「次は3組、か」
第3遊撃部隊。8組を除けば唯一、元国家代表候補生が居ない部隊。その為か、何かしら特化している者が居ない為に良く言えばバランスが良い、悪く言えば決定打に欠けると言える。
「取り敢えず、邪魔するぜ。第3部隊長殿は居るか? 物資云々の分配の件で話があるんだが」
「あ、はい。私です」
やはりと言うべきか廊下にて物資分配の話を纏める事になった。
「各種日用品関連、か。普通だな」
「私達は殆どが適性があって徴兵された人が殆どなんです。他の組と違って何かに特化している訳ではありません。だからか、色々な作戦行動を指示されるんです。皆で協力し対応するのが、この部隊のモットーです」
3組部隊長、衣笠 名刀はそう語る。他の部隊と違って『普通の感性』の者達が集められた部隊。だからこそ、様々な状況に対応出来る。
「まるで、他の部隊が個人プレーの巣窟みたいな評価だな……。まぁ、第8はそんな感じだろーな」
元一般人だが、作戦行動には前向きとの事。協力姿勢も高く、チームワークでは他の部隊に勝ると言えるだろうか。
「…………。少し酷な話かも知れんが、一応、意見を聞きたい内容がある」
「はい?」
「……今回の件、学園基地内の居住区を占有している女尊主義者及び女性権利団体の処遇に関してだ」
「処遇、ですか?」
「ああ。今の所、3:2で、処刑か追放の意見に傾いている。他の部隊長は元代表候補生であり、それなりの覚悟を持って居たが、君は元々一般人だ。
後で織斑司令に提出するつもりだから賛成か反対かの君自身の意見を聞きたい。無論、無回答でも構わない」
「……その結果で、その人達の生死が決まる。と言う事なんですよね?」
「冷酷に言えば、そうなるな。ただ、俺は当時の状況は知らない新参だ。だが、他の部隊長の話を聞いた限り……明確な怨恨を抱いている者も居るようだ」
「……その人達は私達が作戦区域で救助した方達も含まれています。要救助対象でした、しかし……その人達は私達に悪態をついて来る事も多々ありました」
「その光景はありありと予想出来るな……」
女尊男卑を経て無限革命が発生して今日。女尊男卑の影響は少子化に著しい影響を与えて男性が減少傾向にあった。その為、インフラ整備も滞るようになり、拠点を造っても人手不足に喘ぐコミュニティも少なくない。
男性が少なくなり女尊男卑主義者の矛先は未成年へと向かうようになり、女尊子卑と言うべき現象が現れ始めた。早い話が自分さえ良ければそれで良いと言う態度だ。
それに恐らく救助関連にも女尊主義者の連中が横槍を入れていたのだろう。その結果、雪だるま式に人数が増えてより手がつけられなくなった。
「……決めました」
考えた末に名刀は答えを決めた様である。
「これ以上、他の人達にも迷惑は掛けられません。追放に1票、入れます。実際問題、第3部隊でもその人達に対して悪感情を抱いている人も居ます。対して擁護する人は居ません」
居住区には女尊主義者ばかり占有しているとは聞いているが、中には正常な人もいるかも知れない。要救助対象を直に確認していた第3部隊だけが理解している事だろう。
かと言って見殺しにする訳には行かなかったと言う事情があるのだろう。
「……分かった。無回答でも構わなかったよ」
「いえ、結果的に第3部隊が学園基地の状況を悪化させたのは事実ですので、何も解答しないと言う無責任な態度は出来ません」
「そうか、意見に感謝する」
3組を後にして、次は2組へと向かう。
「3組は、何方かと言うと反対派だと思ったんだがな」
「善意じゃ人は救えないわよ、ご主人様」
その途中で、またもや背後から声が投げかけられる。そして、黎華よりも止めて欲しい呼び方が同時に聞こえて来た。
「ラーレ。その呼び方は誤解を招くから止めて欲しいんだがな……」
「何? 私が侍るのがそんなに不満なワケ?」
振り向くと其処には赤色の髪をツインテールに纏めた小柄な体躯の少女が腕を腰に当ててジト目で和奏を見上げていた。身長差故にこの様な構図になるからだ。
ラーレ・ロズベリア。
小学生と見間違う程の小柄な体躯ではあるが、和奏と同じ歳である。『ご主人様』と言う言葉の通り、彼女は元々とある家系の使用人であったのだが、『無限革命』の折にその家系は断絶。最も、ラーレ自身はその家系に対して思い入れは無かった模様。
「普通に誤解を招くからだよ。仕えさせた覚えは無ぇよ」
「別に良いじゃない、減るものじゃないし。私は使用人以外の生き方を知らないのよ、察しなさい」
「減るよ⁉︎ 主に俺の精神的なナニカが⁉︎」
「はいはい。後は2組だけなんでしょ? 早く行くわよ、ご主人様」
半ば強引な形でラーレは着いてきた。身体は小さいが性格上、話の主導権を奪いがちだ。
「よー、第2部隊長殿は居るか?物資云々の分配の件で話をしたいんだが」
2組の教室の扉を開けるなりそう告げる。2組は防衛部隊。部隊長がズボンであったのだが、他の部隊員も皆、ズボンであった。全員がスカートでは無くズボン姿と言うのは結構、異様に見える。
「あー、そう? 分かった、直ぐに行くから廊下で待ってなさい」
そして、最後もやはり廊下にて第2部隊長である凰 鈴音と話を詰める事になった。
「各種弾薬と……お襁褓?」
「防衛部隊は交代制よ。任務に従事中は手洗いにすら行けないから必須なのよ。その為、2組は女子力云々は捨てる事になるわ」
「…………スルーすれば良かった」
学園基地の防衛の任に当たる2組はかなりハードな様である。任務の都合上、仕方ないとは言え……聞かなかった方が良かった事だろう。
「今の所、ISが学園基地に襲撃を掛けてきたって事は無いわ。『無限革命』が起こって以降、1度も無いそうよ」
「ISにも慎重になる理由があるのかねぇ」
「其処は知らないわよ。代わりにコミュニティは度々、襲撃に遭って被害が出ているらしいわ」
学園基地では無く、コミュニティは逆に襲撃を受けている。その違いは何だろうか? 考えても答えは出て来ない為に話題を切り替える。
「……2組の部隊長にも意見を聞きたい事がある。今回の件による女尊主義者と女性権利団体の連中の処遇に関して、だ」
「アイツら? 第8が襲撃を掛けて略奪してからーの、学生寮から追い出しーの件?」
「ああ」
「……そうねぇ。私個人的な意見とすれば、あんな連中を守る理由は無いわね。アイツらが後ろ側に居るんじゃ、何時背中から撃たれるか分からないわよ」
「つまり、黒か」
「ええ、そう受け止めて貰って構わないわ。私以外にも聞いたんでしょ?その口振りからすると」
「ああ。これで5:2と言う形になったな。AIS部隊の半数以上が、女尊主義者共を排除したい考えを持っていると言う事になる」
「千冬さんも基地内のライフラインを女性権利団体に抑えられては動くに動けなかったでしょうしね、この機会に排除しておいた方が良いでしょ。残しておいても、先代以前の二の舞になるわよ、絶対に」
コレでAIS部隊の全部隊長の意見が出揃った。後は、コレを司令部の千冬に報告するのみであった。