推しへの愛がアクセルシンクロ   作:いちごの入った大福

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評価項目が初期設定のままで「一言コメントが必要」になってました。0と10以外は不要に変更しました。プレミだぜ。

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嫉妬

 

 

 

ある日の昼休みの教室。

 

私と京子は対面に座ってカードを広げていた。

 

 

「【ドドレミコード・キューティア】を召喚して効果で【レドレミコード・ドリーミア】を手札に加える。【ミドレミコード・エリーティア】をPゾーンにセットして、ドリーミアを自身の効果で特殊召喚するわ」

 

 

京子が使うカラフルなカード達。ドレミコードはペンデュラムを主体としたテーマであり、京子はそれの使い手である。

 

私達がやっているのはデュエルディスクを使用しないただのテーブルデュエル。少し回したい時とかに適したお手軽なデュエル方法だ。

 

そして京子と私は何度もこうしてデュエルしているので、互いの手の内は分かりきっている。

 

 

「罠カード【相剣暗転】を発動。私の場の【光竜星リフン】と【ドドレミコード・キューティア】【レドレミコード・ドリーミア】を対象にして破壊」

「うわっ!?」

 

 

ペンデュラムモンスターを2体並べてリンク2に繋げるのはペンデュラムデッキにとって鉄板の動き。それを止めるために2体とも破壊する手立てを整えていた。

 

 

「リンク2を出すつもりだったでしょ。そうは問屋が下さないよ」

「やってくれるじゃない。カードを1枚セットしてターンエンド」

「私のターン、ドロー。【相剣軍師-龍淵】の効果で手札の【タツノオトシオヤ】を捨てて特殊召喚、更に相剣トークンを生成する」

「来るわね……!」

「良い?」

「うん? 良いけど……」

 

 

念のため発動確認。

 

 

「龍淵とトークンでシンクロ召喚。【相剣大邪-七星龍淵】」

 

 

【相剣大邪-七星龍淵】

シンクロ

星10/炎属性/幻竜族/攻2900/守2300

チューナー+チューナー以外の幻竜族モンスター1体以上

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドに存在し、

自分が他の幻竜族SモンスターのS召喚に成功した場合に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

(2):相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動できる。

その内の1体を選んで除外し、相手に1200ダメージを与える。

(3):相手が魔法・罠カードの効果を発動した時に発動できる。

そのカードを除外し、相手に1200ダメージを与える。

 

 

このカードは私のデッキのエースモンスター。ステータスが高いのもそうだが、妨害ついでに与えるバーンがめちゃくちゃ痛いのが特徴的だ。

 

 

「龍淵がS素材になったので1200ダメージ」

「やっぱ痛すぎるわよそのバーン!」LP4000→2800

「それもだけど、ほんとにリバースカード発動しなくてよかったの? たぶん【ドレミコード・ムジカ】だよね」

「え? ……あっ」

 

 

やっちまったという顔をする京子。【ドレミコード・ムジカ】を使えばEXデッキから【ドドレミコード・キューティア】を特殊召喚できるが、七星龍淵は特殊召喚されたモンスターを除外する効果がある。つまり……

 

 

「ど、【ドレミコード・ムジカ】でキューティアを特殊召喚するわ」

「七星龍淵の効果で除外するね。ダイレクトアタックで終わり」

「あーやっぱり! 詰んだ!」

 

 

七星龍淵のシンクロ召喚前に使っていればこのターンは凌げていただろう。私のエースが七星龍淵であることは京子もよく知っているので、単に失念していたのだろう。

 

 

「よっし次はオレとやろうぜ!」

 

 

そのデュエルを横から見物していた武東君が身を乗り出してくる。

 

 

「いいけど、今日はもう昼休み終わっちゃうよ」

「ゲッ」

 

 

もうデュエルできる時間がないと察してしおしおとしぼむ武東君。

 

 

私、京子、武東君の3人は同じクラスでよく一緒に遊ぶ仲である。

京子と武東君が幼馴染で、私と京子が中学校で仲良くなり、よく一緒にいる武東君とも知り合ってよく遊ぶようになった。

武東君は生粋のデュエル馬鹿だが、同時にコミュ強でもある。あの王司君にすら怖気つかずに話しかけることができる程だ。私とも特に問題なく仲良くなった。

 

ただ、最近放課後は2人ともよく姿を消す。一体ナニをしているのやら……

 

 

「じゃあさ、放課後カードショップに行こうぜ! 今日は月刊大会があるんだ!」

「あー、そんな時期だっけ」

 

 

月刊大会とは近所のカードショップか学生向けに開く月1回の大会だ。

学生限定なだけあって賞金とかはないが、優勝者には特別なカードパックが進呈される。中には掘り出し物もあるため、近所の子達がこぞって参戦する。

 

