通路の突き当たりの隔壁扉を抜けた先には六角柱の様な構造の大部屋が広がっていた。格納庫自体の高さもかなり高い。壁際にはコレまた六角形の模様が並列する形で並んでいる事が分かる。
「六角形の模様は武装を納める為の保管ケースとなっています。つまり、模様の数だけ武装があると考えて良いでしょう」
最も武器があっても担い手が居なければ無意味ではあるのだが。
「……待っていたよ。山田教官に、第8強襲部隊の諸君」
その格納庫の中央部に不釣り合いな執務机や食べかけのお菓子の袋、他にも乱雑に放置された各種書類の山。理路整然な空間に突如現れただらしない仕事空間の中央に執務机の席に腰を降ろす彼女はいた。
滅色の髪色をしており、軍服を思わせる上着を肩掛けにしていると言う威圧感のある出で立ちであった。
「初めましてかな。私は崩宮 紫。崩れる宮で
彼女、崩宮 紫はそう名乗った。
全てを見通してくる様な雰囲気をその身に纏いその名の通り紫水晶の様な双眸で到来者達を見渡した。
「難しい話は省こう。君達の命を預ける相棒を、自分のセンスと直感を持って決めると良い」
その言葉の直後、格納庫全体から音と水蒸気が吹き上がり、軽快な音と共に壁から模様が迫り出して行く。そして壁際近くに空間投影のディスプレイが展開される。目録の様なモノであると思われる。
「此処にある奴、全部の中から選べって事か?」
「そうだよ。君達には君達のやり方がある。部外者が急かす理由にはなり得ない。さぁ、好きに選びたまえ」
和奏以外の面々は各々の『好き』に殉じて得物を決めるべく壁際へと向かって行く。その場に残ったのは和奏であった。動くに動けなかったと言うのが理由だ。何故なら紫が終始、自分を見ていたからだ。
「君が第8部隊長の宵咲 和奏かな?」
「ああ、そうだが。何か気になる事でも?」
「いやね、
何が可笑しいのかケラケラと笑う紫。
「そりゃどうも。重ねられても困るんだがな」
「今頃、紫兄様は何をしているのか……。タイムスリップでもしたのかなぁ」
「奇天烈にも程があるだろ、その状況は……‼︎」
そして、行方不明だがタイムスリップでもしたのかと突拍子も無い説を言い出す紫。
「最悪、私もタイムスリップすれば良いし……。君も早く選びなよ。部隊長は率先として前線に出なきゃ行けないんだしさ」
紫は私情を仕舞い、和奏にも武器を選ぶ事を促した。前半の発言は聞かなかった事にした。
「さて、如何するべきか……。崩宮って人は直感で選べとも言っていたな」
とは言え、此処まで数が多いと選ぶ方としては苦慮してしまう。ならば、此処は紫の言う通り直感で選んでみる事にした。空間投影ディスプレイで表示された武装の画像を見渡して直感で『ソレ』を選んだ。
壁から迫り出していたケースが一旦、引っ込み壁の一部が上下に駆動。そして停止した瞬間に1箇所だけ模様が迫り出してその中にあるケースの中身が視界に映った。
「……へぇ、ソレを選ぶとは中々、良いセンスをしているね。君」
和奏が選んだのは2振りの双刀。そして、同時に収められていた巨大な鉄塊であった。見方によっては掌にも見えない事も無い。
その鉄塊はISのウィングスラスターに相当する代物であった。
「いきなり背後から現れないでくれないか?」
「別に良いじゃない。それは生身でもISの飛行能力に対抗しようとして製造したんだ。
でも、ISの様にシールドバリアも身体保護機能も無しでは並の人間じゃその出力に耐え切れないとしてお蔵入りになり掛けていたんだ」
「つまり、高速移動が可能と言う事か?」
「そうだよ。でも、その暴力的な加速やGに生身の肉体が耐え切れるかは別問題だよ。主武装は双剣だけど、翼……撃腕翼も武装になり得る。その為に、装備者に対する負荷は凄まじい」
「良いねぇ。良し、コレにする。『防腐処理』があるなら腕や脚の一本、捥げたとしても問題あるまい」
その言葉に紫は思わず目を見開いた。その『頓着』の無さに思わず笑みが溢れたのだ。『防腐処理』で脳と眼球と心臓以外は何とかなる。ソレを加味して平然と身体の一部を切り捨てる事が出来る人間は早々居ない。
「ならばソレを君に託そう。君の活躍、大いに期待させて貰うよ」
「ま、そう簡単にはくたばるつもりは無ぇよ」
ケースの蓋を開けて納められていた双刀の柄を掴む。装飾など無い無機質な刃、ただ……敵を討つ事だけ求めた機能美以外持ち合わせていない。
「『ASE』搭載武装は、一種の簡易的なISコアと同等の機能を搭載している。簡単に言えば拡張領域の容量が武器の分しか無いISと受け止めて貰って良い。
普段はネックレス状と言った形状の待機形態であり、戦闘時には武装に量子展開する。と言うプロセスを持つ」
その為に機体装甲や後付武装、飛行能力、更にはシールドバリア、ハイパーセンサー、パワーアシスト、身体保護機能、絶対防御等、大半の機能を擲った。
「こう言ったゴツい武器を直に持ち運ぶのは中々骨だろうしな。何事も行軍ってのは軽い方が良いからな」
「『無限革命』を折にISは人類の天敵となった。でも、その過程で培われた技術が喪われた訳では無いからね。最も……私以外の技術者は軒並み役に立たないけど」
その言葉を聞いて、この人、感性が第8よりじゃ無いのか?と勘繰ってしまう和奏であった。
「他の部隊員も中々、癖のあるモノを選んだ様だね」
紫の言葉の通り、リデア達もかなり特徴的な武装ばかりを選んでいる様に見えた。……連携とかは正直不安しか無いが、こうなった以上は此の儘、進むしかないだろう。
「……以上、第8部隊。武装配備は完了しました」
「ああ、支給するだけだから其処まで複雑な問題は無かっただろう」
その日の夕方。司令官室にて真耶は千冬に報告をしていた。
「第8の連中は、時鳥先生が直に見繕った面子だ。連携の問題以外は特に戦闘関連では問題は無いだろう。あるとすればモラル関連だがな」
「はい。それで、作戦の予定は如何なりますか?」
「……先ずは東京都。下位のISを指揮する指揮官相当のISに占拠された国会議事堂の奪還作戦になるだろう。
過去に何回か部隊を投入したが山田君も知っての通り、女性権利団体の横槍によって悉く失敗に終わっている。
今回、失敗すれば本格的に後が無くなる。その作戦内容を立案する前に学園基地内に巣食う女性権利団体の連中を一掃するぞ。これ以上、横槍を入れられる訳にはいかんからな」
「はいっ‼︎ 日程の調整を進めておきます」
「ああ。奴らが大人しくしてくれれば良いのだがな……」