グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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更新が忙しく大変なので18時投稿固定をしばらくやめます。


第14話 一手の違い

  森の中を1つの隊列が進む。荷馬車や武装した集団で構成されていて一見物々しい雰囲気を傍からは感じるが隊列の中にいる人たちの実際の雰囲気は和やかなものだった。彼らはキャラバン、街を点々とし商品を売り渡る集団である。

 

 そんな隊列の最後尾の荷馬車にブエルとノルンの2人はいた。交渉に成功したブエルはキャラバンにパウロのいる街まで連れて行ってもらえることになった。もちろん、ただとはいかなかった。

 

 2人を連れていく以上、食費がかかり売るための荷物を減らす必要がある。そこでキャラバンはブエルに魔術を使うことでサポートをすることを対価とした。

 

 魔術は非常に便利である。魔物や盗賊への攻撃手段だけでなく日常生活でも使い道は沢山ある。水魔術、火魔術は特に分かりやすい。キャラバン全体での水がなくなれば魔術で作り出し、料理を作る時はたき火の着火に使える。

 

 これほど便利な魔術だが多系統を自在に使える人間はそう多くない。それゆえブエルは自身の価値を示して乗ることができた。

 

 ブエルの強みはそれだけではない。

 

「おじさん、あっちに魔物がいるよ。こっちを見てる」

 

「ん〜?ほんとだ。よく見えたな。目がいいんだな」

 

 ブエルに教えられた人は隊列の前の方に行き今、の情報を伝えた。

 

 その後すぐ、魔物は襲ってきたが臨戦状態だったキャラバンの護衛班に返り討ちにされこちらは無傷だった。

 

 キャラバンの人間には話していないが呪いがある。ブエルはそれを使うことで索敵役として貢献して自身の価値を示し続けた。力を使い続ければたまたま見つけたという建前が崩れて怪しまれるため目視できる範囲にいるかつこちらへの敵意がある魔物だけを伝えるようにしている。そのおかげでキャラバンの人からは子供だから目がいいのだろうと思われていた。

 

 力を知られることはリスクだが、もし魔物や盗賊に隊が襲われればブエルたちにも身の危険が降り注ぐ。2週間の関係性だ。力を知られるよりも魔物に襲われるリスクを減らす方をとることにした。

 

 

「よーし、それじゃあ休憩だ」

 

 太陽が真上を少し超えたころ、キャラバンのリーダーがお昼休憩の号令をかけると隊列全体に指示が伝わり馬車が止まる。正午を過ぎ、隊員たちは空腹の状態だった。

 隊列のあちこちから休憩に対する喜びの感情が伝わってくる。

 

「2人とも降りな、飯だ」

 

 休憩の時間になるとブエルは忙しくなる。ブエルの仕事は魔術でキャラバンのサポートをすることである。大人たちが準備したたき火に魔術で着火をするためにあちらこちらを回っていた。

 

「嬢ちゃん!こっちも頼む」

 

「はーい」

 

 火をつけ終わるとじっとして待つように言われる。料理をさせふのは危険だろうという判断でその間は自由な時間になっていた。

 

 ブエルはやることがないのでノルンの相手をしつつ料理の方に視線を送っていた。大人たちは手際よく調理をしてみるみるうちに料理を完成へと持っていく。

 完成が近づくにつれて鼻にくる匂いは煙から美味しそうなものに変わっていく。自然とお腹の虫が鳴き始めていた。

 

「よし完成だ!」

 

 煮込み担当が声を上げると手の空いている人間が器やスプーンを用意し始める。

 

「ほら、何をやってるんだ。早くしないとなくなるぞ?」

 

 1人が端っこで見ているだけのブエルたちに気を使ってか食器を持って渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

 その日のスープはただ美味しいだけじゃない。そんな味がした。

 

 

 お腹を満たせばキャラバンは再び隊列を組み進み始める。街道に沿いながらひたすら森の中を巨大な生物のように移動する。昼ご飯を食べたことで英気を養ったのでその足取りは早い。キャラバン全体の士気も高かった。

 

 キャラバンはどんどんと道を進んでいく。

 

 

「あ、また魔物」

 

 

 キャラバンは魔物との遭遇などはありつつも順調に進んでいた。

 

 

 

 それは10日目の夜からだった。

 

「ノルン?」

 

 ブエルはノルンの様子がおかしいことに気がついた。馬車から降りて夜ご飯を食べようとしたが立ち上がろうとしなかった。疲れたのかと思いノルンの分もご飯を持ってきたがそのご飯にも手をつけようとしない。

 

 ブエルは不自然だと感じていたがノルンがその原因を話す様子がなくボーっとしているため分からなかった。

 

