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最近感覚が空き気味ですみません。安定して投稿できるようになるにはしばらくかかりそうです。
お父さんに会いに行く。そう決めたブエルたちはまずパウロへ手紙を書くことにした。あの人によるとこの街には寄らずにミリスヘ行ってしまうらしい。ミリスヘ行ってしまえば今度こそ再会することは叶わない。2人にとっても今回がラストチャンスだろうと考えていた。とはいえブエルたちもすぐにこの町を出ることはできないので手紙を先に送って待ってもらおうと考えたのだ。
そうと決まれば朝の買い出しの帰りに文房具屋へ寄って紙と封筒を買った。そしてその日のうちに手紙を書き始める。手紙にはブエルたちが今いる場所、状況、そしてこれから誰かに頼んで連れて行ってもらうので待ってほしい旨を書いた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
手紙を書いているとノルンがのぞき込んでいた。ノルンの声には怒気が含まれていて少し不満そうだ。普段、この時間は魔術を教えたり遊んでいる時間なのにブエルが手紙とにらめっこしていることが気に入らない様子だった。
「今ね、お父さんに手紙を書いているの」
「手紙?」
「うん、お父さんに今から行くから待っててって。ノルンも何か書いてみる?」
「うん!」
ノルンに筆をとらせるブエルだったがここで問題に気が付いた。ノルンはまだ自分の名前しか文字を書けなかった。ノルンもいざ筆を持ってみてもどうすればいいのか分からないようで首を傾げて真ん丸な目をブエルに向けながら困惑していた。
「じゃあノルンこうしようか。手!だして」
ブエルがそう言うとノルンは素直に手をバッと勢いよく突き出した。
「パーだよ」
ブエルはノルンから筆をもらいインクをつける。そしてノルンの手に塗り始めた。
「お姉ちゃん、くすぐったい」
筆の感覚にノルンは身をよじらせるがブエルは我慢して~と言って続ける。そして手のひら全部にインクを塗ったブエルはノルンに手を紙に押し付けるしぐさを見せた。ノルンはブエルを真似して紙に掌を乗せた。手紙の空いたスペースにノルンの小さな手形が現れたのだ。
「じゃあノルン。ここにお名前を書こうか」
魔術で手のインクを落とさせた後、ブエルは今作った手形の下を指さして言った。ノルンもそこにつたない字で自分の名前を書く。
「これでお父さん分かってくれるよ」
「じゃあお姉ちゃんもやろ!」
「え、、えー」
ノルンは筆にインクをつけてニコリと笑う。
筆がくすぐったいのはブエルもよく知っている。少し葛藤したが息を吸い覚悟を決めるとノルンの方へ手のひらを向けた。
「待って……ノルン……ふ、ふふ」
「お姉ちゃん、動かないで!」
ブエルは2つの手形が押された手紙が乾くのを待って冒険者ギルドへ向かった。宿の人に聞いて手紙を出すとしたらここがいいと言われたのだ。
「すみません、手紙の配達をお願いしたいです」
ブエルは受付に行くと手紙をカウンターに置いて話しかける。
「あら、手紙?どこの誰に出すのかな」
「えっと、お父さんに……場所は封筒に書いてある場所に」
ブエルが言葉を聞いて受けつけは手紙を確認しだす。
「えぇ、大丈夫よ。それで速達と通常があるけれどどっちにする?」
ブエルは少し悩んで速達を選んだ。この手紙はパウロに待ってもらうための手紙だ。一刻も早く届いてもらう必要がある。お金はかかってしまうが今、何よりも恐ろしいのはパウロと会えなくなることだ。必要な出費と割り切って支払った。
――――――――――
とりあえず手紙は送った。あとはパウロの元に届き街で待ってくれるのを祈るだけだ。
そうしたら次の問題が出てくる。移動手段である。ブエルはある程度戦えるがノルンを守りながら2週間の旅ができるかと考えると現実的では無い。だから手紙にも誰か大人と一緒に行くと書いた。それが現実的な案だと理解していたからだ。
それならば冒険者に依頼を思うがやはりお金が足りない。
せっかく再開のチャンスが転がってきたのに幼い自分ではどうすることもできない壁に直面していた。
