芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 初戦が戦友&デュランダルの指示で動くということで『シードデスティニー』準拠の要素もありながら、ブラックナイトスコードによって敵の手に堕ちる&VTシステムで機体色が暗めになることでカラーリングがspecⅡになるといった感じで『シードフリーダム』にも寄せていくスタイル。

 


力の矛先

「VTシステム、だって?……まさか、ラウラの時もお前がッ!」

 

 

『もしそうであるなら、私はこうして君と話せていないだろうね。それを仕掛けたものは、すでにとある人物の手によって粛清されている』

 

 

 かつて、織斑千冬とその専用機『暮桜』を模倣したVTシステムが一夏や飛鳥たちの目の前で使われた。だが、それは見事に打ち破られ、裏で糸を引いていたものたちは篠ノ之束が影ながら粛清されていた。……彼女の性格上、命を奪われていてもおかしくはなかったが。

 

 

『それに君が相対したものとは違って、このVTシステムは劣化コピーといったところだ。機体を再現したはいいものの、デスティニーの正式な操縦者やその稼働データの類いは、多くは存在しないのだから』

 

 

「……私の知らないところで、いつの間にそんなことを……?」

 

 

 VTシステムに関わることは、直属の部下である真由にすら一切知らされていなかった。組織としての底が知れなさが垣間見えるが、デュランダルは一人呟く真由を他所に会話を続ける。

 

 

『だからこそ実証が必要なのだ。これは私の計画において重要な役割を果たすもの。簡単にやられるようであれば、その遂行も不可能であると認めざるを得ない』

 

 

 突如、デスティニーが一夏の傍に出現する。あまりの速さに剣を構えることすらできなかった。

 咄嗟にデスティニーから離れ、剣を構え直す。

 

 

「!!……な、なんて速さだ……!これがデスティニーの瞬時加速!?」

 

 

『いや、加速自体は通常のものだよ。……私の予測より2%程上回っているがね』

 

 

 残像すら見えてしまうのではないかと思えるほどの速さ。その速度ですれ違いざまに振られるアロンダイトは必殺級の威力を発揮する。一夏の腕ではその攻撃を防ぐことで手一杯、防御に全力を注ぐしかなかった。

 しかし、一夏には算段があった。デスティニーを初めて見せられた時、採用に至らなかった致命的な弱点があることを思い出して。

 

 

(確かにデスティニーはパワーもスピードも第一世代とは思えない。けど、それは大量のエネルギーを代償にしてるからだ!このまま受け続ければ、いつかは隙が)

 

 

 またすれ違いざまに一発。

 

 

(隙が……!)

 

 

 速度が落ちたまま、またまた一発。

 

 

(隙が……ない!燃費が悪いんじゃなかったのか!?)

 

 

『エネルギー切れは期待しない方がいい。このデスティニーには複数のコアが搭載されていてね。単純なエネルギー量はもちろん、その消費効率もコア毎に分担させることで解決している。そのような欠点を残すほど、私も愚かではないよ』

 

 

 一つのISにコアを複数、理論上は可能だ。だが、一つでも貴重なコアを複数個用意する上、それらをどう扱って機体を組めば良いのか。その全ての課題を、VTシステムで同じ機体を再現させるという方法で強引に突破。もう少し先の未来では世界初のデュアルコアISといったものが登場するのだが、この世界ではその技術に前例ができたようだ。

 『無人機』『VTシステム』『デュアルコア』といったIS技術を全て取り込んだデスティニーは、もはやただの第一世代ISでは……いや、ISという枠組みすら超えかねない機体へと変貌していた。

 

 そんな機体からの猛攻に、一夏は必死に耐え忍ぶしかなかった。

 だが、それも長くは続かない。一夏の防御が破られた……というわけではなく、デスティニーの軌道上にビームが走ったことで。

 

 

『マドカくんか。やはり私の横槍は気に入らなかったようだね』

 

 

 第一世代のコピーとは思えぬほどの超スピード。しかし、その飛行ルートさえ絞れれば狙い撃ちもできる。もっとも、当てるつもりで撃ったマドカの狙撃は容易く避けられてしまったが。

 

 

「……いや、それは許してやる。今、この手で、貴様の野望を叩き潰せるのだからな!」

 

 

『ほう?』

 

 

