青空DAYS外伝:『Phantom Period/AD』   作:Ziz555

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オープニングステージみたいな感じ


Re:スタート

 

『状況を確認するぞ。ユウカ』

 

 Nuill-Vanaを纏うユウカの頭に、センジョウの声が響き、視界にホログラムウィンドウが現れる。

 

『俺達がこれから突入するのは、旧D.U.外郭地区。そこに位置するシャーレビルだ』

 

 旧。というのは、キヴォトスの実質的な行政機関である連邦生徒会がその機能を完全に失っている為だ。

 全ての学校が、『先生』を失った事でその学び舎として機能を失い、崩壊すると共に、各校が担っていた自治区における治安維持が困難となり、結果として現在のキヴォトス全土はほぼ完全な無秩序状態となっていた。

 

 元々ブラックマーケットを拠点としていた犯罪者達、彼らがが闊歩する無法地帯……。それですら、今のキヴォトスに置いては『マシ』な世界だった。

 『先生』を失った後に、突如として現れた6本の柱。【虚妄のサンクトゥム】。異なる時間軸ではそう呼ばれていたその歪んだ楔は、一瞬にしてキヴォトスを地獄へと変えた。

 

 【虚妄のサンクトゥム】は、その出現と共に無数の怪物達をキヴォトスへと解き放った。

 どこからともなく現れたソレらは、キヴォトスに存在する物の全てに見境なく襲いかかり、破壊の限りを尽くした。

 当然、各学校も、自分の自治区を守る為に抵抗の姿勢は取ったが……、そのいずれもが、一つの学校単独で対応できるような存在ではなかった。

 尽きることのない無尽の軍隊と、柱を守護する怪物の存在は、生徒達の反撃を嘲笑うかのように次々に街を、校舎を、そして……人を、破壊していく。

 

 幸い、というべきか、柱の守護者たる怪物はその場を離れることは無い。又、柱の産み出す兵隊たちも、特殊な環境でない限りは、産み出された柱よりさほど遠くまでは離れることができない様子だった。

 

 結果、生き延びた生徒や大人達の多くは、柱の影響範囲が少ない地区に追いやられるようにして逃げ延び……今へ至る。

 

 そして、現在ユウカとセンジョウが突入を試みている区画……旧D.U.外郭地区は、比較的柱の影響が少ない場所だった。

 

『今回の作戦目標は単純明快。シャーレビルを根城にしている武装組織を制圧し、シャーレを取り戻す。……この世界での、俺たちの拠点を手に入れるためにな』

 

 現在、シャーレビルは、この地域一帯で幅を利かせている武装組織の根城と化していた。

 セキュリティシステムの殆どが破壊されていても、シャーレビルには多くの備蓄と、様々な設備弾薬が残されている。

 力が物を言う今のキヴォトスに置いて、これほど堅牢な『城』はそうありはしない。

 故に、『先生』も、センジョウも失い、空き家となったシャーレに目をつけた狡猾な大人が、現在は我が物顔でそこに居座っている。

 

 そんなシャーレビルを奪還するという理由には、今のユウカ達は拠点を求めている。というのもある。

 

 

 

────だが。

 

 

 

「……そうね。あそこは……シャーレは、貴方の。『先生』の居場所よ」

 

 やはり、センジョウにとって。『先生』にとって。シャーレは特別なのだ。……何処の馬の骨とも分からない大人の好きにさせたまま。というのは、気に入らなかった。

 

『だが、お前の居場所でもある。ユウカ。……シャーレは、俺達の居場所だ』

 

 ユウカに対し、センジョウは優しくそう返した。

 

 シャーレは────今となってはもう数少ない、この世界にあるセンジョウと、ユウカと、先生の【絆】の証でもある場所だった。

 

「なら、二人でちゃんと帰らないとね」

『ああ。────帰ろう。俺達のシャーレに』

 

 その言葉とともに、ふわり。と、ユウカの身体が宙を舞う。

 

『ミッションスタートだ』

 

 

 

 白銀の戦機が。空を駆けた。

 

 

 

「……あ?なんだ?」

 

 シャーレ周辺地区を巡回していた、一人のアンドロイドが空に輝く飛行物に気づく。

 

「急に空なんて見上げて、どうした?」

「いや……なんか、太陽が、二つ……?」

「はぁ?」

 

 今のキヴォトスの空を舞うものは多くない。死体の肉を啄むためのカラスか、はたまた虚妄のサンクトゥムから産み出された攻撃用のドローンぐらいのものだ。

 だと言うのに、隣の男が【太陽が2つ】等と言い出したことに疑問符を浮かべその是非を確認するために見上げると────

 

 

 

────【太陽】が。落ちてきた。

 

