ではスタートです。......今回は少し長いです
「それじゃあ行ってきます」
「ああ。俺たちは先にガラル鉱山の調査に行ってくる」
「はい。二人とも、ちゃんとフリードさんの言うことを聞いて慎重に行動するんだよ?」
「わかってるよ!」
「うん。お兄ちゃんも頑張ってね」
「ありがとう」
エンジンシティ上空。ノエルは目当ての炎蹴というトレーナーに会いに行くために一度ライジングボルテッカーズの面々と別れエンジンシティに一人降り立とうとしていた。またフリード、リコ、ロイの3人はツルギからもらったガラル鉱山周辺に古のモンスターボールを身につけたファイヤーが飛行しているという情報を頼りにガラル鉱山へと赴くことになった
「リザードン」
「グオ!」
「いってらっしゃい!」
こうしてノエルとリザードンはエンジンシティへと飛んでいくのだった
「何度見てもこの街は圧巻だな」
エンジンシティへと降り立ったノエルはエンジンシティの街の景色を見ながらゆっくりとそして軽い足取りである場所に向かっていた
「あのときジムチャレンジが終わっているって聞いた時は本当にショックだったよね、リザードン」
「グオ...」
「まぁそれは僕が勉強不足だったのがいけないんだけど」
数年前、ノエルはジムバッジを求めてこのガラル地方へと訪れていたがその時には既にジムチャレンジは行っておらずジムバトルをすることができなかった。そのため旅の目的を早々に失ってしまったノエルはワイルドエリアや鎧の孤島といった修行場にしばらく身を置くことになった。だがそのおかげでサルノリ、今のゴリランダーを仲間にすることができたのだ
「でも当時は知らなかったんだ。このガラルにあのダンデさんに引けを取らないトレーナーがいるってことに」
しばらく歩き続きノエルはある建物前で足を止める
「その人がいまこのエンジンスタジアムにいる」
エンジンスタジアム、このエンジンシティのポケモンジムでありここのジムリーダーこそノエルの目当ての炎蹴と呼ばれるトレーナーだ
「貴方は!」
「え」
しばらく足を止めていると一人の女性が近づいてきた
「貴方、もしかしてノエルさんですか!?」
「は、はい」
「それにリザードンも!あ、こほん。失礼しました、自分はジムトレーナー見習いのワカバっていいます!」
ワカバはその場で一礼をする
「その自分、ノエルさんのバトル見ました!歳もそんなに変わらないのにあのPWTでの激戦、自分感激しました!」
「あ、ありがとうございます」
「その握手いいですか!?」
「はい、僕なんかでよければ」
ワカバの勢いに若干押されながらノエルはワカバと握手をする
「ありがとうございます!そういえば今日は一体どのようなご用件で?」
「実はカブさんにお願いしたいことがあってここに来ました」
「お願いしたいこと...承知しました、ご案内するっす!」
ノエルはワカバの案内のもと、エンジンスタジアムの中に入っていく
「そういえばお願いしたいことって何なんすか?」
「簡単に言えばバトルのお願いです」
「バトルっすか?いいっすね!...でも今はジムチャレンジ期間外だしバッジはもらえないっすよ?」
「いや今回はバッジが目的ではないんです」
「?」
ノエルの発言にワカバは首を傾げる
「この先にカブさんがいます。自分はまだ残ってる業務があるのでここで」
「お忙しい中ありがとうございます。ワカバさん」
「はいっす!ノエルさんも頑張ってください」
そう言いワカバは去っていった。そしてノエルもバトルフィールドへと入っていく。するとそこには柔軟を行っているカブの姿があった。カブはノエルの姿を見ると柔軟をやめ彼に近づく
「空気の流れが変わったと思ったら...なるほどこれは珍しいお客さんだ」
「初めまして、カブさん。僕はノエル、こっちは相棒のリザードンです」
「グオ」
「これはご丁寧に。僕はここエンジンシティでジムリーダーをしているカブだ。よろしくね」
二人は握手をかわす
「それで今日はどうしたのかな?」
「実はカブさんにお願いがありまして」
「お願い?」
「僕とバトルをしていただけないでしょうか?」
「バトル?ああ、構わないよ。でも今はジムチャレンジの期間じゃないからバッジはもらえないけど大丈夫かい?」
「はい。それとこれはわがままになってしまうのですがこちらから戦うポケモンを指定してもいいでしょうか?」
