カケラあつめ~癖の強い三人、異世界で無双す~ 作:みけさんわーきゃっと
Fragment 大地
メーテルお姉さんに怒られた。
――全力で顔うずめてぱふぱふしても何も言われなかったのに、揉んだら怒られたんだよ。……解せぬ。
さておきメーテルお姉さんに促されて建物の中に入ったんだよ。運搬車は置いてきたけどこけ子さんは肩に乗せてある。
この状態(肩乗りこけ子さん)のこけ子さんは「こー……こー……こっこっこ」とちょっと不安そうに鳴くのがキュート。
いちろー君とかはこの状態でほおずりしてモフったりする。
建物内部は相変わらずの白、だだっ広い空間に……なんだろう、なぞの光る玉。
なにかのアイテムかと思って手に取ろうとしたら、光る玉が話し出した。
「ようこそ、運命の子よ、私は宿命」
「猪狩大地です、それとにわとりこけ子さんです」
「こー」
宿命さんは僕のことを運命の子とかよんだけど、どういうことだろう?
「運命の子って何か教えてほしいんだよ?」
「運命の子というのは、運命を持つものだ」
ちょっとわからない。
わけがわからないよ状態だ。ただ運命と宿命の違いは判る。
「現象が川だとして……」
「うむ」
「宿命は変えることができない流れ、運命は変えることのできる流れであってるかな?」
「その通りだ、運命の子よ」
と、いうことは……
「僕が何かを変えるために呼ばれた?」
「そうなるだろう、運命の子よ」
「誰が呼んだかわかる?」
「――世界が」
「え?」
またもやわけがわからないよ状態だ。卵孵化させれそうなんだよ。
「世界にも――」
あ、続きがあるみたいだ。
「世界にも意思がある。運命の子を呼ぶというのが今から行く世界の選択である」
「世界に意思……?それをつかさどる神とかじゃなくて?」
うーん神より上?
「左様。その世界は意志が、思いが力を持つ。森には妖精が住むと数百年語り継がれ、エルフが生まれた。狂犬病のうわさが狼男(ライカンスロープ)を生み、墓荒らしがゾンビを、ヴァンパイアを生み出した。期待される英雄は人知を超えた力を行使し、やがて、魔法やスキルが生まれた」
「それは思い通りになるということ?」
「否、必ずしもそうではない。そこには必ず理由が、物語が、語る人が、思う人物ができると信じる意志の力が様々な要因でゆがみあるいは変質して世界の理となる、理のカケラを集め世界を紡ぐのが運命の子の役割だと思われる」
ちょっとよくわかんないけど、運命の子と言われている僕は何かを生み出すために呼ばれたのだろうか?
いや、よばれるのか?かな?
「とーる君といちろー君は巻き込まれただけかな?」
「肯定であり、否でもある。彼らはもう自分たちの物語を紡ぎ始めた」
あれ、この流れってどこかで……?
「元の世界には帰れるの?」
「世界のカケラを生み出し物語を終わらせれば、いつでも」
「……僕はバスチアンになるつもりはないんだよ?」
既視感はこれか!しかも三人分ってかなり無茶なんだよ!?
果てしない物語はご免被りたいんだよ。
「バスチアン?」
さすがに通じないか……この光の玉と話するのはいちいち重厚で疲れてくるんだよ。
メーテルお姉さんほど素晴らしくなくても、せめて人間形態なら……
「バスチアンとはなにか……教えてほしいんだよ? あ、いいや、なにか理解できたんだよ?」
「僕が増えたっ!?」
光の玉が急に形を変えて人間形態……というか僕じゃん!?になった。
記憶も共通するのかバスチアンに対する説明もいらなくなったのは少しうれしい。
――それ以上の許容範囲一杯の困惑があるけれども。
「これは……まさか運命の子の仕業なのかな?」
「アニメとかでは光の玉は人型を取るもんなんだよ?」
僕がそういうと彼……いや彼女(・・)は視線を宙にさまよわせて(多分僕のアニメ記憶を反芻していると思われる)確かにとうなづいた。
「でもなんで僕が女体化してるのか謎なんだよ?」
「僕だってわからないけど、メーテルお姉さんのこと考えたからかな?」
ちなみに自分でいうのもなんだけどもすごく可愛い。
僕との違いをあげたら、目が金色なのと胸(おっぱい)があることぐらいかな。
あれ? つまり僕普段からこんな可愛いの?
