カケラあつめ~癖の強い三人、異世界で無双す~   作:みけさんわーきゃっと

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マルクさんの性格は
あの二人に継承されています


その9

 

 

Fragment エース

 

「むー」

 

どうしよう、マルクさんが朝から不機嫌だ。

紳士的に何もしなかったのを強弁したら「それはそれで腹が立ちますね」とむくれてしまったのだ。

 

いや、襲ってもよかったのか!?

そう聞いたら「まだ早いですねー」とかいう微妙な返事「まだ」って……どういう意味だ!?

 

一緒に同じテーブルについてはいるが、なんというか砂でも食べてるような感じだ。

いや実際朝は軽いのか、硬いパンにスープという美味い飯でもないんだけど、これは状況のせいで余計においしくない。

 

うちは家業がクラブなのでこういう場合どうすればよいかはわかっている、わかってるんだが……

万が一完全に怒らせたらここでお別れになってしまう恐れもある、それをするのは大変惜しいと思う相手ではあるのだ。マルクさんは。

 

「あのー」

 

「つーん」

 

プイと横を向かれる。

 

なんだこの可愛い生き物!?

おっと、我を忘れかけてしまった。

 

「いや、そのですね、怒らないで聞いていただきたいのですが」

 

「……」

 

黙殺されているが耳がこっちに少し向いた。

文字通り耳を傾けるができるのか……

 

「そのですね、何もしなかったといいましたが、じつは少々体に触れてしまいまして」

 

「……さっきは何もしていないって、……嘘をついたんですか?」

 

うっく……冷たい声だ。

だけど、もやもやした怒りの形のまま放置しておくのは悪手。

明確に怒れるポイントを怒ってもいい理由を作って相手の怒りの矛先を向けれる場所を作るのがこういう時の一番の対処法だとお店の女の子(私より年上だが)から学んだからな。

 

「いえ、そのですね……性的なことではなく……耳を……どうしても気になったもので……ですが異性に触らせないといわれたので、つい……」

実際にくにくに触ったしな。なんというか人間の耳よりちょっと硬質というか芯のある感じだった

 

「エルフにとっては性的なものなのですよ?たとえばそういった行為の最中に触ったりするものなので。そこのところわかってますか?」

 

半眼でこちらをねめつけてくるマルクさん。

 

「い、いえ。わかってなかったです。ごめんなさい」

 

と平謝り。

しばしぶつぶつと言っていたマルクさんだが、こちらに向き直り、

 

「ま、いいでしょう。人間にとって珍しいものだというのはわかりますしね――ですが」

 

と一旦言葉を切りこちらを見つめて言葉を続けるマルクさん。

 

「そういうことはちゃんと口説いてからしてくださいね」

 

とウインク。

可愛すぎないかこのエルフ……着てる服は男物というかズボンにチュニックという、狩人の着てるような動きやすい厚手の服なんだけどな、こう、妙な色気がある

 

「とはいえ何もなし!というのも損した気分になりますしね、商人的に」

 

「わかりました。朝の追加分はこちらで持ちましょう」

 

どうせゆうべマルクさんからせしめたお金であるし、還元する程度で機嫌を直してくれるなら安いものである。

そう私が言うと「我が意を得たり」とばかりに給仕を呼び、立て板に水とすらすらと注文が入る。

 

「ではふかふかの白パンと肉と野菜の煮込みと焼き串と酸っぱくないワインを。それと、腸詰も二本いただきます。あ、エースさんは食べ差しですが私のスープとパンどうぞ」

 

もったいなので!とにこやかに言うマルクさん。

……けっこうガッツリ行ったな!?銀貨4枚。4000円相当をためらいなく注文するマルクさん。

この世界、最低ランクの食いものはそこまで高くない、が、ちょっとでも贅沢になるととたんに価格が跳ね上がる。

ホットワインなどでごまかして飲むちょっと酸味や渋みのあるワインはそれこそ小銀貨2枚ほどだが酸っぱくないワインとなるとそれだけで銀貨1枚である。

 

「懐具合知っていますので」と悪びれもしないが、まあこの程度で怒りがすむなら安いものだと思える程度にはマルクさんを気にいってるんだよな。

 

「マルクさんは本日は?」

 

硬いパンに悪戦苦闘しながら(スープに浸して食べるのは知識として知っているが、スープすったらすったでめちゃめちゃ重くて食いづらい……)マルクさんに問う。

 

「メインの商材は商館で手配してありますので掘り出し物がないか街を一巡りですかね」

 

「ご一緒しても?」

 

というか初めてのファンタジー街、うかつなことは即詰みかねないし出来るならマルクさんに案内してもらいたいところだ。

 

幸いにもマルクさんの機嫌はなおっていたらしく――

 

「いいですよ。エースさんがいたらある程度鬱陶しいのも防げるでしょうし」

 

「魔除けですか、せいぜいつとまるようにがんばりますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、マルクさんが「身なりを整えてきますね」と部屋に戻って……私も服欲しいな、せめて布と裁縫道具があればなんとかなるのだが――

 

「お待たせしました」

 

「ああいえ、はやかっ――」

 

美女がいた。いやマルクさんは元々美女であったのだろうがなんというか……まごうことなきエルフ美女だ。

ひっ詰めてまとめてあった髪をほどいたら、そのまとめてあった癖がいい具合に緩いウェーブになっており、金髪に映える赤い石のついたイヤリングが耳を飾っている。

赤い色はエルフ耳を強調するような感じで目を引き、神秘的な雰囲気を出すのに一役買っている。

 

