カケラあつめ~癖の強い三人、異世界で無双す~ 作:みけさんわーきゃっと
Fragment徹
「うおっと!?」
階段を踏み外したような足元の頼りなさを感じた直後に、風景が一変していた。
「しまった、長靴じゃねーか!」
一応一郎や大地のと違って安全長靴だが(農業は割と破壊活動もするため)、心強い反面、非常に歩きづらい。
とりあえずはスポーツバッグを開けて持ち物を確認する。
「ええと、スマホにソーラー充電器、アンバサが31本……足りねえな。レタス3玉、赤かぶ8つ、オクラが何本だ……?一掴みぐらいか、腰袋にドライバーと収穫ばさみ、ラチェット、充電式LEDライト、肩にタオルとポケットに財布とアニメ柄(某三世)のオイルライター、素昆布、バンダナ、柘植櫛か……」
水も食料も一応はあるな、だが31本はもはや絶望を感じる数値だな。武器は己の肉体(一度言ってみたかった)で問題ない。
割と行けそうな気はするな。体も軽く疲労感はあるものの許容範囲だし。
「問題なしっと、問題があるとしたら、――ここどこだ?」
周囲を見渡してみるが明らかに森だろここ。街道とか川沿いとかそういうとりあえずどっちかに行くという選択肢がねえ。
下手すると奥へ奥へと迷い込んでしまう。
「俺はどっちかというとシティボーイなんだがなあ……」
嘘は言っていない、基本的にインドアなオタクは大自然との接点などナコルルぐらいしかない。
俺は爺の薫陶のおかげでちょっと適応できるだけだ。
「とりあえず……」
俺は周囲を散策することにした。
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「まあ、こんなもんか」
ざっくりと二時間ほど作業した結果がこんな感じだ。
石の槍、石斧、石のナイフ、ボーラ、ブルーベリーっぽいものアンバサの缶にいっぱい(毒味済み)、謎の植物(食えそうな気配がする、毒味はしていない)少々。
「シティボーイの俺にはこの辺が限界か……」
せいぜいが兼業農家アイドルレベルでしか作業できないからなあ……
手順としてはこうだ。手ごろな石をぶつけて割りまくりいい感じの石を集めて石のナイフを作る→石のナイフで手ごろな木の樹皮を剥ぎ樹皮ロープにする→適当な枝をナイフと肉体を駆使してへし折る、枝にロープで石を括り付けて石斧を作る→いい感じの枝を石斧で伐採する。
あ、この段階でボーラも作ってる、石を樹皮で縛ったものを大量にもう片側を束ねて一まとめにしたものだ。
よく想像するロープの両端に二つのおもりが付いたものは扱いずらくうまく使うには技術がいる、これなら束ねたロープを持って投げやすいし、まとめて叩きつけて打撃武器としても使えるため、こういった状況では非常に使い勝手がいい。
枝と石をロープで縛って石槍を作る→実を発見したので毒味しつつア○バサで水分補給し、大丈夫そうだったので缶の上を収穫ばさみできって入れ物にし実を摘む。
こんな感じで作業した。
「うん、ゲームやっててよかったな」
素材を組み合わせて道具を作り、道具で次の道具を作る、ああいうタイプのゲームの基本である。
ちなみに肉体が武器と言ってたが安全策を取った。
爺曰く『人はたやすく殺せても、猪とかは武器がないと簡単には無理じゃな、ましてや熊なんぞ命懸けで倒したわい』とのこ……おい、今冷静に思い返したらこの文脈って素手で熊倒してねえか……?
「まああの爺だしな」
詳しく聞こうにも今は天国……地獄か? まあ、あの世にいるだろうし爺なら熊殺しぐらいやりかねねえが、俺は無理、食糧確保のためには弓があるといいんだが俺は不得手だ。
一郎は侍のやるようなこと一通りしてたので弓も使えるっぽいが俺はどっちかというと投擲術なんで作る時間と天秤にかけて作らないことにした。手ごろな弦もなかったしな。
水(アンバサ)がなくなってきたら缶に水入れて煮沸すればいいし、切り開いて簡易な焼き物用の板にもできるし、やはりアンバサは偉大だな!(本日二回目)
ライターがあるのも意外に大きい、なかったら弓錐火おこし作る必要があったのでひと手間省けた。
あとは長期遭難になりそうだったら狩猟して、石と泥でかまどを組んで缶を切り開いた上でちょっとした肉や野菜は焼ける。いい感じの石があったら石板焼きでもいいしな。水も草木を蒸して取り出すこともできるが、まずは川なり泉なり見つけるべきだな。
寝床は木の上に樹皮でハンモックでも作るか……?