「いいよ。どの子にする?キュウコン、ウインディ?それともマルヤクデ?」
「いえ。どの子も捨てがたいですが今回は」
ノエルは笑みを浮かべ、自身のメガリングを見せる
「貴方の最初の相棒、バシャーモでお願いします。炎蹴のカブさん」
「...!驚いたな。君のような若い子がその名前を知っているとはね」
カブはノエルに待つように伝え一度部屋に戻っていった。数分後カブはワカバを連れ、右手に炎のマークが刻まれたモンスターボールを持ち戻ってきた
「待たせたね。それと彼女を観戦させてもいいかな?」
「もちろんです」
「カブさんとノエルさんのバトルを間近で見られるなんて最高っす!」
ワカバは余程嬉しいのかその場で飛び跳ねる
「それとフィールドを練習用に変えさせてもらうよ。本番用のフィールドを破壊するわけにはいかないからね」
「え...破壊?」
「はい」
「な、なに言ってんすか?ダイマックスやキョダイマックスしたポケモンの技に耐えるフィールドっすよ?」
二人が言っていることを理解できていないワカバを横にカブは指を鳴らす。すると元のフィールドは地面に下がっていきその代わり岩のフィールドが新たに地上へと現れた
「これでよし。ワカバ君」
「は、はい!」
「このバトルをしっかり見るように」
そう言いカブはフィールドへと降り立つ
「それではワカバさん、また後で」
カブに続きノエルとリザードンもフィールドへと降り立つ
「ど、どうなっちゃうんすか?このバトル...!」
「ノエル君、バトルを始める前に一つ言っておきたいことがあるんだ」
「はい」
「今回、僕はジムリーダーとしてではなくただ一人のポケモントレーナーとして君と戦う。だからこう言ってはなんだけど」
カブは笑みを消しノエルをただまっすぐ見つめる
「火傷しても責任はとれない。僕たちは君たちが倒れるまで徹底的にやるよ。いいね?」
「はい...!」
ノエルはカブが纏っている空気の変化を感じ取ると背中に嫌な汗が流れたことを感じる
「さて」
カブはボールを前に出す
「久しぶりのバトル、それを彼らのような強者とできるんだ。君の喜びがボールを通して伝わってくるよ」
「来る!」
「グオ」
「わかるかい?今目の前にいるのは世界でもトップクラスの相手だ」
そして構えを取る
「楽しんでいこう、バシャーモ!」
「バシャアアアアアアアア!!!」
カブがボールを投げると中からバシャーモが炎を纏いながら勢いよく飛び出してきた
「あれが炎蹴...!」
「いいのかい?ボーっとしちゃって」
「すみません。あまりのカッコよさに見とれてしまいました」
「嬉しいことを言ってくれるね。ではこれをお礼に受け取ってくれ、”ブレイズキック”!」
「”フレアドライブ”で迎え撃て!」
フィールドの中心で二つの焔がぶつかり合う。二体を中心に凄まじい衝撃波が生まれその衝撃波は岩のフィールドのいたるところにクレーターを作っていく
「パワーは」
「こっちが上!そのまま押し切ってリザードン!」
「グオオオオオオ!」
「バシャ...!」
二体のぶつかり合いはリザードンに軍配が上がり、バシャーモを吹き飛ばす。だがバシャーモは態勢を立て直し無事に着地する
(やっぱりパワーではあっちに分があるね)
「続けて”ドラゴンクロー”!」
「”まもる”」
バシャーモはリザードンの爪を緑色の結界を張ることで防ぐ。するとバシャーモは一瞬赤く光る
「”かそく”」
「ご名答」
「連続で”ドラゴンクロー”!」
「全て受け流せ」
リザードンは連続で爪を振るうがバシャーモはそれを全て紙一重で躱す。しかもその間に”かそく”が発動しさらにスピードを上げていく
「当たらない...!」
「そこだ、”つばめがえし”!」
「...!”かえんほうしゃ”!」
「そのままいけ!」
「ッバシャ!」
「グオ!?」
バシャーモは炎を切り裂きながらリザードンにダメージを与える。だがバシャーモも無傷とはいかず所々に焦げた跡が残っていた
「もう一度”かえんほうしゃ”!」
「”まもる”」
「そのまま”ドラゴンクロー”!」
「”ブレイズキック”で払え!」
リザードンの爪をバシャーモは炎を纏わせた蹴りで払う。そのためリザードンはのけぞり胴ががら空きになってしまう
「一気に叩き込め!連続で”ブレイズキック”!」
「バッシャアア!」
「回転しながら上昇するんだ!」
リザードンは自身を高速回転させながら上昇することでバシャーモの攻撃を弾きながら距離を取ることに成功した。だがその間にもバシャーモの”かそく”は三度発動する