私は今のところデッキの強化を考えていないが、デュエル目的で記念参加もいいだろう。

 

 

「いいよ、いこっか」

「よし! そうと決まればデッキの調整を……」

「チャイム鳴ったよ」

 

 

武東君はしおしおとしぼんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

我らファンクラブの活動は放課後、比較的フリーとなる。

 

こういったファンクラブは放課後の部活動とかも追っかけそうだと思われがちだが、王司君は家が大企業で忙しいのもあり、特定の部活に所属していない。助っ人として参加する事はあるが、練習にまで大勢押しかけると迷惑になってしまう。

 

よって放課後のファンクラブ活動はもっぱらミーティングで終わる。王司君の参加予定の行事について共有し、そこに押しかけても迷惑にならないか協議し、大丈夫そうなら有志を募って「王司君応援団」を結成して参上する。そういった感じだ。

 

よって私も月刊大会に参加するため下駄箱で靴を履き替えていた。それを見たのは偶然だった。

 

 

「……あれ?」

 

 

遠目に見えたのは王司君、そしてよく知らない男子生徒だった。

確か別のクラスの同級生だ。王司君の交友関係は把握しているが、彼と会話する姿は見たことがない。

 

 

『なんで把握してるんだ……(ドン引き)』

 

 

やかましいぞライズハート。

コホン。それに王司君はともかく、相手の張り詰めた様子は告白云々とかそういうのでもなさそうな不穏なものだ。気になった私は、急いでこっそりつけてみることにした。

 

 

二人が来たのは裏庭。その中でいくらか会話した後、見知らぬ男子生徒が顔を真っ赤にして怒鳴り、デュエルディスクを構えた。王司君もまたため息をひとつついてデュエルディスクを構える。

 

 

「アイツは! お前なんかのファンクラブに入って!」

 

 

あー……

聞こえた怒鳴り声によって状況を察した。

 

恐らくだが、あの男子生徒は懇意にしている女子生徒がいたのだろう。その子との関係性は定かではないが、王司君ファンクラブに入会したのを裏切りと捉えたのだろう。

 

残念だが、よくあることだ。多くの女子生徒がファンクラブに所属してしまい、失恋しただの振られただので嫉妬を集めてしまう。

ファンクラブがなければ一線を越えようとする生徒が続出するくらいには注目を集めてしまう人だ。

 

 

デュエルの結果は散々だった。王司君による蹂躙と言ってもいいくらい、男子生徒はボコボコに敗北した。乗り込んでくる気概は買うが、実力差がありすぎた。

 

 

「僕はファンクラブの子と特別な関係になったことはない。あとは君次第だろう」

 

「クソッ……クソォ!!」

 

 

王司君は一言声をかけるも、相手に聞く気がない事を悟って去っていった。残された男子生徒は項垂れたまま悪態を吐き続けていた。

 

 

「ここで手を差し伸べてもプライドを傷つけるだけだろうな」

 

 

気にはなるが、私が出ていっても逆効果だろう。

女心は複雑だが、男心も複雑なのだろう。

 

 

 

 

 

 

「チクショウ……!」

 

 

件の男子生徒、詰下は項垂れたまま下校していた。

 

詰下には好きな女子がいた。小学校から同じで、何度かクラスメイトになったこともある。

同年代の中では比較的小柄。赤い髪を一纏めにしておさげにしている。口数がそこまで多くはないものの暗くはなく、友達との輪の中で静かにクスクスと笑っているような子だった。

 

ずっと好きだった。声をかけて仲良くなる勇気がなかったから、外側からずっと見続けていた。

 

変化があったのは中学校に入ってからだ。彼女はあの天馬 王司とやらのファンクラブに参加して、イケメンを追っかけるような子になってしまった。

詰下から見るに、前までの奥ゆかしさを感じない下劣な姿に見えた。ようは関係のない相手に勝手に失望したのである。逆恨みの類だ。

 

それでも長年の初恋を捨てられず、やぶれかぶれに王司へと挑んだ。結果、目も当てられないほどに惨敗した。

 

 

「クソッ……クソクソクソッ!!」

 

 

今、詰下は劣等感に苛まれていた。

 

ビジュアルでも勉学でも運動でも、家柄も性格もデュエリストとしても何もかも敗北し、好きな女を奪われた。

 

全てにおいて王司に勝てる点がなかった。それが例え逆恨みであっても、沸々と煮える感情は抑えられなかった。

 

 

「俺に力が……力があれば!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力が欲しいのか?」

 

「え……?」

 

 

詰下の視線の先

 

暗い路地の奥で、シルクハットの男は妖しくニタリと嗤った。

 

 

 

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