服は厚手の野暮ったい猟師スタイルから、エルフといえばこれだろう!と日本人のほとんどが認識する緑のワンピーススタイル。スカートは短め。赤のイヤリングがさらに映える色のチョイスだな。

脚は編み上げサンダルに生足がまぶしい。腰にナイフみたいなのを差している以外は現代にいてもおかしくない美女っぷりである。

 

「どうです?おめかしですよ!……あれ?エースさん?」

 

小首をかしげる姿は美女なのに可愛らしい、今気づいたか髪の右側はひと房リボンでくくってあるアシンメトリーな髪形もなかなかお洒落だ。

 

「えい」

 

「目があああああっ!?」

 

呆然とマルクさんを眺めていたらマルクさんがチョキで目を突いてきた。

何するんだこの激カワエルフ美女!(悪口になってない)

 

「女性がおめかししてたらまずは言うべきことがあるでしょう?」

 

「いや、まあそうなんですが、想像以上に美女だったもので言葉を忘れて見とれてしまってました」

 

「なっ!?いや褒めてくださいとは言いましたがそれはちょっと……その……いいすぎでは?」

 

思わず出た言葉を聞いたマルクさんが少し怯むが、正直な感想だ。むしろ「いやいや、そんな程度のわけがない」と言い切れる。

 

「いや、正直マルクさん以上の美女は一人ぐらいしか知りませんね」

 

「ちょっ、本当にやめてください!褒められてうれしいんですがこそばゆいといいますか、ぞわぞわします!」

 

手をぶんぶん振りながら照れるマルクさんは今度はかわいらしくて美人なのと可愛いのが合わさって最強に見えるな!

 

「いや本当ですよ」

 

「ううう……あ、ところで気になるのですがその知ってる一人は……例えば恋人とか?です?」

 

「いえ母です」

 

思わず食い気味に答えてしまった。

私の母は身内のひいき目もあるだろうが美女である。そしてそのうえ母としての包容力もあるのだからすごい(語彙消滅)

 

「そうですか……」

 

なんかマルクさんがすこし引いたきがするが、これはいつものことである。

マザコンの自覚はあるし、語り始めると止まらない、ある意味おかしいのも自覚はある。

茶々を入れながらでもちゃんと聞いてくれるあの二人がよほど稀有なのだ。

 

だがおかげでマルクさんはテレから立ち直ったようで「じゃあ行きましょうか、この町は初めてでしょうし案内しますよ」と先導してくれ、私はありがたくその誘いに乗ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでそんな感じでこの町は中継拠点として栄えてるわけです」

 

「なるほど」

 

「あ、あれ!おいしいんですよ!今は流石にお腹いっぱいなので後で食べましょうね!エースさんのお金で!」

 

「はは、お手柔らかに」

 

「あんまり掘り出し物はないですねー」

 

「そうですね」

 

……うん、一つだけ突っ込まさせてほしい。

 

なんで普通に腕組んでくるんですかねマルクさん!?

 

最初は良かったのだ「その恰好はないですね」とマルクさんが言って、私もそう思っていたのでまずは服ということで服を買った……までは良かったんだが。その場で着替えてさあ散策本番だ!となったところで――

 

マルクさんが普通に腕絡めてきた。

しかも軽い組み方じゃなくてくねっと腕に絡めてしっかと握る感じのアレだ。

 

正直男子高校生にとって難易度が高すぎる!

 

なんか柔らかいしいいにおいがするしで……

 

「エースさん何か考え事ですか?上の空のようなんですが……?」

 

と腕を組んだまま顔を覗き込んでくるのもまたタチが悪い。

これ大抵の男が仕留められるだろ……

 

だが、このままではまたマルクさんが不機嫌になるのは目に見えている。上の空になっているというか「うでにあたるぷにっとした感触」に全神経持っていかれているというか……

 

「マルクさん」

 

「どうしました?」

 

ちょっと心配そうな声もまた男心をくすぐるというか……

 

「本当に申し訳ないのですが、私は女性に腕を組まれた経験がないので緊張しています!」

 

お店の女の子にちょっかいかけられることはあるが、こういう普通のことはしたことないからな……

 

思ったより大きい声が出たらしく、一部周りの人たちが生暖かい目でこちらを見ている気がする……

 

「……なんなんですかそれ!?」

 

「いや、お恥ずかしい……」

 

「自分から魔除けをかって出たのに、正直残念というか……おもったよりスレてないんですね……?物言いから結構慣れてると思ってたのですが……」

 

「実家が接客業ですので……小さいころから大人とかかわることが多かったせいかと」

 

「へー、エースさんの秘密を一つしれたので、上の空だったのは不問にしておきますけど、一緒に旅するなら魔除けとして慣れてください。それに――」

 

「それに?」

 

「商人だと値段交渉警戒されるので露店見るときはカップルのふりのほうが有利なんですよ! 」

 

「打算をすがすがしく言いきった!?」

 

まあこういうところは間違いなくマルクさんの魅力ではあるんだけど、ギャップが酷い……

 

「しかし、この程度すら経験がないと……もしかして女性経験なかったりします?」

 

「どどどど童貞ちゃうわ!」

 

何をぶっこんでくるんだこのエルフは!いやエロフは!?(暴言)

おもわず由緒正しい童貞による童貞否定言語を発してしまったじゃないか!

 

「んー」

 

と少し考えるそぶりを見せた後にマルクさんは本日最大級の爆弾をぶっこんで来た。

 

「私でよければ今晩します?」

 

 

 

 

 

 

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