ダークマイト伝説の始まりだァ!! 作:やはり…次は、俺だな!
AFOには嫌いなものが三つ存在する。
一つは夏の梅雨明けに道路に散らばる蚯蚓の死体。
あれらを見ると不快な気分になるし、誤って踏んだ時など最悪な気分になる。
一つは駆藤という男。
取るに足らない男でありながら彼のものである弟を奪っていた大罪人。
彼がいなければ弟はきっと去らなかったはずだ。(AFO主観)
一つはオールマイトという宿敵にして怨敵。
腸を出しながら殴りかかってきて殺されかけた記憶は今も夢に出てくる。
彼の師である七代目の血族の人生を無茶苦茶にしても気がおさまらない憎むべき敵。
この三つがAFOの嫌いなものであり――
「頑張れヒーロー! 俺はもう、PLUS ULTRAしているぞ!」
「うるせぇ!! いったい、どういう立場から言ってんだおめえは!?」
その内の二つ。
それらが揃って襲い掛かってくる現状に苛立ちを覚えていた。
イラッ、イラッ!
(――落ち着け、冷静になるんだ)
爆豪勝己は別にいい。
彼からは何故か駆藤に似た雰囲気を感じ、苛立ちを感じてしまうが所詮はそれだけだ。
ささくれ立つ気も意識して無視してしまえばなんとかなる。
(こいつらの相手をしてやる必要は無い。無視して合流して一つになれば――それで終わる)
理性ではそれが最善とAFOもわかっている。
「巻き戻し」の時間制限もある以上、いちいち構ってやる時間も惜しい。
弔を手に入れてしまえば後は消化試合、その時にこの苛立ちを発散してやればいい。
最善は彼らを無視して雄英へと向かうこと。
それがわかっているというのに。
「ハロー、エブリワン。挨拶が遅れたな旧態の象徴よ! 俺は新しきオールマイト、時代の象徴となる男だ!」
うん、コイツは無理。
AFOは襲い掛かってくるダークマイトを名乗る男を見ながら思った。
爆豪勝己ならばいい、所詮は小石だ。
本物のオールマイトならそれも別にいい、先に殺すのは失敗したが絶望させてから殺すのもまた一興だ。
彼ら相手なら無視して進むという手段も取れた。
だが、ダークマイト相手に背を向けて進むという手段をどうしてもAFOは取ることが出来なかった。
だって――
明らかなパチモン感、オールマイトごっこ遊びをしている謎のおっさん。
こいつに背を向けるのは何というか……「魔王」としてのヴィランのプライド的に無理だったのだ。
オールマイト相手ならともかく、オールマイトの偽物相手にそれをすることは出来ない。
なのでさっさと殺そうとするも、
(なんか……妙に強い!)
何かを掴んだかのように段違いな動きをする爆豪の力も大きいが、それを除いてもダークマイトは強かったのだ。
(――というか本当に誰なんだコイツは!!)
AFOは心の中で悪態をついた。
流石に全盛期オールマイトほどに強くは無いにしてもダツゴク連中と比べれば明らかに強い、そんな見知らぬ敵がいきなりこの鉄火場で現れるなどと理不尽を呪った。
現れたタイミングから考えるに自分を討つためなのは間違いないだろう。
ならばその理由はいったい何なのか。
AFOは「魔王」と称されるヴィラン、悪事など覚えるのが億劫なほどにやってきた。
その被害者は多く、彼が覚えていない被害者かその関係者が当てつけの為にオールマイトの格好をしてAFOの野望を妨害しに来たのか……そう考えたがダークマイトの瞳を見てAFOは理解した。
違う、そうではない。
それは直感だった。
だが、間違ってはいないはずだ。
人よりも多くの人生を生きてきた人生経験、そして何よりもAFO自身もそうだったからわかるのだ。
彼だからこそわかる。
直感的に分かってしまった。
コミックを読んで魔王に憧れてしまい、そんな風にこれまでを生きてきたAFOだからこそ。
(やつはダークマイトは怒りでも憎しみでも恨みでも、正義感でも義憤でも秩序を守るためでもなく――
目をキラキラさせながら拳を構えて殴りかかってくるダークマイトを見て心底理解できてしまう。
ただただ、コスプレをしてオールマイトごっこ遊びを楽しみたいだけなのだ……と。
まあ、実際には微妙にズレているがAFOの推察は正しかった。
間違っているところはオールマイトごっこをしたいのではなく
ただ確かなことはダークマイトがごっこ遊びの延長線上で、自身の野望が果たされる大事なこの時に妨害して来たと言う事実。
イラッ、イラッ、イラッイラッ、イライライラッ!!
