芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 飛鳥の出番が減りすぎて真由が実質的な主人公と化してきた気がする。あれ、主人公交代ってこれ種s(ry

 


理想を追い求めて

「……………………うっ」

 

 

 見知らぬ部屋で目が覚める。なぜこのような場所で眠っているのか。記憶を辿る。デュランダルのアジトを脱出した後、一人海上を飛行する中、限界を迎えて墜落してしまった。

 その際に兄の手によって仕込まれたなんらかのコードを使ったことにより、機体ごと身体を固定されて何かに運ばれたような……。

 

 

「あら、おはようございます。具合は如何ですか?」

 

 

「ッ!…………誰。ここは、一体……」

 

 

「私はラクス・クライン。私達が今いるのは、コンパスの本拠地『ミレニアム』です」

 

 

 本社とは別の、コンパスという組織のメインベース『ミレニアム』。それもただの基地ではなく、海中を移動する巨大な船。あらゆる技術を駆使できるコンパスならではの法外な移動手段だ。

 その船の信号を辿れるのはごく僅かな手段であるのだが、その一つとしてキャバリアーアイフリッドの二号機がある。緊急離脱用のシステムとして、装備することで自動運転に任せればミレニアムへと直行するようになっている。もっとも、キャバリアー自体も正式な武装ではない。よって、それを知るのはコンパスの上層部か、あるいは実際にISを扱える者か。

 

 

「……そういう、こと」

 

 

 別れ際に飛鳥が与えたもの。それは自らを匿ってくれるであろう組織への切符だったというわけだ。真由にキャバリアーの起動コードを託せるのが飛鳥だけだったからこそ、コンパスは……ラクス・クラインは、彼女を迎え入れる判断を下したのだ。

 

 

「しばらくはここで休んでいくといいでしょう。大体のものはありますから、何か必要なものがあれば遠慮なく」

 

 

 何か事情があることは明白だった。デュランダルに対抗するためにも手札はできるだけ揃えておきたい。だが、心に傷を負っているであろう彼女に何かを強要することは、ラクスにはできなかった。彼女の兄も、それは許さないだろう。

 

 

「なら、私の……いや、アナタ達のIS(・・・・・・)を直して。フリーダムさえあれば、私の手で……!」

 

 

 そんな思惑と相反して、真由は戦うための力を……ISを求めた。このままじっとしていることなどできない。今もなお、兄は苦しんでいる。別れ際のあの強がりな態度が、何もしないという選択肢を真由から奪っていた。

 そのためにもまずは力が、ISが必要だ。真由の機体はライジング・フリーダム。フェイスやデュランダルではなく、コンパス製のものであるなら完璧に修理できるはずだと。

 

 

「……残念ですが、ライジング・フリーダムを直すことはできません。予備パーツはおろか、十分な資材すらないのです」

 

 

「っ……」

 

 

 コンパスは世界的な企業。それ故に、世間の動向に左右されやすい。度重なる圧力によって、経営には幾度となく影響が及ぼされており、存続のためにあらゆる費用を削減していた。

 さらにいえば、コンパスがここまで追い込まれたのは亡国機業の作戦にライジング・フリーダムが使われたこともある。自ら犯した過ちが、ここに来て返ってきてしまったのだ。

 

 

「もし我々にそれができたとして、その力でアナタは何をするおつもりですか?何のために力を欲するのですか?今アナタが動く理由は本当にありますか?」

 

 

「…………」

 

 

 ラクス・クラインは問う。真由が何かところで、この状況は好転するのか。デスティニーどころか、キィノ・レバードのカルラにすら勝てなかったのに?それに飛鳥が真由を逃したのは、戦いから遠ざけるためだ。その選択を、飛鳥は好ましく思うのか?

 何も変わらない、変えられない。自らが進んできた道は本当に正しかったのか?