「”スカイアッパー”!」
「旋回してかわせ!」
バシャーモは連続で拳の形をしたエネルギーを飛ばすがリザードンはスタジアム内を飛び回りながらうまくかわしていくが”かそく”の発動によりバシャーモの攻撃速度がどんどん上がっていき拳のエネルギーが段々とリザードンにかすっていく
「リザードン、そこで”フレアドライブ”!」
「”まもる”」
リザードンは躱すことをやめ炎を纏いながらバシャーモに迫る。だがバシャーモは緑色の結界を張り身を守る。だがノエルはその様子を見て口角をあげる
「今だ、”ちきゅうなげ”!」
「グオオオオオ!」
「”フレアドライブ”を囮に使うとは...!」
ノエルの狙いはバシャーモに”まもる”を使わせることだった。”まもる”が防げる技は基本的にひとつのみ、そのためリザードンの大技である”フレアドライブ”に対し確実に攻撃を無力化できる”まもる”を選択すると考えた。そして結界に”フレアドライブ”をぶつけた瞬間に技を切り替え結界を破りバシャーモを捕らえ上空へと飛行する
「いけ!」
「グオオオオオオオ!」
そしてリザードンその場で一回転しそのままバシャーモを地面に投げつける。その瞬間あたりに土煙が登りワカバ、いやこのバトルを見ていた全てのスタッフが勝負がついたと思った。だが、その予想を大きく裏切られることになる
「バッシャアアア!」
「...やっぱりだめか」
土煙が上がった場所には複数のクレーターとピンピンしているバシャーモの姿があった
「いやぁ、危なかったよ」
「地面に激突する瞬間に下方向目掛けて”スカイアッパー”を放って勢いを殺しダメージを最小限に」
「そのとおり。よく視てるね」
地面に激突する瞬間バシャーモは地面に向かって連続で”スカイアッパー”を放ち勢いを殺した。そのおかげでダメージは最小限に抑えることができた
「バシャーモのスピードにも段々と慣れてきている。なら」
カブはポケットからキーストーンを取り出した
「ここらでひとつギアをあげようか」
「リザードン、ここからが本番だよ」
ノエルとリザードンは改めて気合を入れる
「紅蓮を纏い赤き血潮をたぎらせろ”メガシンカ”!」
「バシャアアアアアアア!」
カブが持つキーストーンが輝き始めるとバシャーモの体は光に包まれていく。そしてその数秒後バシャーモは真の姿を見せる。二本あった角は一本になり鶏冠は逆立ち、そして腕からは炎が噴き出していた。その炎はメガバシャーモとカブの闘気を象徴しているかの様に激しく燃え上がっていた
「メガシンカを使うなんて一体何十年ぶりだろう...」
「バシャアアアアア!」
「な、ちょっと待って!」
(速すぎる!とてもじゃないけど目で追えない...!)
バシャーモは雄叫びをあげ凄まじい速度でスタジアム中を駆けまわっていく。その様子を見たノエルは戦慄する、全く目で追えないのだ。ノエルは今まで様々なポケモンやトレーナーたちと戦ってきた、だが今まで相手を見失うということは絶対になかった。あのグリーンのプテラですら目で追えていたというのに目の前のバシャーモの速度はそれすら許さなかった。そしてバシャーモは上空に飛び上がりフィールドの中央に向かって思い切り蹴りを当てた。するとその場は大きく陥没しそれどころかフィールド、いやスタジアム全体に余波が伝わり窓ガラスは数枚割れ、観客席の壁にはいたるところにヒビが走っていた
「ああ~、やっちゃったか」
(あの速度を乗せた蹴りはやばい。いくら効果がひまひとつでも大ダメージは避けられない)
「シャアアアアアアアアア!」
「まったく。久しぶりに本気で戦えて嬉しいのわかるけどはしゃぎすぎ」
カブの言葉にバシャーモは頭を掻きながら頭を下げる
「後で直すのを手伝ってもらうよ」
「バシャ...」
「コホン。すまないねこんな所見せちゃって。彼、昔からエキサイトしすぎることがあるから」
「大丈夫です。かなり驚かされましたけど」
「それじゃあ再開しようか。そっちからでいいよ」
「では遠慮なく。リザードン、”かえんほうしゃ”!」
迫りくる炎にバシャーモは動こうとせずその場でじっと立っているだけだった。そして炎がバシャーモを貫こうとしたときバシャーモは霧となってその場から消えた
「消え..」
「バシャーモ、そのまま”ブレイズキック”。ノエル君に当てないようにね」
