NO AU infinity fight 《Novel》 作:∞infinity∞
俺は酷く
「えぇ…?」
誰が予想しただろうか。
「どーすんだこれ…」
戦闘する為にここを訪れたというのに、
「前代未聞じゃねぇか…」
─────────その “戦闘相手” が何処にも居ないなんて。
─────────数分前。
俺は “ゲーム” として遊ぶことができるAUを探していた。
今までに大抵のAUを遊び、その内の8割程度はクリアした。数は少ないが
勿論、クリア出来ないように設定されているものや理不尽な攻撃設定がついているものに関してはちょっと覗くだけで遊んではいない。どう足掻いても遊ぶ楽しさを感じる前にこっち側が倒されるからだ。
「なんか増えてっかな〜」
ゲーム版のAUは日々投稿されている。クリア出来なかったゲームをクリア出来るまで遊ぶのも楽しいのだが、やはり俺としては人知れず誕生した超マイナーのゲームを発見して遊ぶのが最高に楽しい。
そして今日も、俺は新しいゲームAUに繋がる扉を探してウロウロしていた。
「これは1週間ぐらい前に遊んだしなぁ……おっ!これ…は前遊んだやつだ…」
しかし新しいゲームを探すと言ってもそんな簡単に見つかるものではない。
折角見つけたと思っても、それはかなり前に遊んだゲームだったということもしばしばある。ちなみにここ3日ほどは新しいゲームを見つけられていない。
今日こそは…!!!と意気込んで必死で探していたところに、
「─────あ。」
ポツンと立つ黄緑色の扉を見つけた。
初めて見る扉だ、と俺はわくわくしながらその扉の方に向かう。
ピカピカで眩しい黄緑の扉。そこに書かれている名前は……
「……『NO AU infinity fight』…… “fight” !?」
経験上、名前にfightがあれば、ゲームAUである可能性は非常に高いと考えている。
そうつまりこれは、
「うおおお!!!3日ぶりに見つけたぞぉっ!!!」
俺が探し求めていた “新しいゲームAU” である。
1人で叫びその辺をぐるぐると駆け回る。側から見たらかなりの変人だと思われそうだが、俺は気にしない。
満足したところで俺は金色のドアノブに手をかけ、これから起きる未知の戦闘に心を躍らせていた。
「こんにちはぁぁぁぁ!!!!!」
めちゃくちゃ大声を出しながらその扉を勢い良く開けた。
さぁ、相手は一体誰─────────
「……………え?」
─────して、今に至るというわけだ。
演出だろうと思ってその場でちょっと待ってみたのだが、一向に相手が出てくる様子はない。
かと言って
つまりオーバーワールド上で相手と会話するイベントは無いということであり、いきなり戦闘から始まるスタイルなのだ。
「来ねぇ……」
遊んだAUの中には、姿を見せず会話だけが起こり、後に姿を現して戦闘するという描写もあった。その時は相手は目の前にいて真っ暗で見えないだけだったのだが、今回は違う。
マジでいない。
この空間に俺1人だけという何とも奇妙なことが起きている。
「???」
一応俺の目の前には
コマンドに関してはこちらもまた明るすぎる黄緑色でできており、ドット絵ながらもちゃんと読める文字になっていて完成度が高い。
試しに「fight」コマンドに触れてみたが、何も起こらず。
他の「act」・「item」・「mercy」にも触れたが、結果は変わらず何も起きない。じゃあダイアログボックスかと思えばこれもまた違う。
「詰んだ………」
なす術なし、と気づき俺はその場でうずくまった。
折角見つけられたのになぁ……
「………」
無音が続く俺1人の真っ黒い空間。それは今の俺の絶望感を表しているようだった。
「………帰るか…」
と立ち上がったその時─────
「うわぁごめん!!!まさか人来るなんて思ってなくて外食してた!!!!!」
─────────大きな音を立てて後ろの扉を開けた “戦闘相手” は、俺に向かって大声でそう叫んだ。