それも憎きオールマイトの姿をして。
イラッイラッ、イラッイラッ、イライライラッ、イライライライラッ!!!
それも弟を奪った男を思い起こさせる少年と共に煩わせてくるという――
イラッイラッイラッイラッ、イライライラッ、イライライライラッ、イライライライラッ、イライライラァッ!!!
「――というか煩いんだよ!! ふざけているのか!!」
若さを取り戻しているが故に感情の制限が出来ないのか、AFOは苛立ち紛れに空に浮いている船に向かって雑に攻撃を放った。
ダークマイトがやってきたときにいつの間にか来ていた空飛ぶ船だが、延々と大音量で「ホム〇クルス」をまき散らしており鬱陶しかったのだ。
つい、AFOは攻撃をしてしまった。
時間が惜しいというのに無駄以外でも何でもない行動だったがそれだけ彼の精神が不安定となっている証拠だった。
その証拠に放たれた攻撃は船から逸れてあたることはなかった。
それでも直撃してしまえば撃墜間違いない攻撃に慄いたのか、ダークマイトの船は戦闘空域から慌てて去っていった。
(……無駄なことをしてしまった。だが、お陰で頭が冷えた)
大音量を流しながら逃げていくダークマイトの船を見て少しだけスッキリしたAFOは冷静さを取り戻した。
いい気味だ、と嘲りつつ思考を回らせる。
(彼らを相手にしている暇などない、そんなことをせずとも合流できれば終わるんだ。この私をこれほどまでに苛立たせた借りは後でたっぷりと返せば――)
その瞬間、AFOは見た。
ダークマイトはおもむろに金貨を取り出しかと思うとそれを空中に放り投げた。
するとドローンのような機械が複数現れたかと――
「ミュージックスタート!!」
そこから新たに流れ出す「ホムン〇ルス」なBGM。
大音量で今度は四方八方の飛行ドローンから流れ始めたのだった。
「さっきから何なんだこの音楽は!?」
「1つ問おう! 新時代を作るには何が必要だと思うかね? そう、強大なる敵に共に立ち向かい勝利する! 共闘ラスボス撃破だ! 行くぞ、大・爆・殺・神ダイナマイト!!」
「話を聞けよぉおおおっ!! この……っ、オールマイトォ!!! 駆藤ォオオっ!!」
「誰が駆藤だ! 俺は爆豪のかっちゃんだァ!!」
「私、関係なくない!?」
「AFOに認められた……っ?! やはり俺が時代の象徴! やはり…次は、俺だな!」
キレ散らかしたAFOの声に思わず突っ込むオールマイトを尻目に駆藤を思い起こさせる爆豪とダークマイト相手に若返ったAFOは引くことが出来ずに赤ちゃん化して負けたのだった。
若AFO「弟を奪った憎き男を思い起こさせる子供と憎き宿敵のごっこ遊びをしている男に絡まれた。キレそう……」
爆豪「思ったよりも負傷なく倒せたから思わずオールマイトのスタンディングの勝利ポーズ真似したらシレっと隣に並ばれていつの間にか撮影をしていたドローンに撮られて流された。キレそう」
オールマイト「誰? 誰なの!?」