 

 ……それでも、たった一つだけ。望んできたものがある。それがあるから、どんなに辛くても耐えられた。何があっても生きようと思えた。だから、これからも戦い続けることができるのだと。

 

 

「……お兄ちゃんに、まだ何もしてあげられてない。生きているだけでもよかった、もう一度会えて嬉しかった。でも、それだけじゃ足りなかった。私は……お兄ちゃんに幸せになってほしかった……」

 

 

 両親が死んでから、飛鳥の人生には安らぎなど存在しなかった。二人きりで過ごした、たった半年の生活でも兄は何もかも抑えて、何もかも抱え込んで笑顔を向けてくれた。昔のような明るさのない、痩せ我慢で作った笑顔を。

 失ったものは多くても、取り戻せるものは……これから作っていけるものはあるはずなのだ。その想いだけは間違いじゃない。だが、その強すぎた決意(・・・・・・)故に、それは叶うことのない願いとなっていたのだ。

 

 

「大切な人を救えるなら、私はどうなっても構わない。そう思ってたのに…………自分がされる立場(・・・・・)になると、こんなに辛い気持ちになるなんて……!」

 

 

 大切な人なら幸せに生きてほしい。その想いは飛鳥だって抱いていた。その大切な人が自らを蔑ろにすることなんて、耐えられるはずがなかったのだ。

 今まで自分がやろうとしてきたことを飛鳥にされたことで、真由はようやく思い知った。自分がやろうとしてきたことは、ただの自己満足であったことを。

 

 

「私は、そんなの嫌だ。お兄ちゃんを助けたい。それで私が傷つくのをお兄ちゃんが悲しむなら、傷つかないように強くなりたい!どっちか片方だけじゃない、お兄ちゃんも私も幸せに生きていける未来が欲しい!我儘でも、夢物語でもいい。そのために私は戦う!!」

 

 

 それは、真由の中に芽生えた新たな想い。辛い現実の中では見ることすらできなかった……見ることを忘れてしまった理想図。兄とまた普通の生活がしたい。二人揃って、何でもないようなことで笑っていられたい。当然立ちはだかる問題も少なくはないだろう。それでも、兄が望むなら……兄と一緒なら、少なくとも不幸ではない。

 

 

「その想い、確かに聞き届けましたわ」

 

 

 ラクス・クラインが真由の手を握る。あまりにも自然な動きに驚きはしたものの、真由は心が安らぐのを感じていた。コンパスの長を務める資質を垣間見たような気がした。

 

 

「フリーダムの件はお任せしてもよろしいでしょうか?修理ではなく、改修……いえ、補修(・・)の形になりますが、少なくとも戦いに出ることは可能となります」

 

 

「え……あの、それって……」

 

 

「我々コンパスは、アナタを全面的に支援致しますわ。どうか、デュランダルの野望を阻止するために……飛鳥さんを助け出すために、手を貸してください。進藤真由さん」

 

 

「……は、はい」

 

 

 あまりにも呆気ない協力の申し出に、真由は戸惑いながら頷いた。亡国機業に所属する中で他者を疑い続けてきた真由にとって、ラクス・クラインの真っ直ぐな瞳は眩しかった。

 

 

「では、よろしくお願いしますわね」

 

 

 あぁ、それと……、とラクス・クラインは続ける。

 

 

「もうライジング・フリーダムは我々の元から奪われた機体ではなく、アナタの思いを乗せた機体(・・・・・・・・・・・・)です。どうか役立ててください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして進藤真由は、コンパスに認められて共に戦うことになった。が、IS学園に敵対していたのもまた事実。そう易々と打ち解けるのは難しい話だ。

 

 そんな中で、一夏たちと鉢合わせになった真由の第一声は……。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 謝罪の一言だった。

 

 

「私が今までしたこと、赦す必要はありません。でも、私はお兄ちゃんを助け出したい。それだけは確かです。どうか、一緒に戦ってくれませんか……!」

 

 

 自らが選んだ道であり、後悔はない。だが、全てが正しいとはいえない。その遺恨を残したままではきっと戦えない。だから、謝った。一時だけでもいい。兄を救うには、きっと自分だけでは足りないだろうから、兄が信頼を築いてきた仲間に認めてもらうために。

 

 頭を深々と下げる真由にまず近づいたのは……織斑一夏だった。

 

 

「……ここ数日。飛鳥のこと、改めて考えてみたんだ」

 

 

 飛鳥がデスティニーに取り込まれ、自分たちの元から姿を消した日から。同居人がいなくなってスペースの空いた部屋では、嫌でも飛鳥のことを考えてしまっていた。

 

