グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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いや~気が付いたらすごい伸びていてビックリしています。たくさんの人に読んでもらって嬉しいです。

本当にありがとうございます!!!!


第10話 ブエルの就活

 3日かけてようやく街に着いた。街に来たのは私もノルンも初めてだった。故郷のブエナ村もあの村ともその様子は全く違っている。私が特に感じるのは人の多さだ。あちこちから声が聞こえてくる。

 

 お父さんたちが街は人が多くて賑やかだと話していたけど実際に街にいると本当に多くて少しワクワクすると同時に聞こえてくる声の多さに頭が痛くなりそうだ。

 

 町の建物はブエナ村と造りが違う。私の家とかもそうだが、村の家は木でできているのがほとんどだった。でもこの街は石も使っている。石によって面白い模様がいくつもできていてさっきからノルンの視線があちらこちらにいっている。私も初めてのものに目がいっていた。

 

「街は初めてか?見るのもいいが迷子になるなよ」

 

 ポールさんは私たちがキョロキョロしているのを見て少し笑いながら言った。

 

 

 

 私たちはポールさんたちに連れられて街の食堂に入った。ポールさん達は街に着いたらまず食堂へ行き、その街の美味しいものを食べるのがチームのルールらしい。

 

 「さて、俺たちだが2日後には次の街へ向かう」

 

 料理が運ばれてきて食べ始めたタイミングでポールさんが切り出した。みんなはこの数日間とてもよくしてくれた。でも村での約束は街まで安全に送ってもらうこと。つまりこの街についた時点で分かれるのが決まっていた。

 

 「2人はこれからどうする」

 

「ブエナ村に帰ろうと……」

 

 「自力で帰るのはやめておけ」

 

 「やっぱりそうですか……」

 

 ここ数日、話していたことで分かったことがある。最初、私達がいた場所は密林地帯と呼ばれるところで魔物は強いらしい。だからここら一帯全ての魔物が強いかと言ったら違う。街へ来るまでの街道とかにいた魔物は明らかに弱かった。それは国が定期的に魔物狩りをしているのもそうだが、そもそも密林地帯が特別強いらしい。

 

 だから自力でも帰れるんじゃないかと思っていた。

 

 

  「確かにブエルは強い。だが旅は魔物の問題をクリアできればいいてもんじゃない。食料・街での生活費・自然環境・旅のための知識・そしてここ最近活発になっている人さらい。対処しなければいけない問題はいっぱいなんだ。それにアスラへはここから半年近くかかる。子供二人ではたどり着けないだろう。」

 

 ポールさんは私の目をまっすぐ見て淡々と話した。そこにはいつもの少し砕けた様子はなく真剣に伝えようとしてくれているが分かった。

 

 

 「分かりました」

 

 私がそう言うと3人は口を緩ませてフッと息を吐いた。

 

 「そう落ち込むな。この街にいれば情報が入ってくる。それにお父さんは凄腕の冒険者だったんだろ?もしかしたら見つけてくれるかもしれないじゃないか」

 

 目に見えて落ち込んでいる私をみて頭をなでながら言ってくれた。

 

 

 「これから私どうすればいいんですか?」

 

 

 私が尋ねると3人はいろいろと教えてくれた。

 

 まず最初にお金を稼ぐ手段を見つけることを提案された。働いてお金を稼がなきゃ食べられないので急いで見つけるべきだといわれる。

 

 今の私の所持金は銀貨2枚。これは馬車を守ってくれたお礼と街に入った時くれたものだ。これだけだと1か月ももたない。

 

 最初に思いついたのは冒険者だ。お父さんもお母さんも冒険者だったから真っ先に思いついたんだと思う。でもその考えはすぐにダメだと選択肢の中から消えた。冒険者は危険な仕事でいつ死んでもおかしくないと言っていた。私が死んだらノルンも死んでしまう。そんな危険は冒せない。そうなると街の中で仕事を探すことになるのだろう。

 

 3人もそれがいいと頷いた。街を転々とするやり方は商売をする上では人脈も広がって扱う商品も増えていいけれど私たちは故郷に帰るのが目的だから1か所にとどまる方が逆に私たちの情報が広まって家族が探しやすいということらしい。

 

 やるべきことは決まったので店を出て宿に入った。お金はポールさんたちが払ってくれた。今日は旅の疲れを取って明日以降探すように言われた。

 

 部屋に入って鍵を閉めるとベッドに座った。

 

 (仕事か……)

 

 私の頭の中にはもう何年もあっていないルディが思い浮かんでいた。ルディはどこかの街で働いていると言っていた。

 

 (私にもできるのかな。)

 