「は...」
その瞬間ノエルの背後から突風が吹き荒れた。その突風の正体は凄まじい速度で蹴りを放ったバシャーモだった。バシャーモはリザードンが技を打った瞬間にノエルの背後の壁まで移動していた。そしてその壁を足場にしリザードンに攻撃を食らわす
「バシャアアアア!」
「グオォオオ!?」
「リザードン!」
バシャーモの蹴りを食らったリザードンは壁まで吹き飛ばされるもすぐに立ち上がりバシャーモを見やる
「すごいな。バシャーモ渾身のキックを耐えるなんて」
「リザードン、”ドラゴンクロー”!」
「かわせ!」
「かわされてもいい!そのまま地面に打ちこめ!」
リザードンはエネルギーを纏った爪を地面に打ちつけ砂ぼこりをあげた
「土煙を利用してバシャーモの動きの軌跡を把握するつもりだね。いい考えだが、バシャーモ!」
「バシャ!」
「リザードン!」
バシャーモが足を振るうと土煙が一瞬にして消え去った。だがフィールドにはリザードンの姿がなかった
「ありがとう、僕の意図を汲んでくれて」
「そうか...リザードンは」
「”フレアドライブ”!」
「グオオオオオオ!」
リザードンは地面から炎を纏いながらバシャーモに襲い掛かる。リザードンは土煙を上げた瞬間、先ほどバシャーモがあけた穴を利用し地面にもぐり攻撃の機会をうかがっていたのだ
(あのバシャーモに真正面から攻撃を浴びせるのはほぼ不可能。だったらひたすら意表をつく!)
「”まもる”!」
「くっ...!」
「あぶないあぶない」
だがバシャーモはその攻撃をいとも簡単に防ぐ
「リザードン、上空へ飛ぶんだ!」
「なるほど...」
リザードンは攻撃をやめ上空へと移動した。そしてバシャーモも結界を解き地面へと着地した
「確かにそこまで高く飛ばれてしまうとたとえ”スカイアッパー”でも当てるのは難しいな」
(これで少しは時間ができた。今のうちに何か策を...)
「だったら近づくまで。バシャーモ!」
「シャアアア!」
バシャーモは地上からリザードンがいる上空まで一気に跳躍した
「........!」
「バシャーモはメガシンカすると30階建てのビルを跳び越すことができる跳躍力を手に入れる。けど僕のバシャーモはそんなもんじゃない」
「シャアアアアアアア!」
「あの”プリズムタワー”だって一回のジャンプで飛び越えられるよ。.......多分ね」
「”ドラゴンクロー”!」
「バシャーモ、”ドラゴンクロー”を足場にしてさらに跳躍するんだ」
バシャーモはリザードンの腕を足場にさらに上空へと跳躍する
「これで決めよう。”ブレイズキック”!」
「シャアアアアアアア!」
バシャーモは上空で回転しながらリザードン目掛けて蹴りを放つ
「リザードン、”フレアドライブ”!」
「グオオオオオオオ!」
リザードンも炎を纏いバシャーモに突撃していく
「シャアアアアアアア!」
「グオオオオオオオオ!」
フィールドで激しくぶつかり合う炎と炎。その威力はどちらも絶大で拮抗していた。だがその均衡も長くは続かなかった
「シャアアアアアアア.....アアアアアアア!」
「.....!」
「リザードン!」
リザードンはバシャーモの勢いに負け渾身の踵落としを頭に食らいフィールドに墜落してしまう。だがかろうじてリザードンは耐え、その場で立ち上がった
「バシャ...!」
「さすがに無傷とはいかなかったか」
一方着地したバシャーモの方にもダメージはあったみたいで蹴りを放った足が大きく腫れておりその場で膝をついてしまっていた。その様子を見てカブは今みたいな戦法はもうできないと悟る
「すごいね君のリザードンは。今の蹴りをまともに食らって耐えたのはそのリザードンが二人目だ」
「ありがとうございます」
「でも悪いね。そんな君たちにひとつ残念な知らせがある」
その言葉とともにバシャーモが立ち上がる。その瞬間、バシャーモの体が一瞬赤い光に包まれた
「まさか...!」
「ああ。バシャーモの素早さがいま、最大まで高まった」
「ウソだろ。あれでまだMAXスピードじゃないなんて...」
「さて、バシャーモ」
バシャーモは再びスタジアムを超スピードで縦横無尽に駆け回る。しかも足に負傷を負ったにもかかわらず先ほどのスピードと同等かそれ以上の速さを出していた
(次もしあんなスピードの攻撃を食らった間違いなくリザードンは倒れてしまう。よく視ろ!全神経をバシャーモの動きに集中させろ!)
