「ふふふ、私の期待以上……いえ、想像以上の成果ね」
部隊長同士の会合を終えてから1時間後。8組の教室にて、担当教官である時鳥 鈴晶は第8の面々を見渡しながら可笑しそうに口元を押さえながらそう切り出した。
和奏はオルールに伝令役にして8組の面々に居住区と学園基地のライフラインの主要施設を襲撃させた。そしてその結果、大戦果とも呼べる成果を達成したのだ。
事前に説明された通り、居住区や元学生寮を事実上、占有していた女性権利団体や女尊主義者が保有していた物資……食糧関連、医療品、嗜好品、更には弾薬等は軒並み、オルールを始めとして悪ノリに乗っかった連中に略奪された。
IS学園の学園基地は対ISの最前線ではあるが、各種物資は司令部の補給部隊を介して各地で造られたコミュニティから運び込んでいる。女性権利団体はその補給部隊から各種物資の取り分を自分達が多くなる様に圧力を掛けていた。
ライフラインの管理施設にも強襲を掛けた。此方も女性権利団体を筆頭とした女尊主義者が占有して司令部に圧力を掛けていた。まさか、AIS部隊と言う身内に襲撃される事など想像出来ず、あっさり制圧された。
中には抵抗した者も居たが、異常者や凶悪犯罪者、論理感が破綻している
「制圧した電力、ガス、水道と言った施設は部隊長である和奏の宣言通り、全ての権利を司令部に譲渡するわ」
「ええ、管理する余裕は無いですからね」
第8は制圧したライフラインの施設の権利は、和奏が司令部に全て譲渡すると即断した。その施設の管理なぞやっている余裕は自分達には無いからだ。
「次。元学生寮はIS学園が対ISとしての学園基地として機能し始めた時、AIS部隊の寮部屋として使われる想定だった。だけど、女尊男卑に傾倒する女尊主義者や女性権利団体が有無を言わさずに占有して私物化していたわ」
「ハッ‼︎ 凡人は何時も天才の脚を引っ張りやがる。クククッ……足蹴にされて追い出された時のあの凡愚共の顔は、マジで傑作だったなぁ‼︎」
その光景を思い出したのか、目立つ金髪に耳にピアスを付け、白衣を羽織った眼鏡を掛けた少女は、机に脚を乗せてながらとても凶悪な顔を浮かべて嗤う。
「貴方達のお陰で、元学生寮は制圧されたわ。コレでちゃんと規律ある部隊運営が出来るわ」
「師匠、質問です」
気になる事が出て来たので、鈴晶師匠に質問を投げ掛ける。
「……昨日迄、AIS部隊はIS学園の名残であるアリーナの整備室で避難所生活同然だったわ。大浴場も、水道を抑えられてて使えない状況だったのよ」
「普通、逆だろーがッ⁉︎ 士気低下に加えて戦力低下になる事もまるで理解出来ねぇのかよ、あの連中は⁉︎」
師である鈴晶はお見通しであった為か、和奏が聞きたい事を先に答えた。そして、その内容は余りにも酷いと言わざるを得ない内容だった。
「おい、和奏。理解していたら、こんな事態になってねぇだろ。あの連中は自分の保身しか頭にねぇよ。まぁ、今日からはダンボールハウスだろうがな」
「余程、この状況を長引かせたいのであろうな。ISとの戦争が終われば吊し上げを喰らうのは奴らだからな」
「何だ、分かってんじゃねぇか」
「……少し考えれば誰でも分かる。私がISの立場ならばそうした」
「違いねぇ。本当にクソの役にも立たねぇな」
金髪眼鏡の少女と言葉を交わすは対照的な白銀の髪を靡かせ、此方も白衣を羽織った少女であった。可愛いよりも美人と言う表現が似合い近寄り難い印象を受ける。……金髪眼鏡の方は危険な意味で近付きたくは無いが。
「……良く此処まで、野放しにして来ましたね」
「言ったでしょう? 他のAIS部隊は大半が元々一般人の良い子ちゃんばかりで貴方達の様な人格破綻者じゃないの。
