「おい、其処の養豚場で屠殺じゃなくて殺処分されそうな、豚女」
「ぬわぁんですってぇ⁉︎」
その暴言に反応した肥満体の女性。その光景を他の部隊長や教官達は其々、困惑、興味深そうな、驚きと言った様々な思惑を抱きながら静観している。口を挟むつもりが無いのならば好都合。
「何だ、自覚があったのか。そう言われるくらいならば少し位、痩せたらどうだ?」
嫌味を込めてゆっくりと告げる。明け透けな挑発、しかし女尊男卑に傾倒する女尊主義者と言うのはその傲慢さとISの威光の余りの強さに対して忍耐能力が培われない。誰も彼もがISと女尊男卑思想が定着した法律や黙認と言う恩恵故に反抗する者が少ないからだ。だからこそ、攻めに関しては強いが守りには関しては脆弱と言う人間が多いのだ。
「この……‼︎ 男の分際で……‼︎ この私が誰だか分かっているの……⁉︎」
怒りに肩を震わせている。此処まで露骨な反応を示されると返って滑稽にしかみえない。大人ならば大人らしい態度を示して貰いたい。
「知らん。知る訳無かろう。豚の顔なぞ逐一、覚えている余裕なぞ無いからな」
燃え上がって行く炎に油を注いでいく。躊躇せず、かくも笑みを浮かべながら。
「全く、これだから情報に脆弱な男と言うのは……」
此処で怒り出したら和奏の思う壺だと分かっている肥満体の女性は、顳顬に筋を浮かべながらも堪えつつ言葉を続ける。
「脆弱? 前線の、ひいては『戦場』の状況を何一つ理解していないお前らの方こそ、情報脆弱だろう?」
——流石だ、
しかし、もう少し惹き付けておいた方が良いだろう。目の前の理解が足りない者の言葉は聞くに堪えないが、これもまた必要か。
「アンタの様な存在する価値が無い男よりも理解しているわ。口から適当な出まかせしか出ないのは、実に女々しい限りね。
本来ならば私達、女性権利団体に万物が平伏して当然の光景なのよ。ISを屈服させる事が全く出来ていない……それが出来ないのは単にアンタ達の力不足が根源的な原因なのよ‼︎ 圧倒して当然なのに、逃げ惑い死に絶える姿は同じ女性として余りにも情けなくて笑えるわ‼︎」
和奏の言葉に噛み付き、剰え自分達の絶対優位性を主張し此処まで成果が振るわないのはAIS部隊が弱いからだと宣う。
「ほう……?お前達ならば圧倒して当然とでも? ならばその偉業を是非とも拝見したいモノだな。それこそ、お前達が立案したとか言う作戦内容でな」
「何故、私達がそんな事しなきゃ行けないのよ⁉︎ 私達が出ればそれこそ直ぐに終わるじゃないのよ‼︎ 何の為にAIS部隊があると思っているのよ⁉︎ アンタ達がやるべき事を私達に押し付けるのはお門違いじゃない‼︎ アンタ達の仕事はアンタ達で片付けるべきなのに、私達がやる道理は無いわ‼︎」
早口で捲し立てる様に叫ぶ肥満体の女性。
「怖いか? ISに成す術も無く蹂躙される自分達の姿が。彼処まで崇め奉い自分達の『力』によって完膚なきまでに叩き潰される事が」
「……ッ‼︎」
「後方で文句を垂れるだけ垂れて、いざ脅威が目の前に現れれば自分は安全圏に居て
「……それは相当ね。赤い兎が居れば完璧かしらね」
その言葉に鈴音が相槌を打つ。流石は本家、捻った言い方であったのに理解している。……と言うか此方に対しても酷い言われような気もするのだが。
「さて、お前は第8は現地調達しろと吐かしたな? ならばそうさせて貰おう。お前らの様な脂塗れの手垢が付いたモノなぞ此方から願い下げだ‼︎」
——仕込みは充分。後は発破を掛けるのみ。
「オルール‼︎」
「はいっ、待っていました‼︎」
和奏が声を上げるとこの場に居る人間達の死角から1人の少女が姿を現した。水色髪の髪を靡かせたお嬢様然とした容姿ではあるが、その服装は露出が多くスカートこそ履いてはいるが上半身は水着に近く、二の腕にはタトゥーが入っており、如何にも堅気とは言えないアンバランスさを両立させていた。
「っな⁉︎ この私が気付かなかった、だと⁉︎」
「一体、いつの間に……」
「……ッ⁉︎」
そのいきなりの登場にラウラと千冬は素直に驚き、簪は目を丸くしていた。
「オルール。ちょっと、他の
「えっ⁉︎ い、良いんですかッ⁉︎ 掠奪しても⁉︎」
実に物騒な発言に対してオルールは目を星にさせながら聞き返して来る。然も『掠奪』と言う、見た目や口調はお嬢様なのに口を開けば暴力者の内容であった。
「構わない。居住区の大半は女尊男卑主義者の巣窟だ。ついでに学園基地内のライフラインを制圧しろ。コレが第8の初任務だ。俺はまだ動けんから指揮は……まぁ、雑魚相手に指揮とか要らんか」
「分かりましたッ‼︎ 速やかに制圧……じゃなくも無いですけど、掠奪して来ます‼︎ 部隊長命令だ‼︎ 沢山、奪って来ます‼︎」
高速で理解したオルールは嬉々とした表情で大食堂内のテーブルを薙ぎ倒しながら大食堂から爆走して去っていった。掠奪となると暴走するのが玉に瑕ではあるのだが、まだ他のと比べればマシだろう。
「さて……」
「なっ、なっ……⁉︎」
怒涛の展開に理解が開いた口が閉じられない顔は実に滑稽であった。