 ランサービットを射撃から近接の構えに持っていき、瞬時加速でデスティニーへと襲いかかる。

 マドカとしては、願ってもない機会だった。別部隊とはいえ、前線に出ることのない指示を出すだけの非力な上司。そんな人間の計画を、目の前で壊せるのだ。少なくとも、今までの溜飲は下がることだろう。

 

 

『いいだろう。君もテストケースとしては申し分ない。一人や二人増えたところで、この先さらに過酷な状況に身を投じることになるからね』

 

 

「……どこまでも癪に障る。そんな第一世代(ガラクタ)と出来損ないのシステム如きに、この私が堕とせるか!」

 

 

 黒騎士が迫る一方で、デスティニーはアロンダイトを背中のウェポンラックに収納。空いた手を両肩へと伸ばし、肩部装甲からビームブーメラン『フラッシュエッジ2』を引き抜き、二振りのサーベルとして黒騎士を迎え撃つ。

 ランサービットの猛攻、近接特化の黒騎士のそれは並の相手ならばまず受け切れない。だが、デスティニーはそのビームブーメラン二本のみで完全に捌いていた。むしろ反撃の隙すらあるといえのに、デスティニーはただ弾くだけ弾いて何もしない。黒騎士とその操縦者であるマドカが、完全に手玉に取られている。

 

 

『君のことは評価しているのだよマドカくん。それだけに、嬉しい誤算だ。君ほどの力を持ってしても、このデスティニーに傷を負わせることは難しいようだ』

 

 

「ぐっ……何故だ、何故この私が白兵戦で押されている……!?」

 

 

 もう十分だと言わんばかりに、デスティニーが攻勢に移る。機動力にものをいわせた全方位からの斬撃に晒されるマドカ。機体には一つ、また一つの切り傷が付いていき、二本同時の切り上げで遂にランサービットすら両断されてしまう。

 

 

「うおぉぉぉぉぉッ!!」

 

 

 だが、一夏はそんな隙を狙って瞬時加速を行い、零落白夜の刃をデスティニーへと走らせる。ランサービットという大型の武器を破壊したのだ。ビームブーメランを持つ手は間に合わない。

 だが、デスティニーにその刃は届かなかった。

 

 

「ご、はっ……!?」

 

 

 一夏の胸部に、デスティニーの足先が突き刺さる。剣が届く間合い、それに踏み込む直前にデスティニーは一瞬で距離を詰め、蹴りによって一夏の肺から息を追い出させた。

 

 

「な……なんだよ、それ……なんで、アイツの動きが……!」

 

 

 それは現実逃避にも近かった。あの体制から、あの速度で、あの威力。蹴りというのは、大地という支えがあって初めて成立するもの。飛び蹴りという宙で蹴りを放つ手段はあるが、それも結局は地面を蹴って勢いをつけなければ威力は見込めない。

 

 つまり、宙を浮くISで蹴りを行うという動作は非効率なのだ。やるにしても、それはただスラスターの勢いに任せた突撃の形になる。

 だというのに、空という何のとっかかりもないはずの場所で、蹴りという技を一つの武器にまで昇華させたパイロットがいた。今デスティニーから受けた蹴りは、まさにその人物が編み出した技を完璧に……いや、それ以上に再現している。

 

 

『あぁ、説明が足りていなかったね。VTシステムとはいったが、コピーに成功したのは機体だけでね。肝心の操縦者の動きは何も入力されていない状態だ』

 

 

 VTシステムは本来機体の再現ではなく、その操縦者に焦点を当てたもの。かつてモンドグロッソで結果を残したIS操縦者、織斑千冬というブリュンヒルデを筆頭とした分野別の世界のトップ、ヴァルキリーと呼ばれる称号を持つ人間の動きにまで目をつけたが故のヴァルキリー・トレース・システム。

 だが、当然モンドグロッソのような公式戦にデスティニーのデータは存在しない。今稼働しているVTシステムはデュランダルがほぼ一から作成したと言っていい。

 

 

『つまり、このVTシステムの挙動は内部に取り込んだ人間の戦闘スキルに依存しているのだよ。……さて、一夏くん。どうやら君は、このデスティニーの動きに心当たり(・・・・)があるようだな?』

 

 

