「ンン。脱線したな。話を戻そう。君達、各部隊の意見は良く分かった。しかし、殺処分……表現は兎も角、殺害による排除は流石に認められない。AIS部隊は人類の希望……出自がどうあれど、殺人と言う罪を背負わせる訳には行かない」
「……既に手遅れだと思うが?」
和奏は出自はどうあれ、と雖も既に手を掛けた事のある者が居ると暗に告げている。
「それでも、だ。この件は司令部が預かるとしよう。……お前達は手を出すなよ?」
千冬は念の為に釘を刺しておく。学園基地の総司令であるが故に各部隊の隊員のプロフィールは全て確認し網羅している。……正直な所、自分が釘を刺した所で言う事を聞くような連中では無い事は承知の上ではあったがそれでも言っておかねばならない。
「その保証は出来ねーな。なぁ、和奏サンよ」
「其処で俺に話を振るな。……まぁ、放っておいたら勝手に実験材料を回収しそうな奴が隣に居るワケだが?」
「ああ? 勝手に噛み付いて残骸を撒き散らす手癖の悪い偶像よりかマシじゃ‼︎」
「ん、心外。最高刑率が高い暗殺メイドよりはマシだと思う」
「アンタは何処でどんな情報を仕入れて来てんのよ⁉︎ 経済を破壊して生き地獄を提供するネット海賊よりはマシでしょうが‼︎」
「ハッカーとクラッカーを一緒にだなんて心外っスね。リリアはちょいと転覆計画を潰しただけっスよ。それよりも、人斬り娘が1番危ないんじゃないっスか? 後、和奏さんも軍事基地、潰してるじゃないスか」
「ほえ?」
「貴様らは仲が良いのか悪いのか、何方なんだ……」
言葉の意味が理解出来ていない黎華以外、全員が堂々と責任転嫁と言う有様。言葉の内容からコレが世界規模で危機的状況でなければ今すぐにでも隔離されて然るべき面子しか居ない事が分かる。
しかしながら、状況は切迫しており正直な所、人手が足りないので文句を言っても仕方ない。
「で、預かるとは言うが、どうするつもりで? 織斑司令殿」
若干の茶番を挟んだ所で、和奏は意識を切り替えて話題を引き戻す。
「……AIS部隊の弱体化及び士気低下は女性権利団体を始めとした横暴もあるが、その事態を放置し悪化させた司令部にも一定の責任がある。言い訳を並べようとも事実は残っている。当然ながら、毅然とした態度で相応の対応を取るつもりだ」
切り替えの速さに若干引きつつ千冬は予定を説明する。
「相応の対応、ねぇ。なぁなぁで済ますと第6とかは憤慨するだろーぜ?」
第6と言えばラウラが部隊長を務める斥候部隊。そして、そのラウラは千冬の教え子だろうと彼女との会話で察しが付いていた。
「流石に殺処分……と言う判断は安易には下せないな」
「それ以前に、何で対ISの要衝の基地である此処にあんな連中が居るのよ?」
今度はラーレからの質問。
それは和奏を始めとしたこの場の面々が気になっていた事である。IS学園は今や、対ISの戦闘部隊であるAIS部隊が駐屯する学園基地。当然、滞在する者は皆、対ISへの対応をする者達の筈である。
なのに、協力する所か足を引っ張る事しかしない連中がこの学園基地に屯している事は違和感しかなかった。
「……お前達はコミュニティがどう言う場所か知っているか?」
「アレだろ? 国家がISにより領土内が滅茶苦茶になって地下に共同体を造り、其処に臨時政府を置いているんだろ?」
例えば現在の日本では、神奈川コミュニティに政府を置き、大阪コミュニティ、千葉コミュニティと言った日本各地に置かれた複数のコミュニティを束ねる形で『国』を成している。
地上のインフラは破壊されてしまったが、通信網は決死の努力により各コミュニティ間で行えるレベルには復旧している。
「大半の地上は今や危険地帯っスからね。今の人類にとって安全な場所は地下に造られたコミュニティか、離島とかになるっスからね」