「ん?子供でも安全に移動できる方法?」
どうにもできないと感じたブエルは働いている宿の大人に聞いてみることにした。
そもそも子供だけで旅をしようとしていることに反対したが、これが最後のチャンスになるかもしれないといい説得した。そして提案されたものはブエルの求めているものに合致していた。
「2人で渡るよりもキャラバンに同乗するのがいいと思うわ」
「キャラバン……」
「キャラバンに運んでもらうなら大人がたくさんいるから2人よりは安全ね」
キャラバンはブエルも知っていた。この街に世界の色々な国から収集した品物を運んでいる集団だ。彼らは街を転々として活動している。
キャラバンは品物を運んでいる関係で盗賊によく狙われる。そこで奪われては商売は出来ないので当然自衛能力を持っている。2人で旅をする時の一番の問題は安全である。街の外には魔物、野盗など危険が多い。しかしキャラバンに乗せてもらえればそれらの問題は一気に解決する。
ブエルの心にかかっていた雲は晴れていった。
「ありがとうございます!」
ブエルはお礼を言って飛び出して市場へと向かった。
ブエルは市場の中心部へ向かった。市場には人が集まっていて活気に満ち溢れている。人は道を歩きながらそれぞれの目当てのものを見つけるために右往左往しているため少しでもよそ見をしたら人とぶつかりそうだ。
道の脇では今日の夜ご飯の食材を探す主婦や冒険者が商人と会話をしている声が聞こえてくる。今、ブエルがいるのは個人向けに商売をやっているエリア。ここの商品は一人でも買えるように量が少なく少し安い商品を売っている。
ブエルはそのエリアには目もくれずさらに奥へと進む。そうすると先ほどまで活気ついていた市場は段々と静かになる。それでも人の声は四方八方から聞こえ、商売区域であることが分かる。人が減ったのはこの場所が危険だったりするわけではない。ただ単純にこの場所に用事がある人が少ないだけである。それでもこの場所にいる人は少し殺気立っている。いや、何かの感情が燃え滾っているといった方がブエルの感知している中身に近い。
この街に市場の奥、そこは貴族や宿、飲食店向け。大規模な仕入れやより多くのお金を持っている人向けの市場である。この場所は先ほどの庶民向けエリアより先に競りが行われる。この場所で特に質のいい商品は取引される。そしてこの場所は商品を運んできた商人が荷物を運び入れる場所でもある。
宿の仕入れのお使いをしていたブエルはこの場所を知っていた。ここにキャラバンや商人が集まることを。
「すみません」
「おお、嬢ちゃんどうした?今朝来たばかりだよな」
「実は……」
この場所についたブエルはまず顔なじみの商人から声をかけ始める。さすがのブエルも知らない人から行くのは躊躇われた。
「なるほどな……その街に行く商人か」
商人はブエルから事情を聴くと顎に手を置いて考え始める。承認の頭の中ではこの町にいる他の商人のことを浮かべているがその思考が暗くなっているのがブエルに伝わる。
「すまないね。そっちに行く奴は知らないな」
「そうですか。ありがとうございます」
「他のやつに聞いてみるよ。もしいたら教えるから」
商人は申し訳なさそうな顔をしながらブエルの頭をなでる。ブエルは頭を下げて商人の元を去った。他の人ならば何か情報がないかを探すために。
数時間後、ブエルは市場の入り口で座っていた。あの後、知り合いに声をかけ、その人の仲間を紹介してもらいと数珠つなぎで聞き込みをしていたが誰もその街へ行く人を知らなかった。ここに来る商人はアスラの方へ行くよりも王竜王国の首都やイーストポートへ向かう人が多い。その理由は単純でこの街が大陸の街道から少し外れた位置にあるためアスラの方角へ行くよりも首都の方面との往復で商売をしている方が利益を上げやすいからだ。
ブエルはサナキア王国の方角、つまり商人たちとは真逆の方を目指しているため中々嚙み合わないのだ。
ふと空を見上げると赤みがかかっており綺麗な夕焼けが広がっていた。「あぁ、そろそろ食堂の仕事だ」そんなことを頭でぼんやりと考えていた。
