第1話 誕生
sideパウロ
俺とゼニスの子供が生まれた。金髪で緑色の瞳の男の子だ。とても元気で問題なさそうだ。ゼニスも初産だったが健康上問題ないとリーリャが言っていて安心した。子供の名前はルーデウス。ルーデウス・グレイラットだ。
ルーデウスは今、ベッドで寝ている。平和そうな表情は心にジーンとくる。生まれてきた感動を俺は忘れられない。そんな日からもうすぐ1年が経とうとしていたことに気が付き驚いた。そんな幸せいっぱいの我が家は今日も静かな夜を過ごしていた。
そんな夜を過ごしているとドンドンと戸を叩く音が響いた。ルーデウスが起きたらどうすると思ったがこんな時間に訪ねてくる変わり者はいない。何かあったのか。あるいは野盗か。剣を腰に差して警戒しつつでた。そこにいたのは村の人だった。汗をかいて落ち着きがない。
「どうしたんですか。こんな夜遅くに」
「リーリャさんを貸してくれ。隣の家の奥さんが産気づいたんだが上手くいってない。助産経験がある人を借りたい。」
彼が言っている人が誰なのかすぐに分かった。隣の家の夫婦は同じ新婚で俺たちがこの村に引っ越してきた時からよくしてくれた。だが旦那さんが半年前に病気でなくなっている。初産な上に一人なのだ。心細いだろう。夫婦は人格者で俺ら以外の人からも慕われていた。だから旦那の死後は身重の奥さんを見守るため近所の人間で交代しながら様子をみていたが今日が生まれる日になったようだ。事情を理解した俺はすぐにリーリャを呼んだ。
事情を把握しているリーリャはすぐに準備を整え向かった。
またしばらくして今度はゼニスが呼ばれた。ゼニスは俺にルディを任せて出て行った。
村には産婆が1人いるはずだ。かなりの高齢だが経験豊富なようでゼニスと話していたことを覚えている。あの人がとにかく人手を求める事態……俺にできることはなくただ母子の無事を願うしかなかった。
次に戸が叩かれたのは翌日の昼だった。そこに立っていたのはリーリャを呼びに来た人だった。俯きこちらの顔を見る様子はない。顔には生気がなく疲れ切っていた。どうだったと聞けなかった。かえってくる返事は彼の顔を見て想像がついた。どちらかが亡くなったのだろうと。
互いに切り出し方が分からず沈黙の時間が過ぎる。玄関で俺らは何も言えずに立ち尽くしていた。先に口を開いたのは男の方だった。「奥さんがなくなった」ぽつりと言った。出産は命がけである。ゼニスも大変な思いをして産んでくれたが1年が経ちトラブルなく妊娠前の元気さを取り戻していた。これが当たり前ではない。隣人は耐えられなかったようだ。
「子供は?」
「元気だ。今はリーリャさんが面倒を見ていてくれている。それでよ。旦那」
「それはゼニス達に聞かないといけない」
男が言わんとしていることは分かる。赤子を誰が育てるのかだ。彼らには世話になった。代わりに育てるという選択肢は頭に浮かんだが俺らの子供も1年前とはいえ生まれたばかりだ。まだまだ手がかかる。他の家よりお金に余裕がありリーリャもいるうちが確かに適任かもしれない。とはいえ子供をもう一人育てる決断は重いものだ。即決はできなかった。男には一度リーリャに戻る様に伝え帰ってもらった。
リーリャ達はほどなくして戻ってきた。赤子を抱えて。2人とも明らかに疲れていた。身体的なのもそうだが精神的な面でも相当疲弊しているが分かった。そんな2人の状態を案じて休むように言った。ゼニスもリーリャもその申し出を感謝しつつ受け取ったがゼニスは俺に赤子を任せるのは怖いと休むのを拒否した。リーリャが「では私がします」と言ったがゼニスは自分より休んでいないリーリャを心配し強引に部屋へ押し込んだ。赤子の面倒はその間俺たちが見ていた。その間ルディが泣いたり何かを要求することはほとんどなかった。おかげで生まれたばかりの子に専念できた。今日生まれてきた子は赤い目をしていてあの2人によく似ていると感じた。
