芋者奮闘録 作:舞い降りるズゴック
「なぁ真由!もっとこう穏便というか、スマートなやり方はなかったのか!?」
「こっから上は認証地獄!ぶち抜いた方が早いの!!」
上階への道をウイングから伸びるシュトゥルムスヴァーハーによる高威力のビーム砲によって無理矢理作り出し、真由に引っ張られながら通り抜けていく。
破壊活動によるアラートと共に防衛システムの一つであろうロボットが次々と通路の先に現れるが、ビームライフルの一撃で容易く撃破されていく。一応、算段はつけていたというわけか。しかし、ロボットか……。
「ここ、
そう、この建物には人の気配がまるでない。それこそ内部にいるのは俺と真由の二人だけなのではと思わせるほど。俺の抱くデュランダルへの不気味さは、更に大きくなっていた。
「…………組織としての『デュランダル』は、そう大きなものじゃないの。むしろ亡国機業の中では小規模な方。構成員も数えるほどしかいないし、足りない手は多くの機械に頼ってる」
「……それはムリがあるだろ。あの5体の無人機、デュランダルの計画に必要だったとはいえ短期間で用意できるものか?」
あのブラックナイトスコードが俺を捉え、究極のデスティニーを作り上げるための重要なピースだったのは理解できる。だがパイロットも定まっていない状況、つまり俺が男性操縦者として出てくるまでに製作が進んでいたとは思えない。
そもそも、無人ISの存在自体がつい最近IS学園に現れ、その存在も秘匿される程の希少さだ。もし本当に人手がいないとなると、ブラックナイトスコードの開発には『天災』が関わっている。あるいは『IS学園に襲撃してきた無人機はデュランダルのものであった』ということでなければ納得し難い。
「そこが問題なの。私の目から見ても、デュランダルのパイプは広すぎる。それこそ、各国に拠点一つは最低限でも用意してあるくらいには。多分、昔は組織内でかなりの影響力を持ってたのが、なんらかの理由で縮小した……とかだと思う」
昔は巨大な力を持っていた名残というわけか。裏の組織なら衰えれば冷徹に切り捨てるものかと思っていたが。……いや、仮に切り捨てられたとしても『体制を維持できるだけの何か』があるのか?
ひとまず、短期間でISを用意できたカラクリは解けた。まず別々の場所でパーツを生産。それを幾つもの場所で同時に行わせ、それを集めることで機体を組み上げる。肝心のコアは……そもそも無人機に既存のコアが使われていたケースはなかった。篠ノ之束が関与したのは確実だが、コアだけをそう簡単に渡すとは到底思えない。
待てよ、そういえば……。
「デュランダルから聞いたよ。真由、お前は俺を助けるために亡国機業に入ったんだってな」
「……そうだよ。お兄ちゃんを助けられるなら私、どんなことだって」
「でも、
真由との思わぬ再会。あの時は気が動転していたのもあって、今ようやく違和感に気づいた。真由は世界からISを無くせば、俺を救うことができると言っていた。だが、方法が
確かに世界そのものからISが消えれば、当然ISに乗る必要はなくなる。それは女尊男卑の根元にもなっていたIS操縦者という特権がなくなることを意味する。当然、俺や一夏にも適用されることだ。
だが、
つまり、世界からISを消すというのは真由自身が抱いた考えではなく、それを目論んでいるのは……。
「よし、次を抜ければ……!」
扉をビームサーベルで切り裂き、通路をひたすらに走る。真由のセリフからも察するに、もう出口は近いのだろう。
だが、
その予感は、次の扉を開いた先で確信に変わった。
「自由、といっても。それはこの施設のみに限定されていると聞かされていたはずだが」
「……アンタもグルってわけか。
開けた部屋の中央に立っているのは、フェイスの社長であるキィノ・レバード。その姿を見て、俺も真由も足を止める。フェイス社が開発したとされるフェムテク装甲が無人機に使われていたのも、モノクローム・アバターに武器が横流しされていたのも、真由の手によってのみ発動する自爆システムがイージスシルエットに取り付けられていたのも、これで合点がいく。
キィノ・レバードは、初めからデュランダル側の人間だったのだ。
「そういうことだ。デュランダルの意思の元に動く以上、君たちの勝手には目を瞑っていたが……この先からはそうもいかない」
「やっぱり、出口はこの先か」
「……キィノ・レバード。邪魔をするなら容赦はしない」
「それはこちらのセリフだ。進藤飛鳥は我々の計画に欠かせぬ存在。ここで引き返さぬのであれば…………私が手を下すまでだ」
キィノ・レバードから殺気が放たれる。どうあっても俺たちの逃走を許すつもりはないらしい。他にIS操縦者や、先程のような無人ロボットの出る気配はない。真由とキィノ・レバードの一騎打ちだ。
臨戦体制に入る前に、真由が一瞬だけこちらに目配せする。
「……真由」
「任せて、お兄ちゃん。何があっても、お兄ちゃんはここから連れ出してあげる。そのために……今まで生きてきたんだ」
真由から離れ、できるだけ戦闘に巻き込まれない位置まで走る。それを見て、ようやくキィノ・レバードも自身のISを展開した。
「残念だ。君はもっと利口だと思っていたのだが」
「たとえ最善じゃなくても、最悪よりはマシ。お兄ちゃんを、アンタらの兵器になんてさせてたまるか!!」
妹の勇ましさに心打たれつつも、それ以上に悪寒がする。真由の実力は恐らく俺以上にわかっているはず。ライジング・フリーダムもここまでの強行突破で消耗しているとはいえ、戦いに大きな影響は与えないだろう。
キィノ・レバード、にも関わらず何故一人で?その違和感は、すぐに解消された。たった今、フリーダムの翼が蜂の巣にされ、金属片となって焼け落ちた。
(ま、まさか!?いや、フェムテク装甲に複数基のドラグーン技術、材料はもう揃っていた……!)
キィノ・レバードの全身を覆い尽くす、白い装甲に金色の装飾が走る高貴な機体。その頭部に至っては、記憶に新しいある機体と非常に似通っていた。
「降伏勧告はしない。お前の愚行は、この『カルラ』の力を持って止めさせてもらう」
ブラックナイトスコード最後の一騎、カルラ。それがキィノ・レバードの専用機として翼を広げ、俺たちの道を阻んでいた。
実は京都編の直前に示唆されていたキィノ・レバードの専用機。その正体がカルラであることが遂に明らかになりました。映画では実現しえなかったライフリvsカルラのカードをここに組ませていただきました。初っ端ドラグーンでシュトゥルムスヴァーハー破壊されましたけどね()
デュランダルの内情についてもやっと言及され始めましたが、その全貌が明かされるのもそう遠くはないのかも……。そこら辺はこの作中で『デュランダルをよく知る人物』の口から語らせる予定です。