「先ずは第7から行くとするか」
「閣下、黎華も同行しても良い?」
鈴晶からの話から待たせるのは良くないのでその日の内に会議を纏めるべきだと判断したのでその日に行動を起こす事にした。
その時、先程物騒な発言をした小柄な体躯の少女が近寄って来て同行を願い出た。
「別に良いが『所有物』発言は有らぬ誤解を招くから勘弁してくれよ……」
神ヶ霊 黎華。
小柄な体躯で顔立ちはまだ幼さが残り可憐で愛らしい容姿を有するが自身を『武器』と自称し、和奏の所有物だと言い張るちょっと天然気味な少女。
「うん、分かった。閣下」
「出来れば、閣下呼びも勘弁して欲しいんだが……」
出会った当初は所有物発言に続いて和奏の事を陛下やら殿下やら閣下やらでどの呼び方が良いか聞いて来た始末。その時は比較的ダメージが少ない閣下呼びで済ませる事が出来たが、所有物発言だけは直らなかった。
——……黙ってれば可愛らしい女の子なんだがなぁ。
そんな心配をしながら第7の居室である7組の教室の扉を開けた。教室の構造は共通なので特に語る事は無いが、広報を担当している部隊だけあって容姿が優れている隊員が多い事が見受けられる。
「よっと、失礼するぞ。第7の部隊長殿は居るか? 第8が確保した物資の件で打ち合わせをしたい」
「お待ちしていましたわ。場所を変えましょうか」
7組の教室の外の廊下で第7部隊長であるセシリア・オルコットと掠奪した物品の分配の件で話をする事になった。
「やはり広報も担当しているからか、化粧品絡みか」
「はい。やはり人前に出る以上、美容には気を遣わねばなりませんわ。……最近は、食糧不足故に栄養失調気味で体調を落とす方や肌荒れを起こしてしまう方も多く広報の観点から死活問題でしたわ」
「……食糧不足の話は師匠、時鳥先生から聞いている。女尊主義者共をブチのめしたからAIS部隊にも渡る筈だ。腹は減っては戦は出来ぬ、とも言うだろう?」
「はい。担当の教師からもその話の旨が通達されました。汚れ役を担って頂き、第7を代表してお礼を申し上げますわ」
「礼を頂戴する。まぁ、あの時はその場の勢いって奴だ。それで、この様な事態を引き起こしたあの女尊主義者やらの処遇について第7の意見を聞きたい」
「意見、でしょうか?」
「ああ、俺らは新参で、第7を始めとした面々は以前からAIS部隊として活動してんだろ?」
「はい。私が祖国からこの学園基地に赴任したのは半年前ですわ。他の元代表候補生の方々も同時期でしたわね」
鈴晶の話から統括すればかなり長い期間、横暴は続いていた事となる。自分達よりも彼女達の方が憤りは強くなるだろう。
「第8……つーか、バカ連中は即処するべきと言う意見が乱立しててな。掠奪絡みは第8がやったが……この件に関しては他の部隊の意見を聞くべきだと判断したんだよ。最終決定は司令部の織斑司令に委ねるつもりだがな」
「成程……。私個人の意見としては第8と言えどAIS部隊が彼女らを処刑するのは余りにもリスクが大きいと思われますわ。
基本的に学園基地に届く物資は各地に造られたコミュニティから届けられます。……AIS部隊は人類の希望と言う標榜を掲げている以上、イメージダウンに繋がる行動は避けるべきだと考えます」
IS達により『無限革命』。
これにより世界の主要都市は大打撃を受け、多数の被害を出しながらも生き残った人類は活動圏を地下へと移した。被害を免れた地域の地下に共同活動体であるコミュニティを建造して其処が人類の棲家となったのだ。
「成程、第7はそう考えるのか。意見に感謝する」
「……ところで、気になっていましたが其方の方は?何方でしょうか?」
一旦の結論は出た所でセシリアは和奏が連れていた黎華に興味を持った。
「黎華だよ。和奏閣下の所有物で、その武器だよ。ご無礼遊ばせ?」
黎華はあどけない笑みを浮かべながら部外者が聞けば誤解を招きかねない発言が口から飛び出した。
「み、見損ないましたわよォォォ‼︎⁉︎ 第8部隊長ォォォォォォ‼︎⁉︎」
「誤解だァァァァァァァ‼︎‼︎」
やっぱり、第7のセシリアに誤解されてしまった。そして、和奏も反射的に大声で否定した。
「宵咲さんは、こんな可愛らしい娘を所有物扱いしているんですの⁉︎ 女尊男卑男尊女卑以前の問題ですわよ⁉︎」
「言われた側の気持ちを理解しやがれェェェェ‼︎‼︎ 俺が1番困ってんだよォォォォォォ‼︎‼︎」
和奏当人が1番困る。そう言う趣味があるのかと誤解されてしまう。と言うか本人が武器として自己認知している以上、外部からの矯正は難しかった。
「……黎華は、間違った事は言っていないよ?」
「黎華はもう黙っててくれェェェェェェェェ‼︎⁉︎」
その後、必死に誤解を解き、黎華は天然で彼女の実家の教育方針がイカれていたと言う事で無理矢理ゴリ押した。そして、此の儘だと誤解が誤解を呼んで更に混沌化しそうだった為に、8組に帰らせた。
「よー、面白そうな事をやってんだよ。私も交ぜてくれや、和奏ァ?」
「何で、次はお前が出て来るんだ……?」
黎華の代わりにやって来たのはニタニタ笑みを絶やさない白衣を羽織った金髪眼鏡のイカレガールだった。
「面白そーだからに決まってんだろ。改めて仲間になったんだから楽しくやろーぜ?」
病葉 レーキュ。
半分日本人で半分外国人のミックス。白衣を羽織ってて物騒極まりない発言から分かる通り、彼女は誰がどう見ても人体実験好きのマッドサイエンティストだ。論理感の無さで言えば第8ではトップクラスかも知れない。
「んで、第7は何て言ってやがった?」
「第7は広報関連を担当しているから、殺処分には否定的な意見だ」
「チッ、つまんねーな。折角の楽しい楽しい人体実験タイムが遠退くじゃねぇか……。何の役にも立たない分際で死ぬ前に世間様に役立ててやろうって言うのによぉ。寧ろ、正義の味方だぜ?私ぁ」
「その意見には否定はしねーが、この基地では一応、民主主義に則れ」
「じゃあ、ウチら側を増やさねぇとな。そうすりゃ民主的にも問題ねーだろ?」
そんな物騒な会話をしながら次の斥候担当である第6部隊の居室である6組前に到着した。