「すっっっっっごいごめん!!!めちゃくちゃ申し訳ない!!!」
────で、俺は今めちゃくちゃ “戦闘相手” に謝られている最中である。
戦闘相手が
一般的には
しかしこれは真逆で、相手が俺に何かしたような口ぶりで必死に謝ってくる。本当に謎。
「いやホントにごめん……公開されてまだ時間経ってないしとりあえず飯食いに行くかーって感じで他のAUに外食しに行ってた………」
……この弁明もかなり謎だが。
しかし演出関係なく普通に俺が来ていることに気づいていなかったらしい。通常ならば少々の会話の後戦闘が始まるという。
「まぁあの………全然怒ってないんで……もう謝らなくても…」
「本当!?君優しいね神だね!!!」
おぉ神よ神よ、と俺を讃えるようにガシッと両手で俺の手を握りぶんぶんと振る。
この人のテンションがよく分からないが、まぁ今の言葉のおかげでマシンガンソーリーは止んだ。
「………ちなみに何食べてきたんですか?」
「3人前ぐらいのステーキ!!!!!美味かった!!!」
めちゃくちゃ食ってんじゃねぇか………
「────さて」
少々の雑談が終わったところで相手は口を開き始める。
先ほどとは違う雰囲気に変わり、いよいよ戦闘が始まるのだと察する。
「ようこそPlayerくん。僕はinfinityだよ」
満面の笑みで俺の右手を掴み握手をする彼女─────
手を離した後infinityはダイアログボックスの後ろに立ち、トッ、と静かに地面を蹴ってダイアログボックスの白枠の上に乗る。
……地面から今乗っている場所まではかなりの高さがあるが…
「君は記念すべき1人目の “遊び相手” ってことだね!」
────”遊び相手”?
「苦しかったらいつでも
とニコニコで言うinfinity。
他のAUに比べて随分良心的だな、と思っていたら。
「ねぇ、僕と一緒に遊ぼうよ」
─────────突如として彼女から楽観的な笑みが消え失せ、代わりに不敵な笑みを浮かべた。
彼女の発言と同時にダイアログボックスに同じ言葉が表示され、数秒して…
「え」
彼女が乗っていたダイアログボックスが消滅し、俺の目の前に小さめのダイアログボックスが現れた。
理解ができず混乱していると、上から落ちて静かに着地したinfinityがそのミニボックスを指す。
「それ、会話用ね」
彼女が発した言葉を記すように、見慣れたドットのフォントでボックス内に映し出される。
会話
「戦闘用ボックスは今僕らが入ってるよ、毎回ターン終わった後に枠直すの面倒臭いし別で作っちゃった」
ちょっと誇らしげそうに胸を張るinfinity。理由はアレとして、別で手元にコマンド一式と会話用ボックスがあるのはこちらとしてもありがたい。
いつも巨大ダイアログボックスに映し出される巨大文字を目で追っていて辛かったので助かる。
「準備できた?」
嬉しそうに、楽しそうに。
満面の笑みでそう聞いてくるinfinityから、底無しの “楽しさの感情” を感じた。
今から “戦闘” するというよりは…男児同士でチャンバラするように純粋な “遊び” をする雰囲気である。
俺に対し一切の殺意、憎しみ、その他諸々の負の感情を向けていないのが伝わる。
クリスマスプレゼントを待ち侘びるような、そんなキラキラとした目とワクワクとした表情をしていた。
「勿論」
俺は腰のホルダーからキラリとしたナイフを取り出す。
こっちも彼女に負けないぐらいワクワクして興奮してるんだ。
全力で ”楽しんで” やろうじゃねぇか。
俺は不敵な笑みを浮かべ、infinityを見つめた。
「そうこなくちゃ」とでも言うように彼女はまた不敵な笑みを浮かべ、俺を見つめ返した。
史上最も敵意の無い
-+-+- Special Thanks -+-+-
NO AU infinity fight 《Novel》表紙:Art By 黒猫noir(もちねこ)氏