カケラあつめ~癖の強い三人、異世界で無双す~   作:みけさんわーきゃっと

9 / 10
その8

 

Fragment 大地

 

「お帰り」

 

「ただいまなんだよ、メーテルお姉さん」

 

建物から出た僕をメーテルお姉さんが出迎えてくれた。出迎えてくれたんだけど……

 

「なんで2Pカラーなの?」

 

衣装の白黒が反転していたんだよ。

いわゆる白ゴス?ってやつ?

 

「天秤の傾き具合で変わっちゃうのよ、今は波乱の方に傾いてる感じね」

 

「波乱って普通黒いんじゃ……?」

 

僕の疑問にメーテルお姉さんは人間臭く肩をすくめて答える。

 

()()()()()()()()()のよ?おわかり?」

 

あーなんというかメーテルお姉さんのこう……悪意?翻弄力?が使われた結果白くなるのか……って!

 

「ねえ、メーテルお姉さん」

 

嫌な予感を感じつつ問うてみる。

 

「なあに?」

 

甘い甘い声の『なあに?』だがそこには少しばかりの狂気と愉悦が含まれているような気がするんだよ……

 

「僕今から異世界に行くんだよね?」

 

「そうよ」

 

『にたぁ』と笑うメーテルお姉さん。

嫌な予感が当たるのを確信しつつ僕はメーテルお姉さんに問うてみた。

 

「何か危なくなるようなこと仕込んだかな?」

 

「ちがうわよぉ?『面白くなる』ようには願ったけど……ね?」

 

やっぱりだ!

メーテルお姉さんは優しくていいお姉さんだけど本質は「翻弄する女神」存在そのものが混沌なんだよ!

 

「なんでかな?メーテルお姉さん?」

 

「だってあなた私の使徒だしぃ?」

 

「いつの間に決まったのっ!?」

 

「さっき祝福あげたでしょお?その時よぉ?」

 

ねっとり。そう少々エロスすら感じるねっとりとした口調でメーテルお姉さんは告げる。

――やっぱりあれかー。と思ったけど……まあ、なんだろう。

そのこと自体には別に不満はない、不思議なんだよ。

ただ不満があるとすれば――

 

「こんな不意打ちみたいにしなくても、メーテルお姉さんのやることならちゃんと受け入れることぐらいはしたんだよ?……まあ衝撃を和らげるためにおっぱいぐらいは堪能したかったけど」

 

「私そんなに大きい方じゃないんだけど、こんなのでいいのかしら……?」

 

「大きいのは確かに好きだけど、おっぱいに貴賤はないんだよ!!」

 

「そ、じゃあ後払いしてあげるわよ」

 

そういって前のように抱き寄せられる。控えめな膨らみによる『ふかっ』っとした感触。

癒される……

 

「はふぅ。メーテルお姉さん、甘やかしてくれるから好きなんだよ」

 

「愛の女神とかものすごいおっきいけど、呼んであげましょうか?」

 

是非!と言いたいけど多分言ったら二度と甘やかしてくれない気がするんだよ?

それぐらいの機微は空気を読まないと定評のある僕にだってわかる。

 

――それに。

 

「見ず知らずの女神さまより、メーテルお姉さんの方がいいなって思うんだよ」

 

「ふふ」

 

あー。後頭部なでなでも加わったら脳が溶けるんだよ……

 

そうして堪能してると――

 

「げしょっ!?」

 

いきなりメーテルお姉さんに拳骨をもらった!?

 

「だから揉むなって言ってるでしょ?」

 

どうやら無意識に揉んでいたようだ。

メーテルお姉さん、微笑んでるけど目が笑ってない。

 

「ごめんなさい、無意識に……」

 

「それはわかってるわよ、その可愛いもの大きくなってたら不能の呪いかけてたし」

 

怖っ!?それは男として最高レベルの恐怖なんだよ!?

でも僕のはそんなに可愛くないんだよ?

 

でもなんで触られるのダメなんだろ?超敏感とか?

 

「不遜なこと考えてるようだけど神が与えるのと人間が欲するのでは違うのよ。そのあたりは神のルールみたいなものだから納得しておきなさいな」

 

見透かされた!?

でも今回のは僕がおっぱい堪能したかったって言ったからどのあたりが違うんだろ?

