「さて、諸君らも知っての通り、この3年間で我々の常識は一変した」
午前の昼前。教壇の上に立つ黒髪の長身の教師が教鞭を取り講義を行なっていた。
「IS……正式名称、『インフィニット・ストラトス』が突如として人類へと反旗を翻した。
元々、ISの根幹たるISコアには自我が存在しており、1番最初に開発された原初のISコア、『フレイヤ』と名乗ったISが我々人類へ侵攻を開始すると宣言した。結果、世界各地に分配されていたISコアが一斉に人類の手から離反し、人類の敵となった」
教壇の上を歩きながら教師は、この世界の現状を改めて説明する。
「各国政府の軍事……防衛力の大部分がISに依存しており結果的に成す術も無くISによって国家存亡の危機に陥り中には壊滅した国家も存在している」
此処はIS学園。元々はISを扱う上での操縦者や整備士を養成する国立特殊学校であった。
「ISは今や人類の絶対的な天敵となり、壊滅させるべき敵となった。かつての女尊男卑の象徴でも女性至上主義の権威でもない」
「……ISに対抗するにはISしか存在しえない。何故ならばISには強固なシールドバリアと絶対防御の二段構えによる防衛機構が備わっている。それ故に既存の兵器では太刀打ち出来ない。
だが……私がかつて使用したIS『暮桜』の単一仕様能力でありエネルギー無力化能力である『零落白夜』を応用し生身でも扱える様に調整された新技術『ASE』の開発により、人類はISに対抗する術を手に入れた」
教師、織斑 千冬は背後にある黒板にその文字を表示し話を続ける。
「だが……開発過程においてIS適性を有する者にしかマトモに使い熟せない事が判明した。
故に、このIS学園は人類防衛の要衝となり対ISの戦闘員を養成する学園基地となった」
IS学園。
かつてはISを扱う唯一無二の学園であり女性達の憧れとして倍率が5桁を超えるとまで言われた学園。
だが、ISが人類の敵となる『無限革命』を経て、人類防衛の要衝にして『ASE』を操る術を手にした者達を掻き集め、ISに対抗する為の部隊、『AIS部隊』を設置したのだ。
「此処までが一般人であった諸君らでも知っている内容だろう。此処からはこの学園の基本的な事を説明する。
目的があって自ら志願した者、適性があった為に徴収された者も中には居るだろう。好きでいる訳では無いと考える者もいるだろう……。
だがコレが現実だ、納得しろとは言わんが理解はしろ」
『AIS』は殉職率が高い。それもその筈で、相手は仮にも世界最強の名を欲しいままにした『IS』が相手である。それらを相手にしている為に、戦闘員が不足するのは誰が見ても明らかである。勿論、その
故に志願者は兎も角、IS適性アリ=ASEを扱えると言う理由で半ば徴兵された者も居る。
「IS学園には8つの組があり、各組によって役割が割り振られている。IS学園防衛、医療支援、斥候と言った役割を担っている。部隊長は基本的に国家代表候補生が務める事になっている。部隊名も基本的に1組ならば第1部隊……専ら第1と言った呼び方になるな」
「あの、織斑先生。1組の役目は……?」
生徒の1人が遠慮しがちな声音で質問する。1組、即ち……1番目の部隊。この手の場合、最も危険な任務に当たるのでは無いのかと戦々恐々としている。
「1組は『第1調査部隊』だ。……ハッキリと言おう。1組に割り振られた者は入隊時点では正直な所、各種任務にはとても出せない者達が集められた組だ。ただ、誤解しないで欲しいのだが、貶している訳では無い。
様々な観点から諸君らには足りない部分が多く、各種訓練が必要であると見做されているからだ。他の部隊は入隊した時点で即応的に対応せねばならない場合がある。
故に訓練を通じて各種実力向上を促し実力が認められた上で他の組に改めて配属となる訓練生と言った所だ」
だからこそ、『世界最強』……『ブリュンヒルデ』の栄光を勝ち取った千冬が1組の教官を担っている。この状況下では悠長にしていられる余裕が無い為に1組の訓練生隊員には1日でも早く戦力になって欲しいからだ。
「気になる8組の担う役目はズバリ、『強襲』。『第8強襲部隊』。それがこの8組が担う役割よ」
一方、その頃……1組から遠く離れた教室。8組でも同様の説明が行われていた。
教壇の上で教師が
若い女性だ。生徒達の3つか4つ程、上な程度。長い茶髪の髪を靡かせ柔和な雰囲気を持っており耳には鈴が付いたピアスを付けている。
そして、最大の特徴が彼女の目、両方の目を
「第8部隊は1番、危険な任務を担当する事が多い。それこそ頭のネジがブッとび、論理感が欠如し、テロリストや殺人鬼とか、暗殺者とかそう言う狂人奇人変人じゃなければとても務まらないわ」
教壇の上で盲目の教師、時鳥 鈴晶は8組の教室を見渡す。彼女の説明に則ればこの8組に割り振られた者達は全員が色々な意味でイカれた連中ばかりであると言う事に繋がる。
「……まるでトンデモない問題児の集まり見たいですね。師匠」
その中で教室の最前列かつ中央の席に座る少年が皮肉めいた言葉を投げ掛ける。
「私としては貴方が生き残っている事自体、今日まで思っても居なかったわ。
そして、まさかIS適性を有していただなんて……。こんな状況じゃなければとっくに解剖されていたんじゃ無いかしら?」
「そうなったら、どうなるか師匠ならばお分かりでは?」
「そうね。貴方はもしかしたら世界を敵に回していたでしょうね」
物騒な師弟関係の会話。もし、ISが人類の敵にならなければ今頃は既存の『女性しか動かせない』と言う認識を打ち破る『男性』でISを動かせる『男性操縦者』となって居ただろう。だが、今ではそう言う問題では無くなったのだが。
「其処まではしませんよ? そん時ゃ、殺し返すだけですので」
「さっすが、アメリカ軍基地を『力試し』で殴り込んだだけあって発想が物騒ね〜」
近くからそんな声が投げ掛けられる。どうやら、少年はそんな大事件を引き起こした事がある様である。
「……ふふ、更に驚いたのが見ない内にこの組の娘達と知己である事。何処で粉を掛けて来たのかしらね〜?」
「変な事を言わないでください。俺とて、普通に驚いているんですから……」
「ならば、8組の第8強襲部隊のリーダーは貴方で決まりね、宵咲 和奏君。……私を失望させないでちょうだいね?」