芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 今回の話、過去一キャラが多い話になったと思います。ただしオリ主は不在です。

 


『コンパス』

 全てのISコアを集めることでISを世界から消そうとするデュランダル。その片棒を担がされようとしている飛鳥のために、IS学園の面々は彼の救助を決定した。

 そして、それに賛同するように現れたラクス・クライン率いるコンパスが、IS学園へと協力を申し出ていた。

 

 

「……コンパスの空白の社長席。噂には聞いていたが、まさか歌手としても活動していたとは」

 

 

「業務の大半は吉良副社長が担っているので、私が社長として表舞台に立つことはありませんから。秘匿の必要性があるほど、コンパスも複雑な事情を抱えているのです。例えば……我々コンパスの起源は(・・・・・・・・・・)デュランダルにあることなど(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

『!?』

 

 

 秘匿されていたコンパスの秘密、その一つが呆気なく明かされる。それも、今現在世界を混乱させているテロリストとの繋がりがあるというコンパスにとって致命的ともいえるものを。

 

 

「かつてデュランダルは、人類により良き未来を指し示すために創立されたと聞いています。その過程で亡国機業に属すことになり、それに反発した一部の勢力が袂を分かち、新しく設立された組織がコンパスなのです」

 

 

「……何か裏があると思って経歴は全部洗ってたけど、そんな真実が隠されていたとはね」

 

 

 一般的に知れ渡っているコンパスは、世界的なIS技術機関。だが、一歩間違えれば各国の技術を掠め取っているともいえる存在が何故許されていたのか。それを推進できるだけの大きな力が裏で働いていたとなれば話は簡単だ。……簡単にできるほど、相応の組織力を持っているという逆説的な証明にもなるわけだが。

 

 

「デュランダルとコンパスは同じ理念を抱いています。ですが、デュランダルはいざとなれば強硬な手段……デスティニー・プランの実行に躊躇いはありません」

 

 

「貴女方は違うとでも?」

 

 

 疑いの目を掛け続ける千冬。コンパスが協力的な姿勢であることには偽りはないのだろう。今の千冬にとって優先すべきはデュランダルの計画を阻止すること。

 だからこそ、千冬は問う。それを遂行できるだけの何かが、コンパスにはあるのか。手を組むに値するあと一押し、その提示を要求した。

 

 

「はい。証拠……というには我々も強硬策を取ってしまいましたが、つい数時間前まで我々はデュランダルの重要と思われる拠点に攻め込んでいましたから。彼らの持つ戦力や計画の詳細も、そこでようやく入手できました」

 

 

「……今のコンパス、半分追われているようなものなのに……?」

 

 

 簪の呟きも最もだ。この短期間で、余裕もないにも関わらず、コンパスは先んじてデュランダルを止めようと躍起になっていたのだ。これだけの行動がただの猿芝居でなければ、コンパスは明確にデュランダルを脅威と見做してその足取りを追っていたことになる。

 

 

「突入した阿須澤さんによって保管されていた兵器(・・・・・・・・・)の八割は無力化に成功しました(・・・・・・・・・・・・・・)。しかし、デスティニーの妨害によって計画を中断させるには至らず、こうして皆様の元へ参らせていただきました」

 

 

「……あの、私の聞き間違いや曲解でなければ、阿須澤さん一人でとてつもない戦果を挙げている気がするのですが……」

 

 

「奇遇ね、セシリア。アタシも言葉足らずなんじゃないかと疑ってるところよ」

 

 

「クライン社長?デュランダルの拠点に乗り込んだのって、阿須澤さんだけ……ですか?」

 

 

 現実離れした情報に混乱しながらも、シャルロットが代表してラクス・クラインに疑問を述べた。

 阿須澤の強さは、飛鳥を通じて全員が認識していた。とはいえ、強さとは別の問題で、現在進行形で世界を脅かす組織の拠点に単身送り出す点では、阿須澤と同等かそれ以上にぶっ飛んでいる組織だというのも確かになるだろう。

 

 

「コンパス所属のIS操縦者は彼女だけですから。今は負傷して戦力として数えることはできないので、詳しくはまた後ほどで」

 

 

(((扱い雑ッ!?)))

 

 

 ある意味では阿須澤の人望が為せる技なのか、サラリと流されて本題に戻る。

 

 

「如何でしょう。あなた方がデュランダルに対抗し、飛鳥さんを救出するためであれば、我々は支援を惜しみません」

 

 

「……わかりました。提案を受け入れましょう」

 

 

 差し伸べられたラクス・クラインの手を千冬は握り返す。ここに、IS学園とコンパスの共同戦線が実現した。

 

 

 

 

 

「……というわけでして、すでに学園長から許可を頂いてこの場を間借りさせてもらっていますわ」

 

 

「そこまで根が回ってるなら俺たちに許可取る必要ありました……?」

 

 

 IS学園に存在する地下施設の一角。本来であれば入るだけでも権限が必要である場所は、学園の最高責任者の手によって開放されていた。

 臨時とは思えぬほど充実した設備に、絶え間なく作業を続ける整備員。その様はまるで、デュランダルに対抗するための前線基地のようだ。

 

 

「もちろんです。IS戦に入れば、今の私たちができることはそう多くありません。アナタ方に全てを託す以上、誠意を見せるのは当然のことですわ」

 

 

「そういうこった。飛鳥の坊主を助けるためってんなら、俺たちがしっかりサポートしてやる!」

 

 

 整備長であるマック・ヤードが工具箱片手に声をかけ、慌ただしく去っていく。もう少し見渡すと、この場には整備員以外にも技術部や情報部、解析班と思しき人間も密集している。部署が一ヶ所に固まっているために整備班への指示もダイレクトに伝えられ、休む間もなく動かされているのだろう。