 

「アイツが理不尽な目に遭ってきたこと、俺はきっと半分も知らない。でも、その中には俺が無自覚で引き起こしたことも確かにあるのかもしれない。……理不尽で人生を狂わされるのが許せなかったのに、それを俺がやってたなんてとんだ笑い草だ……」

 

 

 これは目の前にいる少女に初めて指摘されたこと。ISを動かしてしまったことで、自分と同じようにISを動かすことのできる男……飛鳥が見つかった。そのニュースを聞いて、自分だけじゃなかった、中学で出来た友達と一緒に学園生活ができると、嬉しく思っていた。

 では、その時の飛鳥(・・・・・・)は何を思っていたのだろうか。IS学園ではISに真剣に向き合っていた彼は、果たして最初から乗り気だったのだろうか。今となってはわからない。だが、どちらにせよISを動かした飛鳥に更なる受難が降りかかったのは間違いない。

 飛鳥を巻き込んでしまったという罪悪感が、一夏の中に芽生えていた。

 

 

「だから、取り返しのつかないことをしたっていうなら、今はこれでおあいこだ。力を貸してくれ」

 

 

 あれだけ自分に憎しみをぶつけていた少女が、頭を下げてまで懇願してきたのだ。手段はどうあれ、その憎悪は正当なものだと一夏は思っている。それを飲み込んでまで自分たちに助けを求めているのなら、こちらも細かいことに拘ってはいられない。そうでなくとも、お互いに優先するべき事項は同じなのだから断る理由もない。

 

 

「……ありがとうございます。織斑さん」

 

 

「一夏でいい。あと敬語もいいよ、お互いやりづらいだろ?」

 

 

「…………いえ、私はこれで……」

 

 

「そう硬いこというなって。よろしく頼むよ、真由!」

 

 

 先程までの空気はどこへ行ったのやら、一夏は朗らかな笑みを浮かべて真由との距離を詰める。

 

 

「一夏め、飛鳥の妹にまで手を出すつもりか!」

 

 

「ふ、ふふふ、一夏さんったら。楽しそうで何よりですわ……!」

 

 

「あんの女たらしッ……!」

 

 

「もう、一夏ってば……」

 

 

「嫁としての自覚が足りないらしいな……!」

 

 

「はぁ、飛鳥くんがこの場にいたらどう思うかしらね……」

 

 

「……多分、蹴ると思う。それはもう、全力で」

 

 

 真由と共に戦うことは他の専用機持ち達も異議はない。それはそれとして、一夏が他の女子と必要以上に仲良くしようとしていることには、恋する彼女らには面白くない。

 そんな一夏の強引な押しに対して、意外にも真由は顔を赤らめ、微笑みの表情を浮かべている。まるで恋する乙女のような反応ではないか。

 

 

 ビキビキと額に浮かぶ青筋にさえ目を背ければの話だが。

 

 

『流石に気づけ唐変木ッ!!?』

 

 

 明らかに爆発一歩手前の真由の様子を一足早く察知した専用機持ちは、総出で一夏を引き剥がした。味方としては頼りにするものの、心の距離まではまだマイナスからのスタートであった。

 とはいえ、この一件以来。真由は専用機持ちとも少しばかり交流し、親睦を深めたようだ。……一夏に対しては、違う方向性で打ち解けることになったが。




 真由としては、あくまで戦力として、飛鳥の頼りにしている友人としてIS学園の面々に信頼を置くのであり、好感度はデュランダルに所属していた時と変わっていません。なので、一夏に対しては超辛辣なままです。むしろ怒りを抑えただけデレが出たといっていいでしょう(?)
 そして、そんな真由の専用機であったライフリは最初は強奪された機体であったものの、今回の話でコンパスから改めて託される形となりました。フリーダムを譲渡するというのならば、やはり彼女の手からという構図がやりたかったもので。

 今後の予定では中学時代の飛鳥や一夏との邂逅や馴れ初めも書くつもりでしたが、それも挟むと戦闘描写ない話が長く続いてしまいそうなため後回しに。次回はデスティニーにもうひと暴れしてもらおうと思います。すでに出たキャラやISも再登場する予定です。
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