AIS-アンチ・インフィニット・ストラトス   作:夢現図書館

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死せる殲士(ふくしゅうしゃ)

 

 

 

「レーキュ」

 

「何だ?和奏」

 

「俺は野暮用を済ませてから合流する。他の部隊と先に前哨拠点へと向かえ。全員が全員、此処で油を売っている暇は無ぇ」

 

 未だに喚き散らす女性権利団体を遠目に見つつ和奏はそう言う。作戦目標はあの連中ではない。此処で時間を浪費するのは愚の骨頂だ。

 故に指揮権の代理はレーキュに任せる事にした。当人の性格は最悪だが、1番冷静に物事を見る事が出来る点は癪ではあるが認めているからだ。

 

「あー、和奏さんだけ狡いですぅ‼︎ ボクも一緒にやりたいですっ‼︎」

 

「閣下、抜刀の命令をちょうだい。直ぐに斬り伏せるから」

 

 と、其処へ赤と黒の制服の上に真っ赤なパーカーを羽織った金髪の少女、グレイ・ヴェルエリカと袴姿の神ヶ霊 黎華が名乗りをあげる。

 小さくも可愛らしい金と銀の可憐な殺戮者(ジェノサイダー)だった。

 

「……だ、そうだ。生憎と私ゃ、このチビ2人を御し切れる自信が無ぇからな」

 

「分かった分かった。ボーデヴィッヒ部隊長もそう言う訳だ」

 

 和奏も2人が言い出した事に止めはしなかった。そろそろ2人に暴れさせるべきだと判断したからだ。

 

「うむ。委細承知した。他の部隊と共に先に前哨拠点へ向かう。極力、早めに合流してくれると助かる」

 

「テメェが吹っ掛けたんだろ。ま、アレを放置してたら後々、問題が湧いて来る方が面倒だしな。さっさと行くが良い」

 

 和奏、グレイ、黎華を除く第3から第8の面々を先に出発させ自分達は未だに閉じられたシャッターの前で喚いている女性権利団体へと視線を向ける。当人達は後方で喋って居た自分達の事に気付いていない様であった。

 

「さて…………、黎華、グレイ。隠れるぞ」

 

「ほぇ?」

 

「ん、分かった」

 

 問答しても時間の無駄かつ面倒なので適当に斬り伏せて終わらせようとした矢先に、和奏は気配を感じ取り、グレイと黎華を連れて物陰に隠れる。

 

「殺気、でも……何か変だよ?」

 

「う?」

 

 黎華も気配を感じ取るも疑問符を浮かべている。殺気、それは殺意を抱いた気配。しかし、それは奇妙(・・)な事に和奏達が知る殺気では無かった。

 

 

 

 

 

 

 

『淘汰を、選別を、始めましょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ。2人とも、何か言ったか?」

 

 その時、唐突に言葉が聞こえた。幼くもハッキリとした口調。声の高さ的に幼い子供を思わせる声音。不意に2人の何方かが口を開いたのかと思ったのだが……。

 

「ううん、黎華は何も言っていないよ?」

 

「ボクも何も言っていないです」

 

「……気の所為、か?」

 

 声の正体に疑問を抱きつつも、気配の出所を窺う。女性権利団体と言う反乱因子が存在しているのだ。他にも……特にAIS部隊に敵対する組織が現れても不思議では無い。

 

「和奏さん。……沢山、来ます‼︎」

 

 沢山。

 その言葉に和奏は一瞬、疑問。その絲に理解。

 

「2人とも戦闘準備、構えろ‼︎」

 

 その言葉にグレイは歯車状の刃の斧を、黎華は一振りの日本刀を量子展開して構える。

 

「来るぞ、来るぞ、……来るか……‼︎」

 

 口元を思わず釣り上げる。この時間が愛おしく感じるのは性であったか。

 

 来た。物々しく金属を打ち鳴らす様な跫音が聞こえて来た。その物音に女性権利団体の女達もその姿に気付くと同時に怒号と驚愕が入り混じった声を上げている。

 そして和奏達が身を隠している建物の陰からでもその姿を視界に捉えた。

 

「アレは、IS……ですか? わー、他にも男性操縦者が居たんですねっ‼︎」

 

「ううん、あの人達……生きていない(・・・・・・)。生気が感じられない」

 

「…………」

 

 それは機械の鎧を纏った人間の男性達。

 だが、腕や脚の関節部から先が機械の様な、そうまるでISの脚部や腕部の装甲を無理矢理にでも継ぎ足し義手や義足の様に見える。

 

 仮にそうだとしても余りにもサイズが合っておらず歪に見えてしまう。然も何処の部位が継ぎ接ぎなのかもバラバラ。その装甲自体も歪なモノであり甲殻類を思わせる鋏や、大型のペンチ、他にも脚部なのに剥き出しの鉄骨やら錆びてひしゃげた金属片を無理矢理、足代わりに使っている様な、破損や損傷が著しく尚且つ、強引に使用していた。

 最悪、義手義足のサイズが合っていないのならばまだ良い。その最大の問題はその者達は正気とは思えない様な風貌であると言う事。

 

 歪に痩せ細った二の腕や二の足、穴が開き蛆虫が湧いた胴体、顎は不安定なのか口は開きっぱなしであり、中には眼球が神経と繋がったまま外部に垂れている者も居た。生きている状態とはとても言い難い風貌の者達であった。