 「ノルン?」

 

ブエルがノルンの顔を見ると顔も少し赤い気がした。もしやと思いブエルはノルンの額に手を当てる。

 

「熱い……」

 

 ノルンの額に手をやると手には普段以上の熱が伝わる。

 

 ノルンは病気になり熱を出した。

 

 

 ブエルはすぐに大人に相談した。まずヒーリングを使うように言われたが効果はあまりなかった。ノルンからは病魔に苦しむ声がヒシヒシをとた伝わってくる。ブエルの中で焦る気持ちが強くなっていった。

 

 「恐らく疲労が原因の風邪だろう。命に別状はないだろうけど安静にする必要があるな」

 

 隊の中で医療に詳しい人がノルンのことを診た。死ぬ病気ではないと聞いてブエルの中で焦りが少し消えた。

 

 「これまでそんな長く旅をしたことがないでしょ?それで疲れちゃったんだろうね。大丈夫だよ」

 

 ブエルを安心させるようにその人は頭を撫でた。わしゃわしゃと髪をかき分けられる音が聞こえていたがブエルはその感触を得られなかった。

 

 その日ブエルはノルンのそばをいつも以上に離れようとしなかったが大人たちは自分たちが見ているからと説得してブエルを無理やり話して寝かせるようにした。それでもその日は中々寝付くことができなかった。

 

 

 次の日、起きたら笑顔のノルンが見られるのではないかそんな期待をしていたが早々に砕かれる。ノルンは以前病魔に侵されていた。ブエルはノルンのそばに行き手を握る。ノルンも弱弱しく握り返した。

 

 

 そうしているとキャラバンのリーダーが現れる。リーダーはブエルをノルンから離れた場所に呼び出した。

 

 「病気はよくならないんだってな」

 

 〈憐み〉

 

 リーダーはこちらに気を遣うように話している。

 

 「あの子についてのこれからを話す。いいな」

 

 だがその感情は子供に気を遣う大人から組織をまとめるリーダーのものになる。

 

 「ここから先、半日ほど行ったところに村がある。俺らが次に寄る場所ではない。ルートから外れる。あの子にこれ以上旅をさせるのは命にかかわる。だから2人はそこで降ろす。いいな」

 

 リーダーの言葉にブエルは頷いた。町に着く前に降ろさせることに対する不安は大きい。でもこれ以上ノルンを危険な状態にはしておけなかった。

 

 ブエルの心中を察したのかリーダーも頭を撫でる。

 

 キャラバン全体が進路へ向けて準備を進めた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 ノルンへなるべく負担をかけないよう慎重にキャラバンは進む。そしてこれ以上悪化することなくノルンは村へたどり着くことができた。

 

 リーダーたちの交渉のおかげですぐにノルンが休める場所を用意してもらえた。そして村にいる医者が診察をしている。ブエルは診察されているノルンは医者に任せて外に出た。キャラバンの人たちは村と取引しつつすぐに出発の準備を整えていた。彼らの運ぶ荷物の中には運ぶのに時間制限のある物もある。ブエルたちのために予定を変更するのは困難だった。

 

 「あの」

 

 ブエルはリーダーに声をかけた。

 

 「ありがとうございました」

 

 ブエルはリーダーに頭を下げた。目的地までは行けなかったがそれでもここまで安全に来れたのは間違いなく彼らのおかげだ。それに旅の間かなりよくしてもらった。感謝しかなかった。

 

 キャラバンはその日中に村を出発した。

 

 

 

 

 

 ブエルは医者と共にノルンの看病をした。一定の時間がたてばヒーリングをかけ村の人に食料を分けてもらい療養食を作り、頭が痛いと言えば魔術で氷を作り出し冷やしてあげる。ブエルはとにかくノルンを助けたい一心で動いていた。

 

 ブエルの献身的な看病のおかげかノルンは街を出てから13日目の朝には熱が下がりその日の夕方には医者からももう歩いていだろうと言われるまで回復した。

 

 「お姉ちゃん、」

 

 ノルンがまん丸の目をこちらに向けている。ブエルはノルンに抱きついた。熱くない普通の体温が伝わってくる。久しぶりにブエルは自分に感覚があるように思えた。

 

 

 14日目、ブエルたちは村を出ることにした。街とは違いやはり村にはいきなり人を住まわせる余裕はないらしくブエルは自分たちを心配する感情と同時に厄介者扱いをする人がいることを感じ取っていた。この場所にいることがブエルには少し苦痛だった。なにより早くパウロに会いたかったのだ。

 

 

