グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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金曜日に投稿した閑話、、、予約投稿のつもりができてませんでした。


前回、感想・誤字報告してくれた方ありがとうございます!!!

というわけで連れ去れたブエル、、果たしてどうなってしまうのか、、


ちなみに閑話を簡潔にまとめると

1 ブエルは人さらいから暴行を受ける

2 魔物の酸を飲まされて喉を潰される

3 ナイフで体の一部、、何かを切られて魔術を仕込まれる


です。これを覚えて今回の話を読んでほしいです。


第16話 空回りな男 ☆

 ノルンが運び込まれてから2日が経過した。ノルンは未だ目を覚ましていない。

 

 その間に森では捜索団によってブエルの捜索が行われていた。

 

 ブエルが見つかることはなかった。だが手がかりが何もなかったわけではなかった。森で捜索していたあるグループは川の近くで異常を見つけた。そこまで鬱蒼とした森が続いていたがある場所から光が差し込んでいる。足を運ぶとその原因はすぐに分かった。

 

 山火事だ。木々は燃やされ灰になり日の光を遮っていた葉がなくなり差し込んでいた。

 

 「おい、あれ人じゃないか?」

 

 一人が指をさす方向を見てみると誰かが倒れていた。

 

「うっ」

 

 男たちはその場所に近づくと顔をしかめて鼻を覆った。草木だけではない、肉が焼ける匂いが充満していたからだ。

 

「おい、誰か倒れてるぞ」

 

「もう死んでるさ」

 

 駆け寄ろうとした一人を制止する。男たちは他の仲間を呼び出してその場所の調査を始めた。

 

 

 ――――――――――――

 

 

「ノルン……」

 

 とある街の宿。その一室でパウロは項垂れていた。目の前にはやっと見つかった娘の一人ノルンが寝ている。いまだに目を覚ますことはないが容体は落ち着いているようだった。あの後、パウロの仲間たちによる懸命な救命活動によりノルンは安定していた。一番重い症状は川に浸かっていたことによる低体温症で外傷でなかったのが幸いだ。

 

 あの後森に向かった捜索隊から報告が入った。森で山火事の跡を見つけたこと。そしてその周囲には男の死体が転がっていたと。その男たちは遺留品から人さらいの一団に所属していることが分かった。肉が焼かれているためぱっと見は死因が分からなかったがよく調べると骨に大きな傷が入っていることから剣による攻撃を受けていることも判明した。

 

 これらの情報から捜索団はブエルとノルンは人さらいに遭遇しブエルが囮として残りノルンを逃がした。ブエルは魔術も使い激しく抵抗したが連れ去られたと推測した。

 

 

 

 

 

 パウロの傍ではヴェラが待機している。ノルンと同性ということも理由だがパウロの精神状態を気遣ってのことだった。ノルンが運び込まれてからパウロの精神は目に見えるように悪化した。元々パウロは事件の被害者を見ていく中で凄惨な現場を目撃していたことから家族の安否に対してネガティブに考えていた。手紙によって一旦好転していたがノルンが運び込まれたことでどん底に落とされてたのだ。

 その結果、パウロは捜索団としての仕事ができる状態ではなくなってしまった。だがそのことを咎められる人はいなかった。誰もが同じ傷を負っている。パウロを見ては同情していた。

 

 パウロは自身の選択を後悔していた。なぜ大丈夫と考えたのだろうと。もしキャラバンの人間から途中で降ろしたと聞いた時から行動していれば何か変わったんじゃないかと。頭の中ではこの町に来てからの行動を振り返っては吐きそうになっていた。

 

 ブエルは9歳どう考えても子供なのにパウロは剣術ができ魔物と戦えてしまったブエルを子供として見切れていなかった。それは長男ルーデウスのことも原因にあるだろう。ルーデウスは天才だった。転移災害までロアの街で優秀な家庭教師をしていると手紙で聞いていた。最初の子供が出来すぎた。だからパウロは楽観視していた。その結果がこれである。

 

 

「うっんんん」

 

 ノルンが初めて声を上げる。パウロはこの声にいち早く反応した。項垂れていたパウロはノルンの寝ているベッドに視線を向ける。ノルンは苦しそうに身じろぎをしながら目を覚ました。

 

 目を覚ましたノルンはまだ寝ぼけているのか焦点が合っていなかった。時間が経つにつれ段々と意識がはっきりしてきたのか周りを見渡せるようになった。そしてパウロとノルンの目が合う。

 

 

「ノルン……分かるか?俺だ。お父さんだ……」

 