 

 

「なっ……なんだ、コイツ……!?」

 

 砂埃を巻き上げながら、白銀の鉄塊……、いや。機械の装甲を纏った何者が突如現れる。

 

「襲撃者……!撃て!」

 

 相手が何者かなどわかるわけもない。だが、一つだけはっきりしていることが彼らにもあった。この世界において……自分の知らない物は、全て自分を脅かす脅威である。ということだ。

 己のルールに従い、男達は銃口を侵入者へと向ける。

 

「遅い……!」

 

 しかし。そんな寝ぼけたような緩慢な動きが、ユウカに通用するはずもない。

 

 照準を向けられた瞬間、ユウカはNuillのブーストを噴かせ、機体を滑らせるようにして距離を詰める。

 そのまま、左腕のブレードを横薙ぎに一閃。

 

「はや……すぎる……」

「カシラに、れん、らく、を……」

 

 急速に遠のく意識の中、男達は小さく言葉を漏らし、意識を失って倒れ込んだ。

 

「……死んでは、いないみたいね」

『ああ。やはり、Nuillの改変機能は完全に死んだ訳じゃない』

 

 パルスブレードで両断されたはずの男達は、その肉体には一切の外傷はなく。しかし、完全に意識を失い、眠りこけていた。

 

「やっぱり、あの【色彩】と戦っていた間のPerfectの機能は再現できないのね」

 

 ユウカは、少し残念そうにNuillの機体を眺めなる。

 

 彼女が言っているのは、【Nuill-Vana Perfect】が持つ、【世界改変能力】の事だ。

 

 【Nuill-Vana Perfect】には、世界の理を自在に書き換える……、上書きしてしまえる特殊な力がある。

 それは、他者の認識や経験だけにとどまらず、世界に起きる物理的な事象にすら干渉ができ────ある程度の条件はあるが、【死者の蘇生】すら叶えてしまう、そんな力だ。

 ユウカとセンジョウがもう一つの世界から帰ってこれたのも、この機能を用いた事によるものだ。

 

 しかし、現在の【Nuill-Vana Perfect】は、その改変機能の殆どを失っていた。

 

『コレまでの実証パターンをベースに、俺自身の機能と照らし合わせる限り……、基本的には【俺達が起点】になる必要がある様だな』

「私達が起点?」

 

 ユウカの問いに対し、センジョウは彼女の視界に、彼のまとめた情報を表示した。

 

『まず第一に、今俺達はもう一つの世界で、もうひとりの俺が世界へ与えたような【世界全体の認識改変】と言うような大きな事は実行できなかった。……コレには、元来のNuill-Vanaの制約である、【辻褄合わせの必要性】が関係しているものと思っていたが。どうやらソレも違うらしい』

「……世界の修復が出来なくても、みんなの倫理観や意識をもっと優しく……。いえ、ダメね。私達は神様なんかじゃない。人の意識をそんな簡単に捻じ曲げても、きっと上手くはいかないでしょう」

 

 絶望に駆られ、世界を思い通りに終わらせようとしたからこそ、ユウカはその意味を、その罪の重さを、知っていた。

 

『そうだな。たとえそれが世界を救う為だとしても。一人の願いのために世界を歪めることが正しいとは。俺も思えない』

「センジョウ……」

『…………説明を続けるぞ』

 

 センジョウは、己の中に流れ込む、ユウカの【魂】のバイタルサインから、そっと目を逸らし。言葉を続けた。

 

『俺達が事象を改編するには、相応のエネルギーを使用する。そして、そのエネルギーを消費するには、改変したい対象へと俺たちがエネルギーを注ぎ込む必要があるんだ』

「エネルギーを注ぎ込む?」

『ああ。最も簡単な方法としては、単純に接触するだけでいい。今のユウカの肉体的な健康を保っているのが、この手段だ』

 

────早瀬ユウカは。この世界にたどり着いてから、一度も水や食料を口にしていない。

 

 だが、それでも生命活動に支障をきたすことなく活動をし続けられているのは、偏にNuill-Vanaが生命維持装置としての役割を果たしていたからだった。

 今のユウカの肉体は、外部からの栄養供給ではなく、Nuill-Vanaの改変能力により、常に正常な肉体のバックアップによる上書きを行うことで健康な状態を保っており。しかしそれはつまり、老いることも、成長することもない。

 

 

 

 ……そんな者が果たして。本当に【人】と呼べるのだろうか?

