつもりだ。

 

 

「どうしてだ……どうしてアイツばかりがこんな目に遭わなきゃならないんだ!飛鳥は、飛鳥はな!融通効かないところもあるけど、誰かを守るためなら必死になれるヤツだった!」

 

 

 最初はいい出会いではなかったかもしれない。それでも、IS学園に来てからの飛鳥は、一夏にとってかけがけのない存在だった。自分以外の男子生徒として、心を許せる友として、背中を預けられる仲間として。なにより、最大の好敵手として、飛鳥の存在は大きなものだった。

 そんな飛鳥を狙い、危害を加えるような者を一夏は許すことはできなかった。

 

 

「答えろ!なんでそうまでして、飛鳥をッ……!!」

 

 

「当然でしょ。妹だもの」

 

 

 今まで一切の言葉を発さなかったフリーダムのパイロット。その予想だにしない言葉が一夏の剣筋を鈍らせた。

 

 

「妹……だって?ウソだ、アイツに兄妹がいるなんて、そんなの聞いたこと……!」

 

 

「なんだ知らないの?……まぁ、ムリもないか。お兄ちゃん、昔から一人でなんでも抱え込んじゃうから、ねッ!!」

 

 

 ビームサーベルの刺突。攻撃の手が止まった一夏にはそれを防ぐ術はなく、回避に徹する。避けきれなかった脚部装甲が、ビームの熱で一部溶解した。

 

 

「うっ……!そんなの、わかってる。でも、それは俺たちを心配させないようにするためで……」

 

 

「それでなに?必要以上に心配しなくていいなら、何もしないでそれで終わり?普通はそうだよね、わかるよ。厄介事には首突っ込みたくないもんね!」

 

 

「そんな、ことは……!!」

 

 

 そんなことはないと言いたかった。でも、踏み込まなかったのも事実だ。何故それができなかったのか。……いや、心当たりはある。

 飛鳥が世界の敵となる(・・・・・・・・・・)。現実味を感じられぬほどに恐ろしい事態となることが、自分の中では未だに納得が行っていなかったから。

 

 

「もういいよ、所詮お兄ちゃんとアナタの関係はその程度。その分だと、私たちのパパとママがなんで死んだのか。私とお兄ちゃんがどうして離れ離れになったのかすら知らないでしょ?」

 

 

「っ…………まさか、それも全部ISが関係しているっていうのか!?」

 

 

 かつて千冬から聞かされた飛鳥の家族についての言及。飛鳥の家族はISが原因で奪われたということ。

 初めて飛鳥から両親のことを聞いた時は、事故死としか聞かされなかった。それがもし、ISによるものだとしたら?飛鳥の妹を名乗る少女が飛鳥と生き別れになったのも、ISのせいなのかもしれない。

 飛鳥と飛鳥の家族は、ISによって狂わされた。その答えに行き着いた一夏から、更に戦意が薄れていく。

 

 

「でも……でも、それがなんで飛鳥を傷つけることになるんだ!?アイツの専用機だって粉々になるほどに……!」

 

 

「……まさか、気づいてないの?」

 

 

 一夏から言葉から僅かに伝わる同情の念。それを感じとった真由は、一夏をひどく軽蔑した目で見下していた。

 

 

「な、なにがだよ……!」

 

 

「だってこんなことになったの、元を辿ればアナタ(・・・・・・・・)のせいだよ(・・・・・)織斑一夏(・・・・)

 

 

「…………は?」

 

 

 一夏には訳が分からなかった。飛鳥が危険な目に遭っているのは、自分のせいだということが。

 間の抜けた返しをする一夏に、真由はビームサーベルの切先を再び向ける。

 

 

「順を追って説明しなきゃいけない?まず、ISが篠ノ之束の手によって作られた」

 

 

 ビームサーベルが振るわれる。雪片弐型を構えることでビームを消失させて防御した。

 

 

「そうして世界にISが広まった。私たちの両親はここで死んだ。それからまもなく、私とお兄ちゃんは別々になった」

 

 

 刃が消失したことで鍔迫り合いにすらならず振り抜かれたビームサーベル『ヴェルシーナ』。その勢いのまま、柄頭を腰に持っていく。ビームサーベル同士が連結し、アンビデクストラス・ハルバードモードという両剣形態となる。

 返す刃で取り付けられた側のビームサーベルが、白式の右腕部に直撃。装甲を焼き切りながら、一夏の防御を崩した。

 

 

「問題はそこから。私は亡国機業に入って世間から姿を消したけど、お兄ちゃんにも保護してくれる人がいた。そのままお互いに、何事もなく生きていくはずだったのに……!!」

