「さて……」
「なっ、なっ……⁉︎」
怒涛の展開に理解が開いた口が閉じられない顔は実に滑稽であった。何せ、彼女どころか日本人にとって掠奪行為に遭うなんて経験は早々無いだろうからだ。ましてや、女尊男卑となりISの存在故に誰からも襲われないと言う固定概念があったが故に、今頃パニックになっているだろう。
「あ、アンタねぇ⁉︎ い、今、何をしたのか理解しているの⁉︎」
小刻みに震えている。とても信じられない行動を見せた和奏に対しての恐怖か或いは動転しているのだろう。
「何、ただの現地調達だ。第8は現地調達しろと宣うのならば、それを実行しただけだ。
先ずは手短な場所から資源を着手するのは当然の話だろ」
——別に居住区から
「こ、コレは立派な叛逆行為よ⁉︎ まさか、第8の叛逆だなんて……⁉︎ 信じられない事をしてくれたわね⁉︎ ちょっと、織斑‼︎ コイツの横暴を許して良いの⁉︎」
其処で肥満体の女性は静観を決め込んでいた千冬に助けを求める。肥満体の女性からすれば第8の叛逆行為。基地司令官としては見過ごす訳にはいかない重大な違反行為である。
「第8は特例で時鳥先生の管轄だ。元々、第8は任務の危険性を鑑み問題児が集まる部隊だ。そして現場の判断は部隊長に一任してある」
千冬も女尊主義者の横暴には辟易していた。言葉で説明しても如何にもならないのならば此の儘、任せた方が事態が好転すると踏んでいるのだろう。肥満体の女性の言葉に対して素っ気なく返す。
「答えになっていないわよ⁉︎ 私達の居住区が襲われていると言うのに静観を決め込むだなんて、どうかしているわ‼︎」
「不満があるから裏切られるのは当然じゃないのか? 上に立つならばもっと民草や部下の声も聞くべきだったな。……殺れ、雪字」
「はっ……がっ⁉︎」
和奏が名を呼ぶと同時に、肥満体の女性は首筋噴きながら前のめりに倒れ込んだ。その背後にはまた別の1人の少女が立っていた。
滅色の髪を後方に纏めた少女、その手には一振りの小太刀が握られていた。背後から頸動脈を切り裂いて殺害したのだ。
「主君よ。流石に待たさせ過ぎだ……」
「待て、勝手に仕えるな」
「主は部隊長で、拙は隊員。整合性がある」
「……上下関係としてはそうだが、それは第8部隊での話だろう。個人的に君を従えた覚えは一切無いんだがな」
和奏が自身を『主君』と認識し尚且つ公私混同をしてくる皐月 雪字に呆れ紛れにその主張を否定する。
「和奏、雪字ちゃん。お疲れ様。後は、他の子達が上手くやってくれると良いわね」
肥満体の女性が事切れ、2人のコントを打ち切りにするかの様に事の行く末を見守っていた鈴晶が口を開いた。
「……静観はしていたが、時鳥先生。何を企んでいたんだ?」
千冬は目の前で暗殺された女尊男卑主義者の死体を見つつ、鈴晶の独断による行為に対して質問をする。
「簡単な事よ。学園基地内に巣食っている女尊男卑主義者や女性権利団体に意地悪したかったのよ。貴方達も口には出さないけれど彼女達の横柄さには辟易していたでしょう?」
「……まぁ、否定はしないな。作戦内容にも口を出して殉職者を大量に出させたり、資源等を独占していたりとやりたい放題だったからな……」
「口で言っても聞かないなら
強奪や強盗殺人をしろと言われて直ぐに実行に移せるかしら?」
「それは……」
そう問われて出来ると言う言葉は出て来なかった。掠奪行為を平然を行えるかと問われると普通の感性ならば無理だろう。ましてや相手が人間ならば尚更だ。
「だから既に
「……色々と私利私欲が含まれているな」
「それはお互い様でしょう?織斑先生も私欲が含まれているでしょう?」
「…………」
その言葉に千冬は返答はしなかった。沈黙は肯定と見るべきか。
「主君、この後の事は如何考えておられる?」
「ぶっちゃけ、勢いに任せた結果だからな。その後の事は全く考えていないんだわ。ライフラインを制圧しても第8が維持出来るとは思えんからな。織斑教官殿」
「何だ?」
「第8が制圧したライフラインの施設は司令部に全部、譲って良いか?」
「……ああ、構わない。本来ならば主要施設の管理や運営は我々が行うべき事柄だ。……着任早々、ご苦労だったな。そして、結果的に嫌な役回りをさせてしまった、済まない。
後の事は此方で何とかしよう。ライフラインを連中に押さえられては司令部としても迂闊に動けなかったモノでな。今後はこの様な事が起こらない様に努めよう」
「……第8が掠奪品に関しては他の部隊にも回すようにしよう。あの連中と同類扱いと言うのは彼女らにとっても侮辱に他ならないからな」
「その辺は部隊長同士で打ち合わせしろ。さて、かなり強引な形ではあるが、今年からはちゃんとマトモに作戦行動が行えそうだな」
「……逆にマトモに機能しなかった作戦内容が知りてぇな」
「作戦内容の中身の8割が女性権利団体が所有していた資産救出よ。過程もゴリ押しで作戦もクソも無いわ」
「師匠。聞いた俺が本当に馬鹿だったよ……」
「……やれやれ、ただの顔見せがとんだ事態に発展したな。今頃、居住区は大パニックだろう」
「千冬さん、その割には随分と楽しそうですね……」
「楽しくもなるさ。『自分達は守られて当然』と思っていたら、突然襲われるんだ。その慌てふためく姿を直に見てみたいモノだ」
「教官……。我々の前ならば良いのですが、他の者達の前ではとても口には出来ませんよ」
「ん、ンンッ‼︎ そうだったな、予定以上に長引いてしまったな。今回の件はコレにて以上、解散だ」
因みに暗殺された闖入者は処理され、女性権利団体を始めとした女尊男卑主義者達が占有していた学園基地内にある居住区及び元学生寮は、オルールに扇動された第8部隊が強襲し、様々な物品が掠奪され、学園基地のライフラインである電気、ガス、水道と言った主要施設の制圧した。
この様な事態に被害を受けた女性権利団体は司令部に猛抗議する事になり学園基地内で対立が生まれる事となった。