「よし、生き残る算段はついた。――むっ!?」
一息ついて、周囲に気をやると不穏な気配が漂ってきた。
……これは、戦闘の気配?
「こっちか!!」
俺はうっすらと感じる気配に向かって走り出した!
しばらく進むと声が聞こえてきた。
『お願いします! せめてこの子だけは!!』
どこからか切羽詰まった声が……あっちか!
かかとの可動が重要なので長靴じゃあ辛いが……
俺は超加速して駆け出していく。
戦闘音はまだない……?
駆けつけるとそこには二人の人間と二匹の推定ゴブリンがいた。
どうやら女の方はわが子をかばって戦っていたのだろうかすでに傷だらけだ。
戦闘は終わったのだろうか、見逃してやったということだろうか? 武器を下げ「行け」という風に手をひらひらさせる。
女は、やはり母なのだろうかありがとうございます、ありがとうございますと頭を地に擦り付けんばかりに感謝していた。
笑みに対して何度も何度も頭を下げながら子とともに女は歩いていく。
――!
背中に悪寒が走った。
あいつらの笑みはいいことしたという爽やかな笑みじゃねえ……!
もっとドス暗い……!
そしてやつらは走り出しそれぞれ武器を振りかぶり……
くっ……間に合わねえ!!
「やめろおおおおおおおおっ!!!」
Fragment エース
「見えましたよ、あれがメリムの町です」
「おお……」
街道がそのまま町につながっている、現代の街並みと違って明確にここから町! というのがわかる。
なぜならば柵みたいな(腰ほどまでしかないが)もので囲ってあるからだ。
「入場に制限とかは? 入り口でチェックとか……?」
「エースさんいったいどんな殺伐とした地域から来たんですか……?」
基本的に戦時体制や一部の地域(王都の貴族街等)しかそういう制限はないそうだ。商売の税金は商人ギルドがまとめてはらうそうで、マルクさんも割と少なくない金額を収めてるとのこと。
旅商人の場合場所と時間で税金の額が変わってくるようで、今回みたいな卸の場合は相手方が税の対象だが、普通に商いする場合は、許可証で細かく形態が指定されてるとのこと。
「私の許可証だと、日の出からお昼まででバザー用地、あるいは既存店の軒先を借りてのみ売買ができます」
「一年更新ですか?」
「そうですね、あとは扱うものによっても納める金額が変わりますが、私の場合食料品、雑貨、簡易武器、塩、蜂蜜ですね」
「塩や蜂蜜は食料品じゃないんですね?」
「塩の流通が止まると大変ですから塩は税金が特に安いです、逆に蜂蜜は嗜好品扱いで高いです、がそれなりに儲かるので入れてあります」
「薬はどのくらいです?」
「店舗持ちの場合はそこまで高くないんですが、行商だと割と高いです、金貨8枚ぐらいだった気がしますね」
高っ!?
だが一瞬考えると妥当だということに気づく、胡乱な存在に使わせないためだな?
「それは詐欺行為のリスクも含めての金額ってことですかね」
薬など体質で効いたり効かなかったりすることもあるだろうし、そもそもただの水を薬と偽って売ってその町を離れれば売り得だからな。ゆえに店舗タイプは安くて行商が高いのか。しかし800万円か……手持ちの薬を売り払うのはちょっと難しいか?