 仕事なんてお母さんとリーリャの手伝いしかしたことがない。私の頭の中には不安が広がっていた。

 

 

 「ねぇ……」

 

 ノルンが服の裾を引っ張りながら何かを話そうとした。

 

 「ねぇ……おうち帰りたい」

 

 ノルンの言葉を聞いて急に気温が下がったように感じた。そうだノルンはまだ3歳今の状況がどうなっているのかなんて分からない。私だって知らない場所にいたことしか分からないんだから。

 

 ノルンはずっと我慢してきた。思えばここまで一切文句を言わずに私のいうことを聞いてくれていた。それはいうことを聞いていればおうちに帰れると思っていたからなんだろう。でもさっきの会話から帰れないことを察しちゃったのかもしれない。それで不安になっているんだろう。

 

 私はノルンをそっと抱き寄せ膝に乗せる。ノルンも短い腕を回して私に抱き着いた。

 

 「ごめんねノルン。まだ帰れない。」

 

  ノルンは何も言わずに力を込めて抱き着いて私の胸に顔をうずめた。胸にはノルンの熱い息が伝わってくる。

 

 「ごめんね」

 

 私はノルンの頭を撫でる。あの日はサラサラだった髪はパサついていつのが分かる。

 

 「う、ん~ん~」

 

 ノルンの息がどんどんと荒くなっていく。服からは熱い息だけじゃなくて少し湿った感触も感じられるようになった。

 

 私は何度もごめんねと言い続けた。ノルンはその度に少しだけ首をふっていた。自然と私の目も熱くなる。

 

 

 私もルディみたいに強かったらノルンを連れてブエナ村まで帰れたのだろうか。

 自分がダメなせいでノルンに辛い思いをさせてしまっている。そのことが悔しくてたまらなかった。

 

  

 

 

  次の日から仕事探しが始まった。条件は2つ。住み込みで働けるところ。働いている間ノルンの面倒を見られるよう一緒にいれるところ。

 

 私にはマーガレットさんがついてきてくれた。ポールさんたちは仕事だ。ノルンも預かってくれている。

 

 店番など仕事をさせてくれる場所を探して街の色々な店を回る。だがどこも雇ってくれない。

 

 私たちが尋ねると最初は客だと思って接してくれるが雇ってほしいと話し出すと途端に顔つきが変わった。ある店では露骨に嫌な顔をされる。あの村の村長のような感情が見えたりある店ではマーガレットさんが私に身売りさせているように見えたらしく哀れといった感情が聞こえたりもした。

 

 

 秘密兵器の魔術を見せても街中で必要な場面はほとんどないのか驚きはされても雇ってもらえるきっかけにはならなかった。

 

 「まだ時間はあるから焦っちゃだめよ」

 

 「はい」

 

 マーガレットさんはそう言ってくれたが不安からの気持ち悪さが渦巻いていて少し吐き気がしていた。3人は明日次の街へ出発する。そうしたら残りのお金が尽きる前に見つけないと街で生きていけない。またあの森にいた時のような生活になる。

 

 頭の中にはノルンの顔が思い浮かんだ。ノルンは泣いていた。ずっと我慢してきた。わがままは言わないようにしていた。それは家に帰るため。お父さん・お母さんに会うため。なのに帰れない。だから泣いていた。私のせいでノルンに苦しい思いをさせている。ルディだったらそんなことさせないんだろう。だからせめてご飯で困ってほしくない。それなのに上手くいかない。励ましてくれる言葉はあまりうれしく感じなかった。

 

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

 宿に戻るとすでにノルンたちは戻ってきていた。ノルンはピエールさんと遊んでいた。

 私が腕を広げるとノルンはこちらに向かって飛び込んできた。ノルンからは小さい子特有の高い体温が伝わってくる。よしよしと頭を撫でるとご機嫌な様子が見て取れた。

 

 そのあとは宿についている食堂へと移動した。この宿は商人や中級ランクの冒険屋が多く泊まっているようで食堂に入るとかなりにぎやかだ。店のあちこちから色々な声が聞こえる。私はそんな声も呪いを利用して聞いている。かなり疲れるけれどもしかしたら何か情報があるかもしれないと思っている。実際、今日は数回だけフィットア領って単語を聞いた。だけど他の声にかき消されて上手くは聞き取れなかった。私にとって関係ない情報がほとんどだけど情報自体が入ってくるのは間違いなかったので頭の中にメモをして目の前のご飯を食べた。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 「お世話になりました」

 

 次の日、私たちは街の入り口にいた。今日はポールさんたちが出発する日である。短い間だったけれど色々なところで助けてもらった。3人はずっと親切だった。おかげでこれからどうすればいいのか分かった。まだ仕事は見つかっていないけれど今この瞬間だけは大丈夫なように思った。