 パウロは消えそうな声で話しかけた。パウロの中にはノルンに対する不安があった。それはノルンが父親である自分を覚えていないんじゃないかというものだ。生まれてからの世話はほとんどゼニスかブエルに任せていた

 。自分も参加していたが割合では叶わない。それに転移事件前にはノルンたちとスキンシップが足りないとゼニスに叱られていたところだ。半年近く会っていない父親忘れ去られていても不思議ではなかった。

 

 

 

「お父……さん?」

 

 

 

 ノルンはパウロの顔を見ると呟いた。

 

「そうだ……お父さんだ」

 

 パウロが言葉を返すとノルンの目尻に涙が溜まっていく。

 

 「お父さん!お父さん!!うわああああああん!」

 

そして大声で泣き始めた。パウロはそれに思わず抱きしめた。腕の中には暖かな体温がある。パウロよりずっと小さいはずのノルンから力強く抱きしめられていた。

 

 

 しばらくノルンは泣き続けた。ようやく家族に会えたこと、安心できる場所に来れたこと色々あったのだろう。パウロはノルンの頭をなでながら泣き止むまで抱き続けた。

 泣き止んだところでパウロはノルンに事情を聞こうとする。ブエルが攫われたのはほぼ間違いないと考えているが現状唯一の手掛かりはノルンだけだ。他の手掛かりを探して捜索団の仲間が動いてくれているがノルンが情報を持っていれば一気に事態は進展する。

 

「ノルン、ブエルはどうした?何があった」

 

 パウロは恐る恐る聞いた。もしかしたら2人の身に起こったことはノルンのトラウマになっているのではないか。そうも考えた。これまで助けてきた人には実際に心に大きな傷を負った人もいる。シェラがその例だ。だがパウロにとって大事なのはノルンだけじゃない。ブエルも全員大事な家族で助けたいと考えている。今、ブエルがどんな状況になっているかなんて想像すればぞっとする。もし考えている通りの状態ならすぐに助け出してあげたい。だからノルンにとってつらい記憶であっても聞き出す必要があった。

 

 パウロに聞かれたノルンはいたずらがバレたような表情をして俯いた。やはり話せないかと思ったパウロとヴェラだったがノルンはパウロにしがみついてポツポツと話し始めた。

 

 ノルンが体験した内容はパウロたちの予想通りだった。ブエルは攫われた。そして今もあの森の近くにいるだろうと考えて捜索団は救出に向けて動き出した。

 

 

 ――――――――――――――――

 

 ブエルの捜索は難航した。手がかりがなさすぎたのだ。どんどんの日数が経っていくにつれてパウロの焦りは増していった。転移した先で捕まった人の末路は嫌というほど見てきた。殺されるだけならマシといえる世界だった。

 ブエナ村にいた頃のブエルを思い出す。母親に似て美人に育っていった。村の中でもあの子は美人になると大人の間でも話題になっていた。同年代からの評価は知らないが後3年もすればきっと男の子はほおってはおけない子になっただろう。

 そんな美人な子が人さらいに捕まったらどんな目に遭うか。想像するたびに吐きそうになった。あの可愛いブエルが虚ろな目をしてこちらを見てくる様子が夢に出てくるたびに冷や水をかけて落ち着こうとしていた。

 

 パウロの心はいつ折れてもおかしくなかった。

 

 

 そんなパウロを支えていたのはノルンの存在だった。ブエルがいなくなり不安なのはむしろノルンの方だろう。ノルンはしきりにブエルのことを探していた。パウロはノルンの前で絶対に不安にさせることはしなかった。頼れる父親であろうとした。ブエルが命がけで守ったのだ。今度は父親の自分がもう大丈夫だとそう言ってあげられるようにパウロは必死だった。

 

 

 人さらいの情報が手に入ったのは2週間後のことだった。捜索団の懸命な捜索により情報が手に入ったのだ。

 

 すぐに作戦会議が開かれた。もちろんパウロが前線に立つ。そもそもこの捜索団は村人の集まり。一番強いのがパウロ、二番目にヴェラがくるくらいである。戦闘になるならばパウロが先陣を切らざるを得ない。だがパウロはそのことをあまり気にしていなかった。家族を助けるためには必要なことだと考えていた。戦闘ができなくても他の面で活躍してくれるメンバーもいる。今回、ブエルに関する情報を集めてくれたのはシーフとして活躍していたメンバーだ。

 

 情報によると昔、国が放棄した関所を監視する施設を中心に地下にアジトを形成し活動しているようだ。その施設も表向きは放棄されていて中はほとんどもぬけの殻な上本陣が地下なので簡単に見つけられなかったわけである。

 