頭ではやらなきゃいけないことをよく理解していた。それでも体が動くことはなかった。今はやる気が出なかった。お父さんに会える。そんな希望が見えたのにその希望を掴みに行けない。そう考えたとき頭に浮かんだのはノルンの顔だった。
ノルンの見せた涙がブエルの頭の中にどんどんと浮かんで思考の中を占拠してくる。ノルンはいっぱいブエルのことを助けてくれているとブエルは思っている。それなのにブエルはノルンに何もしてあげられていないと感じている。
ブエルは自分の無力感に押しつぶされそうになっていた。そして思い浮かべるのはもう何年もあっていない兄。小さい時からなんでも出来た兄は今、どこで何をしてるのだろうか。もしノルンと一緒に飛ばされたのが兄だった……ノルンにこんな不自由な思いをさせていないのだろうか。そう思うと体を掻き毟りたくなるような感情が濁流のようにブエルの心に湧いてきた。
目元が熱くなった。顔を誰にも見られたくなくて足をたたんで手で抱えて顔を隠す。ブエルは道の端っこで動けなくなっていた。
「おーい!!いたいた。ブエルちゃんやっと見つけたよ~」
ブエルの耳に先ほど聞いた声が届いた。顔を上げると最初に話しかけた商人がいた。
ブエルの元に来ると止まり膝に手をおいて荒い息をした。長い間走っていたのか息が整うまで少し時間がかかった。
「よかった。見つかって」
商人から安心と喜びの感情が強く伝わってきた。
「ブエルちゃん!いたよ。君の行きたい街に向かうキャラバンが」
商人の言葉に驚いてブエルは顔を上げる。商人の顔は汗が滴り赤くなっていた。ブエルを見つけるために必死だったのが伝わる。
「もう話はつけてある。行こう」
商人はブエルに手を伸ばしブエルはその手をつかんだ。
――――――――――
そのキャラバンはつい先ほど街についたばかりだそう。商人はダメ元で聞いてみたところヒットしたそうだ。
商人の元へ行く途中に話した内容は自慢げだがブエルの望みが叶うことに対しての喜びが大きいらしい。
「ダメだ」
待ち合わせ場所に行くと気難しそうなおじさんがいた。商人がブエルを紹介すると一言目でこう言った。
「ちょっと待てよ。話が違うだろう」
「俺も、こんなに小さな子だとは聞いていない。しかも妹もいるんだろう」
「はい!私が9歳で妹が4歳です。どうかお願いします」
ブエルは体を曲げて頭を下げる。しかしおじさんの気持ちが変わることはなかった。
「さすがにそんな幼い子を連れて行くのは難しい。危険だ。自分の身も守れないのは流石にな」
ブエルはその一言を逃さなかった。おじさんからは心配の感情が読み取れる。つまりこの人は他の人と同じように純粋に子供を旅させるのが心配なだけのようだ。それならばブエルには取って置きがある。
「私は自分の身を守れます」
ブエルはそう言って無詠唱魔術を使い火の玉を作り出す。突然現れた火に2人は体をはねらせて驚いていた。ブエルはそのまま他の魔術の発動させアピールをする。そして最後に短刀で自分の手に傷を作ってから詠唱を始める。
「神なる力は芳醇なる糧、力失いしかの者のに再び立ち上がる力を与えん『ヒーリング』」
詠唱と共に魔力によって傷はみるみるうちに治っていった。
「これで連れて行ってもらえませんか?役に立ちます」
ブエルの声におじさんは腕を組んで考え込んだ。
「いいだろう」
1分か10分か。何分経ったか分からなくなる沈黙が続いた後、そう口にした。
「出発は3日後だ。それまでに準備を済ませろ」
こうしてブエルはパウロのいる街への足を手に入れた。
宿に戻ると3日後に出発することを伝えた。
奥さんは寂しくなるわねと言ったがやっと家族に再会できることを喜んでくれた。
出発前夜には宿の冒険者だけでなくこの宿の酒場によく飲みに来てくれた街の人も来て門出を祝ってくれた。
この街に来てから数か月。ブエル達は色々な人たちに温かく見守られていたのだ。
寂しい気持ちももちろんあるがそれでも家族との再会は待ち遠しかった。
ブエルたちは多くの人に見守られながら旅立っていった。
ブエルの中には兄、ルーデウスに対する劣等感があります、、、、、、
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