「そうです、ただ近頃は許可証で手配もかけれるので、昔は結構詐欺師もいたみたいですが、今ではほとんど見なくなりました、国境で犯罪者は調べるので」
国境とかは流石に関所があるようだ。
「たとえばけがなどしてる人に薬を使ってその分を請求したらどうなります?」
「医療行為として扱われます。いちおう診療所の場合十分の一税の対象になります。診察代込みで手に入れた金額の一割を納税する感じです。儲けの一割ではないので注意してください。旅路の場合はまあ、申告わざわざしません、面倒なのと無駄にお金かかるので」
「十分の一税とは?」
確か地球でも昔あったはずだ。が、念のため確認
「飲食店や宿屋、医者や大工など何と言ったらいいのでしょう……」
「サービス業?」
医者や大工をサービス業と言っていいのかは知らないが、たぶん似たようなニュアンスで翻訳してくれるに違いない。
「サービス業……はい、そんな感じでしょうか、にかかる税金です、元々は農家の人たちの半分税からの派生らしいですが」
「なるほど、理解できました」
半分税……五公五民か?収穫に対してなのかあらゆるものに対してなのかで割と変わってくるんだよな……
まあ一割なら特定職用の消費税みたいなものだろうか? 結構安い気もするんだが……
いやまだ詳細がわからないが。
「エースさんはこれからどうしますか? 私は商館に民芸品おろしてきますが」
「そうですね……そういえば水筒は?」
私の水筒はごく普通の保温タイプだがこのぐらいの時間なら余裕だと思うが……
「……すごい!まだ熱いですよ! いえ、疑っていたわけではないのですが」
よし、これで銀貨45枚。銀貨を受け取り逆に問い返す。
「この街には武器屋のようなものはあるでしょうか?」
「一応ありますが……」
お金のことを心配しているようだ。
おおよそ4~5万円ではそれこそナイフぐらいしか買えないのだろうな。
だが、そんな高級品いまは必要ない。
「丸腰よりは、まあ、ましなので、それとおすすめの宿など」
「私の定宿は『
「いったい何を殺った!? 女神よ!?」
思わず突っ込む、いや、突っ込まずにはいられないだろうこれは。
「みんなそれを聞くんですけど誰も知らないし、店の人も教えてくれないんですよね」
「そこはかとなく不安になるけど大丈夫なのだろうか?」
「食事はおいしいし宿代も馬車込みで銀貨9枚と安いんですよ」
「人間だけだといくらだろうか?」
「5枚だったはずですよ」
やや高級か中の上といったところか。
あまり安宿だと現代日本に慣れた私ではつらいかもしれないな。
「そこにさせてもらおう、場所はどこだろうか?」
「ここをずーっとまっすぐ行くとバザー区画があるんです、広場になってて石畳になってるのですぐわかります。そこの左手奥側に大きめの宿、血の滴る槍を持った女神の絵がかいてあるので――」
「待て、なんだそれは」
丁寧語すら忘れて突っ込む。
「戦女神クレアさまの絵らしいですよ、で、そこが宿屋です。もしわからなければ当たりの人に『オバゴ』ってどこですか?と聞けばすぐだとおもいますよ」
「略語まであるのか!?」
ここにきてマルコさんがわざとやってるんじゃないかと思うぐらい畳みかけてきた……
「で、オバゴの向かって左側二軒隣に武器屋もあります、研ぎ直しとかもやってるわりとしっかりしたお店ですよ」
普通にオバゴって言ってるし……
「とりあえずは武器屋によってそこで宿をとるとするよ」
「あ、よろしければ夕食をご一緒しませんか?」
徹なら「俺に惚れたか?」とか言うの――いや、奴は思うが言わないか、結構ヘタレなのである。だろうが、私はうぬぼれない。
「虫よけですか?」
「それもありますが……エースさんからはお金の……大金の臭いがするので!」
マルクさんはわりと可愛い美人(資質が可愛く、種族的に美人)なので一人で食べてたらそれはうっとうしいことになりそうな気がするため予測していたのだが、何かとてもイイ笑顔で斜め上の答えが返ってきた。
いや、商人ならこれが正しいのかもしれないが。
「わかりました、待ち合わせは?」
「カウンターで『エースが薔薇を摘みに来た』って言ったら私の部屋に案内してもらえるようにしておきます、そうしたら一緒に下で食べましょう」
薔薇……?むしろ新緑の若芽のような女性だが……
そう思ったときに学んだ知識が浮かび上がってきた、薔薇でマルク……
「薔薇……?マルク……?……マルク・シャガール?」
「え……? なぜ私のフルネームを!?」
「そういう名前の薔薇を知っているのです……」
が、あれは、あれこそは地球にしかないはずだ。新種の薔薇に画家の名前が付けられたものだからだ。
いったいなぜ……?共通点があるのか、こちらとあちらに……?
「そのあたりも後で聞かせてほしいですね」
「言えることだけでよければ」
言ってからしまったと思った。これでは秘密がありますと言っているようなものではないか。
相当混乱してるな、私も。
「それでは」
「また後で」
頭を冷やし、考えをまとめるために足早にその場から立ち去るのだった。