 

「言われたって与えるかどうかは私が決めることでしょお?」

 

また!?

っていうか……

 

「メーテルお姉さん。心読めますか?」

 

そう僕が問うと。

 

「神様だしぃ」

 

と、じつにイイ笑顔でにんまりと笑ったんだよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fragmentトール

 

 

 

 

「いったぞグー!!」

 

鹿を追いかけながらグーに知らせる、本当は雌鹿を狩るのはあんまりよくないんだが子離れも済んだ時期なので許してもらおう。

 

勢子としてガタイの大きい俺が追い込む。

一応罠も仕掛けてあるんだが素人罠。悉く看破されて一目散に逃げていく鹿。

――だが。

 

「キュウン!?」

 

木の上から飛び降りざまに体重をかけて突き刺したグーの小剣に首を貫かれる。

 

「よっし、逃げろグー!」

 

「オウ!」

 

その後慌てて再び木の上へ避難するグー。

……生き物ってのは想像以上にしぶとくてこのぐらいでも普通に反撃してくる。

狩りの三日目ぐらいに胴を薙いで内臓こぼれてる雄鹿に追い回された挙句危うく突き殺されるところだったからな……

 

このまま逃げるようなら先は長くないから血痕をたどっていけばいいし、俺に向かって来るようなら……

 

「おっと」

 

俺自体はそこまで鈍くないし周囲は罠だ、持久戦に持ち込めばやがて……

 

 

 

 

「ようし、吊るすぞグー」

 

「まかせロ!トール兄ちゃん!」

 

得物の血抜き、大事。

瀕死になり動かなくなった鹿を吊るして放血させる。

後は川まで運んで作業だ

 

しかしゴブリンの成長速すぎだろ……

あれから10日ほど経過したがすでにグーの体は大地よりやや小さいぐらいの大きさになっている。

 

あと想像より賢い。

正直言うこと聞かないなら躾のためOHANASIする必要があるかな?

と思っていたが、なんというか……ガキの頃の俺より賢いかもしれん(絶望)

 

「なあ、兄ちゃん!肝臓喰っていいか!」

 

「綺麗な色ならな!」

 

川まで運びつつグーと会話する。

そもそも語彙とかすげえ勢いで覚えるんだよな、グー。

最初は全部ひっくるめて「肉」だったのに「肉と内臓」から「肉と食べられる内臓と食べられない内臓」を経て「肉の部位と臓物の名前」まで覚えたしな。

 

川では血を洗いつつ解体。

一晩川につるすという法方もあるが高確率で何者かに食われるのでせいぜいが肉をしっかり冷やすまでだな。

その冷やしてる間に服なんかも洗っちまう(グーはふんどしのみ)

 

あの二人組から剥いだ装備は重宝している。

塩があったのはかなり大きいし小剣はグーのメイン武器であり、棒の先に括り付けて簡易な長巻にして狩りに役立てている。

 

今使ってるナイフなんかは明らかに解体用のごっつい奴だし、火打石や砥石や油があったのもかなりでかい。

 

贅沢言えば野営用装備とかも欲しかったが日帰りのつもりだったのだろうか、持ってはいなかった。

まあそのあたりはグーの家?(というか巣)だった洞窟があったから何とかなったが。

ただ墓を十数個作る羽目にはなったがな、あと掃除。

 

グーの家にも整備すればそこそこ使えるものはあったし、とりあえずは文明的な生活をできてる(原始文明かもだが)といってもいいかな?

 

とはいえこの生活にもやがて限界は来るだろう、塩とかは特に必須だしな、まさか毎回都合よく「殺してもいい人間」が現れるわけでもなかろうしな。

 

とりあえず心のやることリストに森を出て近くの人里を探す。と、ゴブリンを連れて人里に出れるかを調べる。を追記する。

 

もちろんグーが独り立ちしたいというならそれは止めねえ、家族だってバラバラに生きるのは普通のことだ。

まあそうなったらさすがに少し寂しいとは思う。

だけどそうなることも見越してグーは鍛えよう、少なくとも一人でこの森で生きていける程度には。

 

「たかがゴブリン」と油断している冒険者を帰りうちにできる程度には。

 

 

 

 

 

 

 

Fragment エース

 

 

「にゅふふふふふふ……大金つかみますよー」

 

「マルクさん?マルクさん!?ダメだ、完全に酔ってる」

 

結構なペースでワイン(別料金)を空けていたマルクさん。

当然如くしっかりと酔いつぶれてしまっていた。

 

男の前で不用心な!とも思いつつ、それなりの信頼をしてくれたであろうことは素直に嬉しい。

ただ問題があるとしたら――

 

「よお、兄ちゃん、そのエルフ俺が介抱してやるよ」

 

こういう馬鹿が釣れてしまうことだが。

 

見た感じ腰に武器は持っていない、となるとせいぜいがナイフを持ってるぐらいか?

