カケラあつめ~癖の強い三人、異世界で無双す~   作:みけさんわーきゃっと

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その2

 

 

 

Fragment大地

 

 

 

 

 

 

あれれー? ちょっとからかいすぎちゃったんだよ。

さゆりちゃんは綺麗な毒霧殺法を披露した後(なお、とーる君が被害を受けた)恥ずかしくなったのかあわただしく立ち去って行った。

とーる君は自己評価が低くて鈍感かつ難聴系だからもう少し頑張ってほしいと思うんだよ。

 

「大地ェ……」

 

「いいたいことはなんとなくわかるんだよ? でも反省はしないんだよ」

 

「相変わらず大地は徹に厳しいな……」

 

 基本的に僕らの関係は丁度いい感じで三すくみになってて、僕はとーる君に強くていちろー君に弱い。

 

 「愛のムチなんだよ?」

 

 「いらねえよ」

 

 「でもわりととーる君Mだよね?」

 

 「ねえよ!」

 

 「いや、私が見るにその傾向はあるぞ」

 

 「よし、一郎その喧嘩買ったぞ」

 

 くだらない会話をしながら歩を進める。僕の家は割と学校から近いんだよ。家から田んぼまではちょっと距離があるのが難だけども。

 そのせいでレアな小型特殊免許を僕は持っていたりする。田んぼまで行くのに運搬トラック(軽トラックではない)やトラクターに乗っていくためにわざわざとったんだよ?

 ちなみにとーる君は原付を、いちろー君は免許こそ持っていないもののコンバインでの稲刈りがなぜか超うまいんだよ。真四角じゃない変形田なら僕より上手に刈るかもしれないんだよ?

 

 とりとめのない話をしながら歩いていく。この時間僕は結構好きなんだよ。じゃれあいってやつ?

 そうこうしているうちに僕の家にたどり着いた。

 

 「大地ー、今日の飯何?」

 

 縁側に鞄を投げて(スポーツバッグはそっと置いた)とーる君が効いてくる。

 いつも通り適当飯だよ。

 

「昨日の余ったカレーにつぶしたトマトとひき肉入れてかさましした奴を、ご飯の上にオクラとなすの揚げたの載せてうえからぶっかけたやつの予定なんだよ?」

 

「……まあつまりは夏野菜のカレー・キーマ風といったところだろうかな、揚げ物は私がしよう」

 

といちろー君が買って出る。

 

「キーマって程水分は飛ばさないんだよ?じゃあトマトとひき肉係するんだよ」

 

「俺は生卵落としたいしついでに鶏小屋の世話しとく」

 

「こけ子さんはあとで畑連れて行くから隔離して水だけあげておいてほしいんだよ」

 

「おう」

 

鶏はかなりの除草力を持ってるんで割と畑に連れて行くんだけど、白いのは戻ってこなかったり逃げたりすることが多いからちゃんと囲った空間じゃないとダメなのだけども赤鶏(茶色い鶏)は人懐っこくて慣れてくるとあまり逃げ回ったりしなくなるんだよ。

 

とくにこけ子さん(フルネームはにわとりこけ子さん、抑揚は白鳥麗子の感じで)は賢くて呼べば戻ってくるし、食べたらだめといった作物は食べないスーパー鶏なんだよ。

雄鶏より高い位置に上って縄張り主張するし……

 

「じゃあ僕はひき肉痛めてトマトつぶしてカレーの味整えておくね」

 

「甘口で頼む」

 

「いちろー君ってわりとお子様舌だよね? 最初のころ野菜もあんまり食べなかったし」

 

「正直スーパーで売ってる普通の野菜がまずすぎる、苦いとか酸っぱいとか。……甘いのが好きなのは環境のせいだと思いたい」

 

「それがお子様舌っていうんだよ?」

 

例えば糖度の高いトマトとかものすごい慎重に水の管理が必要な上熟すと割れやすいので出荷数も減るんだよ。

もちろんそういうきっちりした管理してると値段に反映されるわけで、少々お高いから普段使いは家計に厳しい。

そもそもトマトはすっぱくてピーマンは苦いものなんだよ? それらを何とか? するのが料理ってものなんだとおもうんだよ?