 

 

 

『…………本当に済まない。ユウカ』

「いいのよ。……戦う為には、必要でしょ」

 

 落ち込んだ様子のセンジョウに、ユウカは声を掛ける。……ユウカの魂のバイタルサインが確認できるセンジョウと違い、ユウカはセンジョウの魂の在り方を認識することはできない。

 だが。それでも────彼が何を考えているかぐらい、分かっているつもりだ。

 

「それで、対象を改変するためにエネルギーを使うのは分かったけど、それを接触以外でどうやって相手に与えるの?」

『あ、あぁ……。その方法だったな。それは──』

 

 

 

「いたぞ!侵入者だ!」

 

 

 

 説明を続けるセンジョウの言葉を遮るように、わらわらと数人のアンドロイドが現れる。……どうやら、先程倒した男達のうちのどちらかが救援信号を出していたらしい。

 

『……都合がいい。実践しながら説明しようか』

「はいはい。それで、私はどうすればいいの?」

『特別なことはしなくていい。ユウカはいつも通り戦闘することに意識を向けていてくれ』

「オッケー。じゃあ、サポートはよろしくね」

「何をごちゃごちゃ言ってやがる!俺達のシマを荒らしておいて、タダで済むと思うなよ!」

 

 男の言葉と共に、アンドロイド達はその場から散開するように移動を開始した。

 

「一撃で纏めてやられないための作戦。ってところかしら。でも、そんなのじゃ……止まらないわよ!」

 

 ユウカは、散開するよう男達を気にもとめず、一人の男へと距離を詰めた。そうして、そのまま先程と同じようにパルスブレードで男の身体を切り払う。

 

「ぐわっ!?」

 

 切り裂かれた男は、しかしその肉体が傷つくことはなく、先程と同じ様に意識を失う。

 

『……コレが改変の手段だ』

「コレ……って、普通に切っただけだけど」

『そうだ。Nuillの武器で普通に攻撃するだけでいい』

 

 倒れた男に背を向けて、他の男達から放たれる弾丸に対応しつつ、ユウカはセンジョウの言葉に耳を傾ける。

 

『パルスブレードや、エネルギー弾を当てた対象に対して、俺が改変のための干渉を開始する。……そして、蓄積されたエネルギーが干渉への必要量に達した瞬間に、Nuillの改変機能が作用する』

「なるほどね」

 

 ユウカは、スラスターの噴射を駆使し、空中を滑るようにして滑らかに弾丸を回避しつつ、右手のエネルギーマシンガンの弾を男達へと撃ち込んだ。

 ある程度の物理的な衝撃を伴い、男達を襲う弾丸を数発受けた男達は、次々に意識を失い、その場へと倒れ込んでゆく。

 

「それで、基本的にはパルスブレードの方が干渉力が高くて、マシンガンだと何回か当てないとダメ。ってことね」

『理解が早くて助かる』

 

「な、何なんだ……何が起きてやがる!?」

 

 まるで片手間のように次々に倒されていく仲間たちの姿に、男のうちの一人が狼狽した姿を見せた。

 

『ユウカ。アレで最後だ』

「了……解!」

 

 最後の一人となったその男に、ユウカは機体の正面を向けて、大きくブーストを噴かせた。

 

「く、くるな……くるな……!化け物ォ!」

 

 錯乱した様子で銃を乱射する男の弾丸がユウカを、Nuillを掠めることもなく、ユウカはすれ違いざまに男をパルスブレードで切り裂いた。

 干渉のためのエネルギーをその身に受けた男が、膝から崩れ落ちるように倒れ込むと……その場に立っているのは、ユウカだけになっていた。

 

『ひとまず片付いたな。……先へ進もう』

「ええ。……干渉エネルギーの蓄積、かぁ。なんだか少しゲームみたいね」

『……そうかもな』

「…………ゲーム開発部のみんな。無事だといいけど」

 

 ミレニアムを捨てた自分が、そんな事を心配するのは。少し都合か良すぎる気もするが……。しかし、ユウカは無邪気な彼女達の姿を想起し、表情を曇らせた。

 

『みんなを救う為にも。俺達は──戦い続けるしかない』

「……そうね」

 

 自らの罪が、それでも清算できるわけでも、赦される訳でもないが。

 

 

 

 それでも。

 

 

 

 ユウカは、センジョウは────みんなとともに笑い合えた、あの【世界(キヴォトス)】が。好きだったから。

 

 それが、傲慢で、自分勝手な、我儘だと知っていても。

 

「行きましょう……センジョウ」

『ああ。行こう』

 

 

 

 託された、『願い』を胸に。二人は進む。

 

 

 

 

 『より良い明日(ハッピーエンド)』を。取り戻す為に。





ロックマンゼロオマージュなのですが、虚妄のサンクトゥムの数の都合多分9ミッション構成……になるのかな?

プロローグ、3ステージ、中間、3ステージ、ラストバトル

になると思います。

ちなみに今はプロローグステージ
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