 

 

 空いた胴体に蹴りが入る。鋭く突き刺さったそれは、一夏の顔を歪ませ、呻き声をあげさせた。

 

 

「お前がッ!ISなんてッ!動かすからッ!!ISに集るゴミみたいなヤツらにお兄ちゃんは狙われることになったんだ!!お兄ちゃんの未来を奪ったのは、お前だ!織斑一夏ァッ!!」

 

 

「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 アンビデクストラス・ハルバードモードのビームサーベルが、激昂と共に振り下ろされる。その一振りを受けた一夏は、空から地面へと叩きつけられた。胸部装甲に斬撃の痕が斜めに走る。シールドエネルギーの残量も残りわずか。零落白夜が使えてもあと一度きりしかないだろう。

 

 

「お兄ちゃんの人生を壊した世界最初の男性操縦者に、国家の犬の専用機持ち、肩書きばかりで何も為せないブリュンヒルデ…………やっぱり私だけだ。私しかいないんだッ!お兄ちゃんの味方になれるのは!お兄ちゃんを、ISから守れるのは、私しかッ!!」

 

 

 ビームサーベル片手に地上へと加速するフリーダム。その狙いは織斑一夏ただ一人。空から迫る剣を前に一夏は何もすることができず、ビームサーベルは落ちる。

 

 真由の手を離れて、転がるように。

 

 

「……どういうつもりなの、M(エム)ッ!!」

 

 

 真由がサーベルを振り上げる。その一瞬にビームが撃ち込まれ、フリーダムの右手は爆散。ビームサーベルはアンビデクストラス・ハルバードモードのまま宙を舞い、刃を消失させながら地面に落ちた。

 そのビームを放った下手人は、織斑マドカ。手に持つランサービットの先端から放たれた光が、同じ亡国機業のエージェントである真由に牙を剥いたのだ。

 

 

「ソイツは私の獲物だ。お前などにくれてやるつもりはない。…………しかし、驚いたぞ。まさかお前が、進藤飛鳥の妹だったとはなぁ?」

 

 

 マドカの口角が吊り上がる。良からぬアイデアが浮かんだことは、一目瞭然だった。

 

 

「あの男はお前にとって大切な存在なのだろう?ならばその首を差し出しば、お前はどのような表情を見せてくれるのか。ククク、楽しみだ」

 

 

「……味方とは思ってなかったけど、その認識は変えなきゃいけないね。お前も、敵だッ!!」

 

 

 三基のドラグーンと左手に握られたビームライフルでフルバーストを放つ。しかし、レールガン二丁とライフルを握るための右腕、残りのドラグーンを飛鳥の拘束に割いているため、今までとは比べものにならぬほどにまで火力が下がっている。

 ランサービットを盾にしながら、マドカはその弾幕を突っ切り、真由に肉薄する。フリーダムの近接武装も、もはやシールドブーメランのみ。振るわれた槍を防御することしか、真由にはできなかった。

 

 

「くぅッ……!」

 

 

「いずれ叩き潰そうとは思っていたが、ここまで呆気ないとは。安心しろ、進藤飛鳥を殺したあとは、すぐにお前も後を」

 

 

「ハアァァァァッ!!」

 

 

「ッ!キサマ、まだ動けたか……!」

 

 

 一夏の雪片がマドカの槍に阻まれる。その剣には零落白夜の光はなく、ただ切れ味の良い実体剣のまま。されど、その一撃は重く、マドカを徐々に押していた。

 

 

「確かに、俺は飛鳥の現状を知ろうともしなかった。でも、アイツがどんな想いで生きてきたのかはわかる」

 

 

「何の、話だ……!」

 

 

 ISによって発展した世界。その闇の一端を見せながらも、飛鳥は気丈に振る舞った。もしかしたら、ずっと心を押し殺して、生きるために仮面を被っていたのかもしれない。

 それでも、一夏は知っている。飛鳥が絶望に呑まれていたことを、憎悪に満ちたあの目を。IS学園で初めて飛鳥のことを知った者は知らない一面。だから、一夏は知っている。その憎しみを抑え込められるほどに、飛鳥は強く優しい人間であるのだと。

 

 

「だから、お前たちに飛鳥は連れて行かせない!飛鳥の人生(みち)は……他の誰でもないアイツ自身が決めるものだ!!」

 

 

「お前が……お前がそれを言うか。お兄ちゃんの人生を一番狂わせたお前がァァァァァッ!!」

 

 