 

 それは歪な機械鎧、即ちISの装甲を纏ったゾンビの様な姿をした存在であった。

 

「アレらに関しては俺も初見だな……‼︎ 見てくれだけ見りゃISの装甲を纏った死体って感じに見えるが……」

 

「……閣下、如何するの?」

 

 とても存命しているとは思えない。

 無理矢理言葉に当て嵌めるとなれば、死体に機械装甲を継ぎ接いだなんちゃってISと言った体である。如何やって動かしているのかは分からないが、恐らく遠隔操作の類だろうか。とても自我がある様には思えないし考えたくもない。

 

「一先ず観察だ。あの機械鎧ゾンビ軍団はまだ俺達に気付いていない。あの女性権利団体の連中には使い捨て装甲板作戦の礎になって貰うとしよう」

 

「まだ諦めて無かったんですかぁ?」

 

「成り行きだ。口惜しいな、第4の誰かが居てくれりゃあ、あの機械鎧ゾンビを解析してくれるかも知らなかったが無いモノ強請りしても仕方無ぇな」

 

 あの腐食し自意識もある様には思えないゾンビ同然の人間が自発的に動いているとは考え難い。何かしらの手段で制御していると考えるのが自然だ。

 取り敢えず、あの機械鎧ゾンビ軍団の行動を観察する事にした。どうせ女性権利団体を助けても罵倒や文句が飛んで来る。ならば人類の為、囮役なり何なりでくたばってくれた方が世の為と言うモノだ。

 

 

「い、嫌ァァァァァァァあああ‼︎」

 

 悲鳴が荒廃と化した街並みの中で木霊した。女性権利団体や女尊男卑を崇拝する自分達が好きで好きで愛して愛して止まなかったIS。

 かつてはISの圧倒的な『暴力』を傘に甘い汁を感受し続けていた。

 その『暴力』が、今……女性権利団体(じぶんたち)に対して容赦無く牙を剥いた。

 

『ォ……ン……ア゛……‼︎』

 

 機械鎧ゾンビの1体が、呻き声にも等しい音を立てながらその右腕部装甲を振り上げる。様々な機械板や鉄塊、他には刃物を乱雑に継ぎ接ぎペンチを模った様な右腕部。その咥え部を広げて1人の女尊男卑の女を胴体を挟んで掴み上げる。

 

「い゛ぃ⁉︎ ぎぃ、あ……ッ‼︎ がっ‼︎」

 

 万力の様に無慈悲に挟む力が加えられ押し潰す圧力により左右から圧迫され鈍い音が響く。乱雑な造りである為に咥え部には露出した針金や破損した金属片も混入しており、それらが皮膚を貫通して内臓に深々と突き刺さる。

 

 

「おーおー、ありゃ掴まれたらお陀仏だな。因みに『防腐処理』って胴体サヨナラしても直ると思うか?」

 

「鈴晶先生が言うには、脳と首が繋がってて心臓が無事ならまぁ直せるみたい」

 

「そりゃ、防腐処理サマサマだな。内臓を引き摺り出されても修復出来たくらいだしな……」

 

 それならば多少の無茶は通じる様だ。と言ってもその無茶はやる方によっては後が無くなる可能性も否定出来ないが。

 そうこう話している内にペンチ腕に掴まれた女は一際高い断末魔をあげた後、バギンと言う音を立てて上半身と下半身が切断され上半身が反動で血飛沫を上げながら吹っ飛んだ。

 

 その光景が発端か、他の機械鎧ゾンビの軍団も行動を開始して恐怖に染まる女性権利団体の人間達へ襲い掛かる。目の前で無惨な殺され方をした女性を見て逃げる様に走り出す。機械鎧ゾンビはその女性達の後を追い始める。

 

「お、如何やら神奈川コミュニティには興味は無い、と。此処で暴れずに済んだな」

 

 幸いかは分からないが、あの機械鎧ゾンビは神奈川コミュニティの入り口のシャッターに関しては一瞥すらしなかった。

 まだ断定は出来ないが、あの機械鎧ゾンビの標的は生きた人間であると推測される。

 此処で暴れた場合、銭湯の余波で神奈川コミュニティに二次被害を出す可能性があったからコレは好都合である。

 

「しかし、アレを放置するのはちとヤバいかもな。あの機械鎧ゾンビとISとの関連性はまだ見えないが……無関係と断ずるのは早計だ。黎華、グレイ、予定を変更するぞ」

 

 作戦目標はあくまで国会議事堂に巣食う『フロック』だ。しかし、予定通りに事が運ぶ事は稀であり不測の事態はいつでも起こり得る。

 その際の判断は各部隊長が下さねばならない。

 

「俺達は本部隊と一時離れて、あの機械鎧ゾンビ軍団を追跡、その正体を探るぞ。ISとの関連性は不透明だが……放置しておくのは気掛かりだ」

 

「ボクは遊べれば問題ありませんっ‼︎」

 

「黎華は閣下の命令に従う」

 

 そうでなくても少なくとも人類に対して敵対的な存在である事は明らかだ。何れはそれらに対して対処せねばならないだろう。ならば情報は持ち帰るべきだ。

 

 

 

 

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