IS学園島も本土から離れているとは言え、安全とは言い難い。その為、基地防衛の為に第2防衛部隊を設置している。それ以外の地上はもはや安全とは言い難い状況だ。
「その認識で問題ない。現環境は、以前の……『無限革命』以前の時よりも様々な観点から見て生活基盤がガタガタだ。
此処で、宵咲部隊長。お前に問題だ。そんな中で横暴を繰り返す連中が居たら、お前は如何するべきか?」
千冬は問題児の巣窟である部隊長の和奏に問題を出した。その状況でどの対応を取るべきか?と。
「成程……。俺ならば放逐するな。
問題があろうと御する事が出来るのならば話は別だろうな。逆に手に負えない奴は、追い出すしか無い」
「そうだ。実際、各コミュニティは女尊男卑、女性権利団体と言った生活レベルが危急的な状況であろうとも横暴性を隠さずに好き勝手やっていたのだ。……結果、コミュニティの内部崩壊に繋がりかねないと判断された為、そう言った連中はコミュニティから追放された」
隔絶された環境下では、そう言った和を乱す因子は危険極まりないのだ。統括する者としてはその様な者を手元に置いては置けない。
「……各コミュニティとの通信網は確立されているスもんね。情報ってのは早く伝わるもんス」
「流れに流れ第3部隊により救助された。本来、救助された人達は各地のコミュニティへ護送される手筈なのだが……」
「女尊男卑主義者は各コミュニティから拒絶され受け入れ先が無い。或いは……居座り続けている」
「ああ……その結果。各地から集まって来てやがて吹き溜まりとなり学園基地内に居住区を作り上げ学園基地のライフラインや物資を占有し、多数のAIS部隊を死に至らしめる要因を作り上げてしまった。人数に物を言わせて作戦行動や補給物資にも手を出して来るようになった……。
紛れもない、それを許してしまった司令部、私自身の落ち度だ」
千冬は悔やんでいた。女尊男卑とは言え、人として人命を優先する必要があるとは言え、とんだ蝗を野放しにしていた事に。
「「「…………」」」
「……ハッ。織斑司令は人として当然の行動をしただけだろ? あの連中は救助してくれたにも関わらず恩を仇で返したようなモンだ。お前らもそう思うだろ?」
「そうね。アンタじゃなくてご主人様が言ってくれたら説得力はあったけど」
「織斑司令殿。過去の話を聞きたいんじゃない。俺は今後の話を聞きたい。そもそも俺達はその話に興味が無いからだ」
「……全く、人の心を踏みつけるように言ってくれる。司令部の対応としては、学園基地内に巣食うあの連中に対して最後の対話機会を設ける」
半ば吹っ切れたかのように千冬は今後の対応を切り出した。
「その対話は決裂に終わるわね、ソレ」
「構わん。どう転ぼうが学園基地内に巣食う女尊男卑と言う膿を出し切る事が司令部としての仕事だ」
「追放するのか?」
「処刑なら、任せて」
「最終的に全員追放に持っていきたい。そして今後は要救助対象を選定する必要がある。
今までは特に取り決めずに救助していたからな。冷徹と言われようが戦力保全、人類の為にも鬼になろう」
和奏の言葉に反応したが、黎華の言葉は華麗にスルーされた。
「宵咲。さっきは手を出すなとは言ったが、手を借りる時があるやも知れん。そのつもりで居て欲しい」
「ああ、了解した。指示を待つ」
「うむ。ああ、そうだ。司令官室に来たついでだ。宵咲、第8の皆を連れて学園基地地下の格納庫へ行け。
お前達に最終決戦兵器『ASE』が搭載された武器を支給する。今更なのは部隊長が任命されないとその部隊員に配備出来ない規則があるからだ。戦力保全と言う観点と言う理由でな。
既に第2防衛部隊教官の山田 真耶君に話を通してあるから、直ぐに向かえ」
千冬の指示で和奏は第8の面々を連れて、学園地下の格納庫へと向かう事になった。