 2人は森を進んでいた。街以外を2人で歩くのは転移された直後以来だった。思えば転移してからずっと大人の元にいた。パウロ、ゼニス、リーリャ。ブエルたちにとっての親ではない大人とだ。それでも彼らは自分の子供出ないブエルたちに優しくし保護してくれた。転移された場所によっては悲惨な最期を迎えた人も多い。そんな中これほど人や環境に恵まれるのは奇跡に近いのだろう。

 

 今は半年ぶりに大人が一切いない環境。不安もあったが少し高揚感も感じていた。ブエルは戦える力を持っていた。転移した直後とは違い食料があり行先も決まっている。あの頃とは何もかもが違う。ブエルに不安はなかった。

 

 最初の頃とは違い2人は他愛ない会話をして進んでいた。それだけ2人だけの旅に余裕があるということだった。その中には父パウロのことも話題で上がっている。半年振りの家族との再会に2人の心は沸き立っていた。

 

 

 ブエルたちは魔物との戦闘を極力避けながら村で教えてもらった道を進む多少の整備された道が通っており迷うことはなかった。だが人とすれ違うことは一度もない。それはそれで気がかりではあったが魔物に遭う方に注意を払っていたのでさほど気にならなかった。

 

 

 

 こうして森を進み続けて2日目、子供の足では街にたどり着けなかった。手頃な洞窟を見つけ魔物の住処ではないことを確認したブエルはそこで野営をすることにした。

 

 「ノルン、薪を拾ってきて」

 

 「うん」

 

 ノルンと手分けして夕食の準備を始める。ノルンが薪を集めている間にブエルは食材の下処理をする。集めたら魔術で火をつけて鍋に火をかける。ゼニスに教わった簡単なスープを作ろうとしていた。

 

 ――――――――――

 

 

 食材を煮込み完成まであと少しのところでブエルは人の気配を探知した。

 

 (え、うそ)

 

 1人ではない何人もの気配だ。

 その気配はこちらのことを認識している。だが感知する感情は決して友好的なものではない。

 悪意に満ち溢れこちらのことを人と考えていない。

 

 「お姉ちゃん、寒いの?」

 

 ノルンが声をかけてきたことで意識注意が気配からノルンへ戻る。気が付けばブエルの手は震えていた。

 

 こちらを認識する存在、どんな人かを理解してしまった。その結果ブエルは恐怖に見舞われる。

 

 

 

 人さらいだ

 

 

 ブエルはすぐに火を消した。煙と明かりですぐにこちらの居場所がばれる。いやもうばれている。だから彼らはこちらを認識したのだ。

 

 「ノルン荷物をまとめて」

 

 ブエルはノルンに指示を出して自分でもすばやく荷物をまとめた。旅の荷物、街までどれくらいなのか分からない以上捨てる判断をできなかった。

 

 ブエルはノルンの手を引いて走り出した。捕まればどうなるのか街でよく聞かされていた。絶対に捕まりたくなかった。

 

 「お姉ちゃん、まてぇ、、」

 

 ノルンの弱弱しい声が聞こえた。ノルンはまだ病み上がり体力がそうあるわけではない。病み上がりを差し引いても5歳の子供の持久力はたかが知れていた。

 

 〈見つけた〉

 

 人攫いたちの感情がより強く感じれるようになった。先ほどよりも近づいている証拠だった。ブエルはとっさに道を離れた。道を進めば迷うことはないが逆に人攫いたちも見失わない。体力の差で追いつかれると判断した。

 

 森の中を草をかき分け駆けていく。胸が痛い。それは心臓の鼓動だけじゃなくて酷使した肺が訴える疲労そのものだ。だんだんとブエルたちの足取りが遅くなっていく。それでも人攫いたちの追跡は終わらない。どんどんとその距離は縮まる一方だった。

 

 「お姉ちゃん、もう走れない」

 

 ノルンが先に音を上げた。

 

 「そんなこと言ってないで頑張って。お願い」

 

 体力が尽きて歩き始めるノルンを引きづってブエルは走る。肺は痛かった。それでも迫りくる恐怖が体を前へ進めた。捕まりたくない。ノルンを守らなくては。その意志がもう一歩先へと進める原動力になっていた。

 

 

 ひゅん

 

 「あぁ」

 

 「お姉ちゃん?!」

 

 何かが森の樹木をかき分け空気を切り裂きブエルの肩に突き刺さった。ブエルが痛みの方向を見ると矢が刺さっていた。

 

 振り向くと野性味の溢れる男がいた。その顔を見た瞬間ブエルから感覚が消えた。その顔には見覚えがあった。ブエルに父、パウロの話をした男だった。

 

 

 