 

「普通に売ってる野菜もここの家みたいにうまければいいんだが……」

 

「B品(出荷できないものや安く買いたたかれるような品質のもの)の方がおいしいものは多いんだよ?」

 

トマトの例で行くと完熟すると割れやすいしつぶれやすいから普通トマトは青いぐらいで出荷するんだけど、もちろん熟した方がおいしいのは当たり前のことだし、野菜も間引きした若い芽や小さい実は柔らかくておいしかったりするんだよ。

 

ざくざくとトマトを適当な大きさに切ってボウルに入れてぐちゃぐちゃにする。皮を湯剥き? そんなもの気にする繊細な人間は我が家でご飯なんか食べないんだよ。

農作業した手を洗わずに服で拭っておにぎり食べれるようになってこそ農家なんだよ?(暴論)

 

トマトをカレー鍋にぶち込んで点火、つぶすように混ぜながらもう片方のコンロでひき肉を炒め始める。

ひき肉の色が完全に変わったら鍋からカレーを投入して、カレー粉少々とガナムマサラで味を調えて完成なんだよ。隠し味に少量のバターを入れるのが僕流かな。

いちろー君のお皿にはマンゴーチャツネを添えておく、作るときに入れると僕たちのまで甘くなるから薬味として使ってもらうんだよ。

 

「いつもすまないな、大地」

 

「おとっつぁん、それは言わない約束でしょ」

 

「毎回それ言うよな、大地は」

 

「毎回振ってくるからなんだよ?」

 

お約束を入れながらも二人で料理を仕上げていく、いちろー君はナスを適当にへたの所で切って縦に切って揚げていく。

水にさらしてアク取り? カレーの強烈な風味がそんなものは味の誤差にしてくれるんだよ?

ナスはじっくりと揚げて、その合間に竹串で穴をあけたオクラをさっと油に通していく、ちなみにこれに塩漬けて食べると割といいおやつになるんだよ。

 

ちゃんとした料理として食べるならきっちり油は切るんだろうけど、僕らは男子高校生。

カロリーこそが正義なんだよ? というわけでご飯を盛ったおさらに揚げたなりのナスとオクラを乗せていく、そしてそこにカレー。

油が水分と喧嘩してじゅわっとはじける、そして強烈なカレー臭。食欲を揺さぶる香り。いっそ冒涜的ですらあるんだよ。

 

「徹ー! 飯できたぞーっ!」

 

「今行く!」

 

卵を乗せたプラスチックトレー(アメリカントレーっていうんだよ)を持ってとーる君が戻ってくる。今日は22個、ちょっと減ってきたかな?

鶏は若いうちはほぼ毎日卵を産むんだけど、3年も飼っていれば3日で2個になり4年も飼ってれば2日に1個とかになってもおかしくないんだよ。

 

うちはオスもメスも飼ってるので適当な時期にキュウべえ(卵を孵す機械がインキュベーターという名前のためとーる君が名付けた)でいくつか孵しては卵の数を確保している。近親交配を続けると弱くなるから卵販売の養鶏場でオスもらってきたりもするんだよ。なんでオスがいるかというと、ヒヨコ買ったときにどうしても数羽紛れ込んでくるらしいんだよ。

採卵養鶏場だからオスはいらないんで頼むとくれたりするんだよ。

 

「一郎と大地は?」

 

プラスチックトレーを掲げながらとーる君が聞く。

 

「チャツネあるから卵はいらないな」

 

「昨日も言ったけどそもそもカレーに生卵は邪道だと思うんだよ?」

 

「うめえんだけどな……」

 

僕は味が薄まるんで生卵はカレーに入れない派、牛丼には入れる。いちろー君はチャツネと合わないのでパスらしい。

一応サルモネラの危険がわずかなりともあるっていってるんだけどとーる君は『大丈夫だ、腹壊したことないから』と強気。実際鶏自体が汚染されてなければほぼ大丈夫なんだけどね、まあ、一応建前で言ってるだけなんだよ。

