「金か暴力。この世に存在する問題事は、概ねその2種類によって解決出来る。誰もが知る概念だ」
大概は『金』で解決されてきた。『暴力』もまた少ないが行われて来た解決法の一種だ。
「……ソレを否定出来ないのが悔しい所よねー。アンタ、真面目に悪人じゃん」
鈴音は強くは否定出来ないと言った。本人も思う所はあったのかも知れない。
「まぁ、否定はしねぇよ。……」
「如何した?」
其処でふとある考えが浮かんだ。
「いやな。先程みたいな脅迫染みた追放のやり方では無くて使い捨て装甲板として使った方が有意義だったのでは? と考えてしまってな……」
早い話が肉壁である。
先程の問答にて女尊主義者の殆どはAIS部隊の何処にも適性は無い事が証明された。自信も器量も何一つ持ち合わせていない。ただ、彼女らにあるのは甘い汁を啜るだけの怠け者だ。ならば、使い潰した方が世界の為だろう。
「止めておけ。あの手の連中を盾と使うと総崩れ待った無しだ。陽動にすら役に立たん上に余計な仕事を仕出かすぞ」
和奏の考えをラウラが否定した。
「ま、あの連中だと敵前逃亡も平然とするでしょうね。自分は安全圏でのさぼって威張り散らす事しか出来ない連中よ。ウチの国にもそう言う連中が多かったわ。お国柄と相俟って自滅したけど」
鈴音もラウラの考えに同意。と言うか実話を知っているから否定要素が無かった。
「3人とも、其処までだ。過程はかなり無茶苦茶であったが……宵咲、結局の所はお前に最後まで決着を着けられてしまったな」
「……正直あのまま、あの女尊男卑だか女性権利団体だかの阿婆擦れの聞くに堪えない御高説を長時間聴くのもウンザリなんだよ。毎度毎度、支離滅裂な事を並べ立てて人の時間を浪費させる。それこそ世界で1番無駄な時間でしょう?」
「……そうだな。奴らの言葉を要約すれば『自分達を喜ばせろ』って訳だ」
「それよりもさっきは深くは知らないが故に推測込みの各部隊の役割を語ってしまった。すまないな」
「そんな些細な事、気にしていませんわ。……私も言いたい事は沢山ありましたし」
セシリアが和奏の謝罪を受け入れる。確かに各部隊の役割を語るならばその部隊の長がするべきだ。新参者が語る事では無かった。
「話が脱線して行く。和奏の言動に文句が無いようであれば此処で全て終わりにしろ。……居ないようだな」
千冬は各部隊長の顔を見渡して不満が無い事を確認して司令部及び学園基地が抱えていた問題が解消された事を前提に話を進める。
「不法滞在者である女性権利団体共は、先の宵咲の言動により一刻も早くこの学園基地から自主的に脱出する事だろう。
……昨日にも第8の部隊員による掠奪行為があったばかりだ。あの手の連中は自分の身に危険が及ぶ事に関しては過剰反応する。可能性があると判断すれば一目散に逃亡するだろう」
少なくとも和奏が第8の部隊長であり、第8其の物が問題児の巣窟である事は周知の事実。その部隊長が『撫で斬り』と言い放ち現に死者が出ている以上、フリでも演技でも無く本気であるのはバカでも理解する筈だ。
「……何、
「……織斑司令官。仮に司令官の思惑通り、対話の機会を通じて追放が成された場合はどう言う流れになる想定だったんですか?」
其処で名刀が質問を投げ掛ける。結果的に追放処分は達成されたのだが、本来の想定ではどうなるのか気になったのだろう。
「……人手不足のコミュニティへ移送する手筈だった。そのコミュニティは人口維持が難しくなっており、形振り構っていられんとの事。……特に女旱って奴だ」
「女尊主義者で妥協せねばならんとは……本格的に人類存亡の危機だな」
更に場所も遠い東北地方であり、寒暖差が激しい上に人口維持は愚かコミュニティの自活能力にも支障を来しかねない逼迫した状況との事。本来、コミュニティはその悪辣さ故に女尊主義者やら女性権利団体はコミュニティ外へ追放していたが、そうも言っては居られないコミュニティも中には出て来たのだろう。
「コレばかりは戦闘任務が主の我々ではどうしようもない事だ。最悪の場合、そのコミュニティを放棄して近隣の別のコミュニティへ移送せねばならんだろうな」
「……大変だな」
「話を戻すぞ。あの横柄で横暴極まりない邪魔者が駆除された所で漸く、AIS部隊として本格的に機能し作戦行動に実行を移す事が出来る」
女尊主義者の問題が着いた。
よって千冬は本来の役割を遂行する為の話を切り出した。学園基地の掃除が終われば意識は自ずと其方へと向く。
「ふむ。漸く心置きなく作戦に集中出来よう」
「……うん。やっと、機能できる」
「2度とゴメン被りますわね」
「……目下の目標は東京都。その国会議事堂を占拠した司令塔の役割を持つISの排除が最優先目標となる。そのISが周辺に集結したISを統率、指示を出しており危険地帯と化している。宵咲以外は知っていると思うが過去に数回、国会議事堂攻略作戦が実行されたが……主に女性権利団体の横槍により悉くが失敗に終わっている」
東京都。それはこの国の政府が置かれた都市のある都道府県。その政府は現在、神奈川コミュニティへと避難して臨時政府を設営している。IS学園がある学園島は東京都と神奈川県の2ヶ所にモノレールを含む大橋が架橋されていた。しかし、東京都と繋ぐ橋は『無限革命』の際に崩落していた。
「……東京、ねぇ」
自我を獲得したISは組織社会を形成しており、上位のISが下位のISを統率して行動している。宛ら軍隊の様にである。1機でも国を揺るがす程の戦力、それらが隊列を成し組織行動となるともう脅威でしか無い。
それだけでは無く、当初は500にも満たなかったISコア……ISが自我を獲得した事によりIS自らISを量産したのだ。その為、司令部の見立てでは既に4桁以上のISが存在していると仮定している。
「詳しい説明は作戦内容が決定してからにしよう。朝早くから集まって貰って済まなかったな。各部隊は作戦会議まで待機だ。以上、解散」