体つきは大柄で背丈こそは私とほぼ同じだが、身体の厚みは倍ほど違う。それなりに鍛えられているか肉体労働者かってところか。

 

そして私はといえば丸腰。徹ならこのぐらい本気で秒でのしてしまうのだが私は奴ほど頑丈な拳をしてはいないしな。

 

酒場流喧嘩殺法のかなめである酒瓶やクリスタルのごつい灰皿がないのは少し心もとないが(そういえばたばこ見てないな、金の臭いがするぞ)最悪椅子ででもぶん殴るか……?

 

「いえ、結構です。大切な連れですので」

 

とりあえずは丁寧に断る。下手には出ないが。

こういうのは下手に出るとかさにかかってくるタイプだというのは店で熟知しているしな。

 

「ああん?いいから置いてけって言ってんだよ、怪我したくないだろ?」

 

駄目なようだな……問題は相手の戦闘力だが……腕っぷしは強そうだが酒も入ってるみたいだし……食べ残しの皿に指をつけてからもう一度丁寧に断る。

 

「申し訳ありませんがお断りします」

 

「っめえ!痛い目見ないと――」

 

言葉と同時に胸倉をつかもうとしてきた男の手を回し受けの要領ではじく、この時腕をひねるように回転させることで反発力が増してはじきやすくなる。

そのまま流れるように指で目をはたく。往復びんたの複のような感じでスナップを利かせて五指でだ。どれかが掠りさえすれば――

 

「ぐっ!?目がっ!?」

 

指につけた食べ残しの塩分で目にダメージが入る。

ついで木匙を握りしめてこめかみを痛打する。

 

「あがっ!?」

 

そして苦痛で開いた口にフォークを差し込んで、こう告げる。

 

「ワレ、しばらく飯食えんようしちゃろうか?」

 

店の常連の広島のお客さんの真似であるがどう変換されてるのかは不明だが、酔いがさめたように無言でこくこくうなづいているところを見るといい感じの恫喝に変換されたようだ。

 

まったく、私は徹と違って道具がなければ弱いんだからこういうのはやめてほしいものだ。

幸いここは酒場で飲み屋でならした私にとってはホームの様なもので、酒場流喧嘩殺法が普通に使えたので大きなトラブルにはならなかったが。

 

――なお広島のお客さんは恫喝せずに口に割りばし突っ込んだ状態で殴るのでそれよりはましだと思う。

 

そして残心。周囲を睥睨する。仲間がいるかもしれないし、他にも絡んでくる奴がいるかもしれないからだ。

 

だが目をそらす奴とジョッキを軽く掲げてくる奴しかいない、なかなか気持ちのいい店のようだ(どうしてもガラの悪い客が混じるのは酒場ゆえしょうがない)

 

「二度とちょっかいをかけるなよ?」と言って開放する。金品の要求はしない。

無駄に恨みを買いたくはないしな。

 

「まったく……美人って言うのも大変なもんですね」

 

ハンカチで手をぬぐいつつ(油分ついたし本気で石鹸が必要になってきたな)潰れたマルクさんを抱える、いわゆるお姫様抱っこだがこのぐらいは勘弁してほしい。

 

予想よりも一回り重たかったのはマルクさんの名誉のために黙っておこうと思う、よくよく考えたら酒と食事で3キロぐらい入ってたもんな……

 

隣の宿に戻りおかみさんに事情を話すとまさかの合鍵を渡された。

いや、さすがにまずいのではと抗議したが「男の前で潰れるってのはそうなってもいいってことさ」と言われて混乱した。

私は経験がないのでわからないぞそんなこと……!

 

なお、おとなしくマルクさんだけ寝かせて帰ってきた

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。