芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 ガンダムは目立たせる。ISの設定と世界観は活かす。両方やらなくっちゃならないのが二次創作の辛いところだ(某ギャング風)
 ……いや、特に今はオリ展開に突入してる時期なので、そこのところ真面目に気をつけなければと思ってます。

 


『想い』だけでは救えぬもの

「くっ……こんな機体、いつの間に!」

 

 

 翼を失ったことでハイマットモードによる機動力の向上もない。それでも抗えているのは、自らもドラグーンを使用したことがあり、一対多による戦闘経験が豊富であることが活かされているのだろう。 

 

 

「進藤飛鳥の乗るデスティニー、それを超える相手を用意することは不可能に近い。だが兵器としてのISという意味では、限りなく完成に近いもの(・・・・・・・・・・・)がこの世には存在するのでね。その咎を許さぬための機体だ。……その初陣がこのような形になろうとはな」

 

 

 カルラのドラグーン『サハスラブジャ』が情け容赦ない火力制圧を継続している。一基につき4本のビームが照射される中、ビームカッターを展開して直接フリーダムを切り裂こうとするものも混じる。迎撃はできない。一基を打ち落とそうものなら、他の七基が確実に仕留めにかかるであろう。

 それを直感で理解していた真由は、一点狙い。飛び回るドラグーンではなく、先ほどから全く動かぬカルラ本体に仕掛けるチャンスを伺っていた。

 

 

(ドラグーン、私が使ってた時よりずっと精度がいい。改良型にしたって、そもそも動かすこと自体が難しいはず。遠隔操作に集中してるなら、距離を詰めれば……!)

 

 

 ストライクライジング・フリーダムの時のように数基一組ではなく、ドラグーン個別がそれぞれ操作されているような動き。

 であれば、それを扱うパイロットの負荷も相当。ドラグーンのみで圧倒していることもあって、キィノ・レバードがその場から動かないのもわからぬでもない。

 

 

「ッ!」

 

 

「無駄だ」

 

 

 牽制とばかりにビームライフルを構える。が、照準を合わせる間にもドラグーンの猛攻が止まるはずもなく、流れるように真っ二つに切り裂かれる。

 当然、誘爆が起こる。だが、実際に起こった爆風はそれ以上。ビームライフルはドラグーンを釣り出す囮、あえて攻撃させることで腰部のレールガンから注意を逸らし、地面に向けて射撃を行ったのだ。更なる爆発によって砂埃が舞い、室内の大半を埋め尽くす。

 ISのハイパーセンサーの前では姿を隠し切ることはできないが、それでも僅かな隙を付くには十分だった。

 

 

「はあぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 両手にビームサーベルを構え、シールドブーメランと共に突撃する。さらに瞬時加速の勢いも加わった高速の一手。

 しかし、これに反応できないほどキィノ・レバードも下手を打っていない。背後から幾つもの光線が、フリーダムに向かって放たれる。

 せっかくの奇襲も、直撃を受けては元も子もない。両腕のビームシールドとシールドブーメランによる三面防御で、あらゆる角度からのビーム攻撃を防いでいく。

 

 だが、それすらも掻い潜って、ビームカッターを展開した二基のドラグーンがビームサーベルを裏から弾いた。二つのサーベルはカルラの後方にまで飛ばされ、もはや回収することすら困難。

 

 それでも真由は前に踏み込み、両手を頭の上に掲げた。

 

 

「ほう、隠し球はお互いに仕込んでいたというわけか……!」

 

 

 ライジング・フリーダムが失った近接武装は、あくまで基本装備(プリセット)。つまり拡張領域さえ空いていれば、新たな武装を量子変換させて置くことも可能なのだ。

 デスティニーの持つ『アロンダイト』を凌駕する大きさの、ビームと実体の両方の刃を持つ剣『シュベルトゲベール』。真由の高く掲げられた手に姿を現したその剣は、キィノ・レバードのカルラを両断できるだけの間合いにあった。

 

 

(よし、取った!!)