保管する分は念のためジアソー(次亜塩素酸ナトリウム)で殺菌してるんだけどね。

 

ちなみにこれは野菜と一緒に農協の直売所で売るんだよ……場所代として一割以上取られるけど市場に売るよりははるかにお得。

 

おじーちゃんがわりといっぱいお金残してくれたけど(おじーちゃんは農機を現金で買う派で次の分積み立ててた)農業続けるなら機械がいきなり壊れるのはもう運命というか宿命なので、現金はどうしても余裕をもって貯めときたい。

すでに農業してるようなものだけれども、時期になったら新規就農給付金を申請するつもりで、その時に機械の更新費用も補助してもらう予定で壊れないように祈っているんだよ。

 

「この後は? あと、おかわり」

 

「いつもどーりに田んぼ見回って畑の草取りしてオクラ、ナス、キュウリ、トマトの収穫なんだよ、ハウスのレタスと赤かぶは遮光してあるけど暑くてもう限界だから全部引っこ抜くんだよ、明日にはサラダとボルシチになってるんだよ」

 

「オクラは何度やっても収穫タイミング騙されるな、大地、私にも半分ほど」

 

「かさまししておいてよかったんだよ……、オクラは今日小さすぎかなあと思っても翌日はデカ過ぎて硬くなるから、それぐらいなら小さいうちにとった方がいいんだよ?」

 

オクラは夏場の生育スピードは異常の一言に尽きるんだよ、ナスも結構容赦ないけどあれは花がほぼ確実に実になるせいで、オクラほどの異常さはあまりないんだよ。

 

「晩飯どうするよ?俺は食ってくが」

 

「私はお店の手伝いかな? 野菜をいくばくかもらおうか」

 

「りょーかいなんだよ。いちろー君は冷蔵庫に半額刺身昆布で〆たのあるからお店で使うといいんだよ」

 

「昆布締めなら俺も食いたいんだが」

 

「僕たちの分もちゃんと用意してあるんだよ、当たり前のこと聞いたらダメなんだよ?」

 

「昆布締めは俺らのソウルフードといってもいいからな」

 

「なんでも昆布で〆るよな、この辺の地域」

 

いちろー君のママさんはママさんという奴(重複表現じゃないよ)でキャバレーを経営している。といってもクラブに近い感じの割と落ち着いた店だけど。

すごい若く見えて大学生ぐらいにしか見えない。性格は割と子供っぽいというかいちろー君にダダ甘えしてる。

 

いちろー君は『家業で母子家庭なので』と学校にちゃんと届けてお店の手伝いをしているえらい子なんだよ。

基本的にはキッチンにいるんだけど、店が忙しいとウェイターもやったりするんだよ。

 

店が死ぬほど忙しくて女の子足りない時に、謎のツリ目の長身美女が現れたりもするんだけど正体は不明なんだよ?いいね?

 

ちなみにとーる君の家は普通のサラリーマンなんだけど一家全員顔が極まっている(ごまかした表現)家なんだよ。

たとえば妹ちゃんは八重歯にチョーカー、ツインテリボンの女の子なんだけど……首輪をつけた猛獣系獣人にしか見えないんだよ……ツインテがいい具合に耳っぽいし。

 

とーる君と同じで見た目だけで中身はものすごくかわいい女の子なんだけどね。

目を細めてにへらーと笑ってると虎の子供にしか見えないんだよ(あれ、あんまり変わってない……?)

