遊戯王で落石?
あっ……
「貴様は我自ら闇に堕としてやろう」
ふと気が付いたら見覚えのない土地に立っていた。
草木がなく命を感じない荒野。目の前の男はここを【六世壊】と呼んでいた。
……あ、この人とても顔が良い。
「あのー、貴方は一体…」
「我が名はライズハート。闇の力、憤怒を司る者だ」
憤怒。ようは激おこ……
なるほど赤のテーマカラーは憤怒を想起させるのに十分だ。
「と、ところでわたくしめを此処に連れ込んで何を…?」
「貴様を闇に堕とす」
「憤怒に?」
「ああ、そうとも。闇のカードは適した者へと惹かれ合う。貴様こそ憤怒に堕ちるべき人間だ」
なるほど。私を憤怒に堕とすと……なんで憤怒?
自分で言うのも何だけど、七つの大罪的には色欲とか強欲とかの方が似合ってない?
「あのー……別に私、怒ってたりしないんですけど」
「ククッ、手段はある」
ライズハートは腕の禍々しいデュエルディスクを構える。あ、やっぱ無理矢理とかそういう!?
「ようやく見つけた宿主、逃しはしない!」
「やっぱそういう展開なんですか!? あーもう!」
変な異空間に連れ込まれた時点でもはや逃げ場はない。デュエルに応じるしかないだろう。
正直、あまりこういった手段にデュエルを使うのは好きじゃない。
ただ、私は凹凸のない貧相ボディだが女の子である。このまま異性の言いなりになるのは【Are you ready?】が【うん!】で【GO!!】が【イヤッッホォォォオオォオウ!!】になりかねない。自衛のためにもここはやるしかない。
私はデュエルディスクを構えて対峙した。
「「デュエル!!」」
先攻 ライズハート LP4000
後攻
「我のターン。場にモンスターが存在しないため【クシャトリラ・ユニコーン】を特殊召喚」
【クシャトリラ・ユニコーン】
星7/風属性/サイキック族/攻2500/守2100
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
デッキから「クシャトリラ」魔法カード1枚を手札に加える。
(3):このカードの攻撃宣言時、または相手がモンスターの効果を発動した場合に発動できる。
相手のEXデッキを確認し、その内のモンスター1体を選んで裏側表示で除外する。
「レベル7をこうもあっさり……」
「ククク、この程度で驚いてはもたんぞ」
「条件のゆるいレベル7とサポートカード羨ましい、そういうのあれば私のデッキも……」
「……ん?」
別の含みがあるつぶやきをしてしまったが、鎧の男は気にせずデュエルを続行する。
「クシャトリラ・ユニコーンの効果を発動。デッキからクシャトリラ魔法カードを手札に加える。【六世壊他化自在天】を手札に加えて発動!」
【六世壊他化自在天】
通常魔法
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「クシャトリラ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターとは属性が異なる「クシャトリラ」モンスター1体をデッキから守備表示で特殊召喚する。
このカードの発動後、ターン終了時まで自分はXモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
(2):このカードが除外された場合、
「六世壊他化自在天」以外の除外されている自分の「クシャトリラ」カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
「場のクシャトリラモンスターとは属性が異なるクシャトリラモンスターをデッキから守備表示で特殊召喚する。現れよ【クシャトリラ・フェンリル】!!」
【クシャトリラ・フェンリル】
星7/地属性/サイキック族/攻2400/守2400
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
デッキから「クシャトリラ」モンスター1体を手札に加える。
(3):このカードの攻撃宣言時、または相手がモンスターの効果を発動した場合、
相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを裏側表示で除外する。
「フェンリルの効果を発動! デッキからクシャトリラモンスターを手札に加える。俺自身のカード【クシャトリラ・ライズハート】を手札に加える」
「!?」
手札に加えられたのは、目の前の男そっくりのカードであった。名前も同じだし「俺自身」とも言っていたので、間違いないだろう。
カードの精霊。カードにはモチーフとなった存在自身の精霊がつくことがあるという。噂には聞いたことがあるが、その存在のことが頭に浮かんだ。
「クハハハ! ユニコーンとフェンリルでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
侵略せよ 己が憤怒はここにあり
侵食せよ 己が楽園はここにあり
浸透せよ 己が世壊はここにあり
「ランク7! 【クシャトリラ・シャングリラ】!!」
【クシャトリラ・シャングリラ】
エクシーズ
ランク7/炎属性/サイキック族/攻 0/守3000
レベル7モンスター×2体以上
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分・相手のスタンバイフェイズに発動できる。
デッキから「クシャトリラ」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):相手のカードが裏側表示で除外される度に、
使用していないメインモンスターゾーンまたは魔法&罠ゾーンを1ヵ所指定して発動できる。
指定したゾーンはこのモンスターが表側表示で存在する間は使用できない。
(3):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりにこのカードのX素材を1つ取り除く事ができる。
「ククク、まだゆくぞ。場にクシャトリラモンスターが存在するため、手札から我を特殊召喚する! 【クシャトリラ・ライズハート】!」
【クシャトリラ・ライズハート】
星4/炎属性/戦士族/攻1500/守2100
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに「クシャトリラ」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
このターン、自分はXモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに、
デッキから「クシャトリラ・ライズハート」以外の「クシャトリラ」カード1枚を除外して発動できる。
相手のデッキの上からカード3枚を裏側表示で除外し、このカードのレベルは7になる。
「我の効果を発動! デッキから【六世壊根清浄】を除外して、貴様のデッキから3枚裏側で除外、自身のレベルを7にする。除外された【六世壊根清浄】の効果により、クシャトリラ・シャングリラのオーバーレイユニットとなっている【クシャトリラ・フェンリル】を手札に戻して特殊召喚できる!」
クシャトリラ・ライズハート ☆4 → ☆7
「クシャトリラ・シャングリラの効果発動! 貴様のカードが裏側表示で除外されるたび、貴様の場を1か所ずつ使用不可にする」
「うぇっ!?」
こちらのモンスターゾーンが一ヶ所赤黒く変質した。あれを放っておいたらこちらの身動きが取れなくなるということか。
「そしてクシャトリラ・シャングリラが効果を発動したターン、我は新たなる姿へと進化する!」
「……!?」
「我1体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」
刮目せよ
我こそ憤怒の化身 愚かなる下界に鉄槌を下せ
「ランク7 【クシャトリラ・アライズハート】!!」
【クシャトリラ・アライズハート】
エクシーズ
ランク7/闇属性/機械族/攻3000/守3000
レベル7モンスター×3
「クシャトリラ・アライズハート」は、「クシャトリラ・シャングリラ」が効果を発動したターンに1度、
自分の「クシャトリラ」モンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。
(1):墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される。
(2):カードが除外される度に発動する(同一チェーン上では1度まで)。
除外されているカード1枚を選んでこのカードのX素材とする。
(3):お互いのターンに1度、このカードのX素材を3つ取り除き、
フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを裏側表示で除外する。
「まだだ! 手札の【スケアクロー・クシャトリラ】の効果を発動! このカードを特殊召喚する」
【スケアクロー・クシャトリラ】
星7/地属性/サイキック族/攻 0/守2600
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分・相手のメインフェイズに発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、自分の手札・墓地から
「クシャトリラ」カードまたは「スケアクロー」カード1枚を選んで除外する。