ISと戦うのならばまだしも、人に向けて武器を振るうと言うのは、相当な精神力が求められるの。それが殺人を伴いかねないのならば尚更。普通の10代の娘達じゃ、力不足よ」
酷い言われよう。しかし、事実なので否定出来る要素が無い。
「後、序でに言うならば食糧関連の割合はAIS部隊や司令部が0.5で、女性権利団体が9.5よ」
「1割切ってんのかよ⁉︎ どんだけ、足を引っ張ったら気が済むんだよ、あの連中は⁉︎」
その比率を聞いて和奏は最早、怒りを通り越して呆れる他に無かった。女尊男卑や女性権利団体はどう考えても初めから敵ではあるのは明白だが、全体を見れば獅子身中の虫でしかない。
過去の旅の中でとある将校に『兵士は食事を抜くな』と言う教訓を伝授して貰った事があるからだ。それくらい兵站は重要なのである。
「……結果、去年のAIS部隊の死者の内、86名が栄養失調及び飢餓によって餓死したわ。……戦死した者の中には空腹によって衰弱し隙を晒して落命してしまった者も居るわ。他にも、学園島内で雑草を食んで延命をしていたのだけど……終ぞ生き延びる事は無かった」
「ッ⁉︎」
「……‼︎」
「…………」
鈴晶より更に告げられる残酷な事実。その言葉に一部の者は反応を示した。女性権利団体や女尊主義者の横暴は度を超えていた。AIS部隊は彼女達の都合の良い道具の様な扱われ方に憤りも覚える。
「……主君、命を。1人残らず、真っ赤な浮世絵にしてご覧にいれよう」
「え?遊びに行くんですか?ボクも交ぜてくださいっ‼︎」
「閣下、誰を殺せば良いの?」
そのタイミングで3方向から物騒な提案が投げ掛けられる。何も、身長はこの8組では平均を下回るのだが、気性は本質は取り分け危険な部類に入る。
「待て待て、掠奪と主要施設の制圧は第8主導で行ったが……其処までは流石に越権行為だ」
「ぶーぶー」
「ぶーぶー」
精神年齢が幼い2人から揃ってのブーイング。しかし、戦闘能力は8組中トップクラスと言うバケモン。言葉が通じて言う事を聞いてくれるだけ、かなーりマシだと言える。
「然れば主君。如何なさるおつもりか? 此の儘、彼奴等を捨て置くは皆の士気に響くぞ」
「俺も、あの連中は気に食わんよ。だが、俺の独断で処するのはまた違う。第8が論理感が欠如している者達の巣窟とは言えど、此処は秩序が伴う地だ。それなりに足並みを揃えねばならない」
部隊長である和奏の言葉。仮に和奏でなければ、今の第8の面々は勝手に動いて惨事を引き起こす事が容易に想像出来る。1人1人が、厄ネタに等しい問題児だからだ。
「なら、どうするって言うんだ?部隊長さんよぉ」
「今代の第8の面々は新参者ばかり、そうでしょう? 師匠」
「ええ。短期間で此処まで集めるのは苦労したけれど、その通りよ。何か、企みでもあるのかしら?」
鈴晶は和奏がまた企てている事を見越して問い掛ける。
「他の部隊長と協議する。どの道、今回掠奪した物資の分配の件で打ち合わせねばならないからな。その時にこの件に関しての意見を集める。
一応はこの学園が設置された国は民主主義だ。ならばそれに倣い民主的に決めよう。その結果によっては……」
「浮世絵にしても良いのか⁉︎」
「構わない」
「いっぱい、遊んで良いんですか⁉︎」
「壁とか床とか天井とか壊さない範囲ならば好きにして構わない」
「人体実験しても良いのか⁉︎」
「然るべき処置をするなら構わない」
「被験体として貰ってもよいのか⁉︎」
「然るべき処置をするなら構わない」
「試し斬りに使っても良いか?」
「然るべき処置をするなら構わない」
「鮫の餌にしても良いんですか⁉︎」
「サメ達が可哀想だから止めてあげなさい」
「どうして私だけ却下なんですかぁ⁉︎」
やはり第8部隊は物騒な人間ばかり集まっている……。