 

 

 キィノ・レバードも双剣を構え、迎撃の構えを取る。だが、それも想定の範疇。近接戦に集中するなら、ドラグーンの動きも鈍くなる。ならば、背面の防御に回しているシールドブーメランを攻撃に転用することができる。

 

 如何にフェムテク装甲であろうと、どちらの一撃も大きなダメージになる。とはいえ、この全霊をかけた攻めでもシールドエネルギーを全損できるほど柔な機体ではないだろう。

 それでいい。これは模擬戦でも公式戦でもない。シールドエネルギーを全て削らずとも、ある程度行動を制限させられたなら、あとは飛鳥を連れて逃げるだけだ。

 

 シュベルトゲベールが振り降ろされる。その刹那、飛鳥の叫ぶような声が届いた。

 

 

「避けろ真由!!両方だ(・・・)!挟み撃ちにされる!!」

 

 

「えっ!?」

 

 

 兄の一声によって、ドラグーンの様子がおかしいことに気づく。動いている。先程の挙動と変わらず、制限なしに。目と鼻の先にいる、ドラグーンを動かしているはずのキィノ・レバード本人の動きにも、何の淀みも見受けられない。

 想定もしたくないような無法の所業。カルラは、キィノ・レバードは、ドラグーンの操作による自身の動きへの影響をきたさないとでもいうのか。

 

 ドラグーンが稼働している以上、シールドブーメランを動かすことはできない。そのままシュベルトゲベールによる重い一振りを繰り出すも、同じくビームと実体剣の特性を持った双剣によって受け止められてしまう。

 同時にドラグーンによる射撃と斬撃の苛烈な攻撃に、シールドは耐えきれず爆散してしまう。

 

 

「まだ、終われるかッ!」

 

 

 受け止められたシュベルトゲベールを強引に振り抜き、カルラの防御を崩す。双剣が弾かれ、ボディが剥き出しになったところに返しの一撃を狙う。

 胸部の辺り、一部の装甲がスライドして、砲身が覗いている中で。

 

 

「あ…………」

 

 

「茶番はここまでだ」

 

 

 超高インパルス砲『アドゥロ・オンジ』が、機体を穿つように放たれる。各部からスパークを発しながら、ライジング・フリーダムは硬い床に叩きつけられ、真由の身体にも幾つかの箇所から血が流れていた。

 

 

「真由ッ!……うっ!?」

 

 

「大人しくしてもらおうか、兄妹共々な」

 

 

 真由に駆け寄ろうとした飛鳥に、ドラグーンから伸びるビームの刃が突きつけられる。他のドラグーンも、横向きに倒れる真由の囲いとなって宙に浮いていた。

 

 

「ガフッ……はぁ、はぁっ……」

 

 

「真由……もういい、やめてくれ!これ以上傷つくのは……!」

 

 

 キィノ・レバードを睨んだまま、真由は身体を捻ってうつ伏せの姿勢になる。まだ立ち上がるつもりだ。

 そんな真由を冷淡な目で見下ろし、キィノ・レバードは残酷な現実を突きつける。

 

 

「仮に、我々の手から逃れたとしよう。その先に待つのは、お前が憎むISの世界だ。お前たち兄妹の存在を認めぬ者たちが幅を効かせる世界だ。お前の理想に生きたところで、待つのは破滅のみだ。……いいのか?そんな未来に兄を巻き込んで」

 

 

 ……キィノ・レバードの言うことも間違いではない。ここから脱出しても、兄妹揃って行く宛てなんてどこにもない。IS学園を始め匿ってくれるところがあったとしても、それ以上の権力と圧力を前にして果たしてどこまで持つか。

 亡国機業に加担したからではない。もっと前から、俺たちの未来は閉ざされていたのだ。

 

 

「それ、でも……」

 

 

 血を流しながら、腕を突き立てて身を起こす。デュランダルの言葉を聞いてもなお、真由の目に翳りはなかった。

 

 

「それでも……!私は……お兄ちゃんを、助けるッ!!」

 

 

「真由……っ」

 

 

 ついに立ち上がった真由だが、身体はふらつき、機体はもはや戦闘を行えないほどの損傷を負っている。それでも真由を突き動かすのは、兄である進藤飛鳥の存在だ。

 

 

「だってお兄ちゃんは……!父さんと母さんがいなくなった時から、ずっと……ずっと笑えてない(・・・・・)!!私以上に辛かったはずなのに、いつも痩せ我慢して無茶ばかりする……!それがいつまでも続くなら、私が終わらせるしかない!お兄ちゃんが、心の底から救われるなら、私はなんだって差し出せる……!!」

 

 

「…………最後の警告だ。これ以上続けるならば、もはや命の保証はしない」

 

 

「言ったでしょ、なんだって差し出せるって……!」

 

 

 今にも崩れ落ちそうな脚で前に踏み出す。もはや戦いにもならないだろうに。…………でも、真由の想いは本物だ。今更引くことなんてできない。

 