 デュランダルの物言いは、もはや答えに近かった。何度も、何度も何度も、ヒマさえあれば自分に挑んできた男。零落白夜があるからなんとか勝負になるほど、単純な実力では向こうが上だと認めざるを得ないほどの好敵手。

 デスティニーのVTシステム。その性能が完全以上に引き出しているのは……一夏にとってかけがえのない友によるものだと。

 

 

「……なんでだよ」

 

 

 先ほどのダメージに加えてフリーダムからの切り傷もあり、胸部の装甲からボロボロと破片が溢れ落ちる。だが、それも気に留めずに一夏は体を震わせ、激昂した。

 

 

「なんで飛鳥なんだよ!!ただでさえアイツは苦しい思いしてたっていうのに、お前らにまで狙われて!どれだけアイツの想いを弄べば気が済むんだ!!」

 

 

『……君は"SEED(シード)"というものを知っているかね?』

 

 

「シード?それと飛鳥になんの関係が……!」

 

 

 ぶつけられる怒りをまるでものともせず、デュランダルは語り出した。

 

 

『人類の歴史には、数多くの革新があった。この街並みも、長い年月と幾度もの変化を迎えて形作られたもの。人間がこの星最大の霊長類たる所以がある』

 

 

 まるで関係のない話題。戦場でするには、あまりにも場違いな内容。だが、デュランダルの真意はその次にあった。

 

 

『そして、その発展の前には常に先駆者がいた。凡人にできないことを、考えもつかないことを為した者たちの姿が。……その者たちは、ある特別な素質を持っていたと考えられている。人類を次の段階へと導けるだけの能力を持った存在……SEEDと呼ばれる者が、この世では突然にして出現するのだ』

 

 

「な、何が言いたい……!」

 

 

『飛鳥くんもそのSEEDだと言うことだよ。現に、彼は女性でしか動かせないはずのISを動かしている』

 

 

 口頭のみの説明ということもあってか、一夏はSEEDがどんなものなのかは理解しきれていない。だが、飛鳥がそのSEEDだということは直感で感じとり、同時にもう一つの疑問も抱いた。

 

 

「だったら、俺だってISを動かしてるじゃないか!わざわざ飛鳥を狙う必要なんて……!」

 

 

『君ではダメなのだよ、織斑一夏くん。君の出自(・・・・)もあるが、それ以上に彼にはこの世界を否定するだけの権利と力を持っている』

 

 

「な、なんだって……?」

 

 

 自分と飛鳥との出自の違い。それも気になるが、デュランダルが重視しているのはそちらではない。

 権利と力。権利というのは、飛鳥がISの被害者だから。家族も人生も全て狂わされた彼には、世界を断罪する権利があるといいたいのだろう。

 だが、力とはどういうことか。飛鳥自身の実力を指しているというだけでは、何かが引っかかる。

 

 こちらの考えが読めているかのように、デュランダルはピンポイントにその疑問の答えを口にする。

 

 

『彼はISに全てに奪われながらも、ISを動かす才能があった。それも、この一年足らずで国家代表にすら比肩するほどに。ただISを動かせるだけでなく、異常なまでの成長性。それこそが彼のSEEDとしての特異性と私は断定した』

 

 

 一夏と飛鳥のIS歴はほとんど変わらない。コンパスでの研修があった分、飛鳥が少しだけ長いぐらいで。にも関わらず、差は開いた。

 自分を倒すために工夫を凝らし、鍛錬を積んでいたから?いや、それは違う。飛鳥のその貪欲な姿勢を見ていたら、一瞬で追い抜かれそうな気がした。だからこっちもそれ相応の特訓はしてきた。時には実の姉にまで頭を下げて。

 

 それなのに、負けた。京都に行く前、飛鳥との模擬戦。どちらが勝ってもおかしくはない戦い。だけど、勝ったはずの飛鳥の顔は晴れないものだった。純粋な実力で勝ったのではない、と飛鳥自身が痛感していたのだ。……SEEDによる異常な成長。その片鱗は、すでに明確な形となって現れていた。

 

 

『進藤飛鳥という名のSEEDは、ISを以てISを制すために存在した。そこで私はこうも考えた。全てのISを倒すことができるのであれば、それはISという時代に終わりを迎えさせることも可能なのではないか、とね?』

 

 

「……そんなこと、アイツは望んでないッ!!」

 

 

