AIS-アンチ・インフィニット・ストラトス   作:夢現図書館

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女尊主義者

 

 

 

 

「…………。そうね、私の口から説明するよりも見た方が早いわ」

 

 師匠は質問に答えず『自分で見ろ』と言い放ち、耳に吊るした鈴を意図的に鳴らした。

 それは『答え』は直ぐ近くにやって来ると言う意味であり、ズカズカと礼儀のなって居ない足音が聞こえて来た。

 

「……何故、この神聖な場所に()とか言う汚物が混入しているのかしら?」

 

 大食堂に入って来て早々、侮蔑を多分に含んだ言葉が耳に入って来た。他の部隊長各位の表情を見るに厄介者の闖入の様だ。千冬は平静を装っているが目が笑ってはいないのが察せられる。

 

——成程、大凡の推測は立つ。

 

 視線を向けた先、其処には1人の女性が立っていた。横幅が大きい肥満体の肉体を持ち、毳毳しいまでの化粧を付け、その化粧と似合わない不満げな表情を浮かべた肥満体の女性であった。

 

「師匠、アレは何です?」

 

「見れば分かるでしょう? 身の程知らずよ」

 

 敢えて師に教えを乞いたが、予想通りの返答が返ってきた。ならば問い方を変えよう。

 

「では、何故……此処に異物が混入しているのですか?」

 

 IS学園は対ISの戦闘部隊が駐屯する学園基地だ。ならば何故、あのような役立たずが紛れ込んでいるのか?

 

「この学園基地の島には避難者の居住区があるのだけど……状況はそれどころじゃ無いと言うのに未だに女尊男卑の影響からは脱却出来ずにいるのよ」

 

「……何時の時代も人間同士の醜い足の引っ張り合いが起こるのですか」

 

 それだと溜息も吐きたくなる。大体がそう言う連中ばかりが生き残って来る。

 

「ええ。その大半が女尊男卑に傾倒した主義者ばかりなのが実情。学園内にある居住設備の大半が彼女達が占有しているのよ。元々は学生寮は女尊男卑や女性権利団体の連中が占有している。その癖、作戦任務にも口を出してくる始末」

 

 絶対数が増えればそれだけ発言力も強くなる。多数派の意見が押し通されるのは民主主義では当然の状況だ。例えそれが悪政であろうとも。

 

「…………成程」

 

——……遅延行為か。仮にISが絶滅すれば、次に何が起こるか分からない訳では無いか。保身に関して目敏いのは変わらん、か。反吐しか出ないな。

 

「……私が教官として就任し、貴方を呼んだ理由の1つでもある。和奏、許可(・・)出すわ。出来る限り舞台は整えた……」

 

 このやり取りで確定した。

 あの女は所謂、女尊男卑に傾倒した女であると。其処に女性権利団体が付随すればその時点で役満貫か。

 ISが人類に叛旗を翻した為に、女尊男卑思想に傾倒する女性権利団体の威光は転落した。

 所詮はISの威を借りねば何も出来ない連中に成り下がった。それでも女性優位の環境から抜け出せずに居る者達が多いのもまた事実、それはこの3年間で実証された虚しい現実の一端だ。

 

「……何の用ですか?」

 

 和奏が鈴晶とやり取りしている間、千冬が闖入者との応対に応じる。一応は司令官として訪問者とやり取りはせねばならぬ立場であろう。

 

「第8部隊に新しい部隊長が任命されたと聞いたからその顔を見に来たのよ。前任の第8部隊は本当に役立たずだったわねぇ。崇高なるISを前にあの程度の小娘達じゃ無理だったわね」

 

「……司令部の通信妨害した上に無茶な作戦内容。我々としてはウンザリしているんですよ。昨年も昨昨年の時もそうだ。貴方方が推し進めるような無謀な強硬策を強行した結果、当時の学園の3年生も2年生の大半が戦死を遂げた……」

 

 その言葉の節々に司令官としての感情では無く、まだ教師(・・)としての矜持が宿っていた。

 

「あの連中は全く持って役に立たなかったわ。女尊男卑の栄光を取り戻す為の戦いだと言うのに、その身を私達に捧げて当然だと言うのに、無様に死ぬだなんてね。本当に使えないわ……」

 

 その女性は千冬の言葉に意に貸さず不遜な言動を続けている。さも、自分達が上位の存在であるかの様に振る舞っている。

 実際、IS学園島にて居住、駐屯する総人口の内、半数以上が女尊男卑及び女性権利団体を匂わせる人間が占めており、自分達の横柄さを示すが如くAIS部隊の作戦に横槍や自分達の利益になるような強硬策を捩じ込んで来たりとやりたい放題。その上、学園島のライフラインを押さえてAIS部隊を私物化しようとしている始末。

 司令部としてはライフラインを彼女らに押さえられている為に無碍には出来ぬ事情があった。それでも千冬の個人として限界があった。

 

「……今年は少しは期待出来そうね。何せ、仮にも代表候補生クラスの人間が居るのだもの。早いところISを屈服させてまた私達の女尊男卑の時代を取り戻して貰わないと困るわ」

 

 その言葉に各部隊長はギリギリ我慢しているのが見えた。元代表候補とは言え他国籍の人間、この様な連中の為に戦えるかと言われると忌避感が募るのは当然だろう。

 

「……だと言うのに、第8がまさかの男ですってぇ? AIS部隊は私達、女尊男卑を復興を目指す為の部隊。其処に男とか言う汚物が入り込むだなんてとても容認出来やしないわ‼︎」

 

 第8部隊の部隊長が男だと見るや否や突然、ヒステリックに叫び出す女尊主義者。唾が飛び散り、肥満体を揺らして苛立ちを隠さず続け様に嘶く。

 

「今回の第8もどうせ失敗ね‼︎ 何せ、男が部隊長なのだから‼︎ そもそも男をリーダーと認める第8の部隊員も同罪よ同罪‼︎ 同じ女性として恥ずかしいったらありゃしない‼︎ 男なんて家畜以下の存在でしか無い‼︎ そんな事は常識よ常識‼︎

 そんな事も理解出来ないだなんて、信じられないわ‼︎そんな連中の為に、少ない物資を分けるなんて認められない‼︎ どうせ、すぐに全滅するくらいならば現地調達させて私達に回した方が効率的よ、効率的‼︎」

 

——言質、頂き……‼︎ ならば、そうさせて貰おうか。

 

 和奏が口の端を吊り上げた。隣では鈴晶もコレから起こる光景を夢想しているのか肩が上がっているように見えた。ならば、師の期待に応えようではないか。

 

 

 

 

 

 

「おい、其処の養豚場で屠殺じゃなくて殺処分されそうな、豚女」

 

 

 

 

 

 其処で和奏は割り込む形で女尊男卑のみならず女性相手ならば間違いなく突き刺さる容姿に関する暴言をぶつけた。

 然も屠殺では無く殺処分と言う、暗に『人類の役に立てずに、処分するしかない』と言う皮肉を込めた暴言を添えて口を開いた。

 

 

 

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