AIS-アンチ・インフィニット・ストラトス   作:夢現図書館

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延長会議 Ⅱ

 

 

 

 6組は部隊長の軍人気質からして予想はしていたが、やはり硬い雰囲気が漂っている。

 

「よー、第6の部隊長殿は居るか? 第8が確保した物資の分配の件で打ち合わせたいんだが」

 

「私は此処だ。その件か、待っていたぞ」

 

 第6の部隊長であるラウラ・ボーデヴィッヒに連れられ場所を廊下に移し物資分配の話を進める。

 

「各種弾薬やら医療キット、他にも拠点設営に使う簡易的な資材、か」

 

「うむ。我が第6は主に斥候担当だからな。常に危険が伴う……。充足した装備によって兵士は完成される……装備、備品不足に悩まされていた。それに軍事行動において最重要課題である兵站不足の問題も貴官らの活躍において解決し士気の向上も見込める。

 教官の代わりに礼を言わせてくれ。この件に関しては私としても不服だった、しかし教官に止められては動けなかったのだ」

 

「第7からも言われたが、その場の流れでやっただけだ。まぁ、礼に関しては受け取っておくよ」

 

「……軍は規律が絶対ではあるが、時には貴官らの様な者達も必要なのだな。そうだ、宵咲部隊長。この戦いが終われば我が祖国であるドイツに来ないか? 貴官ならば、相応の待遇で迎え入れる事が出来るぞ。なんなら、第8部隊丸々来てくれても構わない」

 

「取らぬ狸の皮算用、だ。全てが終わってからその話題を出して欲しい」

 

「む、それもそうか。終戦までにお互いが生き残っている保証は無いからな……。だが、不思議と貴官は生き延びていそうな気がするな」

 

「未来の事は分からん。おっと、第6としての意見を聞かねばな」

 

「む?他にも何かあるのか?」

 

「ああ、今回の件でこの学園基地に巣食う女尊主義者や女性権利団体の処遇に関して、第6の意見を聞きたい。第8は……まぁ、過半数と言うかほぼ全員が殺処分を提案している」

 

「ふむ……成程。ならば第6の部隊長である、私の意見を言わせて貰おう。誅するべきだ」

 

「ひゅう」

 

 ラウラの回答は即答かつ『黒』であった。その返答にレーキュは目元をギラつかせる。

 

「理由を聞かせてくれないか?」

 

「連中の行動は利敵行為でしか無い。安全圏で主戦論を叫ぶだけならばまだしも、教官の坐す司令部に圧力を掛けた挙句に参謀や黒幕を気取る姿は唾棄すべき光景だ。

 ……教官の心中は察するに余りある。教官が何とか綱渡りしなければ、冗談抜きで教官が司令部の長官になっていなければ……AIS部隊は再建不能、即ち壊滅状態に陥っていたと断言出来る」

 

 ラウラの言う教官と言うのは恐らく千冬の事を指しているのだろう。そう考えると彼女の言葉には辻褄が合う。

 

「そもそも司令部に圧力及び介入し、剰え作戦行動に横槍もとい、無謀極まりない作戦内容を立案及び採用……否、強行している。そして、悉く失敗した挙句に多数の部隊員を戦死させている。宵咲部隊長、この行為が何を意味するか分かるか?」

 

「軍法会議モノじゃね?」

 

「そんな生優しいモノでは無い。司令部は教官のお陰で辛うじて保たれているのだが……司令部は元を正せばIS学園上層部、即ちIS委員会の連中なのだ。其処は女尊男卑思考の温床と言える」

 

「……言葉にするのは反吐が出るが、AIS部隊は半ば連中に私物化されていたのか?」

 

「前代以前はその状況だったと聞く。もはや連中に従わなければ飼い殺しの憂き目に遭っていたであろう。今は教官が司令部を掃除しちゃんと機能する様にしたが、居住区までは手が回らなんだそうだ」

 

 そうでなくても基地内で餓死者が出ていた時点で相当、危険な状況であった事が察せられる。

 

「おいおい、ウチの部隊長は他にも打ち合わせにゃいけねぇ相手が居るんだ。そろそろ、結論を言っちまえよ、第6の部隊長さんよ?」

 