日がすっかり暮れたころリーリャが部屋から出てきた。顔色も少しよくなっていた。それでも身体的精神的に疲れが抜けていないようでいつものように動いたりはできないようだ。歩き方もフラフラしていて危ういのが伝わる。そのためリーリャが担当した夕飯分はゼニスが作ってくれた。3人で食事をするとまた顔色がよくなった。
「あの子を引き取りましょう」
食事を終えたところでゼニスが言った。
「いいのか?まだルディだって赤子だ。赤子が2人となると俺達でも大変だろう」
「大丈夫よ。私たちは3人いるしルディはすごくいい子じゃない!きっと上手くいくわ」
俺が懸念点を指摘するがゼニスはまっすぐな目をして答えた。俺が考えていたことはゼニスにとっては問題ないらしい。確かにルディは全然泣かないし赤子っぽい苦労をしたことはここまでほとんどなかった。
「リーリャ。あなたの意見も聞きましょう。引き取るならあなたにも苦労を掛けることになりますし」
「私もあの子を引き取ることに抵抗はありません」
こうして俺らは新しい家族を引き受けることにした。
「そうしたら名前を決めな「ブエル」きゃね」
ゼニスが立ち上がるとリーリャが言葉をはさんできた。
「あの人が最後の時までずっとあの子を見ながら呟いていました。旦那さんと決めていたそうです。」
「そう。じゃあ、あの子の名前はブエルね」
こうして我が家に新しい家族が迎えられた。
ルディちゃん!妹ができたよ。
俺がこの世界に転生してから早1年。最近、俺の転生赤子生活に大きな変化が訪れた。妹がやってきた。やってきたという言い方は変だが確かにやってきたのだ。その子は隣人の家に生まれた子供だったそうだが旦那さんは妊娠期間中に亡くなり奥さんも難産だった影響で子供産んですぐ亡くなったそうだ。こぶしで床を叩けば飯をくれる親の元で前世を過ごしてきた俺には最初から親がいないハードモードの生活は絶望でしかないな。
亡くなった奥さんは俺も見覚えがある。見た目赤子の俺へ会いに何回か来ていた。あの人が亡くなったと聞くと心が痛い。なにせゼニスに負けない美人だったからな。
そんなこんなで生まれた瞬間に天涯孤独となった女の子をうちで育てることにしたらしい。パウロ達は俺に手がかからなかったから楽観的に考えているようだがあまいぞ。なにせこの中身は30を超えるおっさんだからな。
俺が使っていたベビーベッドは今その子が使っているがおっさんが入っているこの体と違いその子は普通の赤子のようでよく泣くし癇癪を起こす。俺の時と大違いでゼニスとパウロは夜泣きの影響もあり疲れ切っていた。よくハッスルしている時とは大違いだ。そのおかげで最近、俺への関心が薄くなってきている気がする。
寂しいよ~
まぁ寂しいって冗談はさておき。俺は最近あるものにハマっている。魔術の練習だ。部屋にあった本は初級の内容らしい。今はずっと水の魔術ウォーターボールを練習中だ。最初のころは詠唱が必要だったが今は無詠唱で毎日やっている。日に日に魔力量が多くなっているのを実感しているがまだこの魔術が成功したとは言えない。現状、水の生成はできるがそこまでだ。本来この魔術は射出ができるそうだが今の俺にはどうにも水の玉を動かせる未来は見られない。
妹は放っておいていいのかって?確かに可愛い妹だ。兄貴が世話をする必要があるんだろうが今の俺は1歳。自分のことで精一杯だしウチにはリーリャ達がいる。誰も俺に妹の世話をさせようとは思わないだろう。というわけで俺は魔術の研究にのめりこんでいた。
しかし義妹か……
ラノベでよくある設定だ。血の繋がってない兄妹。そして発展する恋愛。相手は美人が約束されたような子だ。今から成長が楽しみでたまらないぜ。
構想はできてても本文作れてない状態で耐えられず投稿しているので最後まで書けるように頑張りたいです。
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