 

 

「一体、何が行われているのだ……?」

 

 

「入手した情報の解析、デュランダルの現在の戦力予想、対策となる武装の開発・調整など、様々ですわ。もはや一刻の猶予もありませんから、多少無理を効かせてもらっています」

 

 

 箒の僅かな呟きにも、律儀に答える。なんとしてでもデュランダルによるデスティニー・プランを阻止する。この場に集まった者はその一心で動いているのだ。なにせ、自分たち以上にデュランダルを知っている組織はないのだから。

 

 

「社長、例の機体についてですが……」

 

 

「わかりましたわ。皆さん、見ていただきたいものがあります。ついてきていただけますか?」

 

 

 部下の一人からタブレットを受け取ったラクス・クライン。その背中を追うように専用機持ち達が足を運んだ先には……。

 

 

「こ、この機体は……デスティニー(・・・・・・)!?」

 

 

 器具で固定され鎮座していたのは、京都で見たものではなく、かつてフェイス社で見かけた機体の姿があった。

 

 

「えぇ、今世界を脅かしているISのオリジナル。第一世代のデスティニーですわ。こちらはデュランダルのアジトから脱出する際に、阿須澤さんが回収したものです」

 

 

 フェイスの社長を務めていたのは、キィノ・レバード。そんな彼女が管理していた機体とあれば、デュランダルの拠点にあることも納得がいく。

 

 ただ、一つだけ不自然な点があった。

 

 

「……このデスティニー、コアが入ったままみたいだ」

 

 

「そうなのです。阿須澤さんが回収する前からこの状態で保管されていたようです」

 

 

 今目と鼻の先にあるデスティニーには、ISコアが組み込まれたままだった。動かそうと思えば今すぐにでも起動できる。

 一同からすれば、その状況はとても奇妙に映っていた。

 

 

「いくらISとはいえ、この機体を戦力に数えるのは合理的ではないな。何か別に目的があったのか?」

 

 

 ラウラの疑問は至極真っ当。ISの技術進歩は早く、第三世代が主流となりつつある。そんな中で、試作段階ともいえる第一世代型のISが使用されることはありえない。数少ない貴重なコアを、このデスティニーの中でそのままにされているという事などありえないのだ。

 

 

「ボーディッヒさんの言った通り、僕たちもそれは不審に思って調べてみたんだ。でも直近のログはほとんど消えていて、わかったのはこのデスティニーが稼働していた期間だけだ」

 

 

 あとからやってきた吉良が解析の結果を語る。デスティニーに関することは彼の管轄でもあったようだ。それほどまでに、このデスティニーには謎が多い。

 

 

「最後に起動が確認されたのは、京都での亡国機業掃討作戦……その翌日(・・)です」

 

 

「翌日……その頃にはすでに新たなデスティニーが生まれていたはず。一体何故?」

 

 

 新デスティニーは、VTシステムを用いて形成された。それならば、コピー元のデータを集めるためだと解釈できる。だが、完成以降も稼働していたのであれば、そのデスティニーは一体何に使われたのか?

 

 

「断定はできませんが、デスティニーを必要とする『何か』の試運転というのが技術部からの見解です。別の可能性も考えられますが、相手はデュランダル。些細な情報でも警戒するには十分です」

 

 

 ただそこにあるだけというのに、不穏な雰囲気を醸し出している旧デスティニー。

 しかし、このエリアに存在するISはその一機だけではなかった。

 

 

「?すいません、あれは一体何を……」

 

 

「換装作業だよ。問題が立て続けに起きて、資材が不足しててね……。幸いウチ(コンパス)が開発したISは規格が近いから、第二世代の『フリーダム』を流用することにしたんだ」

 

 

 それなりに離れた先で、フリーダムのパーツが取り外され、アームによって運ばれていく。そのルートに沿って、吉良の先導の元に換装先の機体の元へと歩いていく。

 

 

「……そういえば、壊れた機体って阿須澤さんのですか?それに直したとしても、動かせる人がいないんじゃ?」

 

 

「いいや、機体も動かす人も外部からの助っ人のものなんだ。君たちと一緒にデュランダルとの戦いにも参戦する予定だよ」

 

 

 コンパスには阿須澤以外のIS乗りはいない。だが、新たに戦力となる者が出てきたため、IS学園に提供するものと同じだけのサポートを行っているのだ。

 

 

「私個人としても彼女には信頼を置いています。とある人物からの推薦でもありますから」

 

 

「へぇ、一体誰な、ん…………」

 

 

 言葉が失われる。フリーダムのパーツの一つ、腰部のレールガンが元となった機体と同じ位置に接続される。その機体は、一夏たちを幾度となく苦しめ、この現状に至る原因の一つでもあったからだ。

 後方から足跡が聞こえる。振り返ると、今まさに一夏らの脳裏に浮かんでいた人物がそこにいた。

 

 

「いいタイミングですわ。紹介します、我々に協力してくださるIS操縦者。進藤真由(・・・・)さんです」

 

 

「…………」

 

 

 デュランダルの側にいたはずの少女。驚愕する一夏たちと、その後方に佇む自身の機体を瞳に映す彼女は、一体何を思っているのか。




 ここに来て兄妹の所属が逆転しました。飛鳥はデュランダルのIS操縦者として、真由はコンパスのIS操縦者として、最後の戦いに挑むことになります。
 次回は真由がコンパスに合流した時の話からスタートします。

 ちなみに阿須澤が強襲時に使った機体は、第二世代のジャスティスにズゴックの外装つけてキャバリアーアイフリッドとフォランテスがついたものです。破壊工作の最中に帰投したデスティニーに不意を突かれ、ダメージを受け続けながらも撤退した形です。最後にアロンダイトでブッ刺されましたがなんとか生きてます。
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