全部隊長の意見が出揃った。
元々は居住区に巣食う女尊主義者の専横の状況を理解した第8の面々による独断暴走を抑える為に始め、曲がりなりにも学園基地は腐っても民主主義国家に属する立地故、民主的に事態の収束を図る為に始めた事情聴取。
和奏個人の意見としては他部隊は人としてまだ良心的であろうとして、『殺処分』は流石に望まないだろうと踏んでいた。
だが、その結果は第2から第7まで、半数以上が死刑ならび追放と言う意見が出て来たのだ。
「流石にコレは予想外の結果になった」
「同じ女性でも女尊男卑主義者の横暴は嫌われていたわよ」
「そうなのか?」
「……ご主人様、アンタは世界を旅して何を見て来たのよ……。女尊男卑主義ってのは、人間社会にとって癌に等しいのよ?」
「やはりそうなのか? 第4部隊長と話した時もそうだろうな〜と、漠然的には考察はしたが。
後、ご主人様呼びは止めてくれ」
ラーレは和奏の抗議を無視して話を進める。
「……直接的には男性への迫害を始めとして冤罪やら妨害、差別と言った直接的な内容がフォーカスされがちだけど、その裏では女尊男卑主義では無い女性に対して間接的な影響を及ぼしていたのよ。理由は様々だけど、最も多かった理由は女尊男卑を疑われると言う事よ」
「まぁ、女尊主義者ってのは見た目じゃ分からんしな」
見た目こそは真面に思えても本性は女尊男卑主義だったと言うケースは枚挙に暇が無かった。そう言う理由で泣きを見るケースが多発したのだ。その結果、男女間で『壁』が生じて少子化が更に加速する遠因となった。
「その上に女尊男卑主義じゃない女性排斥していたとなれば、国家基盤はガッタガタね。そりゃ
「分からんから
1組、第1部隊は訓練生なので部隊長は居ない。その為、1組の意見は無しである。
「……その話は不毛だから織斑司令の所に行くか。つーかあの人、普段何処に居るんだ?」
「司令官室に居るんじゃない? 場所は元々生徒会室を其の儘、使っているそうよ」
ラーレに教えられ、その司令官室へと向かう。
「あ、閣下。待ってた」
「遅ぇぞ、和奏。天才である私を待たせんな‼︎」
「ん、時間掛かった?」
「意外と話し込んでいたんスかね?」
そよ司令官室前にて、黎華、レーキュ、リデア、フィーリリアの4人がまるで和奏の到来を待っていたかの様な態度で待っていた。……リデアは身体の彼方此方に白い綿がベッタリと付着しているのは聞かない方が良いかも知れない。
「……何で勢揃いしているんだ?」
「閣下の所有物だから」
「暇だからに決まってんだろ?」
「結果が気になるから」
「面白そーっスから」
「何人か答えになってねぇーよ⁉︎ まぁ、良いや……」
ノックした後、司令官室へと一同を伴い入室する。
司令官室は奥行きが広く取られ、前方にはガラス張りの壁、執務机の前には対談用なのか机とソファが相対する形で配置され、左側の壁際には簡易的なキッチンが設けられ反対側には書架が並んでいる。ちょっと、高級感が感じられる執務室と言った趣がある部屋であった。
「……宵咲か。如何した?第8の者達も連れて来てまで、何があった?」
その執務机の奥、椅子に腰を降ろしてコーヒーカップを片手に予想外の来客に目を丸くするのはこの学園基地の統括者であり司令官、織斑 千冬であった。
「他の面子は、偶然居合わせた結果だ」
和奏は千冬に此処に来た経緯を説明した。
「……成程な。事情は理解した。確かに第8は問題児の集まりだ。勝手にそんな惨殺状況を起こされるのは司令部としても困る。……掠奪行為の時点で今更な気もするがな」
やはり、司令部としても第8主導で殺戮劇場を引き起こされるのは勘弁願いたい様である。
と言うか、第8は海賊、殺人鬼、マッドサインテイスト、人斬り、アイドル、草、医者etc何でもござれのごった煮状況で一度、暴れ出したら収拾つかないのが実情ではあるのだが。
「しかし……第6のラウラは兎も角、第4、第3、第2も処刑や追放に票を入れたとはな。……やはり由々しき事態だな」
ラウラは本物の軍人。そんな真似をする味方は必要ないと判断するであろうと、千冬は予想はしていたが、他の部隊長もその判断をした事に驚いている。
「過半数がその意見を出している以上は、司令部も動かざるを得んな。コレは君らの士気に関わる事だからだ。
現役のAIS部隊が戦闘を放棄されると、人類はISに対しての戦力を喪失し、滅亡へと向かう事になる」
「……現に愛想を尽かしかねないしな」
「……まだ着任して日も浅いが第8がその筆頭である私は考えている。各人の戦闘能力は高いが、倫理観が欠如し尚且つ、人類に対する頓着が無い」
「まぁな。この世界情勢……ぶっちゃけ
「……一旦、滅ばないと理解出来ない程にモラルは終わってしまっている」
レーキュとリデアが冷酷にそう告げる。事実、その通りだからだ。
「……宵咲部隊長。君の意見は?」
「……そうだな。俺の意見はその先の話になるかもな。
この手の場合、生き残る奴は大体が悪どい奴だ。仮にAIS部隊が全滅し、学園基地が崩壊したとしても……人類は抗う事を選択するだろう。
生命と言うのは『死』に対して恐怖し、忌避する様にデザインされている。それは生と対極に位置しているからだ」
「閣下、それで?」
「俺達が
「男女間に『壁』が出来てんだ。そりゃ
「……想像だにしたくは無いが、現にそれが起こっても可笑しくは無いのが恐ろしい所ではあるな。実際にその一歩手前の法律が施行されようとした直前に『無限革命』が発生したのだからな。もし……本当に施行されでもしたら、少なくともこの国の経済はメチャクチャになっていたかも知れん」
「知った事か」
「知るか」
「……」
「馬鹿しか居ないんスかね?」
「……」
「誇大妄想も過ぎると引くわね」
6人の反応は大凡が素っ気なかった。
「ンン。脱線したな。話を戻そう。君達、各部隊の意見は良く分かった。しかし、殺処分……表現は兎も角、殺害による排除は流石に認められない。AIS部隊は人類の希望……出自がどうあれど、殺人と言う罪を背負わせる訳には行かない」
「……既に手遅れだと思うが?」
和奏は出自はどうあれ、と雖も既に手を掛けた事のある者が居ると暗に告げている。
「それでも、だ。この件は司令部の預かりとしよう。……お前達は手を出すなよ?」