「貴官は、初めて見る顔だな?」

 

「第8の病葉 レーキュだ。暴力塗れの第8の参謀役をする事にした」

 

——レーキュに至っては参謀を名乗り始めたわ……。ま、確かに理に適っているし、恐らく任命していたかもな。

 

「ほう。……私が見るに相当な爪弾き者だな」

 

 ラウラから見てもレーキュの危険性は感じ取れる様だ。見た目もヤバいが性格も最低だ。

 

「第8はそう言う連中の集まりだって知ってっだろ?ほれ、さっさと結論を言えよ」

 

「うむ。一層の事、掃討或いはこの学園基地から追放してしまうのが最善だと私は考えている。傲慢な民衆よりも性質が悪い『無能な味方』であるからだ」

 

 ラウラはそう結論付けた。

 

「ゼークトか。諸説はあるが」

 

「……! 流石だな、貴官とは長い付き合いになりたいモノだ」

 

「おい、和奏よ。今日中に他にも回るんだろ?此処は私が話を詰めておいてやるよ」

 

「必ず通るとは限らねぇぞ?」

 

「その時はその時、考えりゃ良いさ。そうだろう? 第6の部隊長」

 

「うむ……。この件を抜きにしても合同作戦の機会もあろう。参謀役と話を通しておくのも必要だ。今回の件は世話になり、貴官と対話の機会が得られた事は何よりも大きな収穫だ」

 

 第6との会議はレーキュが請け負った所で、次の第5部隊の部隊長であるシャルロット・デュノアへと会いに向かう。

 

「ん」

 

 6組の教室の前から立ち去ったタイミングで背中から抱き付かれた感触が伝わって来る。同時に肩に重みが伝わり、視線を動かせば其処には綺麗な金色の瞳をした銀髪の少女が顎を乗せており、和奏の背中にしがみついていた。

 

「私も一緒に行く」

 

「如何して、代わり代わりに現れるんだ……?」

 

 和奏もツッコむのが疲れて来たので、ただ呆れるだけに留まった。

 

「……和奏に悪い虫が着かないか心配だから」

 

「…………」

 

 リデア・リーベンフラヴ。

 緩やかな銀色の髪を靡かせた少女。元々は一世を風靡したアイドルだった。が、女尊男卑の影響は芸能業界にも侵食しており、その風潮に反発した彼女は業界から干され其の儘、追放されてしまった過去がある。

 

「……まぁ、良いか。次は第5だな」

 

 リデアが一緒に同行する事になり、其の儘、第5部隊の教室の扉を開ける。医療部隊であるからか教室は白の面積が大きく、医薬品特有の匂いが充満しているのが分かる。

 

「ちわー、第5の部隊長殿は居るか? 物品の分配絡みの件で話がしたいんだ」

 

「あ、待っていたよ」

 

 流れる様に廊下へと移動し、シャルロット・デュノア部隊長と物資分配の件で話を纏める。

 

「予想通り、各種医療関連の備品だな。それよりも、何か……聞かない方が良い代物も多数あるんだがな」

 

「あはは、ボク達は医療部隊だけど、ある種の研究者的な側面があるからね。勿論、他の部隊員を被験者として見ている面があるけれど」

 

「マッドサイエンティストの集まりかよォォォォォォォォ‼︎‼︎」

 

「治療に関しては安心して良いよ。心停止かトドメを刺してから治療して蘇生させるやり方が主流だから」

 

「安心、出来るかァァァァァァァァ‼︎‼︎ トドメ刺すのが先だと本末転倒だろーが‼︎」

 

 余りにもあんまりなやり方に和奏は叫んだ。

 

「と言うのは冗談だよ、冗談。両手両足が吹っ飛ぶ程度ならば簡単に完治する。爪とか歯とか髪、皮膚の類もまぁ何とかなる。臓器の類も何とかなるよ。あ、『防腐処理』の話は聞いているかな?」

 

「とても冗談に聞こえなかったんだが。それと、その話は既に聞いているさ」

 