『勘だ!』
「え...」
「え?」
「だ~か~ら!勘だって言ってるだろ?」
これは数年前、まだノエルがイッシュ地方にいたときの記憶。ノエルは父ジェイドにポケモンバトルのコツを聞いていた
「んなアバウトな」
「いいや。案外”勘”ってのは侮れない」
「というと?」
「お前が持っているそのモンスターボールやヒウンシティのあるビルたちといったこの世の全ての発明は全て人々の”勘”から始まっているんだ」
「........」
「これをこうすればこういった成果が得られる、役だつといった”勘”がこの世を発展させていったんだ」
「まぁ、そう言われればそうかも?」
「だからもし迷ったら自分の勘を頼ってみろ。もしかしたら光明が差し込むかもしれないからな」
その時のノエルはジェイドの言葉をあまり鵜吞みにしなかった。だがカブと戦っているいまこの時突然頭の片隅からこの記憶がよみがえってきたのだ
「よし...!」
ノエルは笑みを浮かべリザードンを見つめる
「リザードン、四方八方に自由に”かえんほうしゃ”!打ちまくれ!」
「グオ...グオオオオオオオ!」
「これは中々大胆な戦法だね。でもそれは少しヤケになりすぎじゃないかい?」
リザードンは四方八方に熱線をとにかく打ちまくった。だが案の定攻撃はバシャーモにはかすりもしなかった。だがそこでノエルはバシャーモのある変化に気づく
「スピードが落ちている?」
先ほど目で追えなかったバシャーモの動きが目で捉えられるようになっていたのだ
「バシャーモ、”つばめがえし”!」
「かわせ!」
「...!」
リザードンは攻撃を紙一重でかわす。だがバシャーモはすぐにまた超スピードで動き始めるのだった
「目で見えない...だったらいっそのこと」
「目を閉じた?」
ノエルは目を閉じフィールドに耳を澄ませる
「...........」
「”ブレイズキック”!」
「シャアアア!」
「リザードン、2秒後右によけて」
リザードンはノエルの言う通りに行動した。そのおかげで今回は紙一重ではなく余裕を持って攻撃をかわすことができた
「もう一回四方八方に”かえんほうしゃ”!」
「グオオオオオ!」
「バシャ....」
「...........」
そしてノエルはもう一度耳を澄ませる。そこであることを確信する
「そうか...そういうことだったのか!僕はとても狭い視野で戦っていたんだ!」
「まずいな。流れが変わった...!」
「リザードン、一気に決めにいこう!」
「グオ!」
「頂への道を拓け、メガシンカ!」
「グオオオオオオオオ!」
リザードンはノエルのキーストーンと共鳴し光に包まれる。そしてその光が収まるとリザードンはメガリザードンXへと姿を変えた
(流れが完全にノエル君の方に行く前に決定打を与えなければ負ける!)