 「お父さん……お姉ちゃんに会える」

 

 ノルンはパウロの服をギュッと掴み聞いてきた。離れ離れになり数週間、ノルンも不安がどんどんと大きくなっている。そんなノルンの様子を見てパウロは頭に手を置いて言った。

 

「任せろ。父さんが助け出してくるからな」

 

 

(ブエル、もう少し待っていてくれ。必ず助けてやる)

 

 ――――――――――――――――

 

 

「何だお前!どこから入ってきた?!ぐぎゃあぁぁ」

 

「クソ、向かいうて。うわぁぁぁ」

 

 

 アジトの中に入ると大勢の人さらいがいた。パウロは片っ端から人さらいたちを切っていく。奴らの言葉に耳を貸すことはない。攫われてからかなりの時間が経っている。無傷、、そんな奇跡があるとは思っていない。どちらにせよ、他の領民をこれから攫う可能性のあるこいつらを生かしておくつもりは毛頭なかった。

 幸い数は多いが1人1人は強くない。3流派を上級まで修めているパウロからしてみれば相手ではなかった。まだ村の周辺にいた魔物の方が手ごわいまである。

 

 

 

 パウロは敵を切り伏せ奥へと進む。まだ周りは奴らの居住スペースといったところで攫われた人たちがいるであろうエリアには辿り着かない。ここまで来ると少し手ごわい相手が出てくるようになった。中級剣士といったところだろう。見張りは下っ端に任せているから弱かった。だがアジトの奥へ進んだことで戦力となる人間が出てきた。ここまでは余裕だったパウロ達先陣組だが段々と苦戦し始める。戦闘力で押され始めた。負傷するものが増え下がっていく。人数が減っていくことも不利になる要因だった。

 

 

(段々とキツくなってきた。だがここで引き下がるわけにはいかないんだ。)

 

 

 パウロは他のメンバーを庇いながら戦闘を続けて何とか落ち着くまで迎撃できた。だが体力は削られ段々と精神的余裕を失っていった。

 

 

 

 

 

 「こっちにも来やがった。」

 

 二手に分かれて内部を捜索しているとき奥から二人組が現れた。

 

 (次から次へとキリがない)

 

 

 分かっていたことだが切っても切っても立ちはだかってくる敵に苛立ちを感じ始めていた。

 

 

 今、パウロの前にいるのは2人組。1人は髭の生えた男。もう1人は()()()()頭に魔法陣のような模様が入っている小柄な奴だった。小人族なのかこれまでアジトにいたやつの中で一番小さい。()()()()()()()()()

 

 

 「いけ!あの男を殺せ」

 

 髭の男は小さい方へ命令する。すると魔法陣が怪しげに光ると小さい方は剣を構えて突撃してきた。

 

 

 (剣神流か)

 

 パウロは構えから相手の手札を予想して向かい打つ。鍔ぜりになるがパワーではパウロが勝っているので押し返す。小さい方は髭の方まで後退した。パウロはその隙を逃さずこちらから攻め始める。すると小さい方は水神流を使ってきた。

 

 2流派を使うことに一瞬動揺するが立て直し攻撃を受けないように対処する。

 

 

 

 小さい方は厄介だが男の方はそうでもなさそうだとパウロは考え始める。先ほどからオロオロしているだけでこちらへのアクションをしてこない。ならばと考え小さい方の腹に蹴りを入れる。

 

 

 「ーーーー」

 

 

 小さい方は空気を吐き出すが苦しそうな声が聞こえなかったため入りが悪いのかと意識が向くが倒れているところを見るとダメージは入っているようだった。

 

 

 「ひぃぃ」

 

 

 男に肉薄する。斬ろうとしたとき背後からさっきを感じて剣を振る。復帰した小さいほうが襲い掛かってきていた。パウロがとっさに剣を振ったとこで体が切り裂かれ今度こそ倒れこんだ。

 

 髭の方は案の定戦闘が得意でなくすぐに終わった。

 

 

 

 (ふぅ、手ごわかった)

 

 

 予想以上に手ごわかった相手だったためパウロは息が上がっていた。

 

 

 (ブエル、、一体どこにいるんだ)

 

 

 そして中々娘が見つからないことに焦りを感じている。

 

 

 (早く、、早く)

 

 

 体力も精神も削られパウロの余裕はさらになくなっていた。だがそれでも先へは進まなくてはいけない。ブエルはもっと辛い目に遭っているかもしれないんだから。

 

 

 

 

 

ガシ

 

 