 だから俺も、賭けに出る決心がついた(・・・・・・・・・・・)

 

 

「止まれ、進藤飛鳥。何のつもりだ」

 

 

「そういってくれるなら、中身が死体でも動くほどデスティニーは万能じゃないってことか。安心したよ」

 

 

「お、お兄ちゃん?なんで……」

 

 

 ドラグーンを突きつけられながらも、俺は歩いて真由とキィノ・レバードの間に割り込んだ。

 

 

「……どうせ聞いてるだろ?声ぐらい返せよ、デュランダル」

 

 

『君の方から呼ぶとは……良い返事を期待してもいいということかな?』

 

 

 相変わらず声だけでしか存在を見せないデュランダルだが、直接会話ができるなら都合がいい。

 

 

「あぁ……乗ってやるよ(・・・・・・)。お前たちの計画とやらに」

 

 

「っ!?な、なに、いってるの……?そんなことしたら、お兄ちゃんは……!」

 

 

 世界からISを消し去るというデュランダルの計画に、デスティニーが使われることは絶対だ。実力行使の形ではないのなら、全てのISを凌駕する力を持ったISなんて作るわけがない。

 当然、そのパイロットも俺だ。……もし、世界からISが消えたのだとしても、それを実行した者が進藤飛鳥であると知る人間がいるのなら、例え世界が変わっても俺が狙われるということは変わらない。

 きっと、真由はそれを理解していたから行動に移してくれたのだろう。どんなに小さい可能性でも、俺が平穏に暮らせる未来を願って。

 

 

『私にとって非常に聞こえのいい返事だ。……まだ言いたいことはあるだろう?』

 

 

 先程まで逃走しようとしていた人物が掌を返して協力するなど、鵜呑みにするにはあまりにも信じ難い。交渉のために己を呼んだのは明白、飛鳥に続きを話すようデュランダルは促した。

 

 

「……これは交渉だ。お前たちの計画には、どうしても俺が必要らしいからな。だから、三つほど条件を飲んでもらう」

 

 

『それを私が守る保証があるとでも?』

 

 

「その時は……全力で抵抗するよ。最悪自害してでもな」

 

 

『…………本気のようだね。聞かせてくれたまえ』

 

 

 裏の組織にしては、こちらに譲歩してくれるのはわかっていた。そこに漬け込んで精々利用させてもらう。

 

 

「進藤真由にこれ以上の危害を加えないこと。これが一つ目だ」

 

 

 まずは真由の安全だ。先程のキィノ・レバードの殺気は確かなものだった。俺と違って、真由は計画に必要な駒ではないのだろう。

 どちらにせよ、確実に守るにはこれしかない。

 

 

「二つ目は……真由の逃亡を見逃すこと」

 

 

「っ!?ま、待ってよ、お兄ちゃん……私だけなんて嫌だよ!なんのためにここまで……ッ!!」

 

 

 真由の怒りはもっともだ。でも、お前が俺を助けたいように、俺もお前を必要以上に苦しませたくない。

 

 

「最後に…………真由と、話をさせてくれ」

 

 

『いいだろう、交渉は成立だ。君の選択に後悔がないことを祈ろう』

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんのバカ!!なんで、こんなこと……!」

 

 

「真由、わかってくれ。これもお前のためだ」

 

 

 簡単な手当しかしていないというのに、気にも留めず俺の肩を力強く掴む真由。涙を流しながら激昂する真由に対して、真っ直ぐ見つめることしかできなかった。

 

 

「私のためなら、逃げてよッ!!私なんてどうなってもいいから!お兄ちゃんだけは幸せに生きてよぉッ!!」

 

 

「っ…………」

 

 

 俺は最低の兄だ。何年もかけて俺のために戦ってきた妹の想いを、最悪のタイミングで踏み躙った。そのことに心を痛めないわけがない。むしろ……今にも胸が張り裂けそうだ。

 俺の胸で泣きじゃくる真由を、優しく抱きしめる。

 

 

「俺も、お前には幸せでいてほしかった。今も昔もそれは変わらない。…………でも、その度に俺は間違える」

 

 

 あの日、女性権利団体に連れていかれたから、真由は裏の世界で生きることになった。そんな組織から、真由を解き放とうとして、真由の想いを無下にした。

 こうなることならいっそ、俺と関わらないのが真由にとって一番の幸せなのかもしれない。

 

 