(2):このカードは表側守備表示のままで攻撃できる。
その場合、このカードは守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。
(3):自分の「クシャトリラ」モンスターまたは「スケアクロー」モンスターが、
相手モンスターと戦闘を行う場合、ターン終了時までその相手モンスターの効果は無効化される。
「その後、墓地の【六世壊他化自在天】を除外する。除外された【六世壊他化自在天】の効果を発動! 除外されている【六世壊根清浄】を手札に加える」
「むう」
「カードを一枚セット。これでターンを……」
「あっ! メインフェイズ待ってください!」
危ない、エンドフェイズに入るところだった。まだ相手メインフェイズにやることがあるのだ。
「
「は?」
クシャトリラ・ユニコーン(1回目)
クシャトリラ・フェンリル(2回目)
クシャトリラ・シャングリラ(3回目)
クシャトリラ・ライズハート(4回目)
クシャトリラ・フェンリル(5回目)
クシャトリラ・アライズハート(6回目)
スケアクロー・クシャトリラ(7回目)
「よし。5回以上の召喚・特殊召喚されています。間違いないですね?」
「あ、ああ……」
「手札から、このカードを発動します!」
不安だったがちゃんと条件を満たした。手札のとある1枚のカードを発動した。
「それではお空をご覧ください!」
「原始生命態ニビル」
【原始生命態ニビル】
星11/光属性/岩石族/攻3000/守 600
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手が5体以上のモンスターを召喚・特殊召喚した自分・相手ターンのメインフェイズに発動できる。
自分・相手フィールドの表側表示モンスターを可能な限りリリースし、このカードを手札から特殊召喚する。
その後、相手フィールドに「原始生命態トークン」(岩石族・光・星11・攻/守?)1体を特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この効果でリリースしたモンスターの元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。
(BGM:またイ◯ローか)
空に浮かぶ真っ赤な凶星、荒武者たちの核たるクシャトリラ・シャングリラ。その凶星よりもさらに巨大な隕石が空から迫ってきていた。
「ま、待て! まさかアレを落とす気か!?」
「そのとおり!」
「正気か貴様ァ!?」
巨大な隕石が大気圏を突入する。岩石の表面が熱により真っ赤に燃え上がる。それは奇しくも進路上に図々しく佇むクシャトリラ・シャングリラよりも赤黒く凶悪で、今にも
「やめろ! そんなことをしてはならない!」
隕石が直撃する寸前、ライズハートが一番の動揺を見せる。あの円錐型の侵略装置、よほど重要なものなのであろう。心が痛むが手加減は無用である。
「アレは我々の野望のために必要なものだ! 我々の悲願そのものなのだ! 貴様らが気安く触れて良いものでは……」
グシャリ
「ヤメロォォォォ!!」
闇を抱えた優男だったはずの顔がすごい形相に歪む。空に浮かんでいたシャングリラはまるでゾウに踏み潰されたまな板の如くバラバラに砕け散った。
一瞬の出来事だった。一切止まる様子のない隕石は再び地上を目指す。地上にいたのはクシャトリラ・アライズハート、フェンリル、スケアクローの3体である。どこか諦めの様相で空を見上げていた。
「やめろ、やめてくれ! アライズハートは我の化身! 強力な代わりにダメージが我にもフィードバックを」
グシャリ
「グワァァァァァァ!?!?!?」
ニビルは容赦なく地上の虫ケラどもをすり潰した。同時に対面していたライズハートのひどい形相がさらに歪み、絶叫してのたうたまわる。流石に良心が痛んだ私は慌てて声をかけた。
「そんなカードを使う方が悪いし!」
つい慰めよりも言い訳をしてしまった。相手の男はライフが減っていないにもかかわらずズタボロであった。
「え、えっと……フィールドのモンスターを全てリリース。原始生命態ニビルを私の場に特殊召喚し、リリースしたモンスターのステータス合計と同じ能力を持つトークンがあなたの場に生成されます」
原始生命態トークン 岩石族/光/星11
攻?→5400
守?→11000
凄まじいステータスのトークンが相手の場に特殊召喚されるが、初期手札分のリソースがあれば破壊する手段はとれるだろう。
「グ……ターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
手札:
光竜星リフン
龍相剣現
コズミック・サイクロン
ブラック・ホール
ドロー:アンクリボー
早くもデュエルは佳境に入ってゆく。