 先へ進もうと足を動かしたとき、何かがパウロの足をつかんだ。下を見ると髪のない小さいほうが足をつかんでいた。ブルブルと震えながら顔をあげる。その瞳からは涙がこぼれていた。口をパクパクと開き何かを訴えようとするが声が出ていないためパウロには届かない。

 

 

 

 「クソ、足を離せ」

 

 

 パウロは小さい方の執念深さに苛立ちを感じ顔面に強烈な蹴りを入れる。地下ということもありその音は反射して響いた。

 

「邪魔だ」

 

それでも離そうとしないためパウロは何度か蹴る。やがて諦めたのか気絶したのか小さい方の力が抜け足の拘束がなくなった。

 

 

 

 (俺は、、、俺は、、、娘を助けなきゃいけないんだ)

 

 

 パウロは振り返ることなく先へ進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 アジトの制圧が終わり捕まっていた人たちを開放する。中にはフィットア領の住民もいて捜索団で保護することになった。だがパウロの顔は晴れない。救出した人の中にブエルはいなかったのだ。パウロは情報を得るために救出した人から話を聞く。

 

 

 

 「なぁ、あんた茶髪で青い瞳の子供を見なかったか。数週間以内にここに来ているはずだ。俺の娘なんだ」

 

 

 パウロが尋ねるとその人は驚いた表情をして目を逸らす。気まずそうな感じだった。

 

 

 「知っています」

 

 

 その言葉を聞いてパウロの顔は晴れる。

 

 

 「何でもいい情報を教えてくれ」

 

 

 

 

 その人は口を開くか迷った。沈黙が少しあり重い口が開かれた。

 

 「その子は奴らの仲間を殺したようで酷い暴行を受けていました。そして、、、そして、、、」

 

 

 

 「あの子は人さらいに髪を全て切り落とされてました。女の子なのに可哀そうに、、

そして服従させる魔術と言っていました。魔方陣を頭に入れ墨のように植え付けられていたのです。そんな魔術で何をさせられているのか」

 

 

 そこまで話すと助けられた人は泣いてしまった。

 

 

 「は」

 

 

 髪のない魔方陣が頭にある子。パウロに心当たりがあった。

 

 

 「団長?!」

 

 パウロはアジトへ再度駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 息が苦しい。走っているからか?違う。普段は絶対に上がらない息があがり胸が痛い。心臓も全身が拍動を感じられるほど激しく打っている。

 違ってほしい。勘違いだ。そう言い聞かせながら奥へと進んでいく。

 そして見つけた。倒れていた。

 

 

 

 「ブエル、、、ブエルなのか」

 

 

 その子を抱きかかえ声をかける。まだか細く息をしていた。

 

 

 「ブエル!!!ブエル!!!」

 

 

 薄っすらと目が開いた。

 

 

 「ブエル、、、」

 

 

 パウロがそう言うとその子はギュッと服をつかみパウロの体に顔をうずめた。その行動でパウロはブエルだと確信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「シェラ!!シェラーーー!」

 

 

 

 ヴェラは突然アジトへ戻った団長を心配していた。団長は強いがアジトには大勢いた。万が一伏兵がいたらと考えていたのだ。

 

 

 しばらくすると団長の声がアジトから聞こえてきた。

 

 

 「団長!」

 

 

 ヴェラは駆け寄るがその様子にギョッとする。血まみれの子供を抱えて号泣していた。

 

 

 「シェラ!!シェラーーー!」

 

 

 パウロは必死に治癒魔術が使えるシェラを呼ぶ。団長の声に呼ばれて駆けつけるが団長の様子を見て固まってしまった。

 

 

 「ヒッ!」

 

 

 パウロは必死にシェラの名前を叫ぶがシェラはトラウマが刺激され硬直する。

 

 

 「頼む、、、、助けてくれ、、、俺の娘なんだ」

 

 

 その一言で状況を理解したヴェラはサポートに入る。

 

 

 「シェラ落ち着いて。この子を助けて」

 

 

 背中を撫でて深呼吸をさせる。姉がいることもあり冷静になれたシェラは役目を全うしようとし始めた。

 

 

 

 

 ブエルはパウロに抱かれてから完全に気を失っていた。何度呼び掛けても反応はない。

 

 

 

 

 

 パウロは自身が娘にした行動を後悔しながらただ治療されるのを見ているしかなかった。

 

 




パウローーーーーー


パウロお前ーーーーーー


というわけでパウロは焦った結果、娘と気が付かずに斬り、顔を蹴って罵声を浴びせる。

ブエルはパウロに気が付いて足を掴んで必死に呼びかけたけど酸で喉がつぶれていたから気が付かれずに蹴られてしまいました。


曇ってくれましたかね?


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