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―――小鳥の囀りが聞こえて、目を覚ます。
熱い陽の光に肌を焼かれながら、重たい頭を上げて前を見る。
視界の半分が紅い。
半分は正常に現実を見ているのに、青い空を見ているのに、何故だか片方の視界だけが紅に染まっている。
真っ赤だ。とにかく、真っ赤に染め上げられている。
「―――ぁ」
声を出そうと喉が震え、小さな何かが零れ落ちる。
言葉が出ない。口は開いても、喉に何かが詰まった様に、引っ張り出すそれを遮っている。
ぽたっ…と、口の端を何かが伝って手の甲に落ちる。
目を動かして、手の甲へと視線を移すと―――其処にも、小さな赤が溢れていた。
―――遠くから、何かが近付いてくる。
赤い光を放つ白い何かが走っている。
それを見て、少年はようやく理解した。
あぁ―――自分は今、死の淵に立っているのだ……と。
「――――――ぁ、」
鮮明に思い出される記憶の大群が、少年の脳裏に強く殴られたかの様な衝撃を走らせる。
自分が何故こうなったのか。
誰にそうされたのか。
それらが次々と矢継ぎ早に起き上がり、頭の中を駆け抜けていく。
少年は跳ねられたのだ。青になった信号を渡っていた所を、暴走した軽自動車に勢いよく跳ねられて、吹き飛ばされたのだ。
文字通り宙を舞った少年の体は、日に照らされて熱された道路に落ちた。
肌が焼け、衝撃で幾つか骨が折れた体にさらなる熱と激痛が込み上げ、少年は気を失ってしまったのだ。
今は公園に生えた木の影に寝そべっている。おそらく、誰かが此処まで運んでくれたのだろう。
だが―――少年の肉体は、既に限界を迎えつつあった。
全身とまではいかないが、殆どの骨は折れている。腕や脚だけに限らず、肋骨も
それに畳み掛ける様に、猛暑による脱水症状と
もはや、死んでいないのが奇跡と断言出来る瀕死の重症だ。
死の要因が幾つも重なり合って、死神と化して少年の首元に鎌の刃先を当てている姿を幻視する。
だが、抗う
少年には、もうどうしようもない。どうにかする力が無い。
逃げ出そうにも、足は使い物にならない。
振り払おうにも、腕は使い物にならない。
助けを呼ぼうにも、血が詰まって声が出ない。
「――――――――――――」
目の前には、死が在る。
普段から視る事の叶わないモノが、其処に立っていた。
少年は今―――死と直面している。
パキッ―――と、頭の中で何かが割れた。
「ぁ、ぃ――――――――――――――――――」
酷い激痛が迸る。
まるで稲妻にでも打たれたかの様な錯覚に陥ってしまう程の、凄まじい激痛だ。
視界が揺らぐ。景色が崩れていく。
死との直面。人生でたった一度だけ遭遇する絶対のソレを、真正面から凝視した。
何かが割れた頭の中で、形容し難い渦を幻視する。
宇宙ですらない暗闇の中で、何もかもが織り交ぜられたかの様な、朝と夜の境界線の様な大きな渦が、小さな星を落とす。
まるで、
そんな星が、まるで雫の様に落ちていって――――――
少年に、死というものを理解させる。