 

さておきとーる君の家は女系家族で男はパパさんととーる君だけ(女性はママさん、姉三人妹一人の大家族なんだよ)なんでパパさんはブラリーマン、とーる君は徘徊学生になって遅い時間まで時間つぶすことが多いんだよ。正直可哀想。

 

あと昆布は正義なんだよ。

 

僕はのこったカレーをさらえながら帰りにスーパーで何買うかを考えるのだった。

 

 

 

 

 

 Fragment一郎

 

 

 

 

 

 

 

「今日もいい汗かいたな……」

 

鍛えてるとはいえやはり疲労はそれなりにある。農業で使う筋肉(農筋)はまた別物という説があるらしいがまさにその通りだと思う。

いまだにクワとか使うと翌日辛いし。

 

「シャワー浴びてく?」

 

運搬車の運転席から大地が問いかけてくる。そのセリフ他所の人に言ったら6%ぐらいの確率で襲われても仕方ない可愛さレベルなんだが、自覚はないんだろうな。

 

「いや、どうせ道中でまた汗が出るからな」

 

「なるほど、かーちゃんのシャワーのあとで残り香を――ぬわーーーーっ!?」

 

寝言を言った徹を荷台から叩き落して大地に指示を出す。

 

「アクセル全開だ」

 

「らじゃっ!」

 

「ラジャるな!」

 

所詮運搬車、自転車程度の速度しか出ないためすぐに追いついて荷台に飛び乗ってくる。迎撃してもよかったのだがさすがに速度的にカウンターで叩き落すとまずい。収穫した野菜乗ってるのであんまりあほな事もしてられないし。

 

収穫した野菜はいったん冷蔵庫で芯までしっかり冷やしてから出荷する。これを予冷といい、やらないとすぐヘタる。

よく農協の直売で朝採れ野菜とか書いてあるが8割前後は嘘だということを大地に聞いたときはちょっとショックを受けた。

基本前日にとって、出荷日の朝に調整(悪いものハネたり、パックに詰めたり、袋に入れたり)して出荷する。

 

市場の場合は直接持っていくのと共同出荷場にもっていくので時間が違うがそれもやはり当日に店に並ぶところまで行くのはほぼ不可能。

ごく一部の契約農家(大手スーパーやレストランチェーンが配送車を回してくれるようなところ)や早朝出荷を是とする大手農業法人のみ朝採れ朝出荷が可能という、割と残念な話だ。

コストをかけてわざわざ早朝出荷にするメリットってほとんどないらしいしな。

 

「農作物が安すぎるのが問題だな……」

 

「ん? ああ、爺が言ってたな。『今の倍でやっととんとん』だと」

 

「補助金で食べてるようなものだからね、農業は。ある意味とてもおかしいんだよ?」

 

「経営的にはアリなんだが、たしかに歪ではある」

 

「でもよ、食べ物って戦略物資だからもっと自給率あげなきゃダメだろうがよ、戦争になったら輸入とか滞るだろうに」

 

「戦争になったら農家大儲けなんだよ?」

 

徹はアホの癖にこういうところはちゃんと押さえることができている。

そう、いくら世界一の大国と同盟を結んでいたとしても、流通は民間で行っているのを忘れてはならない。

と、いうか同盟国の軍が食糧支援に来るレベルだったら国はすでにやばい。

 

大戦であれ小競り合いであれ、戦闘や臨検に巻き込まれる可能性のある所に商売にいく数は減る。

食料の価格に反映されることになるだろう

 

そして我が国は食べ物に妥協しない。

車を国あげて叩き壊されようが、国民性を馬鹿にされようが、過去のことでねちねち言われようが、一定量(他国と比べればもはや仏レベルの寛容さだが)は許容する。

 

だが、こと食べ物のことになると逆鱗に触れられた龍のごとく激怒する。

たぶんだが戦争に巻き込みたかったら兵糧攻めすれば国民全部が戦争の方に意識向くと思う、そんな国民性。

 

あと大地事実だが黒いぞ。実際他の地方で冷害とか災害合ったときすごかった。

いつも100円で売ってるレタス、400円でも売れたから、正直やばいと思ったよ。株とかよりダイレクトに生存にかかわるものだから。

 

「自給率に関しては日本は人件費が高いからどうしようもないんだよ?」

 

「儲からない仕事は誰もやりたがらないってことか? 大地」

 

「それもあるけど休みがないのが大きいと思うんだよ?」

 

それは確かに、大地がどれだけ毎日頑張ってるか見てきたから実感する。

 

「確かに私たちも手伝うようになってから三日と空けたことはないな」

 

「二人には感謝してるんだよ?」

 