 

「ほら、ノルンも挨拶して」

 

「ばいばい」

 

 ノルンは小さな手を3人に振った。3人はフフと笑い同じように手を振ってくれた。

 

「それじゃあ、頑張れよ」

 

「はい。ありがとうございました」

 

「手紙は受け取った。あったら渡しておくよ」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 昨日、マーガレットさんからの提案でお父さんたち家族へ向けた手紙を書いた。どこかに向かって出すわけじゃない。もしポールさんたちが旅の途中で見つけれくれたら手紙を渡して迎えに来てもらう作戦だ。見つかるか分からないけれどもしもの時の手紙だ。

 

 この手紙にはノルンのメッセージも書いてある。まだ拙い字で早く会いたいと一言だけ。でもこれで手紙の信用度があがると言っていた。この手紙が家族に渡るのを祈っておこう。

 

 こうしてポールさん達とは別れることになった。

 

 

 ――――――

 

 別れた後最初に宿を移動した。私の手持ちはわずかしかない。あの宿に泊まっていたらすぐになくなって追い出されてしまう。今よりも安い宿に泊まってお金を節約する。これも教えてもらったことだ。

 

 宿はすぐに見つかった。下級冒険者用の宿だ。安い分中はうす暗く雰囲気も暗い感じがした。

 

 中に入るとベッドが1つだけ。しかもほとんど床に寝ているほどの高さしかなかった。そして埃っぽい。入った瞬間にくしゃみが止まらなくなったので窓を開けて掃除をした。

 

 そんなことをしていたらお昼になってしまった。宿の人に頼みノルンは食堂で待つことになった。人目に付く方が攫われにくいと考えた。ノルンには夜には帰ると言って街へでた。だがこの日も雇ってくれるところは見つからなかった。

 

 帰ってきた後は宿の食堂でノルンとご飯を食べる。そして水浴びをして寝る。明日こそは見つかると自分に言い聞かせながら瞼を閉じた。

 

 

 仕事は見つからなかった。もうすぐ1週間がたつ。毎日、色々なお店に行って頼んでいるがどこも子供を雇ってくれることはなかった。大抵、迷惑という感情が出ていて話を聞いてくれはしてもそれ以上はない。

 

 日に日に焦りは募る。お金が日に日に減っていているのにお金が入ってくる様子がない。今度こそ誰にも頼ることができない。お金が無くなれば街では生活できない。また森に行く羽目になる。ノルンにこれ以上負担はかけたくない。でも状況がよくならない。じわりじわりと私の足元には絶望の闇が広がり始めていた。

 

 「お姉ちゃん……食べないの」

 

 ノルンの声でハッとする。ノルンはご飯を食べ終わっていてお皿は空になっていた。私のお皿にはまだ料理がある。長い時間考え込んでいたようだ。

 

 「お姉ちゃん……」

 

 ノルンは不安げな表情でこちらを見てくる。そんな顔をしてほしくないのに

 

 「大丈夫だよ」

 

 私は力なく笑うことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 「ねぇ、あなた達ずっと2人だけどお父さんお母さんはどうしたの」

 

〈疑問〉

 

 部屋に戻るために歩いていると宿の女の人に声をかけられた。

 私は事情を説明した。誰でもいいから助けてほしかった。私がフィットア領出身だと言うと女の人からの感情が変化した。

 

 いけるかもしれない。

 

 私はそう思って働くから部屋を貸してほしいと伝えた。

 

 

 その人は私の話を聞くと手を引っ張って受付の裏へ連れていかれた。

 

 

 「どうしたんだ。その子供たち」

 

 中には女の人と同じくらいの年齢の男の人がいた。

 

 「この子達、食堂とか手伝う代わりに住まわせてあげない?」

 

 「いや、いきなりだな」

 

 「この子達フィットア領出身なんですって。きっと親も……」

 

 女の人がフィットア領の単語を出すと男の人が驚いた。

 

 「フィットア領ってあの?」

 

〈哀れみ〉

 

 何か知っていそうな雰囲気を感じた。最初はほかのお店と同じような感情だった男の人の感情が変化する。その人は私たちをじっとみた。年齢とかが気になっているらしい。

 

「9歳と4歳です。私が働きます。お願いします。」

 

 そう言って頭を下げる。

 

 「分かった。いいだろう」

 

 男の人はそういって頷いた。

 

 

 毎日働く。その代わり部屋と食事を保証してくれることになった。

 こうして私たちはなんとか生活していく土台を手に入れられた。




就活、私の今一番嫌いな言葉です、、、、、
あとここ最近は難産続きで投稿ペースはしばらく落ちます、、、


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