いつからそれに憧れたのかは覚えてない。
ただ気づいたら憧れていた。
陰の実力者に!!!
魔力を見つけたことによって魔力が漂う異世界にこれたものの、僕の目的は変わらない。
魔力を使った戦闘法も。モブとしての振る舞いも。将来のための資金稼ぎも。
全ては陰の実力者になるために!!
なのに、僕は最近行き詰まっている。
なぜなら僕は見つけていないからだ。
主人公。
陰の実力者になるためにはどうしても物語の中心人物が必要だ。
そしてその人物は正義感が強く、純粋で、誰にでも優しくできる存在であることが多いのだが、欲を言えば『理想』を追い求める性格であればなお良い!
それは完璧主義者だからというわけでも、ネガティブだからというわけでもない。
仲間のためとか。
誰かとの約束のためとか。
好きな人と一緒にいたいがためとか。
そういった清い心から出るものであればベスト!
そんな主人公がいれば、僕の『陰の実力者』プレイのクオリティは飛躍的に上がるだろう。だが、そんな簡単に見つかるはずもない。
僕は今、王都にあるミドガル魔剣士学園に入学して、寮へ帰ろうとしている。
ここ王都では、盗賊狩りが難しそうだ。どうしたものかなあ。
そんな時、僕は見つけたんだ。
校門前の学内で、見るからに剣なんて振れないだろうとわかる体型の生徒と、白い髪と赤い目が特徴の生徒が何か揉めていた。
「貴様のような下賤な身分のものが近づくな!」
「ち、ちがっ! 僕はただ——」
「黙れ! さっさと消えろ!」
いや、揉めていたというよりも、デブが一方的に白髪の子を殴っていた。デブはそのまま帰ろうとするが、白髪の少年は何かを手渡そうと近づいていた。
「これ! 落としましたよ!」
白髪の子が渡したのは、見るからに豪奢な装飾を施されたハンカチだ。あんなの『自分は金持ってますよ』とアピールしているだけの、本来の用途からは外れた使い方をされているいかにもといった物だ。
「っ!! 貴様! いつ盗んだのだ!?」
「いやちがっ! あなたがさっき落としたので、拾った、だけです……」
白髪の子はまるでウサギのようにオドオドしているが、それでも自分に冤罪を着せようとしている相手に、明らかに高価なハンカチを届けようとしている。
「言い訳などするな!! 貴様のような平民がすることなどスリしかないわ!」
彼の好意を無下に、またデブは彼を殴る。しかし、彼は両手で丁寧にハンカチを渡そうとしている。
正直、見てられない。
でも、なぜだか見ていたい。
それがなぜなのか、分からないけれど。
気づけば、生徒会の先輩たちが彼を助けていた。
手当てを勧められていたようだが、彼は『大丈夫です』とだけ言い残し、その場を去った。
ーーーーーーーーーーーー
翌日、僕はどうやって『陰の実力者』プレイをしようかと、夜の王都を寮の屋上で悩んでいたところ、寮の裏に知った顔のデブがいた。
なんか暗殺者っぽい奴らに囲まれていたが、あのデブの性格からなんとなく分かる。
どうせ、親が何かしらの危ない商売や利権に手を出していたとか、あいつのことを嫌っている貴族とかが送ったとか、まあそんな感じだろう。
僕が助けることにメリットを見出せないけど、なんとかして『陰の実力者』っぽいシチュエーションにできないかな?
そう考えていると、またもや見たことのある白髪の少年が現れた。
「な、なんだこいつ!?」
「いや、目撃者は排除する決まり」
「運が悪かったな。学生なんぞ雑魚同然!」
飛びかかる暗殺者は、白髪の子に剣を突き刺そうとする。
四方八方に襲いかかる暗殺者を前に、デブの方はチビってしまったようだが、白髪の方は腰につけた黒いナイフを構える。
一瞬
暗殺者は瞬きの間に倒れた。
それを理解できなかったのか、デブは唖然のとしている。
「大丈夫?」
白髪の子は腰を抜かしたデブに手を差し伸べるが、ようやく現実を理解したデブは、ハッと白髪の子の顔と差し伸べられた手を数度見返し、その場を逃げるように去っていった。
その後ろ姿を見て、最後まで心配している白髪の子はその場を離れて学園の職員室へ向かった。
きっと、暗殺者のことを魔剣士の先生や騎士団の人に報告するためだろう。
僕はその一部始終を見て、やっと気づいた。
それはきっと、僕が欲しくてやまないキャラのようで。
物語の中心。
世界の中心。
そして、『陰の実力者』を引き立てる最高の——
僕は彼を追いかけていた。
聞きたい。
確かめたい。
彼が本物かどうかを——!!