……深く考えるのはやめよう
ちなみに結構な大きさでツナギを押し上げてるぐらいだからきっとメーテルお姉さんよりある。
「運命の僕はナルシストなのかもしれないんだよ?」
「宿命の僕は意地悪なんだよ?」
思考も僕に引っ張られているのか軽妙なやり取りはすごく応対しやすい。
さっきのは本当に精神削られてたからね。
「物語については僕が終わったと心から認識すれば、それで終わりになるんだよ?」
「いちろー君やとーる君の分も?」
「カケラができていれば多分大丈夫なんだよ?」
また出てきたカケラ……いったい何のことなんだろう?
「カケラって何かよくわからないんだよ?」
「実は僕にもよくわからないんだよ?」
「宿命ェ……」
応対しやすくて楽は楽だけど、これはこれでSAN値がかりがり削られていく。
「おっぱいで癒されたいんだよ……メーテルお姉さん助けてー……」
「僕のでよかったらどうぞなんだよ?」
そう言って胸を張る宿命。
「それはなんかすごい嫌なんだよ」
さすがにそれはそれでSAN値が一気に下がりかねないんだよ。
女体化した自分の胸(おっぱい)に縋りつくとか、逆にSAN値直葬の恐れがあるんだよ……
「とか言ってる割には全力で顔埋めに来たんだよ? 運命」
「おっぱいには勝てなかったよ……宿命」
ノリが僕だからおっぱい星人である僕のことをよくわかってて悔しい、でも感じちゃう!!(感触を)
あー、でもやっぱり癒されない。これはあんまりいいおっぱいじゃない(暴言)
「虚しさがこみあげてくるんだよ……」
「自分で自分を慰めるとかいて自慰と読む。虚しくなるのはそのせいじゃないかなって思うんだよ?」
「嬉しくないおっぱい存在するんだなあ……」
「また一つ賢くなったんだよ?」
話しやすくなったしそろそろ本題に入るとしようかな。
「宿命、僕の記憶を参照しながら聞いて。向こうに行く人に召喚特典みたいなものはある?」
「えっと、意思疎通が不自由なくできるようになってるんだよ。それとほんの少しだけ強靭になってる、気休め程度だけど。あとはギフト、これは向こうの世界の住人も生まれたときにランダムで手に入るやつでプラスのとマイナスのあるけどプラスのなかからランダムで一つ」
「それはとーる君やいちろー君ももらえる?」
「もらえるよ、二人はもう向こうで行動始めてるんだよ」
「場所は教えてもらえる?」
「僕は観測しかできないんだよ? 位置を教える。それは物語への干渉になるからダメなんだよ?」
「運搬車どうなる?」
「馬車にしておくんだよ、馬もサービス。元の世界にかえったら元に戻るようにしておくんだよ?」
「それはいいんだ……!?」
「僕の物語はまだ始まってないんだよ?」
「ルールがよくわからないんだよ」
とりあえず言葉の心配はいらないみたいなのはすごく助かるんだよ。
「当座の生活費とかは? 武器とかは?」
何もなしで転移とか厳しいと思うんだよ?
「僕が持ってるわけないんだよ? 向こうで自力で稼いだらいいんだよ?」
「いきなりゲームオーバーになったら困るんだよ?」
「困るからきっと世界もそんなにひどい所には送らないと思うんだよ?」
「だといいけど……」
メーテルお姉さんの祝福がここにきて不安要素になってる。
――翻弄されませんように。
「そろそろ時間だよ、運命の僕」
「わかったよ、宿命の僕」
「僕はこの後は見ていることしかできないけれども――世界が呼ぶぐらいだから、破滅はきっとすぐそばにあると思うんだよ? 気を付けて」
「宿命は破滅を見ていないというなら、それは破滅だったとしても運命なんだよ? 運命なら変えて見せるんだよ」
そういうと宿命は微笑んで『もう時間だね』という。
「このまま転移?」
「いや、メーテルお姉さんにまかせてあるんだよ」
「そっか」
少しばかり不安だけど……
「じゃあ、またいつか、運命」
「できれば早いうちに、宿命」