AIS-アンチ・インフィニット・ストラトス   作:夢現図書館

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格納庫

 

 

 

「で、此処が件の格納庫って奴か……。流石、対IS決戦兵器の管理する場所、随分とまぁ厳重な警備態勢じゃないか」

 

 千冬の指示で和奏は8組の教室に戻った後、第8の面々を集めて指定された学園地下に位置する格納庫前へと来ていた。格納庫の隔壁扉には武装した第2部隊の隊員が列を成して警備に当たっている様子が遠目からでも見えた。

 この様子から恐らく女尊主義者の手が届いて居ないか或いは司令部の決死の防衛で守り切っているのかの2択か。

 最も、女尊主義者の大半がISをロクに操れない連中なので、『ASE』を手にしても宝の持ち腐れになるか、或いは無秩序化して自滅するかの2択にもなり得るか。

 

「学園基地にとっては1番、重要な施設。……警備は厳重になるのは当然、かも」

 

「主君、此処で見物しても時間の無駄だ。早く行こう」

 

「雪字。早くその帰りに試し斬り感覚で暗殺したい魂胆が丸見えだぞー」

 

 雪字が急かすが、その本心を見透かすかのように和奏がジト目を向けながらそう告げる。

 

「な、なななな何の事だろうかっ⁉︎」

 

 どうやら図星だったらしい。

 

「序でに黎華も食べ比べならぬ、斬り心地比べをするんじゃないぞ? 司令から釘を刺されてんだからな」

 

「え、ダメなの⁉︎」

 

 どうやら斬り捨てる気満々だったらしい。

 

「全く……。油断も隙もありゃしないな……」

 

 そんな愚痴を他所に隔壁扉の方へと向かう。その扉の前には1人の女性が8組の到来を待っているかの様に立っていた。中学生かと思う程の身長の体躯。その身長とは裏腹に巨乳を持った緑色髪に眼鏡を掛けた女性だ。

 

「お待ちしていましたよ。第8強襲部隊の皆さんと、部隊長の宵咲君。私は第2部隊の担当教官である山田 真耶と言います。話は織斑司令から全て聞いています」

 

 その女性は2組の担当教官らしい。教官自ら最重要地点を防衛している様である。

 

「謝辞は既に織斑司令官殿から頂いている。その節は不要だ」

 

「分かりました。では、格納庫内をご案内しますね」

 

 隔壁扉の節々から白い煙が噴出し重い音を響かせながらパズルを紐解く様に駆動してゆっくりと左右に開かれる。その隔壁扉の先から冷たく冷涼な空気が溢れ出し、特有の匂いが鼻腔を擽った。

 

「格納庫内では外と比べて寒いので風邪を引かないようにお願いしますね」

 

「安心してくれ。第8は馬鹿しか居ないから問題無い」

 

「凡人と一緒にすんじゃねぇ⁉︎」

 

 第8は論理感皆無かつ訳アリ連中ばかり……教育云々も不十分な者もいる為、言い得て妙である。1人、盛大に否定しているが人間性が終わっている為に誰1人として擁護しなかった。

 

「うお、寒っ」

 

 重厚な厚みを持つ隔壁扉を潜り抜けると体感温度は急激に下がる。口から吐く息も白い事から格納庫内部は温度はかなり低い事が分かる。

 そのタイミングで暖かい感触が感じられた。気付けば右からはリデアが、左からはオルールが格納庫内では寒いのかガッツリとした感触でしがみついて来ていた。

 リデアは兎も角、オルールは本職がガチ海賊で普段から薄着な為、この様な環境では凍えてしまうだろう。

 

「大丈夫ですか?」

 

 流石に心配なのか真耶は声を掛ける。

 

「いえ、大丈夫です。慣れればきっと大丈夫……‼︎」

 

「誰か上着を貸してやれ……」

 

 見兼ねた為に部隊員の1人が着ていた上着を彼女に被せる事で取り敢えず体温を確保した所で、格納庫内部へと歩き始める。

 格納庫内は隔壁扉の無骨な灰色とは打って代わり白を基調とした空間であった。廊下の床や壁には塵屑1つなく、フローリングが行き届き天井の照明の照り返して光沢を放っている。何処かの研究機関を彷彿させる通路と言えた。

 

「少し、話しながら歩きましょうか。通路は少し続きますので」

 

 先頭を歩く真耶が口を開いた。恐らく普段は担当部隊以外と交流の機会が少なくこう言う時にしか話す機会が無いからかも知れない。

 

「話すって何をだ?」

 