「いや、むしろ飯食わせてもらって、さらに月3万も貰えてるから俺は逆に割がいいと思けどな。外で食えば千円近く飛ぶし」

 

「それに米や野菜も貰えるしな、年間通すと結構馬鹿にならない金額になるだろう」

 

「ちゃんと就農するまでは夏休みに稲刈りできる早生(わせ)品種だけどね、みんな大好きコシヒカリは晩生(おくて)だから」

 

「最初違和感あったけどこれはこれでって慣れてきたがな」

 

「そうだな、むしろ私としては食感以外の違いが分からないんでコメントに困るが」

 

二人とも全然違うよとか力説されても正直わからない。

多少固めで甘みも少ない気がするが、基本濃い味のおかずと一緒に食べるため違いが全くわからない。

 

「私にわかるのは小さいころ食べてたコメよりはるかにうまいということぐらいだよ」

 

そういうと大地は嬉しそうに振り返って笑って――前を見ろ危ないぞ。

 

「なにこれ!?」

 

焦った声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

Fragment徹

 

 

 

 

「なにこれ!?」

 

 

 

 

大地の焦った声で足元の野菜(転がらないように見てた)から顔を上げた瞬間。

銀色の膜のようなものに飲み込まれた。

 

衝撃などは一切なかったが一瞬後には灰色のカラーのない空間で落下? 浮遊感はないが下に向かって落ちて、いや移動しているような感覚だ。

 

「一郎!大地!大丈夫か!?」

 

「問題ない!が、何が起きた!?」

 

「こっちも平気、こけ子さんも大丈夫なんだよ!」

 

何らかの超常現象に巻き込まれてる感じがするが……これってアレかな?

 

「推測1 宇宙人等超科学によるアブダクション的な何か」

 

まず思いついたことを口に出す。

 

「それだと上方向じゃないかな?」

 

「地底人の可能性も無きにしも非ずだが、ないと推測する」

 

二人からは否定。

 

そんな夢のない(?)科学的な現象は却下された。うん、俺もそういうのは夢がないと思う。

 

 

「推測2 集団幻覚」

 

「ありうるけど、それだとアクセル踏みっぱなしだからどこかにぶつかって目覚めてもいいと思うんだよ?」

 

「爺さんから幻覚系への対処は教わってるはずだろう? ならその類ではないと思う」

 

だよな。腹の下に気合入れても覚めないし。

俺の見立てではこれは……

 

「推測3 超常現象的な何か、というかぶっちゃけ異世界召喚」

 

オタクのたしなみの一つ異世界召喚と見たんだが……

 

「ごめん僕もそれだったら面白いなって思ってた」

 

「面白いかどうかはともかく、可能性はあるとみている」

 

さすが二人ともオタクだな、適応している。

 

「三人一緒かバラバラか……」

 

「転移確定してる前提で話し進めてるな、まあいいだろう。大地もその認識でいいか?」

 

「特に異論はないんだよ、ただこれでどこにもいかなかったりしたらすごく恥ずかしいよね」

 

たしかに地球での転移とかの事例も過去にあるし(オカルトレベルだが)その可能性もなきにしもあらずだが、せっかくのこの事態。期待したっていいんじゃねえかな。

 

「ところで二人にいいお知らせがあるんだよ」

 

と大地が足元の箱をぺしぺし叩いて誇らしげに宣言する。

 

「こけ子さん誘導するための撒き餌用にもっていたもみ米がここに入ってるんだよ?」

 

「やべえ!異世界で米が食える!!」

 

「でも増やすのに二年ほどかかるんだよ?」

 

「それでもだ!」

 

これにはテンションが上がった、異世界物の定番では米がなかったりするんだよな。

 

「そういえば私は味噌余ってるぞ、さっきキュウリにつけてかじってた分の残りだが」

 

「でかした一郎!麹菌が生きてるはず!」

 

大地の家の味噌は自家製米麹味噌だ、これを素にすれば味噌も作れるはず。

やっべこれ余裕じゃね?