「バシャーモ、”ブレイズキック”!」
「右斜め前来るよ!かわして”ドラゴンクロー”!」
「グオオオオオ!」
「バシャ!?」
リザードンは攻撃をかわしカウンターとして”ドラゴンクロー”をバシャーモに真正面から食らわせることに成功した。一方バシャーモは大ダメージを受けた影響かその場で膝をつく
「畳みかけろ!”かえんほうしゃ”!」
「...!かわせ!」
「追いかけて、”ドラゴンクロー”!」
バシャーモは移動するがそのスピードは先ほどの三分の一ほどにまで下がってしまっていた。そのためリザードンは容易に追いつき攻撃を食らわせることに成功する
「くっ...!」
「バシャーモはもうさっきみたいなスピードはだせない」
「なに?」
「僕はついさっきまでバシャーモ最大の長所はスピードだと思っていました。けど実はそうじゃない」
ノエルはさっきの”かえんほうしゃ”そして音を聞いて確信した
「バシャーモ最大の長所は”超スピードを維持できる体力”!」
「ほう...」
「そしてその驚異的な体力にはバシャーモの呼吸と動きのリズムが関係している。そうですよね?」
「...正解だよ。まさかこのタネが見破られる日が来るなんて思いもしなかった」
カブはノエルに拍手を送る
「昔、ジョウト地方の”ポケスロン”チャンピオンの方のインタビュー記事を読んだことがあります。その方曰く呼吸や体の動作を一定のリズムで保つことで疲労を軽減しベストコンディションを長く維持することができるみたいです。そしてバシャーモはその技法を取り入れて戦っている。だからあの適当に打った”かえんほうしゃ”にリズムを崩され体力を大きく削ってしまった」
ノエルのリザードンの攻撃は長年の経験によりどんな位置でも正確に打てるようになった。だが今回の場合それが足を引っ張った。正確に打てるつまりそれはどこに攻撃をするのかが相手にとってものすごくわかりやすいということだ。だからバシャーモは攻撃をいとも簡単に自身のリズムを崩さずに躱すことができた。だがさきほどの”かえんほうしゃ”の軌道は適当だったためリズムを大幅に崩されてしまった。そのためバシャーモは大きく体力を削られいまに至る
「本当にすごいね。この短期間でそこまで見抜くなんて」
「父との何気ない思い出のおかげです」
(いやあ、本当にすごいな。普通耳を澄ましてもバシャーモの動きのリズムなんて聞こえないし感じ取れない。すさまじい集中力と聴力だ。まるでポケモントレーナーになるために生まれてきた子だな)
「これで決める!全力で”フレアドライブ”!」
蒼い炎を纏いリザードンはバシャーモに最後の攻撃を仕掛ける
「ノエル君、ひとつ肝心なことを忘れていないかい?その技は僕が一番警戒している技だってことを!バシャーモ、”まもる”!」
「バシャアアアアアアア!」
(よし。これで”フレアドライブ”は確実に防げ...いや、しまった!)
皆さんは覚えているだろうか?”まもる”という技の効果を。”まもる”...それはどんな技でもひとつだけ絶対に防ぐことができる...そうひとつだけだ。カブは目の前の光景を見て自分の判断の甘さを悔いた。なんと目の前のリザードンは炎を纏いながらある技の準備をしていた。そうそれは
「”ドラゴンクロー”!」
「グオオオオオオ!」
「バシャアア...!」
技がぶつかった数秒後、互いのエネルギーは同時に霧散する
「いけええええええ!リザードン!」
「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「バシャ...アアアアア.....アアアアアアアアアアア!!!!!!」
リザードンはバシャーモを壁まで吹き飛ばす
「バ........シャ......」
壁に激突したバシャーモはゆっくりな足取りでリザードンに近づき拳をリザードンの腹に軽く当て笑みを浮かべながらその場で倒れる
「........ここまでだね。おつかれさま、バシャーモ」
そう言いカブはバシャーモをボールに戻すとノエルたちに近づく
「完敗だよ、ノエル君、リザードン君」
「ありがとうございました!カブさんとのバトル、色々なものを得られて楽しくて有意義なものでした」
「僕もそう思うよ」
ノエルとカブはその場で握手をかわす。すると観客席から拍手が送られる
「ふふふふふふふ、二人とも本当にすごかったっス!なんかこう....とにかく本当にすごかったっス!」
二人のバトルに圧倒されたのかワカバは語彙力を失ってしまっていた
「ワカバさんもありがとうございます」
「さてバトルも終わったことだしどうだろう、ポケモン君たちをここで回復させたあと休憩がてらにカフェでスイーツを堪能していかないかい?勝利のバッジの代わりにケーキやプリンとかおごるよ」
「ありがとうございます!ではお言葉に甘えさせていただきます」
「そう来なくちゃ。じゃあまずはポケモン君たちの回復だね」
「はい!」
二人は笑いながらフィールドから出ていき部屋に入っていく
「ところでカブさん、スタジアムこんなボロボロになったちゃったけどダイジョブすかね?」
ワカバはボロボロになったスタジアムを見て一抹の不安を覚えるのだった
読んでくださりありがとうございました!
この話で一番時間がかかったのはカブのメガシンカの口上です。ついでにカブのバシャーモの裏話になるのですが、このバシャーモ普通に本作品のなかでも上位に入るぐらい強いという設定にしてあります。所謂、某竜魔人さんみたいな「序盤ででてきちゃいけないキャラ」ポジションです