 『防腐処理』とはAIS部隊全員に施される肉体改造(・・・・)の事である。具体的に言えば血液が体外に出た時、白い綿状の物質に変質し速やかに止血する。他にも体臭はしないと言う特徴を有しており、汗の臭いもしなくなる。防腐剤を大量に練り込んでいるからだ。

 こうした理由は、戦死者を少なくする為であるのと、部隊員の精神的ダメージを軽減するのが目的であった。

 部隊員と言えど、大半が10代の小娘。血の色と言うのは想像以上に精神的ダメージが大きいのだ。後、戦死者を減らすとは言うが、結果はご覧の有り様でその方面には貢献は出来ていないのが実情である。

 

「ただ、注意して欲しいのは心臓と眼球、脳の損傷はボク達でもどうする事も出来ない。その部位は修復は出来ないから無茶の度合いには気を付けてね」

 

「それが出来たらいよいよ、神の領域だな」

 

「和奏、生命の冒涜の間違い……」

 

 『防腐処理』でも対応出来ない箇所はある。眼球と生命活動に直結している臓器であった。

 

「話を戻せば、その恩恵は身を持って実感しているよ。『防腐処理』サマサマだな」

 

「……? そんな大怪我をした事、あったの?」

 

「昨日、鈴晶師匠にボッコボコにされた。具体的に両手両足、捻じ切り落とされて、肋骨を圧し折られた挙句に右の肺と胃を抉り取られた」

 

「本当に防腐処理サマサマだね⁉︎ 普通なら先ず死んでいる惨状だよね⁉︎ と言うか、誰が直したの⁉︎」

 

「クロエだ。問題児じゃなかったら第5に配属されてたんじゃね?って奴」

 

「そ、そうなんだ。……他の教官でも其処まではしないよ……」

 

 思わずドン引きするシャルロット。

 

「だったら実験する時、第8なら何が起こっても問題無さそうだね」

 

「お前ら、さては白衣を羽織った問題児の巣窟か⁉︎」

 

 今度は和奏が第5の有様にドン引きしながらツッコミを入れる番だった。

 

「和奏、和奏。話が逸れ始めている」

 

「あ、ああ……そうだった。今回の件で、女尊主義者とか女性権利団体の処遇は如何するかの意見を、第5からも聞きたい。第8のバカ共と第6は殺処分するべきと言う意見が出ている」

 

「……他の部隊からも聞くんだよね?」

 

「ああ、勿論。最終的な判断は織斑司令官に委ねるつもりだ。俺達よりも君らの方がAIS部隊としては長いからな」

 

「そうなんだ。……そうだね、第5の部隊長としての意見は、人命軽視のやり方は避けた方が良いと考えるよ。確かにAIS部隊は実害を被っているし、先輩達も彼女達の所為で多数、死んでしまっている。でも、だからと言って彼女達をボク達の手で殺すとなると、同じ穴の狢になってしまわないかな?」

 

「成程、第5部隊の意見、確かに聞いた。……それよりも……」

 

「……他にもあるの?」

 

「第5部隊長殿とリデア……何か、声質が良く似ているな〜、と言う素朴な感想が浮かんだんだよ」

 

「そうなの?」

「そうなの?」

 

「やっぱ同じ声だ。こんな偶然、あるもんだな」

 

「…………じゃあ、手遅れになる前にシャルロット・デュノアを消さないと……‼︎」

 

「ちょっと待って⁉︎ ボク、消されかけてない⁉︎ ボク、何もしてないよ⁉︎」

 

 突然、リデアから凄まじい殺気に晒されるシャルロットは思わず悲鳴をあげた。

 

「じゃあ、次は4組に行くわ。リデア、また後でな」

 

「ん、目の前の雌猫を始末しておくから」

 

「ええぇぇぇぇ⁉︎ この状況を放り出すの⁉︎ 明らかにボクの事を殺す気満々の人を放置⁉︎ って、ちょっと待ってェェェェ‼︎ 君は彼女の変化に気付いた方が良いってェェェェェェェェ‼︎⁉︎」

 

 シャルロットの悲鳴沁みた声を背後に足早に和奏は5組の前から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

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