「話題を提供しましょうか。……貴方達にも関わって来る事でしょうから。格納庫の外だと、誰に聞かれるか分かりませんからね」

 

 自分達にも関わる事と聞かれると少し興味が湧いた。

 

「貴方方も知っての通り、『無限革命』を機に人類は物理的かつ急速にその人口を減らし続けています。

 元々、少子化問題で人口減少傾向にあり女尊男卑の蔓延からその減少速度は加速し、更に『無限革命』で大多数の犠牲者が出ました。……補足すると学園基地のAIS部隊も設立から女尊男卑主義者らによる横暴により殆ど生き残れていません」

 

 人口減少は加速度的に増加している。ISの台頭により女尊男卑の風潮が蔓延して更に悪化した。いや、物理的にも酷くなった。

 

「だろーな。女尊男卑の所為で、野郎をあの手この手、法律や権力、更には非合法な手段で社会から排斥し続けた結果だろ」

 

「はい。当時、女性権利団体は増えすぎた男性を間引くと主張していましたね」

 

「……馬鹿も其処まで行くと哀れにしか思えないわね。その先に何が待っているのか分からないからそんな真似が出来るのね」

 

「あの手の凡俗はその場凌ぎの欲求が満たせれば後はどうでも良いんだよ。未来の事なんか知ったこっちゃねぇんだろ」

 

 ラーレとレーキュは呆れて言葉を述べる。何方かと言うと悪人よりの2人からそう言われたら人として終わってしまう。

 

「はい。そのツケが今来ています。

 コミュニティ内の平均男女率は2:8の割合。10人に2人しか男性が居ない状況です。その中で……高齢者を除く成人男性は1人居るか居ないか、と言う状態です。少子化故に未成年は男女共に更に少ない状況です」

 

 其処に『マトモ』な枕詞が付く男性は更に限られて来る事だろう。様々な要因から障害を抱えている者も居る。境遇上、女性を信用出来なくなった者も居るだろう。

 

「そして、コレは余り公言出来ない事ですが、貴方達。今代のAIS部隊が全滅すれば……もう残りは今、訓練生である第1部隊しか現状で投入出来る戦力は残っていません」

 

「ん? そりゃつまり……」

 

「はい。最新のコミュニティ内の調査内容によると、IS適性があり尚且つ身体能力的に戦場に投入出来る14歳以上の者は、もはや数える程しか確認されなかったそうです。それ以下となると……更に少ないんです。

 それに……本人やご両親が状況を把握して心中や自殺幇助を願う人も居るのが現状です」

 

「……学園基地、司令部としちゃあ後が無くなって来たって事か」

 

 いずれにしても生きる事が苦しい事ならば一層の事……と言う心境に至るのだろう。

 

「はい。貴方達があの行動を起こさなければ……恐らく今代のAIS部隊もあの人達によって悪戯に死亡して……いよいよ人類は滅亡に王手を掛ける事になっていました」

 

「ますます、あの連中を生かしておく必要が無いな。もう素直に処刑しちまえば良いのに……如何にも鬼教官みたいな雰囲気があるのに織斑司令も変な所で甘いな……」

 

「……今、人類の結束は危ういんです。極端な対応は瓦解を招いてしまいますから」

 

 同じ国、同じ組織でも結束する事が難しいのに、人類規模となればその難しさは語る必要が無い程に難しいのは分かり切っている。

 

「……そのような事情があり、此の儘では本当に不味いと判断した為に多少強引なやり方でも少子化を食い止める必要があると、政府は一夫多妻制を導入しようと検討しています」

 

「一夫多妻制……ですか?」

 

「はい。どの様な構図になるのかは分かりませんが……概ね言葉通りの意味になりますね。現状は検討中ですし、戦闘員は両立は難しいとの意見がありますので貴方達には余り関係が無いかも知れませんね。今の所は……」

 

「……反対多数になりそうだな。戦場に行かせる為に子供を作れだなんて、普通の感性じゃ納得出来ねえだろ」

 

「そうですね。反対意見が続出する事が予想されますが……他に代替案が無いのも現状です。……と、そろそろ到着します。すみません、今の状況では明るい話題が少なく、話せる内容がコレしか無くて」

 

 話している間に格納庫の中枢に到着する様である。通路の終わり口にまた別の隔壁扉が見えて来たからだ。

 

「いや、構わない。後で説明されるよりも余裕がある時に説明された方が良い」

 

 何事にもタイミングと言うモノがある。

 そう、例えば裏切る時とか……。

 

 

 

 

 

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