 飛鳥と真由の対話の中で飛鳥が示した答えを、一夏は知らない。しかし、謎の確信があった。飛鳥はそのようなことを願う人物ではないと、今まで接してきた彼との記憶がそう訴える。

 

 

『彼の意思ではない、それは事実としても確かだ。だが、力が必ずしも正しい方向に働くことはないのだよ。それは今も証明されているだろう?ISによって形作られたこの時代がな』

 

 

「そ、それは…………っ」

 

 

 そもそもISとは、篠ノ之束が宇宙空間での活動を想定して開発されたマルチフォーム・スーツ。いわば宇宙服としての側面が強かったのだ。

 だが、今のISは『従来の兵器を過去にしたパワード・スーツ』という評価がつけられている。篠ノ之束が起こした白騎士事件で、各国の保有するミサイルと戦闘機の無力化をいとも容易く行ったことで、ISは宇宙開発ではなく、軍事利用されることで人の世に浸透した。

 

 その結果として、世界はIS中心に回るようになり、変化に伴って様々な澱みが生まれていった。不都合な事実を隠すIS委員会や女性権利団体などがその筆頭だろう。

 

 

『ISとはあまりに強大な力。それに溺れた人類の作る未来など、破滅以外にありえない。故に、私は動いた。人類の未来を閉ざさぬために。ISによって歪んだ世界ならば、その根源を断つ。人類の手から、全てのISを奪うことでな』

 

 

「……そんなことのために飛鳥を利用されてたまるか!第一、全てのISを倒すなんて、できるわけがない!!」

 

 

『できるとも。だからこそ私は最高の機体を作り上げたのだ。最高の操縦者のためにね。私も無謀な賭けをしている身だが……あえて言わせてもらおう』

 

 

 デスティニーの身体がブレた。一夏が再度デスティニーの姿を知覚したのは、光を溜め込んだデスティニーの右手のひらが、自身の身体に押し当てられていた瞬間だった。

 

 

『君たちに、このデスティニーは倒せない』

 

 

 掌部ビーム砲『パルマフィオキーナ』、デスティニーの両手に備えられた強力無比な光弾が、ゼロ距離で白式に命中。デスティニーが離れた瞬間に、爆発を起こした。

 先ほどの零落白夜の使用もあり、白式のシールドエネルギーは枯渇寸前。勝負は決したと言っていいだろう。

 

 

 

 

 

 白式の装甲が内側から押し上げられ、全く別のISがその姿を見せなければ。

 

 

『ほう、これは……!』

 

 

 デュランダルは感嘆の声を上げる。変質した白式は、かつてとある事件に関わったISと瓜二つの姿をしていた。だが、そのような姿になったのも納得の行くことがある。

 

 白式のISコアには、第零世代型IS『白騎士』と同じコアが使われているのだから。

 

 

『……白騎士。このような形でこの二機が揃うとは』

 

 

 十年前の事件を最後に姿を消した原初のISと、歴史の闇に消えたプロトタイプ。

 出会うはずのない二つのオリジナルが、今ここに邂逅した。

 

 

『では、見せてもらおうか。白騎士の性能とやらを!』




 今更過ぎますが、ISで蹴りの動作を行うのは難しいって認識でいいと思うのですよね。アシスト諸々あるとはいえ、蹴りに威力を乗せるとなると勢いだけでなく、重心や軸なんかも保たねばならないわけですからね。地面という支えのない状態で。
 そうなると、地上で蹴りを放つのと同じ条件下になるようにスラスターを上手く活用して空中で完璧に姿勢制御しなければならないのかと思ってたりするのですが、筆者はISに乗ったこともなければ空中に浮き続けた経験もないので真相は闇の中……。
 しかしこう考えると、宇宙空間に浮いてる状態でMSに蹴り技させてるパイロットって相当すごいのでは……?

 それと、かなり漠然としていますが、飛鳥くんがISを動かせる理由が明らかになりました。神様転生してるんだから特典のおまけ……という風に処理することもできましたが、せっかくなのでそれらしい理由をつけました。
 では飛鳥くんはチート級パイロットなのか?と言われると答えはNOです。現に一夏くんとの戦績はめちゃくちゃ悪いので。いくら強くても機体相性の悪さをひっくり返せるほどではありません。単純な強さ以外にも勝負を分ける要素は沢山ありますからね。愛とかメンタルとか生きる意志とか。
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