「だから真由、俺のことはもういい。俺に囚われる必要はない。全部忘れて、平和に生きてくれ。そのための世界は……俺が作ってみせる」

 

 

「嫌だよ!忘れない、忘れたくなんかない!!お兄ちゃんがいないのに、私だけ幸せになんて、そんなの……!」

 

 

 泣きっぱなしの真由の頭を軽く撫で、背中を叩く。どこか懐かしい気持ちが湧いてきた。

 

 

「なんだ、こういうところは昔のままか?泣き虫で、甘えん坊で…………誰よりも、優しいヤツだったよな。お前は」

 

 

「…………ばか。お兄ちゃんだって、何も変わってないじゃん……!!真っ直ぐで、思い込み激しくて、自分のことなんか後回しで、いっつも傷ついてッ!…………でも、私のことをいつでも助けてくれる。頼れるお兄ちゃんのままだよ……!!」

 

 

 真由の泣き腫らした顔に笑みが浮かぶ。子供の頃、家族揃って過ごした平穏な日々は戻らない。でも、その思い出は色褪せることはなく、俺たち兄妹の確かな絆となって残っていた。

 

 

「…………今の隙にコードを入力しておいた。これを使えば、あとはなんとかなる」

 

 

「お兄ちゃん?……キャッ!?」

 

 

 真由を胸から剥がし、軽く突き飛ばす。もう十分だ。

 

 

「行け、真由。もうお別れだ。ISには二度と関わるなよ」

 

 

「お兄ちゃんッ……!」

 

 

「早く行けッ!!振り返らずに飛ぶんだ!!俺は……もうお前の兄じゃない!デュランダル、デスティニーのパイロットの進藤飛鳥だ!!」

 

 

「…………うぅッ!」

 

 

 翼を失い、色すら抜けて傷だらけのライジング・フリーダム。だが、その機体はまだ空に上がるだけの力を持ち、真由をこの牢獄から連れ出した。

 外は明るく、辺り一面に海原が広がる。飛び去ったあとに残されたのは、アジトの入り口が隠された小さな島が……後のアカツキ島と名付けられることになる、一つの孤島での出来事だった。

 

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ……!あ……あぁ……!!」

 

 

 ただ、笑っていて欲しかった。何気ないことで、一緒になって笑顔が作れる日々を取り戻したかっただけだった。

 だが、この強大で歪みに歪んだ運命の前では、どれだけ足掻こうとも無駄に終わってしまった。

 

 今の真由に残されたのは、この空虚な自由だけだった。

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 泣き叫ぶ声が、どこまでも続く広い空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良かったのかい?猶予はいくらでも与えるつもりだったが』

 

 

「いいんだ。……俺が、耐えられなくなるから」

 

 

『…………そうか』

 

 

 拳を握りしめ、下唇を噛み締める。泣くわけにはいかない。アイツのに比べたら、俺の悲しみなんてちっぽけなものだ。

 

 

「……真由の件がある以上、約束は守るさ。計画には付き合うよ」

 

 

『我々に協力的な姿勢を見せたのは嬉しく思う。……私の想像以上に乗り気なのは驚いたがね』

 

 

「そうでもないけどな。ISが消えてもいいとは、今でも思ってない」

 

 

 デュランダルには、ISを消さなくてはならないだけの目的があるのかもしれない。それが悪ではなく、善だったとしても、俺は最後まで前向きにはなれないだろう。

 

 

「それに、俺は信頼してるんだ。デスティニーだろうが、SEEDだろうが、なにが相手でも立ち向かってくれるヤツらがいることを」




 プロローグはこれにて終了。次回からようやく原作キャラ出せると思います。

 またしても離れ離れになった飛鳥と真由ですが、今度は自分の意思で、真由が無事に生きれると確信して送り出せたのは、飛鳥にとってある種の救いだったのかもしれません。
 一方で真由は、これまでライフリを得て飛鳥のために奔走していたわけですが、前話のタイトルにある通り自由には代償が付き物。自身の理想を追求し続けた結果が、救いたかったはずの飛鳥を救えなかったという結末に繋がったというわけです。

 一人彷徨うことになった真由と、飛鳥を手に入れて本格的に稼働し始めるデュランダルが、IS世界にどのような影響を及ぼすかは、乞うご期待。

 それとカルラは意外に大事な役だったりします。他のブラックナイトスコードとは違って、電子戦に優れているのでね。これから先の展開で「それ持ち出されたらヤバくね?」なヤツを描写外で止める役割です。色んな意味でメタな役割です。
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