 白式、黒騎士、そしてストライクライジング・フリーダム。三つ巴の戦いは、白熱の一途を辿っていた。

 

 その一方で……。

 

 

 

 

 

「がッ!?ハァ……ハァッ……!」

 

 

 バリアが解かれ、身体が地面に投げ出される。もちろん、真由の意思ではない。第三者が、ドラグーンを破壊したのだ。焼き切られ、溶かされ、凍らされ、叩き壊され、五基もあったドラグーンは全て壊された。

 

 

「おっ、無事ッスか」

 

 

「火力調整はカンペキだったな」

 

 

「うっ……アンタらは……!!」

 

 

 震える腕に力を込めて、顔を上げる。目の前にいるのは、レイン・ミューゼルとフォルテ・サファイアの二人。そうか、箒たちやブラックナイトスコードがこちらに来ているならば、この二人も自由に動ける。

 

 

「よぉ、災難だったなクソガキ?助けに来てやったぜ」

 

 

「……ウソつけよ。狙いは、なんだ……!」

 

 

 自分から裏切ったヤツが情で助けた?冗談でももっとマシなものがある。

 

 

「別にどうもしねぇよ。ただついてくればいいだけだ。……人質として、な?」

 

 

「お前ら、それが狙いで……!」

 

 

 モノクローム・アバターとデュランダルはただ協力関係にあるだけ。そして、デュランダルは俺を欲しがっている。それが妹の望みであれ、デュランダルの構成員の総意であれ、俺という存在は大きい。

 ならば、モノクローム・アバターが先に俺の身柄を確保したならば、もはやデュランダルとの協力関係は無に帰す。俺を取り戻そうと全面抗争に発展するか、あるいは俺を盾にこき使われるか。

 最悪なのは、もし俺を狙っていたのが妹ただ一人の意思であれば、デュランダルが動くことはない。無謀に挑むにせよ、良いように使われるにせよ、それは俺にとっても望むところではない。

 

 

「ふざけるな……!俺のために、真由をこれ以上苦しめさせたりは……!!」

 

 

「おぉおぉ、怖ぇ怖ぇ…………で?どうするつもりだよ。お前にはもうISすらねぇじゃねぇか!」

 

 

「ッ……!」

 

 

 立ち向かうにせよ逃げるにせよ、IS相手に生身では話にならない。どう足掻いたところで、無力化して捕まえるのは赤子の手を捻るように簡単なことだろう。

 

 

「ほら、無駄な抵抗はやめて大人しくするッスよ。痛い目に遭いたいなら別ッスけど」

 

 

「!……ごめん、真由。俺は……俺はッ……!!」

 

 

 あの時、真由の提案を飲んでいれば、こんなことにはならなかったのだろうか。俺はまた間違えた。一度ならず、二度までも妹の手を握らなかった。

 妹を不幸にしたのは……ISでも、世界でもない。俺が(・・)真由の兄だったから(・・・・・・・・・)。妹を護らなきゃいけないはずの俺が、側にいようとしなかったからだ。

 

 立ち尽くしている俺に、フォルテの腕が伸ばされていく。その時だった。投擲された槍がフォルテを貫こうとしたのは。

 

 

「!?こ、この槍は……!」

 

 

「フォルテ!!ここから離れ」

 

 

 後退したフォルテは必然的にレインの近くへと移動した。こうして二人がまとまったのは、槍を投げた者の計算の内。意図に気づいたレインはフォルテと共にその場を離れようとするも一足遅く、爆発が二人を飲み込んだ。

 

 

「ふぅ、間に合ってよかったわ」

 

 

「あ……」

 

 

 髪色と同じ水色の機体。水のヴェールを纏ったそのISは、ロシア代表にしてIS学園生徒会長の専用機そのもの。

 

 

「言いたいことはあるけど、それは帰ってから……ね?」

 

 

 飛鳥の窮地に駆けつけたのは、更織楯無。安心させるためか、笑顔でウインクを飛ばして、その手を俺に差し伸べた。




 真由、まさかの一夏アンチ勢。精神にダメージ与えながら一方的に切られる姿は、セイバーがダルマにされたシーンを彷彿させられたと思います(セイバーシルエットで再現できなかった分こういう形での回収になってしまった……)。

 さて、楯無さんがヒロイン度数高いことやってますが、実は京都編からルート分岐してマルチエンディングになるような構想になっておりまして。何が言いたいかというと、本編のルートでは楯無さんとはくっつきません。
 もし楯無さんがヒロインのルートなら、京都編に入る前から恋人関係になっていると思います。
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