 ブエルは罠に嵌ったのだ。

 

 「うぅ」

 

 ここでブエルは荷物を捨てる判断をし痛みに歯を食いしばって耐えながら走っていた。ノルンも足をふらつかせんがら懸命に走る。

 

 

 

 「嘘」

 

 走って走って走った先は川だった。手負いのブエルでは渡れない川だった。

 

 もう逃げられないことを悟った。男はゆっくりと近づいてきた。

 

 男はごちそうを前にしたような笑顔をしている。ブエルはもう逃げる力を失った。周りからぞくぞくと人が集まっているのを感知する。着々と2人は包囲されていった。

 

 そしてとうとう2人は大の大人10人近くに完全包囲された。

 

 「やっと見つけたぜ。焦ったよ。まさかキャラバンを使って街を抜けるとは」

 

 「だが追い出されたみたいだな。かわいそうに」

 

 男たちはニタニタと笑っている。かごにいる家畜を見ているようだった。

 

 腰に少しの痛みが走った。ノルンも異常事態を察してブエルの後ろに隠れていた。

 

 (ノルンだけでも逃がさなきゃ、、、でもどうすれば)

 

 ブエルは必死に頭を回した。どうすれば助かるかを。だがこの人数に勝てる見込みなく逃げ場もない。考えれば考えるほど絶望感に吞まれていく。

 

 そんな時だった。視界の端の光景に気が付いたのは。明かりだった。夜には似合わない明かりが見えた。川の先そこには巨大な壁があった。街だ。自分たちが向かっていた街だと察した。

 

 「たっく散々手こずらせやがって。」

 

 「注意しろ。そいつは無詠唱魔術を使うんだ。手負いとはいえ用心しろ」

 

 人さらいたちは散々言っている。どれもブエルたちのことはどうでもいい、ただのモノであるような言い草だった。

 

 「知ってるか?ガキ。魔術を使える奴はそうそういないんだぜ。お前は有名人だったよなぁ情報はすぐに集まったよ。家族ばらばらとはかわいそうに健気に妹を守ってきたんだなぁ。安心しな。2人まとめて売りさばいてやるからよ」

 

 1人が言うと周りはゲハゲハと笑い出す。品とは程遠いものだった。

ブエルは家族の情報を得るため自分の情報を話し続けた。酒場で会った人間全員と言っていいほどだ。そのおかげで街では転移事件の被害者というわけで有名になっていた。

ブエルが有名なのはそれだけでなく魔術が幼くも使えた点にある。ブエルはそれを活かしてパフォーマンスをしお金を稼いでいたわけだがここにきてそれらが全て裏目に出た。

 

人攫いの耳に留まって狡猾に迫ってきたのだ。

 

 「さぁ諦めな。もう逃げ場はないぞ。」

 

 

 ブエルは肺いっぱいに息を吸い込んだ。少しでも痛む心臓が休まることを狙ったが緊張はほぐれることはなかった。

 

 

 ドンドンドン

 

 「なんだ」

 

 ブエルと人攫いの間に数メートルの土の壁ができる。隙ができたのを確認するとブエルはノルンの荷物を降ろしノルンの肩に手を置いた。

 

 「いい。聞いて。私とはここでお別れ。振り返っちゃダメ。街へ逃げて。分かったね」

 

 「どういうこと、おねえちゃ」

 

 ブエルはノルンに語気を強くして言い聞かせるとノルンを担いだ。

 

 

 「ああああああああああ!」

 

 そして今出せる力も最大限出してノルンを川へ投げ込んだ。手を放す瞬間に爆発が起きる。ルーデウスが稽古でよく使っていた技だ。その威力のおかげでノルンの体は木よりも高くあがり弧を描いて川へと落下した。

 

 

 「クソ、小癪な」

 

 投げ終わったタイミングで人攫いたちは壁を突破してきた。

 

 「追え」

 

 「はい!」

 

 リーダーの指示に従って一人が追いかけ始める。

 それを感知したブエルはその男の方へ駆け剣を振りかぶった。だが所詮は子供簡単に防がれる。

 

 だが剣と剣がぶつかり合った瞬間、男の体は炎上した。

 

 「ああああああ」

 

 火だるまになった男がのたうち回る。その隙にブエルは男の腹に剣を刺して抜き命を奪った。

 

 「ここから先はいかせない」

 

 「クソやれ。生け捕りなのを忘れるな」

 

 人攫いたちは一斉に襲い掛かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ごめんねノルン、、、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             生きて)




ノルンが熱さえ出していなければ人攫いに遭遇することはありませんでした。

あ~あ


というわけでいよいよお待ちかね例のタグが活かされてきます

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