「ちょっと! ちょっと!」
「……え?」
振り返ったその顔には、昨日あのデブに殴られた時より具合の良い状態のケガがあった。
回復ができるのか?
いや、それより——
「いや、あの……。なんであんなやつにあそこまでしたの?」
僕はモブらしくそう聞いた。
「……えっと、あの……見てたんですか?」
「たまたま」
「そ、そうなんですね……」
「あんなやつ放っておいてもよかったじゃん」
結構辛辣に言うと、彼の赤い目は、何か困ったようで、でも何を言うか決めたかのようにも見えた。
「……助けたいって、思ったから……」
彼は確かにそう言った。
「……確かにイイ人そうではなかったけど、でも、そんなの理由にはならないと思って……」
…………おお、おお!
「でも、あのデb……貴族は君をいじめたじゃないか?」
「それも見てたんですか!?」
「うん」
「え、えぇ……」
なんだか表情が豊だなあ。子供っぽい発言もそうだし、本当に同級生か?
「……嫌でしたけど、死んで欲しいとも思ってなかったですし」
「そっか」
「……何より——」
ん?
「——ここで見捨てたら、英雄にはなれないと思ったから」
…………え? もしかして、え?
「……君、英雄を目指してるの?」
「あ、いや! なんていうかその、えっと、その…………はい」
これはもしやもしや?
「……昔、僕のおじいちゃ……祖父はよく僕に英雄譚や御伽噺なんかを読み聞かせをしてくれて、そんな物語の英雄のように、なりたいんです」
もしやもしやもしや??
「……主人公」
僕はすぐにかき消えそうなほど小さな声で、そう呟いた。
様子からして、彼には聞こえていないようだ。
そうか、僕はようやく見つけたのやもしれない。
最高の主人公に!!!
今までの言動、性格、動機、全てが主人公の器だ。いや、僕の基準では最高峰だ。
これだけの逸材ならば、僕の『陰の実力者』プレイは飛躍的にそのレベルを増すだろう。
きっとこれから彼の身の回りではさまざまなストーリー展開や主人公イベントが起こるに違いない。
なら、僕がすべきことはただ一つ……
モブとして彼に接近すること!
「……そっか、きっと君ならなれるよ」
「え?」
「あ、いや、僕が言ってもアレなんだけど、なんかそう思って……」
よし、モブっぽい感じに言えたぞ!
「……あ、ありがとうございます!」
なんだか呆気に取られたような様子から、恥ずかしそうに照れながら感謝を伝えてくれる。
くう〜! こういう反応も主人公らしい!
「あ! そういえば名前、名前聞いてませんでした」
「ああ、言ってなかったね。僕はシド・カゲノー。貧乏男爵家の冴えない学生だよ」
「それ、自分で言っちゃうんですか……」
「君は?」
「あ、そうだ——」
彼の言葉を聞いてると、僕の視界にはとあるフィルターが入っていることに気づいた。
何か字幕が降りてくるような、タイトルが浮き上がってくるような、そんな感じの——
——そっか、ここから始まるんだ。
「——僕の名前はベル・クラネルです。ど、同級生ですよね?」
彼を中心とし、僕が『陰の実力者』をする物語が——
初めまして、orangenaです。
この作品は僕の好きなキャラたちをコラボさせたいと言う一途な想いで書きました。
できるだけ早めに投稿しようと思いますので、どうか次も読んでくれるとありがたいです!
今回は読んで頂きありがとうございました!