 

「収穫した野菜は正直すぐ食べるしかないもので増やしたりはできないっぽいけど、赤かぶが無理すればもう一回植えれないかなって感じなんだよ?」

 

「そもそも時間かかる前提で話しているが、私としては帰れるものならすぐにでも帰りたいのだが」

 

「魔王を倒してくれとかだとかかりそうだよな結構」

 

「むしろ怖いのは召喚じゃなくて事故での転移で戻る方法が不明とかなんだよ」

 

「あー、その可能性もあったか」

 

そう考えると戻ってこれない可能性もあるのか……でも『戻ってこれないけど行きますか』って聞かれたら『行く』って答えるだろうなあ。

家庭に不満はないけれど生きていてコレジャナイ感がすごいから。

男だったら腕っぷしでのし上がりたい夢は一度は持つもんだ。でも現代じゃせいぜいが格闘技の興行だしな。命のやり取りってのはねえんじゃねえかな?

 

「大地、一郎。戻れるんだったら戻るか? 悪いが俺は行くわ」

 

「僕も一応は天涯孤独だし、新天地で生きるのも悪くないと思うんだよ?」

 

「……状況次第だ。だがまあ、お前ら二人を放置した方がむしろ危険な気がするからな」

 

とりあえず召喚されて意思を聞かれた場合は全員が異世界に残るってことでいいんだな。

なら後は傾向と対策か。

 

「なんか倒してくれ系統の依頼の場合はどうするよ?」

 

「召喚特典……いわゆる勇者チートがある場合とない場合で変わってくると思うが、あとは殺れるかどうかだと思う」

 

「たぶん俺は殺れるわ。爺の薫陶のおかげかな?」

 

ブタやニワトリや猪などいろいろな動物にとどめを刺させられた。

魔物とかなら人型でもなんとか行けるとは思う。

 

「私はあんまり自信はないが、戦いを恐れるほど弱くはないつもりだ」

 

「僕はちょっと無理かも」

 

「「嘘つけ」」

 

「心外なんだよ!?」

 

大地は割と殺すことに抵抗がない。鶏の首つかんでひねって殺すのは日常。

ネズミやムジナは言うに及ばずハクビシンや野良猫等可愛い系統の生物でも容赦なく殺す。(しかも箱罠やトラバサミごと水に沈める見てて背筋が冷える殺害方法だ)

猪とか罠にかかっていたら嬉々として竹竿に手斧つけたので頭かちわる。

農家なら当然の能力と言ってたが、俺は知っている。爺が可愛い系の生き物は殺さなかったことを。

 

「それと王様? 偉い人たちの悪意の有無も重要なんだよ?」

 

「呪文で隷属とかの場合はともかく、道具類はうかつに装備しないように気を付けないとな」

 

特に首輪とか指輪とか腕輪は要注意だな。呪文とかなら何とかして妨害すればいいんだが。

 

「召喚者不在の場合はどうするよ?」

 

ある意味これが厄介だ。

自分らで自分の居場所を作る必要があるからな。

 

「それならそれで大地の出番だと思うが」

 

「ああ、生活力に関しては俺らのなかでダントツだしな」

 

「さすがに僕も着の身着のままじゃ何もできないんだよ?言葉も通じるか不明だし」

 

言葉か……そういう世界観の場合もあったなあ。

でもまあ、とりあえず拠点だよな。

 

「難しい言語でなければ身振り手振りも交えれば――」

 

話している途中で一郎が消えた。

 

「いちろー君!?」

 

「くそっ!バラバラ転移か!」

 

そういうおれもケツがムズムズする。たぶん俺もじきに飛ぶだろう……

 

「大地!とりあえず生き延びろ!俺がなんとか迎えに行く!!」

 

スポーツバッグに手当たり次第に野菜詰め込みながら大地に方針を伝える。

大地は基本農民である。故に移動するより拠点に落ち着いていた方がはるかに生存率は高まるはずだ。

 

「むしろとーる君生きてけるの!?」

 

「ひでえな!しぶといのには定評が――」

 

 そして俺も空間に飲まれた。

 

 

 

 

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